- 情報に大きな価値を感じて設立。本格的稼動からわずか6年で日本最大級の情報提供サイトに
- 業務拡張に伴い頻繁にオフィスを移転。今回の移転も増員による手狭感が大きな理由
- 急遽状況が変わり移転計画が前倒しに。わずか2ヵ月で移転業務を完了させる
- レイアウトに工夫を凝らすことでコミュニケーションが活発になった
- 名刺交換をしただけの繋がりがリアルなコミュニケーションとなる
- 経営理念である「できることをふやす」をこれからも継続していく
株式会社nanapi
2014年8月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
「世界中の人々のできることをふやしていきたい」という思いのもと、それを実現するためのメディアやコミュニティを運営している株式会社nanapi。業務拡張に伴い従業員の採用活動も定期的に行われている。昨年、人員増加に伴い手狭になりオフィス移転を実施した。今回は、そのオフィス移転の全容と共に、新オフィスの特長や移転効果についてお話を伺った。
株式会社nanapi
管理部部長
寺本智也氏
POPなイメージの受付。社名の看板は自分たちで制作した発泡スチロール製
2009年に代表取締役古川健介、取締役CTO和田修一の2名で本格始動し、オフィスを渋谷区代々木に構え、その後、ハウツー情報提供サービスとして「nanapi」がリリースされた。
生活に関するレシピは日本最大級と言われるほど多岐にわたって提供されている。その数は10万超。19のカテゴリを用意し、最新の情報が順次追加されている。
「例えば、食材の切り方を載せたレシピがあるとします。その中で大根の切り方に価値を感じている人は数えるほどしかいないかもしれません。しかし、そのレシピに果物の切り方に関する情報を加えることで必要性を感じる人がその数倍になるかもしれないわけです。満足のいくサービスをお届けするためには、色々な角度から物事を見なければなりません。そのようにしてこれからもどんどんコンテンツを増やしていかなければと思っています」
それ以外にも、スマートフォンで簡単に悩みや関心ごとについてコミュニケーションを図ることができるアプリ「アンサー」や、海外向けに「気付きを与える」をコンセプトとした 日本文化を世界に発信するカルチャーマガジン「IGNITION」を運営している。
できることをふやす
ミッションステートメント
nanapi は、世の中のあらゆる「やり方」を
世界一集めることを目指します
2009年に代々木に本社を移した後、2010年、2011年と少しずつ広い場所を求めてオフィス移転を行ってきた。結果として全て代々木駅近くとなった。
「取引先との行き来を考えると代々木はとても便利な場所でした。比較的に賃料に割安感があったのも良かったですね」
移転理由は余裕あるスペースの確保。これに尽きるという。前オフィスの面積は68坪。入居当初は従業員が30数名しかいなかったため、ゆったりとしたレイアウトであったが1年も経つとアルバイトを含めて70数名に。さすがに手狭感がでてきたという。
「サービスの拡大や成長のためにはエンジニアやデザイナー、ディレクター、編集などのさまざまな職種の人たちとの連携がなければ成り立ちません。そのためどうしても多岐にわたった採用活動になってしまうのです。その結果、大幅な人員増となります」
「本来、オフィス戦略は数年先を考えて計画しなくてはいけないと思っています。しかし、当社はまだまだ成長過程にある企業です。さらに変化の激しい業界環境の中、先のことを予測しきれない部分があります。実際、今はnanapi以外にコミュニティアプリの『アンサー』や海外メディアの『I GNI TI ON(イグニション)』を展開していますが、当初から予定していたものではありません。ですから当面はこのような応急処置的なオフィスの探し方になってしまうかもしれません」
新オフィスの面積は118坪。現在も採用活動を継続して行っている。その状況を考えると再び手狭さが訪れるのは案外早いかもしれない。
次のオフィスを探す上ではっきりとしたこだわりはなかった。
「現在の人員が収容できる面積の確保。これだけが必須条件です。そのほかでは立地くらいですね。山手線の西側、新宿から渋谷あたりを候補地としていました」
今回の移転では慣れ親しんでいた代々木から渋谷へと立地を変更した。
「オフィスに手狭さを感じていたため、情報収集はすすめていました。当初の予定では、2014年前半に入居できればいいと考えていたのですが、急に好条件の物件情報が舞い込んできまして。色々な条件交渉をしている中で、話が具体的になってきました」
