ギークス株式会社

2014年3月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

今回の移転プロジェクトの目的は社内外に向けた企業メッセージの発信

2007年に設立後、フリーランスネットワーク事業を主軸に事業を展開してきたギークス株式会社。2013年1月に渋谷エリアでオフィス移転を行った。この移転は面積の拡張という目的以外に、社内外に向けた企業イメージの発信という狙いもあったという。何を、どのように伝えていったのか、また社員への影響などについてお話を伺った。

プロジェクト担当

曽根原 稔人氏

ギークス株式会社
代表取締役社長兼CEO

曽根原 稔人氏

小幡千尋氏

ギークス株式会社
執行役員
PR・採用戦略本部長

小幡千尋氏

ギークス

はやわかりメモ

  1. 面積は縮小したが、モチベーションは下がらなかった最初の移転
  2. 今回の移転は面積の拡張と企業メッセージを社内外に伝えること
  3. ベースとなる席をつくりながらプロジェクトごとに自由に動く
  4. 語学とプログラミングが同時に学べる採用プロジェクト「ギークスキャンプ」
  5. 口コミパワーを最大限活用。徐々に広がりをみせるギークスファン
  6. 次のステージはもっと開放感を取り入れたオフィスに

面積は縮小したが、モチベーションは下がらなかった最初の移転

「当社の前身は、2001年に共同で設立したクルーズ株式会社(CROOZ,Inc.)になります。ネット系コンテンツ事業で業務を拡大している会社で、当時は通信キャリア向けのモバイルコンテンツ事業とIT人材サービス事業を行っていました。そのころネット業界全体で技術者が不足しており、僕自身フリーランスという形態に可能性を感じていた時期でもあります。また、ちょうど両事業ともに売上規模がほぼ同額であることが、「クルーズ」という企業ブランディングをわかりにくくさせているという意見もあり、分社化への検討が始まりました」(曽根原 稔人氏

その後、クルーズの100%子会社としてIT人材サービス事業を行うギークス株式会社(当時の社名は株式会社ベインキャリージャパン)が誕生した。会社設立は2007年8月。クルーズと同じ麹町のオフィスビルに入居していた。

「2009年に経営陣によるMB0を行い、完全独立を果たしたわけですが、前年の金融危機からの煽りを受け、進行中の業務系システム開発プロジェクトが立て続けにストップするという事態が起こりました。そこでクライアントの見直しを行い、不況のあおりが少ないネット系企業を中心に営業促進をすることにしたのです。そして少しでもランニングコストを下げるために麹町からの移転を検討しました。しかし、単に賃料が安いオフィスに移るだけでは、社員のモチベーションが一気に下がってしまう。いい方法がないかと模索していました」(曽根原氏

「移転エリアは新たに営業対象としたネット系企業が集積していることもあり、渋谷近辺への移転がベストと考えました。そんな中、本当に偶然に見に行ったオフィスビルが新築の10階建で、渋谷駅からの距離も近い。今までに比べ面積は縮小することにはなりますが、このビルならばモチベーションは下がらないだろうと確信したのです。即断でしたね」(曽根原氏

「ここから再スタートする」という代表の強い思いは社員に十分伝わる結果に。社員数も30人弱に減ってはいたが、そこからモチベーションを下げることなく全員で頑張れたという。

今回の移転は面積の拡張と企業メッセージを社内外に伝えること

渋谷への移転後は、フリーランスネットワーク事業を主軸に業績を伸ばしていく。

「フリーランスネットワーク事業というのは、フリーランスの立場で働いているITエンジニアとエンジニアを探している企業とをマッチングする事業です。例えば、企業内で新たなWebサービスを開発したいとする。しかし社内にリソースはない。でも、新規でエンジニアを採用、教育するにはコストも時間もかかる。そんなときに弊社に登録しているエンジニアの中から最適な方を紹介するといった事業です。今では7000名のエンジニアの方に登録していただいています」(小幡千尋氏

社員の内訳としても、約半分がフリーランスネットワーク事業のスタッフとなる。残りの2/3がエンジニア、1/3が管理部門だ。V字回復の兆しも見せ、社員も4年前と比べると倍以上の人数に増えた。そこで再度移転を検討することになる。しかし、今回の移転は増員による手狭感の解消だけが目的ではないという。

「もちろん面積の拡張という必須の目的はあります。ただそれだけではありません。それ以外に "もっとオフィスに自分たちのクリエイティブ色を打ち出そう" という狙いがありました。以前のオフィスは綺麗ではありましたがそれだけでしたから」(曽根原氏

