ビジネスエアポート

2015年8月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

雇用に縛られないコミュニティづくりを支援し、
新しい働き方を実現できるサービスオフィスの魅力

東急不動産株式会社が展開する「ビジネスエアポート」は、「共創」をコンセプトとし、顕在化需要のある個室スペースとさまざまなニーズに対応できる共用スペースを組み合わせた事業モデルで、従来のサービスオフィス、レンタルオフィスとは一線を画した「新しい働き方」を提案する会員制サテライトオフィスだ。
2013年3月に第1号店である青山店がオープンして以来、ベンチャーを
はじめとする多くの企業がここを利用し、成果を挙げている。今回は入居する企業の声を通じて、同施設の魅力をまとめた。

入居企業「AT特許事務所」

池田 顕雄氏

AT特許事務所
代表弁理士

池田 顕雄氏

受付ロビーの共用スペース

受付ロビーの共用スペース

クライアントの商品・サービスの特許取得等をサポートする専門家集団

2014年12月1日に設立されたAT特許事務所は、企業や個人のクライアントの特許取得などをサポートする専門家集団である。
特許事務所は弁理士法に定められたクライアントの提供する商品・サービスの独自性や先進性を公正に評価し、特許・実用新案・意匠、あるいは商標登録など、それぞれの内容に最もふさわしい権利保護手段をクライアントに提案するとともに、特許庁や経済産業省などの公的機関に出願申請するための書類をクライアントに代わって作成。さらに出願手続きの代行や社内用文書の作成、法改正等に伴う変更なども手がけている。

代表弁理士を務める池田顕雄氏は39歳のとき、それまで所属していた事務所から独立。その旗揚げの地として、品川駅港南口からペデストリアンデッキで直結する品川グランドコモンズの一角に同年3月にオープンした「ビジネスエアポート品川」を選んだ。

「立地面から言えば、独立時に抱えていた大口のクライアント数社が品川駅周辺に集中していたというのが最大の理由です。また、独立を決めてから開業までにわずか2~3週間と、時間がほとんどなかったので、普通にテナントビルで事務所を探していたのでは諸般の手続きが間に合わないという事情もありました」(池田氏)

特許事務所の開業にあたっては、税務署への開業届や日本弁理士会への届出事項変更届、特許庁への識別番号付与請求書の提出など、煩雑な手続きが必要となる。これらの作業と並行しつつ、物件探しや価格交渉を行う余裕などはなかったという。

料金体系が明確でわかりやすいことが、サービスオフィス選定の決め手

時間的な制約を理由にサービスオフィスの利用を考えた池田氏は、周辺にあるサービスオフィス事業者の運営する物件をいくつか見て回った。その中で、「ビジネスエアポート」を選んだのは、運営母体が日本企業であるためか、料金体系が非常に明確でわかりやすかったからだと言う。

「サービスオフィスの利用には、初期投資を抑えられるというメリットもありますが、運営会社によっては、賃料のほかにさまざまな名目で料金が加算されるシステムのところもあります。その場合、トータルの金額がわかりにくくなってしまうので、料金体系が明確なところ、というのがポイントになりました」(池田氏)

AT特許事務所は、池田氏ともう一人のパートナーによる所属弁理士2人体制でスタートしたが、開業の時点ですでに、弁理士4人以上でなければこなし切れないほどの仕事量を抱えていたという。
その後、半年余りの間に3人の仲間が新たに加わり、2015年8月現在、5人体制となっている。

「開業時には、とにかく事務所を確保しなければなりませんから、とりあえずそのとき空いていた2人部屋を契約しました。その後、人数が増えてスペースが足りなくなったときに、ちょうどタイミングよく、広い角部屋が空いたので、人数分のスペースを確保することができました」(池田氏)

ビジネスエアポートの場合、契約は毎月5日に自動更新されることになっており、オフィスの増床や解約なども、更新日までに申請すれば料金が二重に発生するようなことはない。このため、空室さえあれば、簡単に移動や増床が可能だ。最初に契約していた2人部屋では、お互いに黙々と机に向かっていると、なんとなく息が詰まるような気がしていたという。だが、不思議なもので、頭数が3人以上になればそうした雰囲気も自然に変わってくる。

こうした占有スペースの拡張性はサービスオフィス全般に共通する特長だが、ビジネスエアポートでは、会員の共用スペースとして用意されている共用ラウンジ"シェアワークプレイス"の存在が大きな魅力となっている。

良かった点1

  • 料金体系が明確でトータル金額がわかりやすい
  • 月定額の自動更新のため、部屋移動の際に二重料金が発生しない
  • 共用スペースをさまざまな形で利用可能

オフィスの現状に不満はなし。将来的な拡張性も期待できる

ラウンジは、正面エントランスから入ってすぐの眺望のよい窓際に沿ってつくられ、かなり広い面積を占めている。ソファやテーブルなどの調度も高級感のある上質なものを揃え、壁際にはライブラリーも設けられている。この部分に占有スペースを並べれば多くの賃料収入が見込めるものと思われるが、ビジネスエアポートでは、ここをあえて共用スペースとして会員に開放している。

