グリー株式会社

2013年6月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

オフィスのコンセプトは、一体感、オープン、フレキシブル。

急成長を続けているグリー株式会社が六本木ヒルズに移転して2年が経過しようとしている。設立以来、六本木にこだわり移転を行ってきた。2011年1月に米国子会社を設立して以降、世界各国での拠点設立を進めている。今後もグローバルな展開を進めるSNS最大手企業にオフィスへのこだわりを伺った。

オフィスのコンセプトは、一体感、オープン、フレキシブル

プロジェクト担当

藤本 賀彦氏

グリー株式会社
藤本 賀彦氏

ヒューマンリソース本部
組織運営部長

野長 兄一氏

グリー株式会社
野長 兄一氏

ヒューマンリソース本部
組織運営部
ファシリティマネジメント

会社概要

2004年2月にSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス:人と人とのつながりを促進・サポートするサービス)の「GREE」を公開後、同年12月に「GREE」の運営を目的としたグリー株式会社が設立された。
その後、サービスメニューを増やし、今では、日本、アメリカに続き、イギリス、シンガポール、韓国、中国、オランダなど各国での拠点づくりを進めている。会員規模も日本では3000万ユーザーを越え、グローバルで拡大しており、設立わずか8年で急成長を遂げている。

はやわかりメモ

  1. 六本木へのこだわり。オフィスへのこだわり。そのこだわりがオフィス移転を成功に。
    わずか10坪のオフィスからスタートして以来、六本木にこだわって移転を繰り返してきた。
  2. 何よりも一体感を意識したオフィスは、創設以来のオープンな社風の表れ
    創設以来変わらない一体感を意識したオフィスの考え方は、まさに自由でオープンな社風を表現している。
  3. 移転が終わっても情報収集を。
    急な業務環境の変化、オフィス市況の変化に対応するためには、日ごろから信頼できる仲介業者との継続的にコンタクトを取ることが重要なポイント。

六本木へのこだわり。オフィスへのこだわり。
そのこだわりがオフィス移転を成功に。

2004年の会社設立時は、わずか10坪程度のオフィスからスタート。それ以降は、事業の拡大とそれに伴う人員増でかなり短いスパンでオフィス移転を行ってきた。その急成長ぶりはグリーの企業沿革を見ると一目瞭然だ。以下、グリーのホームページから抜粋してみる。

2004年2月 代表の田中良和が個人サイトで「GREE」アルファ版を公開

2004年3月 「GREE」の会員数が1万人を突破

2004年12月 「GREE」の運営を目的にグリー株式会社を設立(10坪からスタート)

2005年7月 (オフィス移転:使用面積50坪に)

2006年11月 「EZ GREE」をリリース

2007年2月 モバイル向け「GREE」がドコモ公式サービス化

2007年2月 (オフィス移転:使用面積160坪に)

2007年3月 「GREE」の会員数が100万人を突破

2008年3月 (オフィス移転:使用面積400坪に)

2008年12月 東京証券取引所マザーズに上場

2009年4月 「GREE」の会員数が1,000万人を突破

2010年6月 東京証券取引所市場第一部に上場

2010年7月 (オフィス移転:使用面積1051坪に)

2010年8月 スマートフォン向け「GREE」をリリース

2011年1月 米国における子会社設立

2011年7月 中国における子会社設立

2011年9月 韓国、シンガポール、イギリス、オランダ、ブラジルの5カ国に子会社設立を発表

2012年4月 (オフィス増床:使用面積4500坪に)

*(  )部分は三幸エステートが独自に追記。

過去の移転は全て六本木エリア内で行われている。前入居ビルからの移転理由は、「増員により手狭になってきた」のほかに「採用ブランディングの強化」「セキュリティ面の必要性」などを考えてのものだ。移転前のオフィスは400坪だったが、移転後は倍以上の1050坪に拡張。六本木ヒルズに移転してから2年が経過するが、現在も事業拡大とそれに伴う人員増で内部増床を重ねている。移転当初は1フロアだったが、今では約3.4フロアを使用。合計約4500坪と移転前と比べ10倍超となっている。

それでは六本木へのこだわりは何だったのだろうか。

「社長である田中の六本木に対する強い思いによるものです。設立当時から、渋谷から六本木にかけてはIT企業が集積しているエリアでした。その中でも六本木がネットビジネスの中心になるという確信があったそうです」

福利厚生の一貫として近隣住宅補助制度もあるため、六本木周辺に住居を構えて、自転車や徒歩で通勤してくる社員もいる。それら社員への配慮もあるようだ。

続いて六本木ヒルズを選んだ理由を聞いてみる。

「もともとワンフロアの広いオフィスを探しており、当初は六本木ヒルズとは違うビルを検討していました。そこで、設立当初からお付き合いのあるオフィス仲介会社の三幸エステートさんに空室状況を相談したら、そのビルの情報はもちろんのこと、その他の六本木周辺で大きく面積が確保できるオフィスビルの情報をたくさんいただいたのです。その中に六本木ヒルズの情報が入っていました。それから全てのビルを見学できるよう日程調整をしてもらい、迅速に動いていただきました。結果として、ワンフロア面積の広さ、駅からのアクセスの良さ、セキュリティ面、さらに六本木を象徴しているビルということで、即座に契約条件などの確認に進みました」

