先進オフィス事例

~オフィスを経営の力に~

株式会社Gunosy 後編

2015年3月取材

※記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

オフィスの基調色は白。何色にも染まらない公平さを求めた

そうして8月から内装デザインの工程に入る。まずデザイン会社3社に対して企画コンペの説明会を行った。

「僕らのビジネスって厳密に言えばオフィスに来る必要はないわけです。全てクラウドでことが足りてしまいますので。それでは何のためにオフィスに来るのか。それは社員間のコミュニケーションを強くするためだと思っています。コンペの際には、そういった当社の企業ビジョンや課題などを伝えました」(伊藤氏)

「そのほか、『毎日スキップして来たくなるような会社』と『イノベーティブでモダンな中にも、上質さと品格を兼ね備え、一方で自由で開放的な要素も持ち合わせる』。この2つのテーマを加えました」(外所氏)

約2週間後に3社からデザイン案が提出された。細かい打合せを行ったのち、デザイン会社1社を決定する。そうして3ヵ月後の11月末。家具の搬入までを含め全ての作業を終わらせた。

「随時、人事採用を行っていることもあって、ここも直ぐに手狭になってしまうかもしれません。そうなるとせっかく内装デザインに時間とお金をかけても壊すことになってしまう。そこが悩みどころでしたね」(外所氏)

「オフィスを見ていただくとわかるのですがあえて壁をつくっていません。もちろんオープンな環境にしてコミュニケーションを活発にしたいという理由もあるのですが、それだけではありませんでした」(伊藤氏)

「壁をつくって物理的に視界を遮るというより、いろいろな高さで視界を変化させることにチャレンジしています。それによって目線が変わり、壁がなくとも空間を区切るという効果を意識しました」(外所氏)

それでは新オフィスの特長的な機能について説明していこう。受付と執務室の間にはガラス扉があるだけ。扉には同社を象徴する紙飛行機のシンボルマークが立体的に表現されている。よく見ると壁にもこだわりが。壁全体が1枚の紙のようだ。まさに「紙飛行機を折ったあとに広げた紙」のようなデザインとなっている。

壁がないため入室前からガラス扉を通じてオフィスの雰囲気を見渡すことができる。

ガラス扉の受付

白を基調とした印象的な受付はメディアとしての透明性を表現している

正面に広がるオープンスペース。境界線がわかるようにそこだけ床を一段上げている。まるで木でつくられた公園のようなスペースだ。そこには様々な形状の机や椅子が並べられている。

オープンスペース

オープンスペース

「これらの開放的な空間はメディアとしての透明性をイメージさせています」(伊藤氏)

「ただしオープンにしすぎると社外秘の打ち合わせが行いにくいという意見も。その社員からの声を採用してクローズした応接室も3部屋分用意しました。3部屋でも少ないとは思うのですが、できるだけ社員間の打ち合わせにはオープンスペースを使っていただいて。予約するために時間を要するのも無駄なので、オープンスペースは空いていれば誰でも自由に使っていいというルールになっています」(外所氏)

家具の多くは輸入品。何気なく設置されているホワイトボードは特注品だという。

「アナログに感じるかもしれませんが、当社ではディスカッションの工程が一番重要だと考えています。そのため、その場で思いついたことを自由に書き込み、動かせるホワイトボードをうまく活用しています。パーテーションとしての役割が果たせるのもいいですね」(伊藤氏)

自由な使い方ができるオープンスペース

自由な使い方ができるオープンスペース

クローズした応接室

来客時にも使えるブレスト用の会議室

「その横にはファミレス風の席を用意しました。個人が集中ブースとして使ってもいいですし、数人でコーヒーを飲みながら議論を交わす使い方もあります」(外所氏)

ファミレス席

多様な使い方のできるファミレス席

オープンスペースの右側が執務スペースとなる。
基本はフリーアドレスを採用。そこには部署間の壁を取り外して頻繁な情報交換を望む同社の思いが込められている。
それは同社代表取締役CEOである福島良典氏の思いでもある。

「代表の福島からは、格好がいいだけのデザインではなく落ち着いて働ける環境をつくってほしいと。そして当社の事業が情報配信ということで何色にも染まらない公平さを象徴させるデザインにしたいと要望がありました。ですからオフィス全体の基調色を白としています」(外所氏)

「エンジニアチームは椅子に座る時間も多いということで、疲れにくいと言われている性能の良い椅子を取り入れています。そのほか好評なのはスタンディングテーブルですね。やはり終日座っていると疲れますので気分を変える機能が必要かと。ここで仕事をしていると色々な方に相談をされるようになりました。それによって今まで見えていなかった社内がより見えるようになったんです。こういったインフォーマルなコミュニケーションは大事だなと実感しています」(外所氏)

性能の高い家具を取り入れた執務スペース

性能の高い家具を取り入れた執務スペース

スタンディングテーブル

スタンディングテーブル

「当社の場合、開発だけ強くなりすぎても良くないし、営業の力が大きすぎてもいけない。バランスを上手く保つことが重要なわけです。そこで多くの会話が生まれる仕組みをつくることを心がけました。それが営業からの無理難題でもいいんです。そこから議論が始まる。それがコミュニケーションの第一歩となります」(伊藤氏)

また、最近は社内のコミュニケーションだけでなく、社外の方ともたくさん会って色々な情報を収集することも求められているという。

「今後、より効率的に働き、長時間ではなく長期間働くことにシフトされていく。結果的にそれが企業価値を高めることになると思っています」(伊藤氏)

今後も自由に書き加えられる空間をたくさん創造していく

「当社のオフィスの象徴はやはりオープンスペースとなります。自由とコミュニケーションに満ち溢れていますから」(外所氏)

このエリアの利用率は想像していた以上に高いという。以前に比べて取引先の訪問数も増えた。中にはただ単に見学を目的とする人も。それら全て総合的に見て移転効果の一つとして捉えている。このエリアは、お客様との商談の場でもあり、社員がお弁当を食べる場でもある。秩序の範囲内であるならば社員が自由に何かを持ち込んでも構わない。

「何しろオフィスは1日の3分の1を過ごす場所ですから。これからもガチガチなルールで固めることはしたくありません」(外所氏)

「正直、新オフィスの入居前はオフィスの規模が一気に倍になることもあり、コミュニケーションは低下するかもしれないと懸念していました。旧オフィスは手狭という物理的な課題で退去することにはなりましたが、それほど嫌な空間ではありませんでしたから。その空気感をいかに壊さずに新オフィスに持ち込めるかを常に考えています」(伊藤氏)

「企業として変化をしていくことは当たり前のことであり、重要なことなのだと思います。おそらく今後も社員数は増えていくでしょう。その時には想定していなかった新たな課題も見つかるかもしれません。オフィスは生き物ですからその都度対応をしていくしかないのだと思います」(外所氏)

「バックパッカーで海外旅行に行くと、滞在した部屋に自分が読んでいた本やメッセージなどを書き加えていくことがよくあります。そうして、段々とその場所にあった空間が、訪れた人によってつくられていく。その国、その町に合った空間で、訪れた旅行者たちの個性も反映した空間です。僕らのオフィスもそうなればいいなと思っています。自由な空間をたくさん用意してそれを元に社員たちがつくりあげていくオフィス。Gunosyにふさわしい空間。そうしたオフィスをいかに構築していくことができるのか、それが次の課題になるのかもしれません」(伊藤氏)

オフィス移転を成功させる物件選び