2013年9月の役員会で正式に12月中に移転を完了させることが決定した。社員にはチャットツールの使用や毎週行われる朝礼で進捗状況を報告していったという。
「移転を発表した後、社内から多くの意見がでてきましたね。休憩スペースの必要性やチーム同士の距離間だとか。全員が真剣に考えてくれました」
「事前に新しいオフィスを見たいという社員もいましたので、希望者を募りツアーを組んで見学会も行いました。オフィスを見た上で意見を頂くことも出来ましたので、見学ツアーの実施は意義があることだったと思っています」
今回の移転プロジェクトのミッションはわずか2ヵ月で移転業務を完了させること。そこで円滑にプロジェクトを推進するために、寺本氏を中心とした管理部メンバーが役立てたのが以前の移転時に使用したタスク表だ。それを今回用に内容を改正して、その "やることリスト" に沿って一つずつクリアにしていったという。そのタスクがnanapiのブログで公開されていたので抜粋して紹介する。
「旧オフィスでは、会議室が一つだけ。それを来客、面接、社内ミーティングと使い分けていました。業務にかなり支障がありましたね」
今回の移転では大・中・小の3種類の応接スペースを確保している。
また、スペースに余裕が生まれたこともありオフィス内に気軽に集まれるミーティングスペースを増やすことも出来た。
「旧オフィスでもミーティングスペースはありましたが、全然数が足りていませんでした。現在は数も増え、空いてさえいれば誰でも使用できます。そのため自主的に声を掛け合ってちょっとした議論が頻繁になってきましたね。間違いなく社内のコミュニケーションはより活発になったと実感しています。また、座席間の通路幅が広くなったため社員同士がすれ違うたびに立ち止まって会話をするケースも多くなりました」
さらに、社員からの要望でもある休憩ゾーンの新設も行った。
「ちょっとした雑談の場所であったり、休憩時間に社員同士でお昼を食べたり。結構インタラクティブな場として使われています」
そのほか、今回のオフィスでは「緑化」を意識して取り組んだのも特長の一つだ。
「あまりにも殺風景に思えたので、成長をテーマにしたアイテムを入れようということになりました。僕らもオフィスと共に成長していこうと。緑化という表現が正しいかどうかはわかりませんが、床のカーペットの色をできるだけ土に近い色にして、その上に置かれる椅子の色は緑。壁には木々がデザインされたウォールステッカー。それに加えて所々に観葉植物を配置しています」
コミュニケーションが高まる「場」となっている新設の休憩ゾーン
オフィス全景。明るくゆったりとした快適空間となった
移転効果は社内だけに限ったものではない。社外とのリアルなコミュニケーションの増加。この効果は全く予想していなかったという。
「やはり渋谷ですね。IT系企業が多く集積しているという実感があります。きっかけは同じ渋谷区内だからと挨拶に来られたり、弊社から伺ったり。『せっかく近いので』みたいなきっかけがほとんどかと思います。今では社内のさまざまなメンバーと多くの社外の皆様との交流が深まりつつあります」
nanapiでは、仮にそれらの交流がビジネスに発展しなかったとしても大いに有意義だと考える。
「そこで生まれた会話やアイデアは両者の財産になります。特に当社はハウツー情報を提供している会社ですから、たとえ相手が同業の方であってもどんどん情報発信をしていこうと思っています。それにノウハウというのは自分の中だけに留めておいてもそれ以上進歩しません。外部に出すことで、指摘やアドバイスを頂くことができる。それがさらなる精度の高いノウハウの構築につながるのです」
nanapiでは、経営理念である「できることをふやす」が全ての考え方の基本となる。
採用活動もオフィス戦略もこの考えを意識して行っている。
「『できることをふやす』ためには、スピード感ある意思決定、それによる開発スピードの短縮化が今後不可欠となります。そのため求める人材も、色々な視点から物事を判断して意見を出せる人、既存の考えに固まらず新しいことにチャレンジ出来る人、そんな方を求めて採用活動をしています。それとインターネットが大好きな人。これは何よりも重要な条件となります」
「今後、どのくらいまで社員数が増えていくかはっきりとした数字があるわけではありませんが、それでも『できることをふやす』の精神が変わることはありません。今後もコミュニケーションのとりやすい環境とは何かを考えながら、オフィス戦略に活かしていきたいと思っています」