- 「人と人をつなげる」をミッションに掲げ、会社を設立した
- さらなる増員。移転先を探すが結果として内部増床を決断する
- オフィスプロジェクトを組織し社員からの要望をまとめる
- 人と人とのつながりを重視する企業のコミュニケーション戦略
- リニューアルプロジェクトが終了 次の課題に向けて
株式会社ガイアックス
2014年10月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
ソーシャルメディアの構築・運営・モニタリングなどで業界をリードする株式会社ガイアックス。次々と新規事業を発表し事業を拡大。それによる人材採用も積極的だ。増員によるオフィスの手狭感という課題には館内増床で対応。それを機にオフィスの全面リニューアルを実施した。今回の取材ではコミュニケーションにこだわる企業ならではのオフィスの工夫についてお話を伺った。
株式会社ガイアックス
管理本部 総務部
緒方さやか氏
株式会社ガイアックス
広報
河村曜子氏
6階セミナールーム横の「ラウンジ」。このスペースから自由な発想が生み出される
創業当初から企業理念に「Empowering the people to connect(人と人をつなげる)」を掲げてきた株式会社ガイアックス。
人と人が考えていることを通わせるコミュニケーションを促進させることをミッションとし、時間・空間・立場を超えることができるソーシャルメディアを主軸に事業を展開してきた。
「ソーシャルメディアによって、無縁に感じていた人たちがつながりを持ち、多様な知識や視点を共有することができます。そういったつながりが社会全体に広がることにより、さまざまな価値を生み出すことができます。だからこそ弊社ではソーシャルメディアに着目し、ソーシャルメディアでの場づくりや支援を行っています。」(緒方さやか氏)
「代表者である上田 祐司は、色々な経験を積むためにあえて起業支援事業の会社に入社し、2年後の1999年に会社を立ち上げたと聞いています」(河村曜子氏)
渋谷区のビルの1室から数人でスタート。その後、渋谷区三丁目(2000年3月) → 渋谷区道玄坂(2000年8月) → 渋谷区二丁目(2001年9月) → 渋谷区二丁目(2005年2月) → 品川区西五反田(2009年4月) → 館内増床(2014年3月)と、渋谷を中心に頻繁に移転を行ってきた。
「2009年の五反田への移転。その理由は3つあります。一つは増員計画の中でオフィスに手狭感が出てきたこと。二つ目は渋谷駅前の立地で大変便利だった分、更新時に条件変更の打診があったこと。そして点々と分散していたグループ会社も同じビル内に入居させたいと思ったことです。山手線沿線を中心に条件に合うオフィスを探した結果、今の五反田のオフィスビルに決定しました」(緒方氏)
「その当時から国内出張も多くなり、新幹線や羽田空港へのアクセスを考えると五反田という選択は間違っていなかったと思います」(河村氏)
新規事業の開始などで社員数は増加の一途をたどる。そこで五反田に移り5年後の2014年、オフィス移転の検討に入る。
「とにかく旧オフィスは一人あたりのスペースが狭くて。オフィスのことを調べていくうちに『気積』という言葉を学びました。これはオフィスを平面だけで判断するのではなく、立体として十分な空間を確保するための規定のことです。事務所衛生基準規則に準じようとすれば、執務室内の労働者一人について10立方メートルより大きくしなければなりません」(河村氏)
手狭さからの解消。まずはワンフロア面積の広いオフィスビルを探したという。
「ワンフロアに全社員が入居できるという状況にこだわりがありました。フラットで風通しの良いオフィス。渋谷時代はずっとそんな社風を象徴するようなオフィスでしたから」(河村氏)
「候補物件探しと現在の契約状況の確認。それが2013年8月のことです」(緒方氏)
色々な物件を検討した中で、最終的には同ビル内での増床となった。
「ワンフロアという希望は叶えられませんでしたが、フロアごとに用途を分けることで不便さを感じさせないようにしました」(緒方氏)
増床後の構成は、5階と8階がガイアックスの執務スペース、6階が受付と会議室・セミナールーム、7階がグループ会社のフロア、それに加えて2階の一部に休憩スペースを配置している。従前、応接室は全部で7室だったが、増床後は9室に増やしセミナールームも広くなったという。
ビル内での増床と結論を出したのが10月。その後すぐに、内装デザイン会社のコンペを行う。8社に声を掛けて提案を聞いた上で3社に絞り込む。最終的に2回目のプレゼンで依頼する会社を決定させた。
「各社様とも予算に関してはそれほどの差はありませんでした。選んだ決め手は、過去のデザイン事例が当社の思い描いていた雰囲気に近かったこと、提案されたコンセプト案に違和感なく馴染んだことです」(河村氏)
デザインコンセプトは「インストール」。自分たちの価値観を共有するという意味がある。
「当社のカルチャーで "いつもの場所" というのがあります。何の変哲もないただの棚の上なのですが、『いつもの場所にお土産を置いておきました』というように社内の人間に伝わる場所になっています。そこで、"いつもの場所" に備品置き場や複合機、プリンタなどを集約して、『そこに行けば何でも揃う場所にしよう』という提案を頂きまして。当社の文化を大事に考えていただいている点がすごく印象深かったですね」(緒方氏)
もう一つのコンセプトが「Nest(巣)」。帰ってきたくなるオフィスだ。
「6階の受付フロアの前の壁に"仕事に対する価値観"を記入した全社員分の木製の定規が貼ってあります。一人ひとりの価値観を皆で共有し、かつ『巣』のように帰ってきたくなるオフィスをイメージしました」(河村氏)
ガイアックスの代表的なカルチャーの一つとなっている "いつものばしょ"。価値観を共有する場となっている
