株式会社エウレカ

2015年2月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

広いオープンスペースを設けて、オフィスを「働く場所」から「創造空間」へと変貌させた

スマートフォンアプリの企画・開発を行う株式会社エウレカ。その社名はギリシャ語の「わかったぞ!」に由来する。約2年前にリリースしたFacebookを活用した恋愛・結婚マッチングサービス「pairs」はすでに全世界で200万人の会員を集めている。2014年6月にはカップル専用アプリ「Couples」をリリース。ダウンロード数は8ヵ月で190万人を突破。今回は代表取締役CEOの赤坂 優氏に働きやすさの観点で設計したオフィスについて語っていただいた。

プロジェクト担当

赤坂 優氏

株式会社エウレカ
代表取締役CEO

赤坂 優氏

エウレカ

はやわかりメモ

  1. 発見のある毎日を送りたい。そんな思いで社名を付けた
  2. 広告代理と受託開発からスタート。様々な経験を経て夢を実現した
  3. 起業時はレンタルオフィスから。あえて渋谷を避けてオフィスを探した
  4. 無機質なオフィスにはしたくなかった。結果、木と煉瓦でリラックス効果を創造する
  5. オフィス移転の効果は「驚き」「感動」が刺激につながること

発見のある毎日を送りたい。そんな思いで社名を付けた

社名である「エウレカ」。これはアルキメデスがお風呂で浮力の原理を発見したときに叫んだ言葉とされる。ギリシャ語で「わかったぞ!」という意味だ。

「1年間の価値について考える時、当たり前ですが1歳の人にとっては1年分の1年です。だけど60歳の方にとっては60年分の1年。同じ1年でもその濃さが全く違うと思います。僕も子供のころは一日が長く感じていました。それは多分毎日「新しい発見」があったからだと思います。大人になっても発見のある毎日を大切にしたい。そんな思いから社名を付けました」

同社の企業理念は「discover the undiscovered」。イノベーションの定義を「未来にある普通のものを作ること。」としている。ここからエウレカのカルチャーが誕生した。このカルチャーは行動規範という形で社内に浸透している。

  • 求められるものを知る。
  • 楽しさは、結果の中にある。
  • ステージは常に世界。
  • 100-1=0
  • 稼ぐことはカッコイイ。

一部抜粋が上記のとおり。

このようなカルチャーを根底に、全く新しいスマートフォンアプリが生まれた。現在、同社は恋愛・結婚マッチングサービス「pairs」とカップル専用アプリ「Couples」を主軸に事業展開をしている。

広告代理と受託開発からスタート。様々な経験を経て夢を実現した

「今までにない新しいサービスを提供したいという思いで会社を設立しました。しかし起業した当時は私と取締役の2名のみ。資金が貯まるまではとコツコツと営業ビジネスで売上をあげてました」

その後、ある程度の見通しが立ち、エンジニアを少しずつ採用していき、受託事業を立ち上げ、ひたすら他社のアプリ開発をしていた時期もあった。納品日を厳守し、とにかくモノをつくる。振り返ってみるとその当時の経験やノウハウが今の自社サービスに活きているという。そうして2年前、本来の目的であった自社サービス提供を実現する。

「まず2年前に提供したのが『pairs』というアプリです。これはFacebookを使った全く新しい恋愛・結婚マッチングサービスとなります。Facebookの登録情報を活用することで匿名性や機密性の高いサービスを実現しました。さらに10人以上のFacebook友達がいないと入会できないという規定にし、免許証などで身分確認もしています」

気になる相手に「いいね!」をする。相手からも「いいね!」が貰えればマッチングが成立。その相手とメッセージ交換などで親交を深めていき、お互いが気にいれば実際に会ってみる。そのフローはいたってシンプルだ。しかし、まだ日本ではいわゆる「出会い系」と勘違いされることも多い。

「日本ではまだまだネガティブイメージが強いのですが、海外では『Online Dating Service』とカテゴリーされて、安心・安全なマッチングサービスとして成立しています。この安心で安全という部分にこだわり、インターネットでのマッチングという新しい文化を作っているのが「pairs」です。言うなれば現代風の結婚相談所。ですからこのサービスの目標は出会いではなく結婚になります」

もう一つの「Couples」は恋人や夫婦といった全てのカップル達が思い出づくりのために利用するアプリだ。「Couples」の誕生は、SNS※の急速な普及に起因している。

「例えば10代、20代の世代は、特定の誰かと会話を楽しむためにSNSを使っているわけではありません。大体がグループトークを使用しています。いろいろなグループに所属しているため未読のものも出てくる。でも親友や恋人とはすぐに連絡を取りたい。そうすると自然にクローズの環境が必要になると思ったのです」

機能は、「トーク」「アルバム」「カレンダー」「プロフィール」に分かれており、2人のヒストリーとして保存される。今後は機能を追加し、カップルに対してデート情報も配信。デート情報誌の役割も果たせるようなサービスも充実させる。

※SNS:人とのつながりを促進・サポートするコミュニティサイト。

起業時はレンタルオフィスから。あえて渋谷を避けてオフィスを探した

「設立は2009年7月。恵比寿のレンタルオフィスからのスタートでした。隣の部屋の音が聞こえるような部屋で、『働くことが楽しい』という場所ではなかったですね」

それでも途中で営業系の採用を行い4名の増員まではそこに留まった。

「その後、もう1名採用することになり、さすがに5名は入らないと。営業成績に結果が出ていたこともあり、思い切って南麻布に移転しました。駅から徒歩15分のオフィスビルです」

