トヨタ自動車株式会社

2007年7月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

ジャストインタイム・オフィス
名古屋ミッドランド スクエアに見るトヨタ自動車のオフィス戦略

『オフィスマーケット』にもたびたびご登場いただいている株式会社松岡総合研究所代表・名古屋大学大学院准教授の松岡利昌さんは、内外のファシリティ関連ビジネスに関与しているプロフェッショナルの方々を集めて、ファシリティ資産の構築と戦略的な運営の知識やノウハウを学ぶ場としてファシリティフォーラムを発足させました。その中の一つとして、定期的に実践セミナーを行なっています。
7月17日には丸ビルコンファレンスで名古屋ミッドランド スクエアの事例研究フォーラムを行いました。ここではその内容を抜粋して紹介します。

施設概要

ミッドランド スクエア(豊田・毎日ビルディング)ミッドランド スクエア(豊田・毎日ビルディング)

事業者名:東和不動産株式会社、トヨタ自動車株式会社、株式会社毎日新聞社
所在地:名古屋市中村区名駅4丁目7番1号
敷地面積:11,643.15㎡(3,552.05坪)
主要用途:オフィス、商業施設、駐車場
その他施設:シネマコンプレックス、ホール・会議室、オープンエア型展望施設(スカイプロムナード)、地域冷暖房施設
階数:高層棟/地上47階、低層棟/地下6階、地上6階
構造:鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造
最高高さ:247m
竣工:2006年9月

トヨタ自動車名古屋オフィスの概要

松岡利昌氏:今回のファシリティフォーラムでは、トヨタ自動車株式会社の名古屋ミッドランド スクエアにおける新オフィス構築プロジェクトについてケーススタディを行います。なぜこのような機会を設けたかといいますと、トヨタは自動車メーカーとして誰もがご存じの実績をあげているだけでなく、オフィス構築においても「トヨタイズム」といいますか、トヨタでしかできないような先進的な企業活動を行い、私自身、プロジェクトのお手伝いをさせていただきながら、大変、感銘したからです。本日はトヨタ自動車名古屋総務部のお二人、佐々木さん、水野さんに加え、プロジェクトに携われた関係者に足を運んでいただきました。荒川さんのいらっしゃるトヨタエンタプライズはトヨタグループの建物の管理を行っているマネジメント会社で、今回のプロジェクトではFMのアウトソーシングモデルとしてさまざまな実務を担当しています。平野さんはトヨタグループの広告代理店であるデルフィスの主管担当者としてプロジェクトに参加し、その後、独立されました。日建設計の佐藤さんは建物の設計から含め足かけ5年にわたりプロジェクトに携わってこられた中心人物のお一人です。

佐々木彰一氏:それでは建物の紹介から始めさせていただきます。ミッドランド スクエアは、現時点で国内第5位の高さを誇る超高層ビルで、次の3つのコンセプトに基づいて建設されました。

感動と潤いの都市空間......周辺ビルと共に名古屋駅周辺のにぎわいを形成

・駅前の中心、インパクトのある壮観な姿
・5層吹き抜けのアトリウム
・高さ日本一の屋外展望施設

環境・社会への貢献......環境と人に優しい街づくり

・省エネルギー、省コストの徹底
・ライフサイクルコストに配慮した設計
・屋上緑化
・解体・建設時の廃棄物削減

最先端の技術......最先端高性能オフィスの実現

・3層の制振構造による長寿命な構造計画
・世界初のシースルーダブルデッキ、シャトルエレベーター

トヨタ自動車がオフィスとして使用するのは17~40階で、だいたい3分の2を占めています。また1階と2階には1500㎡のショールームを設けました。 ちなみに概要をご覧になればわかるように、自社ビルではありません。したがって私たちのオフィスは、区分所有部分とテナントして入居する賃貸部分にまたがっています。名古屋オフィスの位置づけですが、あくまで本社は豊田と東京であり、ここは国内外の営業機能を集結させた「トヨタの表玄関」という役割を果たします。コンセプトを決めるにあたって、従業員やお客様、経営者などあらゆる人々の立場からどういうオフィスがふさわしいかを考え、「オープン&ホスピタリティー」という言葉で表しました。誰にとっても明るく開放的で親しみやすい空間を目指しています。またセキュリティの確保と、トヨタ流のワークスタイルの変革ができるオフィスであることも重要なキーワードでした。オフィスへのアプローチは、駅から直結した地下と1階からシャトルエレベーターで行います。地下からは23階、1階からは24階に直行。24階がメインエントランスとなっていますから、23階との間はエスカレーターでつなぎました。24階には総合受付、打合せコーナー、オフィスサポート窓口、セキュリティゲートなどがあり、23階にはカフェテリアと売店、ATMなどの共用施設が設けられています。

