- グリーのノウハウを結集して誕生したゲーム運営特化型企業
- ファンプレックスとしてのアイデンティティの醸成と働きやすさの追求を目指して
- 非常にタイトなスケジュールの中で初めてのオフィス移転を担当した
- オフィスというハード面の変化によって「ファンプレックスらしさの醸成」というソフト面の変化も
- オフィスコンセプトは「機能性とクリエイティビティの共存」
- スタッフの声を活かした環境改善や360°パノラマツアーなどより開かれたオフィスに
ファンプレックス株式会社
2018年1月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
日本のソーシャルゲームを牽引してきたグリー株式会社。そのノウハウを結集し、ゲーム運営特化型の100%子会社として誕生したのがファンプレックス株式会社だ。旧オフィスは、グリー本社内の一部を使用していた。このたび別エリアに新オフィスを設けることで、いくつもの課題を解決したという。今回の取材では、移転の目的や新オフィスの特長、コンセプトについてお話を伺った。
グリー株式会社
法務総務部
組織法務総務グループ
ファシリティマネジメント
チーム
アソシエイトマネージャー
野長 兄一 氏
グリー株式会社
法務総務部
組織法務総務グループ
ファシリティマネジメント
チーム
熊澤 恵梨 氏
ファンプレックス株式会社
コーポレート部
経理・労務管理チーム
マネージャー
梅北 裕美 氏
ファンプレックス株式会社
コーポレート部
人財・組織開発チーム
広報 / 採用担当
鈴木 理紗 氏
リフレッシュエリア
ファンプレックス株式会社は、ソーシャルゲームのパイオニアであるグリー株式会社が培ってきたノウハウを結集して、ゲーム運営特化型の企業として誕生した。
「設立は2015年のことです。他社さまが開発されたゲームを買い取り長期的な運営を行っています」(梅北裕美氏)
「変化の激しいゲーム業界の中で、『開発時』と『運営時』に求められる能力がまったく違うことがゲーム運営専門の会社を設立した理由の一つです。ゲーム運営に特化することで、ゲームが持つ資産価値の最大化に努めることができるのです。現在運営しているゲームタイトルは18になりました」(梅北氏)
同社の社名には、業務で構成されるプランナー、デザイナー、エンジニア、ビジネスの4つのFunction(機能)が集まり、それらがComplex(複合)することで更なるFun(楽しさ)を提供する。そんな意味が込められているという。
「今年で創業3年目、それに本社オフィスの開設が重なったことを機にコーポレートメッセージを一新しました。それは、私たちが提供できる価値、すなわちファンプレックスらしさを明文化し、社外のすべてのお客様に向けて私たちがお約束する『FNP Quality』と、社外のメンバーとしてお迎えしたい人物像を表現した『FNP Color』を掲げています」(鈴木理紗氏)
■FNP Quality(ファンプレックスクオリティ)
「CHANGE」
進化・開発・改善・・・。
「攻め」の姿勢でサービスがより良くなるために全力を尽くします。
「TRUST」
障害を最小限に、顧客満足度を最大限に。
全てのお客様の信頼を守ります。
「LOVE」
ゲームが好き。エンターテインメントが好き。
私たちの運営は、ゲームへの愛から始まります。
■FNP Color(ファンプレックスカラー)
1. 成長に貪欲
2. 自ら考え、自ら動く
3. プロフェッショナルの集合体
4. 誠実・感謝・思いやり
5. 楽しむことを忘れない
ファンプレックスの移転は、「同社が六本木ヒルズ森タワーで使用していた400坪分の家賃負担の軽減に加え、オフィスコストを抑制しながらもファンプレックススタッフがファンプレックスらしい働き方が出来る事、アイデンティティを醸成する事を目的に移転を決意しました。現スタッフ数である200名が余裕を持って入居できる面積、そしてスタッフのモチベーションが上がるようにグリー以上のロケーションとなるビルを希望していました」(梅北氏)
さらに移転先には、災害や大事故などの緊急事態に備えてBCPも念頭においたという。
「首都圏内にグリーのオフィスは六本木ヒルズ森タワーしかありません。今後、どのような災害や事故が起こるかは分かりませんが、常々、本社の近くにバックアップ拠点を設けることはとても有意義なことだと思っていました。実は、本社近くの高機能ビルにグループ会社が入居したことはファシリティ担当者にとって安心できることなのです」(野長兄一氏)
今回のオフィス移転プロジェクトは、過去グリーの移転計画を手がけてきたグリーのファシリティマネジメントチームと、ファンプレックスのコーポレート部との合同チームで行われた。
「今回はPM会社を使わず、グリーのファシリティマネジメントチームである熊澤が担当しました。熊澤自身、移転プロジェクトは初めてのことでしたがCADに精通していることもあってアサインしました」(野長氏)
移転が正式に決まったのが2017年8月。それから急ピッチで物件を探し始める。