実際東日本大震災の時には、自家発電によって停電中でも通常通りの業務を行うことができ、このビルを選んで良かったと実感しているという。

その他、ビルの知名度の高さもリクルーティング活動に大いに役立っている。もちろん会社の知名度があってのことではあるが、結果として多くの優秀な社員を採用できている。「急激な増員にも、面積の増床などで森ビル様には柔軟に対応していただいており高い満足度を維持していいます」

何よりも一体感を意識したシンプルなオフィスは
創設以来のオープンな社風の表れ。

グリーのオフィスを見ると、特にハード面で何かをつくりこんでいるということはなく、ユニバーサルデザインを採用し、効率的な執務空間となっている。そのシンプルさが逆に今の時代には新鮮で魅力的だ。

一体感のあるオフィスづくりの考え方は、設立以来変わっていないという。それは、一つの経営理念でもある。

「他の企業では上下関係がもう少しはっきりしていて、多くの場合は椅子や机を差別化し、役員室を設けることもあるでしょう。しかしグリーでは、社員全員がフラットな関係で接しているので、役員も普通に執務室内に机を並べて仕事をしています。結果としてそれが一体感のある自由でオープンな社風づくりを後押ししているのではないでしょうか。シンプルなオフィスのメリットとしては、急な組織の変更や部署移動があった際にもスムーズに工事費をかけずに移動できるというのもありますね」

とはいえ、オフィス内にコミュニケーションをとるための仕掛けが何もないわけではない。当然グリーでは、その重要性についても理解している。

「フロア内にはリフレッシュルームを設けており、社員が自由にコミュニケーションを図るためのエリアとなっています。昼食時はこのエリアでお弁当の販売をしているのですが、これも社員同士のコミュニケーションの活性化につながると考えています。その一角には休息用ベッドやマッサージチェアも置いてあり、使用時間に制限はありません。金曜日の夜には、社内でフライデーパーティーという食事会も行っています」

「リフレッシュルームは、社員の増加に容易に対応できるように上品さを残しつつ、シンプルなレイアウトにしています。コミュニケーションの場として、約300席を用意。素材にもこだわり、床材などは、デザイナーや業者さんと一緒に探しに行きました」

また、セミナールームとして300人強が収容できるスペースを3部屋設けている。

「以前は1部屋で足りていたセミナールームも、社員の増加に伴い狭くなったため、現在はオフィス内に3部屋設置しています。また、3部屋を仕切っている可変性のスライディングウォールを取り外し、毎週月曜日の全体会議や毎月末の月次会議を行っています。その実施状況や音声は東京以外の拠点でもパソコンで視聴が可能になっています」

「社員が一体感を持って事業に取り組むためにも、毎週約1200人が一堂に集まるのは、とても良い刺激になっています」

「その他、執務室内の開発チーム付近には『GREE BootCamp』というエンジニア向けの研修を行うスペースを設けています。リーダーや他のチームメンバーが気軽に立ち寄り、新入社員を教育する場です。一般執務室とは異なる机や椅子を置いています」

その他、オフィス内の特徴的な部分について簡単に説明しよう。

来客用エントランス

洗練されたイメージを全面に出すため、白を基調色としガラス貼りのデザインを採用。正面には巨大モニター(グリービジョン)を設置し、次の効果を考えている。

  • グリーの今を体感できるスペースになっている。
  • 工夫を凝らしたムービーを流し、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの提供企業であることをアピール。
  • 待ち時間にグリーのクリエイティブを実感してもらう。
  • 洗練された白色に対して、差色を使うことによる視覚効果。

「来客の方からエントランスの雰囲気、透明感のある色づかいは高い評価を得ているようです。心に残るといいますか、当社の特徴を表現しているとの感想をいただいています。これは社員からも同じ評価ですね」

複数の来客用会議室には、田中社長が学生時代に強い影響を受けたとされるシリコンバレーの地名が付けられているとのこと。

執務室

設立当初からの特徴で、過去のどのオフィスにもフロア内に壁を設けたことはないという。一体感、オープン、フレキシブル。そしてシンプルなつくり。それがオフィスへのこだわりであり、その気持ちを設立当初から大事にしている。

また、執務室内には社員が気軽にミニディスカッションができるように六角形の机を使ったフリースペースを設置している。使用にあたって予約登録を必要としないため、業務が円滑に進められているようだ。

グリー執務室

仕切りのないオープンな執務室

移転は終わっても情報収集を。

移転完了後2年が経過した。増員には今のところビル内での増床で対応できているものの、常に周辺のオフィスマーケットや空室情報に関しては情報収集を続けているという。

「オフィス移転は経営にも深く関係していると考えていますので、急な業務環境、市況の変化に対応できるように常に準備が必要だと思っています。ですから移転が終わった今でも、三幸エステートさんに、定期的に情報共有していただく機会を設けてもらっています。やはり情報量が豊富で市場に出る前の鮮度の高い物件情報をいち早く入手できるのがいいですね。何名かの営業の方とお付き合いしていますが、どの方も対応が早く、質問や相談に対して的確な答えが返ってきます。そういった会社が身近にいると安心できます」

グリーのオフィス

来客用エントランス

来客用エントランス

リフレッシュルーム

リフレッシュルーム

リフレッシュルーム(ランチ時)

リフレッシュルーム(ランチ時)

セミナールーム

セミナールーム

全社集会風景

全社集会風景

執務室

執務室

執務室フリースペース

執務室フリースペース