株式会社ACCESS

2019年7月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

事業成長に対応したオフィス容積拡大と快適性・効率性を備える執務環境の
提供を実現。もう一つの命題であった国内子会社の集約も行った

1984年、「すべてのモノをネットにつなぐ」を企業ビジョンに株式会社ACCESSは設立された。その後、IoT技術の本格的な需要の加速によって事業が拡大。より豊かな生活を世界中に届けている。2018年、事業成長に比例した従業員の採用拡大により、本社オフィスが手狭に。国内子会社との集約も目的として、本社近隣地に新オフィスを開設した。今回は、増床によってさまざまなオフィスの課題を解決した事例を紹介する。

豊田 貴弘 氏

株式会社ACCESS
コーポレート本部
総務部部長

豊田 貴弘 氏

植草 友紀 氏

株式会社ACCESS
コーポレート本部
総務部総務課

植草 友紀 氏

本田 俊明 氏

株式会社ACCESS
コーポレート本部
総務部総務課 課長

本田 俊明 氏

綱島 真一 氏

株式会社ACCESS
総務部情報システム課
担当マネージャー

綱島 真一 氏

通路側オープンスペース

通路側オープンスペース

Contents

  1. IoT時代の到来を見据えて会社を設立。「すべてのモノをネットにつなぐ」を実現した
  2. オフィス移転ごとに働く環境を充実させていく
  3. 積極的な増員計画を進める中でオフィススペースが手狭になった
  4. まずは現場の声をヒアリングし多方面からの要望を集めた
  5. 社員の要望を具現化しながら新機能を追加していく
  6. 自分たちのオフィスという意識を徹底させてオフィス運営を促していく

IoT時代の到来を見据えて会社を設立。「すべてのモノをネットにつなぐ」を実現した

1984年2月に有限会社アクセスとして誕生。設立時から「すべてのモノをネットにつなぐ」を企業ビジョンとして業務を成長させてきた。1996年11月に株式会社アクセスに組織変更。携帯電話向けコンパクトHTMLブラウザを開発する。2000年4月に株式会社ACCESSに商号を変更。2001年2月に東証マザーズに上場する。その後、ドイツ、中国、米国、韓国など、海外に拠点を設立。今では「IoT事業」「電子出版事業」「ネットワークソフトウェア事業」を3本の柱に、「つなぐ」をキーワードにした最先端技術の開発をグローバル展開している。

特にIoT事業の分野では、世界で初めて携帯電話をインターネットにつないだ組み込み技術と卓越したノウハウを持つ。同社の「つなぐ技術」を搭載した機器の累計数は実に15億台を突破した。

「IoTの搭載技術というものは、時代のユーザーニーズによって変わってきます。新たな価値を見つけながらチャレンジしていく、という当社の姿勢は永続的に変わらないでしょう。リアルの世界のあらゆるコト、モノ、サービスがインターネットにつながる。それによって未来の社会環境や生活、ビジネスのあり方を提案していきます」(豊田氏)

オフィス移転ごとに働く環境を充実させていく

現在、千代田区秋葉原駅近くに立地する大規模ビルに本社機能を置く。以前は水道橋(千代田区猿楽町)と幕張(干葉市美浜区)に分散していた。

「水道橋に立地するオフィスビルに本社機能を設けていました。1フロア面積は約275坪。駅からすぐ近くの交通アクセスの良好な物件でした。そして主に開発部門を集約した拠点は幕張に。11階建ての自社ビルです。運用していく中で、本社との距離、アクセス、コミュニケーションロス、自社ビル所有による管理コスト、従業員の通勤時間等のデメリットに伴う問題が表面化し、最終的に2拠点を統合することになったのです」(豊田氏)

しかし275坪のオフィスの中に、幕張拠点の全従業員を統合するのは物理的に無理があった。そこで以前から、周辺相場やオフィスのあり方を相談していた三幸エステートに声をかける。

「自社ビル売却時の相談にも快く対応していただいたこともあり、とても信頼していました。そこで、すぐに担当者に来ていただいたのです。現状分析を行った結果、最低でも600坪は必要だとわかりました。それが2015年3月のことです」(豊田氏)