「以前からお付き合いのある三幸エステートさんに相談。すぐに営業担当の方から当社の条件にマッチしたオフィスビル情報が届きました。そして渋谷を中心に5棟のオフィスビルを見学することになったのです」(熊澤恵梨氏)
「最初にご案内いただいたビルはフロアが分かれていましたが、とても雰囲気のあるビルでした。ただし他のビルとの比較もしたかったので、その他の候補となるビルも見せていただきました」(梅北氏)
「見学していく中で、代表の下村からワンフロアのビルのほうが使いやすいだろうと結論が出ました。下村にとっても、こうして色々なビルを見学するのは初めてのことで、大きな経験になったと言っていました」(鈴木氏)
「原宿に立地するオフィスビルを前向きに検討しエントリーをしたのですが、人気のあるビルだったためすぐに結論が出ない状態でした。ちょうどその時、以前見せていただいたビルから希望していたワンフロア500坪の空室情報が飛び込んできたのです。このビルでしたらBCPの面でもクリアしますし、スタッフのモチベーションも高まるに違いありません。すぐに契約締結に向けて準備を進めました」(野長氏)
「グリー本社のある六本木から近いのもいいですね。当社の業務を考えると、今後も頻繁にグリーとの打合せが予想されます。ここでしたら移動時間のロスも少なくてすみますから」(梅北氏)
入居先が決定したのが2017年9月。入居予定日を考えると10月には内装工事を着工しなくてはならない。非常にタイトなスケジュールだ。
「作業の順番としては、まずデザイン会社から『ざっくりとしたレイアウト』を提出いただき、それを『分析・検証』し、『レイアウトの確定』をする。そして最後に『微調整』を行っていきました」(熊澤氏)
「『分析・検証』では、普段使用しているグーグルカレンダーの予定表から、当社のスタッフが使用した会議室の割合、人数、時間帯などのデータを数値化してまとめました」(梅北氏)
「分析結果から、10名前後の会議が多いことが分かりましたので、あえて4~6名の会議室はつくりませんでした。そして一つのプロダクトごとに週に1回集まる会議があるため、最大で40 名が入れる部屋を用意したのです」(熊澤氏)
「最初に分析と検証がしっかりと出来たのはよかったです。あとはどのようにレイアウトを組み立てるかでした」(熊澤氏)
そして新オフィスのオープン日は年末年始の慌しさを過ぎた1月15日と決まった。
レイアウトをある程度確定させ、微調整を行いながら実際の工事に入っていく。一つひとつのファシリティの意味や目的を確認しながら、細かな家具の選定まで綿密に打合せを重ねた。
「今回は、あえてグリーのイメージから離れるように意識しました。移転の目的にもあるようにファンプレックスらしさを全面に出せればいいと思ったのです」(熊澤氏)
「スタッフから要望があったのは会議室や打合せスペースの数や広さくらいです。ただ、代表の下村のオフィスに対するこだわりがたくさんあって。カーペットの素材や色、家具・什器を確定させるために、下村自らが多くのメーカーのショールームに足を運びました」(鈴木氏)
今回採用した機能が良質な結果を生んだ場合、本社や他の支店でも活かしていく考えだ。
「グリーの本社オフィスも、入居してからずいぶんと時間が経過しています。機能が古くなり、改善の余地が求められている部分もあります。ですから今すぐにグリーではできないことを、ここのオフィスで実験的に採り入れてみようと思いました」(熊澤氏)
「そこでワーカーが自由に働く場所を選べる仕組みであるABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)を採り入れました。新オフィスは、執務エリアがコア側にあって、その周囲を会議室で囲んでいます。そのため自分の執務スペースからどこの方向にも打合せができる環境を揃えました。もちろん用途によって、オープンな環境とクローズな環境を使い分けられます。前々から、チームやプロダクトが違うのに画一した環境で働くのは正しくないのではと感じていました。そこでABWによって、どのような成果が出るかを見てみたいと思ったのです」(野長氏)
それでは執務室内を見ていこう。エントランスはグリーと全く印象が変わるデザインとなる。
「ここはアロマを使って心地よくしています。目的はお客様をおもてなしすること。五感を使って楽しんでもらえることを意識しました」(鈴木氏)
このエリア内に会議室は4室。そのうちの2室は内側の執務室からも入室が可能で、来客のないときには社内用会議室として使用することもできる。
「どれも10名が入れる大きさで、色違いのホワイトボードを備えています」(梅北氏)
セキュリティエリアを通過すると、スタッフのリフレッシュエリアとなる。
「ビルの周辺では飲食店が限られているため、お昼の時間は会社の福利厚生でお弁当を安く提供しています。リフレッシュエリア内の席で食べるのですが、中央の椅子席だけで80席用意しました」(鈴木氏)