個々の価値観を記入した"ものさし"でかたどられた"巣"。受付フロアの壁一面に飾られている
- Concept -
帰ってきたくなるようなオフィス
ガイア理論にも通ずる「人と人とのつながり」を強く感じられる
仲間であり家族みたいな関係性を(巣)で表現
ぬくもり、癒しを感じられるインテリア
- Tool -
Scale
価値観=ものさし
自分たちの価値観をインストールする
「オフィスのリニューアルに関しては、全社からプロジェクトメンバーを募りました。希望者や上司の推薦、総務からアサインした人までさまざまです。10数名の協力を得ました。プロジェクトメンバーが集まったところで、オフィスの満足度調査を実施。社員の不満や要望を取りまとめていきました」(河村氏)
「そのほか、会議室の利用状況調査を行いました。どの時間帯に何名で使用しているのか、来客なのか社内ミーティングなのか。データを分析し、どれくらいの規模の会議室を何室用意すれば一番効率がいいのかを検討しました。その結果、当社では8人用会議室よりも6人用会議室の方が利用されていることがわかり、その分析結果をリニューアル計画に生かしています」(緒方氏)
それでは具体的にオフィスを紹介していこう。
まず受付のある6階だ。6階は来客者のためのフロアで、そのほか会議室とセミナールームが配置されている。
6階受付。ウェイティングスペースには北欧製の家具が置かれている
「先ほどお話しました利用状況調査に基づいて6人用会議室を増やしました。以前に比べて予約がとりやすくなったと好評です」(緒方氏)
「会議室の名称もspring、summerというような覚えやすい名前を付けています。小さい会議室に限ってはプロジェクトメンバーで名前を募り、カーペットの色も名前に合わせました」(河村氏)
「社員にも愛着がでてきたように思いますね。『次はflowerで会議だね』というような会話が聞こえてくると嬉しくなります」(緒方氏)
「当社は内部打合せが多いのも特長です。ですから廊下側からでも判別できるように、社外の方との打合せの場合は会議室の扉の電気を点けるというルールにしています」(河村氏)
社員からの要望で生まれたものはまだまだある。例えばスタンディングスペースなどもその一つだ。
「立ったまま会議を行うと冗長せずに要点だけで終わるという考えから、各階に設けています。会議室での打合せが終わった後の確認業務など、結構使用頻度は高いですね」(緒方氏)
「そのほか会議の合間などにちょっとした作業ができるラウンジを受付横のスペースに新設しました。食事をするためのスペースではありません。あくまでも自由に仕事をするためのスペースです。有効に活用されているようです」(河村氏)
社員からの要望で生まれたウェイティングスペース。使用頻度は高い
「ラウンジ」では社内のちょっとしたパーティも開催される
このラウンジの扉を開き、セミナールーム(ルーム1・ルーム2)と合わせることで100名程度の収容を可能とする。大掛かりな外部セミナー以外にも、全社員での定例会議や新入社員合同説明会など、内部の用途でも頻繁に使用している。
執務室は5階、7階、8階。そのうち7階にはガイアックスグループの株式会社電縁が入居する。
「ガイアックスは5階と8階を使用しています。5階と8階につながりを持たせるためにレイアウトは同じにしました。特長はオープンスペース。執務室内にミーティングスペースを増やしました」(河村氏)
「フリーアドレスを導入していますので各自プロジェクト単位で動いています。IP電話に変更したこともあり移動の範囲が広がりました。社員同士のコミュニケーションが以前にも増して活発になったように感じますね」(緒方氏)
フロア奥には再整備した仮眠室を配置した。
「男女別の仮眠室で、それぞれ3名の仮眠が可能です。弊社では24時間対応のサービスがあるため、仮眠室は旧オフィスにも備えてありましたが窓も空調もなくあまりいい環境とはいえませんでした。ここの改善も社員の声が反映されています」(河村氏)
さらにオフィス内の椅子は全て買い換えたという。
「業務効率や体の疲労に一番影響を与えるのが椅子ではないかと仮説を立てまして。全て新調しようと。プロジェクトメンバーで約30種類の椅子から、8種類の椅子を選択。全社員の人気投票で決めました。椅子の試乗会が社内の一大イベントとなりました」(緒方氏)
そして2階の一部が休憩室「Cafe Zoo」となる。
「ここは当社のデザイナーがデザインしています。飲食も自由ですし、テレビを見ても構わない。あえて業務以外のことを行う部屋としてつくりました」(緒方氏)
24時間対応のサービスがあるため必要な仮眠室。今回大きく改善された
2階の一部に配置された休憩専用の部屋「Cafe Zoo」
実際のオフィスリニューアルプロジェクトは完了した。これからのオフィスの運用は個々の使い方次第となる。
「もちろんルールづくりやメンテナンスは総務で行います。しかしこれからのオフィスを良くするのも悪くするのも社員の使い方次第といえるでしょう」(緒方氏)
「これだけ時間をかけて関わったので愛着がありますし、汚れていたら拭く、曲がっていたらまっすぐに直す、といったことは心がけるようにしています」(河村氏)
そういう考えは、実際にプロジェクトに関わった人以外にも浸透しているという。
「せっかく綺麗になったのだからこの状態を保っていこうと言う社員が増えています。その声は周りを巻き込み徐々に広がっているようです」(河村氏)
動線がよくなったことにより社員同士のコミュニケーションがとりやすくなった。かつては物が溢れていたオフィスだったが、リニューアルを機に無駄な物を捨て、業務に集中できる環境になった。その結果、意外にもオフィス取材を受ける機会も増えたという。
「そんなオフィスリニューアルの効果をずっと継続していきたいですね」(緒方氏)