「私自身は、日頃あまりラウンジを利用する習慣はありませんが、従業員は業務が行き詰った時にリフレッシュで利用しています。書類作成など守秘性の高い業務はオフィスで、それ以外の休憩等はラウンジで、と場所を使い分けることで、いい気分転換にもなり、仕事がよりいっそう捗るようになっているようです」(池田氏)

オフィス入居者には入居人数分のラウンジ利用権がインクルードされているが、ラウンジの利用権だけ追加契約することもできる。たとえば、社員6名の会社の場合、4人部屋の個室契約+2名分のラウンジ利用権を契約することで、全員分の作業スペースを確保しつつ賃料を抑えてリーズナブルに利用することができる。また、フリーランスの個人事業主などの場合、占有スペースは借りずにラウンジ契約のみで外部の仕事場として利用することも可能だ。

電子レンジのような家電製品の設置要望はもちろん、ドリンクの種類やライブラリーへの書籍の追加など、共用スペースの備品については、ラウンジに設置されたリクエストカードによって常に会員の声を集めている。

ビジネスエアポートの各店舗別にリクエストに応えているため、例えばこの品川店と、丸の内店など他の店舗では品揃えが少しずつ違っているのだという。

「オフィスに対する不満は感じていません。現状はもちろん、30~40人規模の組織にでもならない限り、当面はここでやっていけそうだと思っています。オフィスというのは、あくまで人が仕事をするための"環境"であって、将来的には必ずしも"場所"として実在する必要はなくなるだろうと考えています。とはいえ、まだまだ"場所"としてのオフィスは必要です。今はその過渡期として、サービスオフィスのような柔軟に働ける環境が重要になってくると思います」(池田氏)

無料ドリンクコーナー
無料ドリンクコーナー

良かった点2

  • 業務内容に応じてワークスペースの使い分けが可能
  • 柔軟な働き方を実現できる
  • 占有スペースの将来的な拡張性も期待できる

入居企業「株式会社サーキュレーション」
川口 荘史氏

株式会社サーキュレーション
Co-founder
執行役員 管理部長

川口 荘史氏

荒川 麻子氏

株式会社サーキュレーション
広報

荒川 麻子氏

すべてのビジネスパーソンの「働く可能性」を広げる

「3社で同時に働く」ビジネスノマド(場所・時間・組織にとらわれず自由に働く経営支援人材)を中心に、すべてのビジネスパーソンの「働く可能性」を広げ、「新しい働き方」を推進する株式会社サーキュレーション。

2014年1月に渋谷で開業した同社は、2015年2月23日、東京駅丸の内南口の「ビジネスエアポート丸の内」に本社を移転した。

「私たちは『一生のうちに3回転職する』世界から、『一人が同時に3社で働く』世界の実現を目指しています。具体的には、事業会社出身の若手プロフェッショナルや独立コンサルタント、元経営者を含むフリーの経営支援人材のためのコミュニティづくりを支援し、個人の方がそれぞれの専門性を活かして自由に働ける基盤の形成に尽力しています。また、現在は企業に属している優秀な個々の人材が、独立後に短期間で安定的なキャッシュを得ることのできる環境を私たちが提供していきたいと考えています」(川口荘史氏)

企業が経営再建のために外部からカリスマ経営者をヘッドハンティングしたり、新規事業立ち上げのためにその道で実績のある専門家を雇用したりすることは、従来のビジネススキームの中でも決して珍しいことではない。だが、それを企業と個人の一対一の固定された雇用関係ではなく、複数対複数の柔軟な業務委託契約によって実現しようというところに同社の先進性がある。

「少子高齢化社会では、就労人口がどんどん減少していきます。こうした日本の社会の中で、『シニアの活用』と『人材の流動化』ということが一つの解決策として叫ばれていますが、当社はこれをもう一歩進め、『独立したプロフェッショナルの経営支援人材が、さまざまな経営課題を抱える複数の企業とコンサルティングの業務委託契約を結び、課題と解決ステップに応じて週に1日、あるいは月に2日といった一定の柔軟性を持って稼働する』という働き方を提案しています」(川口氏)

登録された3,000人のプロフェッショナルと共に顧客の経営課題を解決する

同社の顧客となる企業の抱える経営課題は多岐にわたり、悩んでいるポイントもさまざまだ。
同社のコンサルタントがそれぞれの顧客の経営課題を詳細にヒアリングして分析・再定義し、個々の案件に最適なスキルや技術、ノウハウを持った人材を提案していくという。候補者となる人材は、それぞれの強みを活かし経営のアドバイスや業界のマーケットリサーチ、広報や人事戦略の設計などの上流工程を中心に、課題解決のために能力を発揮している。

「私たちの強みは、通常なら転職マーケットに出てこないような優秀な人材が、企業の内部に入り込み解決に向けて実働してくれるということです。例えば、国内外の著名な大企業に所属してさまざまな事業で実績を残している方々も多く登録しています。それも、本人の自己申告だけで判断することはなく、直接ご面談し、能力やご実績だけでなく性格や所作まで含めたカウンセリングを行います。さらにプロジェクトベースでの実績、顧客満足度の情報を追加し、当社独自のデータベースを構築しています」(川口氏)