積極的な増員計画を進める中でオフィススペースが手狭になった

「そうして旧本社からさほど離れていない千代田区秋葉原駅近くのオフィスビルに集約移転を行いました。1フロア面積200坪×3フロア。フロアごとに機能を分けられるのも魅力でした。移ってきた当時は十分な広さだったのですが、業容拡大による増員計画の上方修正により、再び手狭になってしまったのです」(植草氏)

そうして手狭感の解消を最大の理由としてオフィス計画が始まる。

「オフィス計画がスタートしたのは2018年3月のことです。今回は、入居時期、面積と当社の条件に合致したオフィスビルの選択肢が少ないこともあり、本社近くに増床スペースを求めることにしました。それから当社イメージにふさわしいオフィスビルの情報を収集。その中から候補を絞り込み、実際に見学。本社との距離、周辺環境、ビルスペック、賃料水準、外観イメージ、天井高などを比較して絞り込んでいきました。同年10月に移転先を決定させたのです」(豊田氏)

「新オフィスには電子出版事業部と大田区大森を拠点としていた子会社が移ることが決まっていました。そこで少しでも時間を効率的に使うために、新オフィスの図面を見ながら部署ごとのインフラ周りの設計に取り掛かったのです」(綱島氏)

豊田氏が計画立案部分をある程度固めてから、コーポレート本部のメンバーが正式にプロジェクトチームとして細かい部分を進めていく。日々の進行管理は植草氏が行い、IT全般と電話回線といったシステム関連は綱島氏が担当、ACCESS側のプロジェクトマネジメントを本田氏が受け持った。プロジェクトを遂行するにあたり全体のマネジメントを三幸エステートPMチームに依頼をした。

「同時期に株主総会の準備が重なっていたこともあって、私たちだけでオフィスプロジェクトを完結させるのは無理があります。三幸エステートさんにはプロジェクト全体のマネジメントをしていただきました」(植草氏)

「4月には新たに24人の入社が決まっていましたが、幸いなことに外部研修などで新オフィスでの業務は6月から。とはいえ工事期間は実質1ヵ月たらずしかありません。かなり厳しいミッションが自分たちに課せられました」(本田氏)

「工事期間を考えると、早急にオフィスデザインを確定させておかなければならなかったのです。三幸エステートさんは各社に要望を伝えるだけではなく、提案をしながら調整をするやり方でしたので難易度の高い要求であってもバランスよく折衝ができたのだと思います」(本田氏)

まずは現場の声をヒアリングし多方面からの要望を集めた

内装デザインにあたっては数社コンペを行うこととなった。コンペ参加各社に提案してもらうにあたり、移転コンセプトを「『快適性』と『集中力』を高める空間で、生産性向上を実現する」とした。オフィスを快適にすることで社員一人ひとりのモチベーションを高め、集中力を高める作業スペースやリラックスできるリフレッシュスペースを新設する。それによってオンオフの切り替えを容易にして業務効率、生産性向上に繋がるオフィスを実現させるというものだ。

最終的に提案書やデザイン案は、ここに移ってくる電子出版事業部のメンバーにも見てもらい、多岐にわたる意見を集めたという。そうしてデザイン会社が確定し、正式にオフィスプロジェクトがスタートする。

「最初に現場の声をできるだけ拾い集めるために、全部署へのアンケートやヒアリングを実施しました」(植草氏)

「しかしオフィスへの要望は部署や業務内容によって考え方がさまざまです。我々の立場からするとコミュニケーションを意識した機能を取り入れようとするのですが、エンジニアにはその必要性を感じていない方もいました」(豊田氏)

集めた意見をカテゴリーごとにまとめる。そして一つひとつを精査していく。

「秋葉原本社では会議室が少ないという課題があがっていました。さらにヒアリングを進めていく中で、大きな会議室は必要ないことがわかり、広さではなく数を重視したレイアウト案を作成していただいたのです。加えてクローズの会議室以外に、たくさんのオープンミーティングスペースを配置するようにしました」(綱島氏)

社員の要望を具現化しながら新機能を追加していく

そうしてJR神田駅から徒歩3分圏内にある大規模オフィスビルに新オフィスが誕生した。1フロア面積200坪に電子出版事業部と子会社を中心とした約100名が入居する。フロア形状はL字型。使いやすさを考えて縦のラインを執務エリア、横のラインを応接エリアとした。