上下の階にある執務スペースは、一辺が53mの正方形という広いスペースを活かし、開放感のある空間にしました。ワンフロアに200~250人が収納可能ですから、名古屋オフィス全体で3000人弱になっています。執務スペースのレイアウトは7200mmのデスクによる島型配列で、着座位置を固定する脚などはいっさいなく、5~6人で利用するスタイルにしました。したがって人数の増減によるデスクレイアウトの変更は必要ありません。個人の収納用にはワゴンを使用します。各フロアには、色やデザインの変化によってデスクスペースとは区切られたコミュニケーションスペースが設置されています。喫煙室やパントリーもガラスの間仕切りにすることで視覚的な広がり感を大事にしていますし、上下階を見通せる吹き抜けと階段により縦の移動もしやすくしました。
24階エントランス
24階エントランス


つまりこれによってオフィスのコミュニケーションをより活性化していこうと考えています。その他のフロアでは、メインエントランスからエスカレーターで移動できる25階を会議室とし、可動式間仕切りにより最大700名までを収納できます。また38階には共用会議スペース、39階には同時通訳室を備えた多目的会議室などを設けました。26階はフロア全体を使った従業員食堂で、最大700名の食事が可能です。3000人弱の従業員のうち半数がここで食事をすると想定されるので、2回転で全員が座れるだけのスペースを確保しました。お昼休みも30分のシフトでずらしており、エレベーターの混雑を防ぐようにしているのです。

佐藤 健氏:デザイン的な話をいたしますと、まず24階のメインエントランスは吹き抜けによる開放感のある空間が特徴になっています。最初はここに床を張ってスペース効率を高める案もあったのですが、国内外のお客様が訪れる場所であり、かつシンプルに空間を構成したいとの要望からこのようなスタイルにしました。一辺53mの正方形のフロアにこれだけの吹き抜けを設けましたので、オフィスビルとしてはかなり広い空間を実現し、強いインパクトを与えられたと思っています。

佐々木彰一氏:次に、ビルの機能の一つであるITについて解説します。せっかく新しいビルに移転するということなので、ITによるワークスタイルの変革にもチャレンジしています。オフィスのどの場所でも仕事ができるように有線や無線LANアクセスポイントを設けるだけでなく、プロジェクターやプラズマディスプレイを会議室やコミュニケーションスペースに設置。さらに新しい試みとしてP-Stationというシステムを導入しています。これはP-StickというUSBデバイスをPCに挿すだけで利用でき、ケーブルを使わずにネットワーク経由で大型ディスプレイへの表示やファイル転送、グループワークが可能です。

荒川和紀氏:オフィスの利用面では、もう一つ大きな改革をしました。これまでさまざまなサービスを受けるとき、目的により窓口がバラバラでした。コーヒーなどの飲みものは喫茶室、会議などの会場設営は庶務グループ、さらにマイクだけは施設グループといったように発注側が別々に連絡をとらなければならず、効率の悪さが指摘されていたのです。このため新しいオフィスでは、オフィスサポートサービスの窓口一元化を図りました。これはサービスを受ける側にとって担当者探しの手間が省けるのは当然ですが、サービスを提供する私たちにとってもすべての業務データの管理が可能となり業務改善のベースを作ることができたのです。ただ、これは今回の改革の一部に過ぎません。総括ファシリティマネジメントとして名古屋オフィスの総務が個々に発注していたサービスをすべて一括して私たちにアウトソーシングし、サービス全体としての最適化を進めることになったのです。
P.Station利用シーン
P.Station利用シーン