今回の移転は、ビル探しからデザインの構想、移転完了までわずか3ヵ月で完了した。

「現オフィスには2013年1月に移転してきたのですが、ビルを決定したのが前年の10月。それから一部の関係者だけでオフィスコンセプトや内装デザインなどを進めていきました。完成した12月末の時点でも社員に何も伝えていません。ただ一言、『年明けからはこの住所のビルに出社してください』とだけ。年明けの出社当日、エレベーターを降りると斬新なデザインの部屋が目に入る。ほぼ全員が呆然としていましたね。そういったサプライズでオフィスのお披露目をしたのです。社員のテンションは最高潮に上がっていました」(曽根原氏

その自慢できるオフィスのベースとなったデザインは曽根原氏のアイデアによるものだ。

「自分が伝えたイメージを、デザイナーさんが形にする。それに修正や意見を加えていくといった作業を繰り返しました」(曽根原氏

「エレベーターが止まるたびに、オフィスの一部が目に入る。他のフロアの企業の方からもかっこいいですねとよく言われます。自分の会社が褒められると悪い気はしませんよね」(小幡氏

エレベーターを降りて目の前に見えるのは多目的に使用できる「21cafe」だ。そのデザインイメージは当時注目されはじめていた、ラウンジのようなコワーキングスペースだ。元になるイメージがラウンジということもあり、今回は店舗を多く手がけているデザイナーが担当した。

「『21cafe』は、直接的な事業ではありません。クリエイターとエンジニアの接点を増やす、または彼らの創造性をサポートするための場として設けました」(曽根原氏

「当社以外の方々にも自由に開放して使ってもらおうと。2月は土・日・祝日を除くほぼ毎日、延べ200名の利用者となっています。貸出規約に関しては細部にわたって取り決めを行います。使用料金の代わりに当社Facebookの『いいね!』を押して頂く、というのもその一つです」小幡氏

ギークスの"創造性支援"に対する姿勢は企業ビジョンにも表れている。それではその基本の考えとなる心得を以下に紹介しよう。

Buddyの心得

世の中に感動を創造し続ける企業であるために、Buddy(社員)全員が大切にしている10の価値基準

  1. 年中無休の好奇心
  2. 変化を楽しむ
  3. Speed! Speed!! Speed!!!
  4. 想いを語る
  5. No.1しか興味ない
  6. モテる人間になる
  7. 出る杭を讃える
  8. 妥協のないつながり
  9. 「遊ぶ」も全力!
  10. 感動創造集団。

ギークス公式サイト
http://geechs.com/

コラム1 会議室を綺麗に使わないと逮捕
ギークスでは会議終了後に必ず行わなければならないルールを制定している。それは室内に置かれた清掃道具で机を綺麗にし、椅子を揃えて退室することだ。しかも社員に徹底させるため、片付けずに退室したことが判明したら、社内警察「ギークスガード」による逮捕という結果が待っている。実刑は毎日行われる朝礼で3分間スピーチの罰が。運用ルールに遊び心を加えると厳格な規則もやわらかくなる。
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ベースとなる席をつくりながらプロジェクトごとに自由に動く

オフィスに入ると管理部門エリアを除いて、フリーアドレス用の机が目の前に広がる。

「当社の場合、フリーアドレスといっても個人のベースとなる席は決められています。その中で、空いている席があればその場所で仕事をしてもいい、といったルールになっているのです」(小幡氏

「ベースとなる席をつくったうえでのフリーアドレスですから導入後も社員が戸惑うことなくスムーズな運用ができました。本来フリーアドレス導入の妨げの原因になりうる固定電話の使用も少なく、内線電話もあまり使っていませんでした。加えてほとんどの社員がノートPCを持ち歩いており、紙で資料を出すこともない。もともとフリーアドレスに適している会社だったのでしょうね」(曽根原氏

フリーアドレスを導入後、何よりもよかったと感じるのは社員同士のコミュニケーションが以前にも増して活発になったことだ。

「コミュニケーションがとりやすくなりましたね。上司への報告や相談も「いつでも」「どこでも」になりましたので話しやすくなったみたいです。さらにオフィス内にファミレス風の席やカウンター席、畳のスペースなどさまざまなコーナーを用意しました。そこでは部署を超えた打合せをしている光景が多く見られるようになりましたね」(小幡氏