結局、そこも手狭になり三田のオフィスビルへ移る。そして最終的に現在のオフィスに移転することになる。

「三田のオフィスは100坪くらいの広さだったのですが、すぐに手狭になってしまうことは目に見えていた。それならば早めに計画し、移転するほうがいい結果につながるだろうと考えました」

そんな理由から移転を計画する。恵比寿から始まり、南麻布、三田。そして2013年11月にまた恵比寿と。IT企業が集積していることに反発するように渋谷を避けてきた。

「過去のオフィスの多くは駅から少し離れた場所でした。共通して言えるのは通行量が少ないこと。ざわざわしている街にいたくないという気持ちがありました。集中できないわけではないのですが、僕らの生活をかき乱される気がして。仕事に没頭したいという思いが強すぎたのかもしれませんね」

創業以来「ビルの見かけ」や「環境」には全くこだわってこなかった。働く場所なんてどこでもいい。常にそんな強い思いが頭にあった。しかし今回の移転では大きな方向転換を行うことになる。

「会社が成熟していくにつれて採用活動もより積極的に行う必要が出てくるし、取引企業も増えていく。そうなるとオフィスの雰囲気が信頼性の一部になることもあると考えました。加えて次第に多くの個人情報を扱う機会が増え、セキュリティ面をより一層重視する必要がでてきました。そうして当社にとって初めて駅の近くの本格的なオフィスビルに入居することになったのです」

飲食店が多いこと、駅からの距離が短縮されたために一日の時間を有効に使える点、街ゆく若者が多いことによる情報収集量などオフィス立地によって得られるメリットはたくさんあると語る。

「特に事業が自社サービスを展開したことで、『お客様の声を聞く大切さ』の重要性を強く感じています。当社の事業はアプリビジネスですので、飲食店のようにカウンター越しのお客様の声を直接聞くことができません。そのため、人がたくさんいる場所で若者の行動が見える街というのは、マーケティングを考えたときにも意義があると考えています」

無機質なオフィスにはしたくなかった。結果、木と煉瓦でリラックス効果を創造する

移転までの動きは早い。時間と効率を大事にするIT企業ならではのスピード感だ。

「一度決めたらそれからの動きは早かったですね。7月から移転先のビルを探し始めて8月に決定。9月にレイアウトやデザインを固めて9月後半から工事に取り掛かりました」

旧オフィスでの課題は何といっても会議室の少なさだった。

「社員からの不満はそれほど多くありませんでした。しかし、会議室や打ち合わせスペースが少なく、効率が悪いという課題が生じていました。それで内装デザインの会社と打ち合わせを重ねてコミュニケーションスペースの割合を多くすることにしたんです」

それでは具体的にオフィスの特長的な部分について紹介していこう。

エレベーターを降りると一面に木と煉瓦でつくられた多目的スペースが現れる。

木と煉瓦でつくられた多目的スペース

木と煉瓦でつくられた多目的スペース

木と煉瓦でつくられた多目的スペース

「白い無機質なオフィスは『オフィス=働く場所』のイメージにつながっているようで嫌いでした。僕らの事業にふさわしい『創造する空間』というイメージにできないかなと。頭を悩ませた結果、柔らかさと温かさを兼ね備える『木と煉瓦』をベースとしたデザインになったのです。ここは基本的には来客用のベンチとして備えましたが、もちろん社員が仕事をしてもいいエリアになっています」

壁には社名の由来と関係する「アルキメデス」を肖像画のペイント画。そのほか6名が使用できるカウンター席とソファが配置されている。

「集中作業用としてカウンター席を用意しました。夕方になるとリフレッシュしたい社員が多く利用し、稼働率が高くなります」

エントランス内の多目的スペース

エントランス内の多目的スペース

カウンター席

カウンター席

ソファゾーン

ソファゾーン

エントランスを抜けると応接室と執務室とに分かれる。応接は2室に増やした。どれも木とアンティークな家具でまとめた落ち着きのある雰囲気に仕上がっている。

「移転前と比べると大きく改善できました。奥には簡単な打ち合わせ用のスタンディングデスクとミーティングデスクを用意。それでもまだまだ足りないですね。スタンディングデスクは社員からの要望でつくったものです。今後もこういう取り組みは常に行っていきたいと思います」

執務室入口

執務室入口

執務室

執務室

応接室

応接室

ミーティングデスク

ミーティングデスク

スタンディングデスク

スタンディングデスク

オフィス移転の効果は「驚き」「感動」が刺激につながること

今回のオフィスは、途中経過を見せずに移転日に初めて社員に公開したという。

「社員の反応が見たくて。想像していた以上に歓喜の声が聞こえてきて嬉しかったですね。その時の『驚き』や『感動』が今後のモチベーションアップのために重要だと考えています。また、モチベーションだけではなくコスト意識もしっかり持ってもらおうと、このオフィスに移ってどれだけ固定費が上がったかをオープンにしました。コストの説明は、会社設立時からずっと続けています。お金の大切さを意識していてほしいので、どこにどのくらい使われているのかを知って欲しいと思って」

「オフィスって、企業文化を代弁していると思うんです。『こういう人たちが働いているんだろうな』って思わせるような。だからこれからも当社のオープンさが伝わるようなオフィスを構築していきたいと思っています」