タウンハウス株式会社

2009年5月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

12人が着席できる長さ9.6メートルの大テーブルが
社内のコミュニケーションを生み出す「核」になる

オフィスインテリアの企画・設計・施工・運営を一貫して行っているタウンハウス株式会社では、2008年7月、オフィスの大胆なリニューアルを行った。改革の最大のポイントは、設計、制作、営業の部門ごとに置かれていた「島」をなくし、大テーブルにしたことで、通常業務の合間にもすぐに打ち合わせを始められるようになったことだ。

プロジェクト担当

高橋 隆氏

タウンハウス株式会社
高橋 隆氏

代表取締役社長

坂口 誠一氏

タウンハウス株式会社
坂口 誠一氏

代表取締役専務

はやわかりメモ

  1. 小規模オフィスだからこそクローズからオープンヘ
    パーテーションで個人の業務スペースを区切るオフィスレイアウトは集中作業にはいいものの、お互いが何をしているのかわからず、意志の疎通を欠いてしまう。少人数だからこそ全員が一つの大きなテーブルを囲むというレイアウトに注目。
  2. 情報交換のレイヤーを増やす
    大テーブルは日常的に情報交換が可能でコミュニケーション効果が大きい。しかしその一方で、会議室でより密に意見交換をすることも重要。狭いスペースで独立性を保つには吸音板などを活用して音漏れを防ぐ方法が有効。

デスクワークと情報交換の打ち合わせが
同じ場所で行える理想の執務スペースヘ。

「従業員が十数名という会社であっても必ずしも情報が共有されているとは限りません」

こう語るのは、タウンハウス株式会社の代表取締役社長である高橋隆氏だ。

タウンハウスはオフィス環境の最適化支援を事業とする企業で、これまでにも多くの大手企業の事業所を手掛け、業界では知られた存在だ。

しかし振り返って自分たちのオフィスを見直したとき、いくつかの改善点が発見された。
それまでは、設計、制作、営業という部門ごとに分かれた島型対向レイアウトで、しかも各デスクは顔が見えない高いパーテーションで囲まれていたため、それぞれがどんな仕事をしているかが分かりにくかったのです」高橋氏

同じことは、代表取締役専務の坂口誠一氏も考えていたという。
「仕事はプロジェクト単位のチームで進めることが多いのに、このデスク配列では、会議室に集まらないとチーム内の情報交換ができず、効率が悪いと感じたのです。そこで、何か思い切った改革の方法はないかと考えていました」

そんなとき、普段から付き合いのある家具メーカーの担当者と話をしていて、オフィス用のテーブルにもずいぶん大きいものがあることを知る。
「それを区切ってみんなで共有するようにしたら、通常の個人業務と情報交換のための打ち合わせが同じ席でできる。これは面白いのではないかと思いましたね」高橋氏

ところが、3部門合わせて12人以上が使うとなると、長さが10メートル弱にもなってしまう。
「家具メーカーからは、『製造も輸送も大変だから、半分のサイズのものを2つつなげてはどうか?』といった提案を受けましたが、社員が一体となる象徴としてせっかく大きなテーブルを入れるのだから妥協はしたくなかった。あとで『工場で生産できる最大サイズのテーブルでした』といわれました」(坂口氏

長さ9.6m、幅1.6mの大テーブルは約46坪のオフィスでは半分近くのスペースを占めるが、窓に面して設置されているため、明るく開放的なイメージを受ける。そして従業員も使い勝手には満足しているようだ。
「横に6人並ぶと一人当たりの幅は1,600mmとなり、以前は約1,000mm幅のデスクでしたから、かえって広くなったのです。このため、評判はいいですね」坂口氏

そして、期待したコミュニケーションへの効果は予想以上だったという。
「同じプロジェクトを担当している者同士が気軽に情報交換できるようになっただけでなく、その会話を耳にすることでほかの人の仕事にも興味を持つようになります。テーブルの上ではあらゆる情報が飛び交っているのですから、コミュニケーンョンの装置としてこれほど機能的なものはないでしょう」高橋氏

コミュニケーション効果を高めている大テーブル

コミュニケーション効果を高めている大テーブル

開放的なミーティングルームでも外部への音漏れを防ぐ工夫が可能。

大テーブルの導入は今回のオフィスリニューアルの目玉だったが、その機能を最大限に活かすため、ほかにもさまざまな工夫をしている。
「情報交換のレイヤーを多層にするため、会議用のミーティングルームもこれまでと同様に2カ所確保しました。ただし囲っているパネルの一部を取り外し可能にして、多目的に使えるようにもしました」(坂口氏

ミーティングルームについては、もう一つ、吸音板を活用して音漏れをできるだけ少なくするようにしている。

「声が外にがんがん聞こえるようでは会議室にはならないので、奥の壁に吸音板を付けて反射を防ぐようにしました。これだけでも効果は大きく、見学に来られたお客様の中にも採用を決めた方がいらっしゃるほどです」(坂口氏)
同じスペースに同じ人数が入っていても、レイアウトの工夫一つで印象は大きく変わり、その影響は働き方にも及んでいく。タウンハウスのオフィスはその効果をまさに実証した格好だ。

吸音板を活用したミーティングルーム
吸音板を活用したミーティングルーム。

「設計や工事を行う会社の場合、図面などの書類が欠かせないことから、オフィス内は段ボール箱で溢れて雑然としているケースが多いようです。しかし何もしなければ、いつまでもオフィスは使いにくいまま。思い切ってリニューアルを行えば、快適な環境で仕事ができるようになるはずです」高橋氏

タウンハウスでは仕事柄、自分たちのオフィスも"ショールーム"と位置付けて、お客様を招く機会が多いことから、早くに書類の整理も進め、オフィス環境の整備には気を使ってきた。今回のリニューアルは、そんな先進の思想がたどり着いた、小規模オフィスの一つの理想なのかもしれない。