先進オフィス事例

~オフィスを経営の力に~

株式会社ニューバランスジャパン 前編

2016年6月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

分散した拠点を一ヵ所に集約。企業のブランドイメージを高める新オフィス

「INTEGRITY(誠実さ)」「TEAM WORK(チームワーク)」「TOTAL CUSTOMER SATISFACTION(お客様の満足)」の3つをコアバリューに掲げる株式会社ニューバランスジャパンは、アメリカ・マサチューセッツ州ボストン市に本社を置くスポーツブランド、ニューバランス社の日本法人である。今回の取材では2015年11月に神保町に移転した新本社オフィスのコンセプトや新機能を中心にお聞きした。

 

松平 裕次氏

株式会社ニューバランスジャパン
執行役員 人事部ディレクター

松平 裕次氏

石川 遼(はるか)氏

株式会社ニューバランスジャパン
人事部 人事課

石川 遼(はるか)氏

コアバリューを採り入れたエレベーターホール

コアバリューを採り入れたエレベーターホール

はやわかりメモ

  1. オフィスが3フロア+分室に分散していたため、風通しの悪い環境に
  2. レイアウトプランの検討を重ね、最終決定までに46回変更をくり返す
  3. グローバル基準を踏まえ、ボストンやUKのオフィスの雰囲気を採り入れたオフィスデザイン
  4. コミュニケーションが生まれる動線設計とショールームの展示会効果
  5. メディアへの露出機会も増え、ブランディングに貢献する新オフィス

オフィスが3フロア+分室に分散していたため、風通しの悪い環境に

米ニューバランス社は、スポーツシューズを中心にアパレル商品などの企画・製造・販売を手がけるブランドとして、バブル経済絶頂期の1988年12月に日本に進出。中央区豊洲に最初のオフィスを構えた。10年余り豊洲オフィスに所在したのち、同じ中央区の明石町のオフィスビルへ移転する。そこでも約15年間同じビルにオフィスを構えていたが、大規模な移転を決意する。入居当初は50人弱だった従業員数が次第に増加し、約200人になったところで収容能力の限界に達したからだという。

「旧オフィスは1フロア約250坪と面積が手狭で、増床を経て最終的には3フロアに分散した上に、近隣のビルに分室を設けて対応していました。そのため部門間のカルチャーにも温度差が生じ、風通しが悪く、社員間のコミュニケーションが取りづらい環境になっていたのです」(松平裕次氏

オフィス拡張施策では、「館内空室を待って同一ビル内で増床するか、他のビルへ移転するか?」という二者択一を迫られていたという。同社は検討を重ねた結果、社内のコミュニケーションの希薄化などのデメリットを解消すべく、執務スペースを1フロアに集約できるように移転という選択肢を選んだ。

「移転決定の1年以上前から、三幸エステートさんの営業の方に、増員に対応するプランなどいろいろアドバイスを頂戴しておりました。同時に、移転先候補となるオフィスビル情報もお持ちいただいていたので、それらの資料も含めて検討し、移転プロジェクト全体をお任せすることにいたしました」(松平氏

当初は、恵比寿・品川・汐留といったエリアも移転先候補地に挙がっていたが、ビルの規模や街のイメージ、取引先である販売店との交通や従業員の通勤アクセスなどの諸要素を考慮し、最終的に千代田区神保町のビルを移転先に決定した。

「移転先は、2014年12月までに決定していました。ちょうど、米国本社のCEOが来日しているタイミングでしたので、実際に現地を視察してもらうことができました。そしてビル自体が1フロア700坪もある希少な物件で、分室も含めて全従業員を同一フロアに収容できることも決め手になりました」(松平氏

正式に米国本社から移転計画の承認が下りたのが翌2015年1月中旬。これに先立ち、年明けすぐに社内では部門横断的に12名のメンバーが選出され、移転プロジェクトチームが発足した。

「当時、社内には移転プロジェクトを手がけた経験者が少なかったので、自分たちだけでプロジェクトを進めていくのは困難だったのではないかと思います」(松平氏

レイアウトプランの検討を重ね、最終決定までに46回変更をくり返す

同社は大阪にもオフィスを置いているが、そちらは営業中心の支店。製造部門は国外の協力工場に置かれ、本社機能をはじめ、企画・開発・デザイン・流通などの主要機能はすべて東京に設置されている。

「各部門からメンバーを人選したことで、さまざまな立場の方からの意見を集めることができました。もちろん、そのすべてを採用することはできませんので、プロジェクトチーム内で検討。経営側からも意見を聞き、一つひとつ判断した上で決定していきました」(川遼氏

各部門から寄せられた意見の中には、到底実現できそうもない要望なども含まれていたという。

「『オフィス内にフィットネスジムをつくってほしい』とか『社員食堂がほしい』とか……。大企業さんならともかく、当社の規模ではちょっと難しいので、そうした要望に関しては、今回は残念ながら見送りとさせていただいております」(石川氏