「もちろんランチだけではありません。全員を集めての朝会をしたりプロジェクタを使っての説明会に使用したり。アイデアを練るためにゆったりとソファ席を使うスタッフもいます」(梅北氏)
エントランス
会議室
リフレッシュエリア全景
ソファエリア
ソファエリアは一段上がっているため、プロジェクタを使って説明を行うときは、この段差を椅子にする人も。一段上げたのは、リフレッシュルーム内に「高さ」という変化が欲しかったからだという。
「反対に、この一段上げた部分がステージになることもあります。色々な使い方を想定してレイアウトを考えました。また、夕方は照明を落として雰囲気を変える工夫もしています」(熊澤氏)
リフレッシュエリア奥には4つの集中ブースが置かれている。これはグリーのオフィスにもない新たな機能となる。
「周囲から見られたくない業務に適していて、落ち着いて仕事ができるのでしょう。使用頻度は高いですね」(梅北氏)
ソファエリアの段差
集中ブース
2番目のセキュリティゾーンをクリアすると執務室への入室が可能となる。
「執務室はすべて固定席です。周囲のオープンスペースは予約の必要がありません。こちらの思惑通りに頻繁に使われていますね」(熊澤氏)
「パーテーションがなく、見通しがいい部分もスタッフから好評です。椅子に取り付けられたハンガーはかなり長さのある上着でもかけることが可能です。それによってハンガースペースの削減につながっています」(鈴木氏)
「オープンスペースはカジュアルな打合せを目的にしているため、それぞれに変化をもたせています。必ずモニターをつけていますので社内プレゼンも盛んなようです。今後は部署や組織を問わずに横断的に活用してほしいと思っています」(熊澤氏)
もちろん用意したのはオープンスペースだけではない。
「クローズの会議室も用意しました。アルファベットのAからGまで7室あります。部屋のネーミングは "もしなくても生きていくには事欠かないが、あった方が人生が豊かになるもの" というコンセプトのもと、代表の下村自らすべて決定しました。例えば、AはAnime、BはBookというように名付けています。ちなみに役員会議がよく行われるGの名称はGame。Gameで一番コアな話が行われているのです」(鈴木氏)
「AnimeとBookは、上司と部下が1対1で行うミーティング「1 on 1」の専用部屋となっています。毎週、全員が行うため非常に稼働率が高いですね」(梅北氏)
「機能性を保ちつつ、デザイン性を高め遊び心のある空間に仕上げました。このオフィス内ではどこで仕事をしても構いません。ですから早く『自分の好きな場所』を見つけてほしいですね」(熊澤氏)
執務室全景
オープンスペース①
オープンスペース②
オープンスペース③
社内用会議室
実は、「1 on 1」専用の部屋というのは、グリー本社には存在していない。
「コミュニケーションを普段から取り合っていれば問題ないのですが、チャット文化なので、問題点をためることがないように定期的に行っています」(鈴木氏)
「『1 on 1』は、単なる業務報告だけではなく、将来的な目標やプライベートの悩みなども相談できる場としています。当社にとっても重要なミーティングに位置付けており、新オフィスになることを機に専用の部屋があったほうが使いやすいということでつくりました」(熊澤氏)
移転プロジェクトに参加したファンプレックスのコーポレート部であるが、移転後はオフィスの運営という業務が新たに加わることになる。
「今までは、グリーのファシリティチームがオフィスの運営を行っていましたが、これからは私たち自身で細かい部分に目を向けていかなければなりません」(鈴木氏)
「すごいプレッシャーを感じますね。スムーズなやり方だけを教わるのではなく、失敗談なども含めてレクチャーしていただいています。まだ始まったばかり。スタッフに対するオフィスサービスが行き届いていないことも実感していますので、アンケートや要望書を活用しながら改善計画を考えていこうと思っています。ちょうど移転したばかりで、オフィスに関心が高いのか、たくさんのスタッフから意見をもらっているところです」(梅北氏)
新オフィスは、今後360°パノラマツアーを使ってWebでも公開していく予定だ。それは入社希望の応募者をはじめ、同社に興味を持ったすべての方に働く環境を知ってもらいたいという思いからだ。
「今後、人事採用をしていく中で、働く環境というのも選択肢の一つになると考えています。直接オフィスにお越しいただく前の段階から、360°パノラマツアーでなるべく具体的にイメージを掴んでいただければと思います」(鈴木氏)
「また、僕らのオフィスを他の会社の方が見て参考にする。そして改善したオフィスがつくられる。そのオフィスを見て今度は僕らが自社のオフィスづくりに役立てる。そんな相乗関係が生まれればいいとも思っています」(野長氏)
「このオフィスは、グループ会社のサテライト的な役割も考えています。難しい設定なしで、グリーグループの社員が立ち寄って仕事をしていく。その交流から斬新なアイデアが生まれる。そんなグループの力を最大限発揮できるようなオフィスにしたいですね」(梅北氏)