この強みを支えているのが、同社の構築してきたネットワークである。専門家ネットワークは創業2年目にして3000人を超え、いまや日本最大規模。大企業の元役員クラスを中心とした50歳以上の経験豊富なシニアエグゼクティブと、現在、人事、経営、営業、広報などの専門家からなる30~40代の若手プロフェッショナル「ビジネスノマド」の2つに大きく分かれている。

「創業当初は渋谷のサービスオフィスを利用していましたが、そこには現在のようなオープンなシェアスペースはなく、もっぱらクローズドの共用会議室を使っていました。しかし、他の入居テナントの方と予約がバッティングすることも多く、そのためにせっかくのビジネスチャンスを逸するようなこともありました」(荒川麻子氏)

「ビジネスノマドの方々との打ち合わせには、この"シェアワークプレイス"を使っています。ご来社されて、このオフィスを気に入り、当日に会員登録をされる方もいらっしゃいます。ここで仕事や打ち合せをすることで、他のフリーランスの方や顧客先企業の方とのネットワークがさらに拡がることもあり、自然とゆるやかなコミュニティが形成されていくのです」(川口氏)

オープンなシェアスペース

オープンなシェアスペース

良かった点1

  • オープンな"シェアワークプレイス"で偶然の出会いがある
  • 予約なしで使えるため、ビジネスチャンスを逃さない
  • ネットワークが拡がり、ゆるやかなコミュニティが形成される

コミュニティづくりやセミナー開催などビジネスエアポートを最大限活用

丸の内という立地に魅力を感じ、ビジネスエアポート丸の内へ移転することになった同社。移転直後の同年3月2日、東急不動産と連携して「ビジネス系フリーランスのためのコミュニティづくり」を支援する取り組みを開始した。

「こうしたコミュニティは、従来は仕事を通じて形成されるものでしたが、それでは範囲も限定的で、拡がりも期待できません。社外のセミナーや勉強会に参加するという方法もありますが、不特定多数の参加者たちの中から目的とする特定の相手とのつながりをつくるのはなかなか困難です。そこで、ピンポイントで特定の対象とつながることのできる場を提供する必要がありました」(川口氏)

その一方で、社員の採用も積極的に進めている。代表である久保田雅俊CEO以下の創業メンバーは、戦略コンサルファーム出身者や大手人材サービス企業トッププレイヤーを中心に多彩なキャリアを持つ。創業時に8名だったメンバーも、正社員だけで26名に達している(2015年8月現在)。平均年齢は約29歳。継続して月に1~2人ペースで増員しており、来春には新卒採用も予定しているという。

「人数が増えると社員同士でコミュニケーションをとることが難しくなってきます。そこで、会社から社員全員にお弁当を支給し、ランチ時間を合わせて、近くの皇居外苑で食べるなどメンバー同士の親睦を深めています。意外だったのは、業務上のコミュニケーションも深まったという感想が多かったことです」(荒川氏)

現在、オフィススペースの3部屋を契約して26人分の席、会議用のスペースを確保すると同時に、本社を置く丸の内店から徒歩圏にあるビジネスエアポート東京、さらに同青山店・品川店のスペースを活用。これにより、社員だけではなく、同社を通して活動している数百名のビジネスノマド達と相互に連携することが可能になり、雇用に縛られない自由な働き方を実現している。

「今回の移転に際して、いろいろなシェアスペースを見て回りましたが、その中で、このビジネスエアポート丸の内の"シェアワークプレイス"がもっとも当社のコンセプトに近かったこと、連携先として同スペースを運営している東急不動産さんが弊社の事業に共感頂いたことが、移転先選定の決め手の一つになりました」(川口氏)

渋谷本社時代にもオフィスの近くにあるシェアスペースなどを利用していたが、シニア人材はもとより、エンジニアでも上流工程を手がけるような人材にとっては、丸の内のようなビジネス街の中心地で、落ち着いて仕事ができる環境のほうが好まれる傾向にあったという。

「これからの企業経営は、外部人材の有効活用が前提となってくると言われています。しかし新しいサービスが故、当社の提供するサービスは、始めはお客様から『わかりにくい』と言われることも多いのですが、一度ご理解いただくと、私たちの世界観に共感していただけることが多いのです」(川口氏)

企業やフリーランスからより一層の理解と共感を得るために、同社では月に1~2回、さまざまなテーマでセミナーを開催しており、毎回40~60人ほどの参加者を集めているという。

「私たちは『企業や場所にとらわれない働き方』を提案していますが、物理的なコミュニティづくりの場所は必要です。その意味で、ここのビジネスエアポートはかなり理想に近い環境だと思っています」(川口氏)

良かった点2

  • 雇用に縛られない自由な働き方を実現できる
  • ビジネス街の中心地で、落ち着いて仕事ができる
  • 将来的にも必要な、物理的なコミュニティづくりの場所