プロジェクトチームの発足当初は、毎週1回は必ずミーティングを開き、導入する什器の選定から、オフィスの内装、レイアウトなどに関して計画の細部を一つひとつ詰めていった。また、メンバーが他社のオフィス見学に出かけ、先進的なオフィス事例を実地で学んでくることもあり、これを基に採用された機能もある。さらに、オフィスレイアウトに関しては、当初A~E案までの5パターンを策定し、ひとまずE案と決まった後でさらに検討を重ね、最終的な決定までに都合46回の変更をくり返したという。

「執務室には220席を確保した上で、自由に使えるミーティングスペースなどを用意しようと考えていたのですが、当初に想定していた以上に人員が増えたため何度もやり直すことになりました。ニューバランスの上海オフィスではレイアウトを24回変更したところもあると聞いていましたが、まさか自分たちがそれ以上に変更するとは思いもしませんでしたね」(松平氏

グローバル基準を踏まえ、ボストンやUKのオフィスの雰囲気を採り入れたオフィスデザイン

グローバルに拠点展開している外資系企業の場合、各国の現地法人のオフィスデザインをある程度統一しているケースが多い。ニューバランス社の場合も同様である。

「オフィスのデザインに関しては、グローバルの統一基準があり、基本的には『店舗と共通するイメージ』ということになっています。これは日本も同様に共通のルールになっています。ただし、オフィス移転の1年ほど前に、中国・上海や、イギリス・マンチェスターでもオフィスを移転していたので、これらを見学したところ、必ずしも店舗と同一のコンセプトということではないようでした」(松平氏

ちなみに、日本法人のオフィス移転の1ヵ月ほど前にはボストンの米国本社も移転しており、移転後のオフィスの写真等で確認したが、やはり店舗とはデザインコンセプトが違っていたという。この米国本社オフィスは、やはりボストンにある同社直営工場の入口付近のデザインを採り入れており、東京の本社オフィスでも18階のエレベーターホールなど、これと共通する木目調・レンガ調を活かしたややレトロなデザインを採用することになった。

「実は、エレベーターホールの改装に関しては、当初はビル側から許可が下りませんでした。しかし、辛抱強く交渉し、最後にはビル側のルールを変更していただくことで実現することができたのです」(川氏

エレベーターホール

エレベーターホール

「また、オフィス内には我々ニューバランスのコアバリューである『INTEGRITY』『TEAM WORK』『TOTAL CUSTOMERSATISFACTION』の文字を、デザインとしてエレベーターホールなど3ヵ所ほど採り入れました。これには、一人ひとりの従業員はもちろん、来社されたお客様に対しても当社のコアバリューを明確に意識していただき、共感していただくという狙いがあります」(松平氏

執務室のデスクは、移転を機にすべて新調しているが、米国本社で使用しているものよりも一回り小さい。これは、日本人と欧米人の体格の違いを考慮したものだという。デスクはすべて固定席だが、旧オフィス時代は昔ながらの日本企業に多かった仕切りのない島型対向式のデスク配置であったのを、思い切った変更が加えられている。

「私自身、旧オフィスのデスク配置はブランドイメージに合わない気がして、正直好きではありませんでした。今回は、上海オフィス・UKオフィスや米国本社オフィスの写真なども取り寄せ、さらにプロジェクトチームのメンバーが見学してきた他社のオフィスも参考にして、デスク配置を決定しました。見学した中にはフリーアドレスのオフィスもあったのですが、当社の場合、自席の周囲に商品サンプルなどを置くことが多く、たとえ個人ロッカーを用意しても収納し切れないということで検討からは外しました」(松平氏

執務室の一角には、緑色の人工芝を敷き詰め、ひな壇状の座席を用意したコーナーがある。これはデザイン会社からの提案で、見学したそこのデザイン会社のオフィスにも同様のスペースが導入されていたという。

「このスペースは『スタジアム』と呼んでいます。実際に出来上がってみると、思っていたより大きかったのですが、使い勝手はとてもいいですね。スクリーンが下りるので、従業員のプレゼンの練習や社内でのちょっとしたイベントなどに利用しています」(石川氏

多目的スペース「スタジアム」

多目的スペース「スタジアム」

「選抜メンバーがプロジェクトチームとして定期的に集まっていたのは2015年夏前の什器選定の段階までです。その後は、コアメンバー体制下により発注を経て、先行してショールーム内装工事に入り、その後オフィス内装も開始。施工現場での進捗チェックには三幸エステートさんにも同席していただき、我々では気がつかないような点まで、プロの目でご指摘やアドバイスをいただきました」(松平氏

「三幸エステートさんとは毎週顔を合わせ、夜遅くまでご相談させていただいたこともあります。ある程度決まってから変更することも多かったのですが、こちらが何を言っても絶対に『無理です』と言われることはありませんでしたので心強かったですね」(石川氏

 

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