新オフィスは落ち着いたデザインのエントランスから始まる。外部の来客数もさほど多くないため、コンパクトなスペースとなっている。

それでは新オフィス内部を順に紹介していこう。エントランスを抜けるとクローズのミーティングルームが4室。全て植物の名前でネーミングされている。

「それぞれ社内公募でPlum(梅)、Orchid(蘭)、Mum(菊)、Bamboo(竹)と名付けられました。麻雀の花牌ですね。あとで気づきました」(本田氏)

Bambooは最大20席を並べることができ、今後はすぐに集まれる社内勉強会の場としての使用も検討していると語る。

「会議室は7割以上の稼働率です。使用状況はGoogleカレンダー上で『見える化』しています。全社員が使用状況をPC上で確認でき、PC上で予約を行えるシステムになっています」(綱島氏)


エントランス

エントランス


クローズのミーティングルーム

クローズのミーティングルーム


廊下のスペースにはソファ席とファミレス風席の2つのオープンスペースを配した。秋葉原本社同様に予約なしで使える人気のスペースで、社員からの要望でつくられた。

執務室内は固定席が広がる。各席のパーテーションの高さは少し高めに。目線が合わないように設計された。

「ここで働く多くの方は電子出版事業部のエンジニアとなります。エンジニアにとってそのほうが集中できるとの要望をいただき実現しました」(綱島氏)

同オフィスの特長は、執務室を取り囲むようにオープンミーティングスペースが配置されているレイアウトにある。

「センターの壁側には、休養室と1on1用の個室を2室設けました。1on1に関しては使用していないときは集中ブースとして活用しています」(植草氏)



通路側ファミレス風席

執務エリア全景


執務室全景

執務室全景

執務室側オープンミーティングスペース

執務室側オープンミーティングスペース

そして執務エリアの窓側がリフレッシュエリアとなる。仮眠、ミーティング、気分転換とさまざまな使い方を提唱している。

「当初のデザイン案では、このエリアはもう少し広く設計していました。しかしそれよりも個人の執務デスクをゆったりさせたほうが、生産性が上がるとの判断で今のレイアウトに変更したのです」(豊田氏)

コーヒーカウンターの周囲には備品置き場、ゴミステーション、スタンディングデスクを配置し、オフィス内の人々が自然に集まれるスペースを構築している。

「同オフィスでは、個人用のゴミ箱を一切置かず比較的に大きなゴミステーションを造作で用意しました。目的は無駄な書類のゴミを無くすこと、動線計画によって社員同士の交流を生み出すことです。マグネット効果として有効だということがわかりましたので、同サイズのゴミ箱を逆サイドのスペースに配置することを検討しています」(植草氏)

執務室内リフレッシュエリア

執務室内リフレッシュエリア

コーヒーカウンター

コーヒーカウンター

自分たちのオフィスという意識を徹底させてオフィス運営を促していく

新オフィスを開設して約4ヵ月が経過した。従業員のモチベーションもかなり上がったことを実感している。しかし開設後に見えてきた課題もいくつかあるという。

「神田オフィスには秋葉原本社と違ってコーポレート本部の人員を常駐させていません。ですから何かアクシデントがあったときに業務がストップしないようにオフィス運用を考えていかなければと思っています」(本田氏)

「新オフィス開設前に特設サイトを立ち上げて『新オフィスのQ&A』を載せています。今でも問い合わせの多くは、そこを見ればすぐに解決できるものが少なくありません。ですからサイトの存在をもっと広めていく必要があると思っています。サイト自体も常に見直して更新していきたいと思います」(綱島氏)

「今後、不安があるとしたらBCP(事業継続計画)の観点で、大きな災害が起こったときですね。誰が的確に指示を出して避難行動をさせるのか、本社との連絡はどのように行うのか。BCPマニュアルはありますが、訓練・教育を通して浸透を図るほか、適宜最新版に見直していく必要があります」(豊田氏)

将来的には適度に社員アンケートなども実施して、社員の新たな要望を拾っていく計画だ。はたしてどのような要望がでてくるか、楽しみだという。

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