- 新しいデジタルの可能性を求めてチームラボが生まれた
- 曖昧なプロセスの共有を大事にする
- ソフトを考えながらハードをデザインすることの必要性
- 個人の主観的な思いを発言するための「場」を提供
- 誰に言われることなく自発的に行動を起こす理想的な空間
- クリエイティビティとインテリジェンスが上がることで生産性が向上する
- 自社アート作品やプロダクトが飾られる美術館のようなチームラボのオフィス
- 今後も自社の作品に囲まれた美術館のようなオフィスづくりを目指す
新しいデジタルの可能性を求めてチームラボが生まれた。
「少し前のデジタルの世界は、ブラウザの中で完結していたと思うのです。だけど情報を取得する手段としてはブラウザとマウスがなくてもできる方法もあるかなと。例えば今こうして会話をしていますが、会話中の「うなづき」や「まばたき」、「あいづち」などは、文字情報には表れないですよね。でもこれらも大事な情報です。文字だけの情報にしてしまった時、これらの情報は表面に出てこない。そういった捨ててしまっている情報も取得することによって全く違う環境が生まれるのではと思っています」
そうした新しいデジタル情報の可能性を求めてチームラボが生まれた。創業は2001年3月のことである。東京大学と東京工業大学の大学院生と学部生が集まり文京区内に設立した。その2年後に株式会社に組織変更。そして、何度か文京区内で移転を繰り返した後、2004年7月に本郷に。それが移転前の旧オフィスになる。
「1フロア120坪の9階建のオフィスビルでした。当時はそのビルの2フロアを使っていたのですが、次第に面積が足りなくなり近くにいくつもの分室も借りていました。特にビル自体に大きな不満があったわけではありませんが、さらなる増員や分室との統合を理由に移転を決めたのです」
2012年2月に旧オフィスからわずか徒歩5分程度しか離れていない現在のビルに移転を行った。現オフィスが入居するビルは1フロア105坪の7階建で、そのうちの4階から7階を借りている。4階、5階、7階は普通の執務フロアとなっており、中間層にあたる6階にミーティングスペースを設けている。
曖昧なプロセスの共有を大事にする。
「オフィスの中で、『結論から先に言え』みたいな場面があります。だけど実際はそこに至るプロセスが重要なわけで。何でそう思ったのかを知ることで全然違う結論が導き出されることもある。世代を超えてそれを共有することで新しいサービスが生まれるかもしれない。例えば、一言だけで説明すると、あの『モナリザ』は、『微笑んでいる女性の絵』という説明になってしまうわけです。でも実際はそこに行き着くまでの物語やプロセスがあってはじめて成立していると思うんです。人によって共鳴する部分も違いますし」
このような考えから、色々と曖昧なプロセスを共有できる会社を目指していると語る。
「チームラボは、とても曖昧なプロセスの共有で成り立っている会社です。アメーバーみたいな組織です。アメーバーというのは一つの生命体ではあるけれど、他のアメーバーともすぐに共存できる。我々も一人が全部を管理しているのではなく、個々のマネジメントで組織を運営しています」
ソフトを考えながらハードをデザインすることの必要性。
「チームラボはデジタルの会社であって、ソリューションやソフト面をつくる会社。チームラボアーキテクトはその外側やハード面を制作する会社です。内装設計やデザインも含まれます」
そしてチームラボアーキテクツ誕生の経緯をお話しいただいた。
「一昔前は、外側と内側のデザインって完全に分離してつくっていたと思います。最初に外側のデザインをつくり、それに合わせて中身を制作するといったような。いわばハード重視だったわけです。携帯電話を思い浮かべると、ハードのデザインのイメージしか覚えていない。ですが、iPhoneになってからは違いますよね。みんな画面のデザインを覚えている。ちょっと角がとれたアイコンバーとか。すごい変化です。画面が変わるだけで全体のデザインさえ変わってしまう気になりますから。現在は、それぐらいハード面とソフト面が融合した時代になったわけです。つまり今はハードのデザインだけでは通用しないのです。ソフトがハードにものすごい影響を与えている。ソフトを考えながらハードをデザインすることに必要性を感じて、チームラボアーキテクツが誕生しました。といっても、チームラボは300名くらいいるのに対して、チームラボアーキテクツは、まだ4~5名ですけど」
個人の主観的な思いを発言してもらうための「場」を提供。
「執務フロアは固定席になっています。各自プロジェクトチームごとにPCを持って固まっています。昔からプロジェクトごとに集まるというのは絶対的な方針になっていますね。だからプロジェクトが終わったら解散。その分、頻繁に席替えを行っています。プロジェクトを掛け持っている人は、いくつもの席を持っています。完全なるペーパーレスを推奨している会社だからこそ可能なのかもしれませんね。必ず紙の資料はスキャニングして共有しています。『情報共有』については、かなり重要視しています」
新オフィスになって、社員の声に耳を傾けてみると、以前は2フロアだったのが、さらに4フロアに分かれたことの不満はある。ただし総合的に見ると満足度はとても高い。たまたま近くを通った社員に今のオフィスの感想を聞いてみた。
「やっぱり6階のミーティングスペースは最高ですね。ここはテンションが上がります」
「昔は、マーティングがとても重要でした。アンケートを実施すると、80%以上の良い回答を重要視していましたよね。でも今は『8 0 %のなんとなく好き』よりも『20%のめちゃめちゃ好き』の方が重要な気がします。ですから、何か新しい製品を開発する人は、その人個人の趣味主観を大切にしてもらい、自分の主観的な思いを発言してもらいたい。そのために何でも発言しやすい場づくりが必要だと思っています。このフロアをつくった時はそんなことを意識しましたね」
床は海、砂浜、お花畑のイラストが一面に広がる。壁は黄色で塗られ、チームラボのアートやプロダクトが美術館のように飾られている。この色彩戦略も社員同士のコミュニケーションを活性化するための仕組みの一つとして取り入れられている。
「6階の壁の色ですが、コーポレートカラーだから黄色を選んでいると思われがちですが、実際は短期的な集中に最も適している色が黄色ということで選択しました」
その分、執務室に関しては業務に集中するためになるべく色を抑えたデザインにしているという。そしてトイレや給湯などの業務とは別の目的で席を離れたときに、お花畑が見えるようになっている。
「結構、色によって人の感情が左右されるものです。話しやすい色、集中しやすい色、テンションが高くなる色など。ですから業務の内側と外側で極端に色の強弱を付けています」
誰に言われることなく自発的に行動を起こす理想的な空間。
「チームラボのオフィスコンセプトは、『チームラボをディズニーランドにしよう!』です。ディズニーランドって色々なアトラクションがあって、その世界はシームレスに繋がっていますよね。あの空間の中では、ごく自然にミッキーマウスの耳を付けている人がいっぱいいます。その光景は、ディズニーランドの中だけ。他の場所であれだけの人数が耳を付けていることはないわけです。でも、誰も付けろって言っているわけではない。ルールを定めているわけではなく、なんとなく耳を付けたくなるような空間をつくっているわけです。それってすごく重要だと思いませんか。その空間に入ると、誰に言われることなく自発的に行動を起こす。まさに理想的な空間ですよね」