語学とプログラミングが同時に学べる採用プロジェクト「ギークスキャンプ」

オフィススペースに余裕ができたこともあり、今後は技術系社員の採用に一層力を入れていく。その取り組み方法は他社にはないユニークなものになっている。

「HPでも紹介していますが、『ギークスキャンプ』という取り組みを2013年10月から行っています。普通の求人サイトではなかなか思い通りの方が採用できないこともあって、当社独自のプログラムを考えました」(根原氏

現在、優秀なエンジニアが少ないといわれている。それならば、少ない中から探すのではなく、自社でつくりだすというのがギークスの考えのようだ。

「最近、ギークスキャンプは色々なサイトで紹介していただいています。そのおかげで前回は70件超の応募がありました。年齢に関しては20代半ばから後半の方が多いですね。そして実際に応募者の方々のポテンシャルの高さに驚いています。最終的には、エンジニアを目指す理由やスキル習得にかける意気込みやコミットメント、そしてコミュニケーション能力を見ながら結論を出しています」(小幡氏

意欲さえあれば過去の経歴は不問とし、広くエンジニア希望者を募集する。適性試験や面接などで4~5名に絞り、フィリピンのセブ島に半年間滞在。そこでは英語とプログラミングを集中して学ぶ。渡航費や現地の滞在費、研修受講料は全てギークスが負担する。その間、最終選考を実施し、合格者ははれてギークスへ入社となる。そこからは、エンジニア初心者としての修業期間。プロの先輩エンジニアと一緒にさまざまな案件にジョインし、腕を磨いていく。こんな流れだ。2月から二期生が出発した。3月には一期生が戻ってくる。そこで戻ってきたメンバーが社内で起こす化学反応に興味は尽きない。
セブ島でのキャンプ風景

セブ島でのキャンプ風景

口コミパワーを最大限活用。徐々に広がりをみせるギークスファン

前述の「21cafe」にしても「ギークスキャンプ」にしても、直ぐに結果を求めることなく時間をかけたPR活動を進めている。それには各種広告への出稿、案内状の制作といった費用を使った手法ではなく、ソーシャルメディアや口コミをうまく活用する方法をギークスは選択した。

「例えば、『直ぐに仕事を紹介します』ではなく、『私どものフリーランスネットワークに入りませんか』や『21cafeでのイベントに参加しませんか』といったきっかけづくりから始めています。まずは絆を強める。普通に友達になる感覚。いかにギークスファンを増やしていけるかということだと思っています」(曽根原氏

「中長期的に時間をかけることで、当社の良さを知った登録者を増やしています。21cafeや弊社のサービスについて、コストを投じて大々的にPRしているわけではありませんが、メディア関係者、企業、個人の方から問い合わせがどんどん増えてきています。私たちの記事を見て「何か面白いことをやってるな」と感じてくれた方が、自分たちのSNSやブログで紹介することで、さらなる広がりを見せているのでしょう」(小幡氏

次のステージはもっと開放感を取り入れたオフィスに

移転して約1年。オフィスに関しての不満はあまり聞こえてこない。唯一ともいえる要望が会議室の数に対するものだ。

「現在、会議室は4人用が2部屋、あとは6人用、10人用の合計4部屋を設けています。社内会議での使用も多いのですが、それよりもフリーランスの方との登録場所としての使い方が中心となります。オープンスペースでは個人情報が漏れてしまうリスクがありますから。そのため部屋が確保できないときは日程を変更するしかなく、業務に支障が出てしまう場合もあります」(小幡氏

「次のステップでは会議室も透明のガラスで仕切るなど、もっと開放感を取り入れたオフィスの構想を持っています。そしてオープンな社風・企業イメージを社内外に伝えていきたいですね」(曽根原氏

ギークスのオフィス

21cafe

多目的に使用できる「21cafe」

会議室エリアの通路全景

会議室エリアの通路全景

社長室

会議室エリアの通路全景

窓側のファミレス風スペース

窓側のファミレス風スペース。集中作業に使用するケースが多い

オフィス全景

オフィス全景。フリーアドレス導入後、社内のコミュニケーションが活発になった

オフィス奥の畳のスペース

オフィス奥の畳のスペース。ここで休息をとる社員も多い

コラム2 2014年度「働きがいのある会社」に選出
世界的調査機関「Great Place To WorkR Institute」が、世界45カ国以上で実施している調査。調査結果は各国の有力メディアで「働きがいのある会社ランキング」として発表。米国では1998年から「FORTUNE」誌で、日本では「日経ビジネス」誌で毎年発表している。ギークスは、初めて調査に参加し、「従業員25-99名企業」カテゴリーの中で10位にランクインした。「尊敬」「公正」「連帯感」の点で優れているという結果であった。
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