我々が担当しているのはオフィスサポートサービス以外に、清掃、物流、印刷があり、1人のスタッフがさまざまな分野の業務を処理できる「多能工化」を進めることにより、全体管理によるコストダウン・CS向上を実現しています。

佐々木彰一氏:補足しますと、多能工化というのはトヨタではよく使われる言葉です。担当領域を細かく分けてしまうと、たとえば印刷を発注している人は自分の仕事がなければ手が空いてしまいますが、そのとき、他の仕事も手伝えるようにしておけば無駄が生じません。つまり、1人がいろんな仕事をできるようにすることで効率的に働けるのです。もともと工場で進めていたことですが、こうやってオフィスにも応用が可能だということです。

トヨタ自動車名古屋オフィスの戦略

松岡利昌氏:ここからはトヨタ自動車名古屋オフィスについて、自由に話し合っていきたいと思います。最初は私自身の驚きとして、トヨタにはさまざまな固有の言葉があり、地元の書店に行くと「トヨタ用語集」といった本まで売っているほどです(笑)。しかしそんな言葉一つひとつにトヨタイズムが表れていると思いますので、そのあたりも含めていろいろ解説していただけるとうれしいのですが。

平野幸司氏:私は今回のプロジェクトではコンサルタントというか、よろず相談役という位置づけで参加していたため、客観的に眺めることもできました。そこで感じたいくつかのポイントからお話ししましょう。第一はテナントビルにオフィスを構築したという点です。それにも関わらず、エントランスの吹き抜けや自社専用の物流用エレベーターなど、カスタマイズしまくりで(笑)、一般のテナントビルならあまりやらない大改造を沢山しているんです。つまりトヨタは、自分たちにとって最適な環境をつくることに非常に貪欲なのですね。このため、だめもとでも要求を出し、どこまで可能か探っていこうとします。第二のポイントは、オフィス自体は奇をてらわず、極めてノーマルだということです。しかし一つひとつの決めごとについては、なぜそれをしたのか理由がはっきりしている。つまり無駄がなく、「使わないものはつくらない」という主義を貫いています。したがって、ここのオフィスに限らず「死にスペース」はほとんどないのです。第三は決定プロセスを大事にする姿勢です。すべて合議制で、定例会議では時間がかかっても納得できる結論を出します。そしてその結論は、そのあと覆されたりしません。ですから、逆に、今、決定できないようなことについては、「これについてはこの段階で結論を出そう」と先延ばしにもしてしまいます。こういうところが非常に合理的なんですね。そんなトヨタらしさをもう少しわかっていただくために、先ほど松岡さんがおっしゃられたトヨタ用語についての解説もしておきましょう。

ジャストインタイム

必要なものを、必要なとき、必要な分だけ提供すること。「オン」ではなく「イン」である点が重要です。

カイゼン

一般の言葉である「改善」と違うのは、誰かの命令で行うのではないからです。みんなの心の中にカイゼンをする芽があるのです。たとえば名古屋オフィスでも最初のころは食事どきになると食堂へ行くエレベーターが混み、不満の声が生じました。それに対してさまざまな対策を行いましたが、一方で従業員の側も自分たちなりに時間をずらすといった工夫をし、今では混雑はかなり解消されています。これもトヨタらしいカイゼンの一例なのです。

ヨコテン

これはトヨタで仕事をしていると本当によく耳にします。いい事例や考え方を別の案件にも活かしていくといった意味です。

トヨタオフィスの概要

松岡利昌氏:私が面白いと思ったのは、トヨタの人がやたら「うれしさ」といった表現をすることでしたね。満足度という意味なのでしょうが、「それをつくると誰がうれしいの?」といった問いかけを会議中にされると、ふと、深く考え込んでしまいます。わかりやすいだけでなく、非常に奥の深い言葉だと思いますね。私たちもオフィスをつくるとき、そこで働く人や訪ねてくるお客様が本当にうれしいと感じるか、考えなければいけません。もう一つ、トヨタ社内のコミュニケーションで感心するのは、会議では全員がとにかくよく喋りますよね。その他、プロジェクトのメンバーで合宿したり、インフォーマルな部分では歓送迎会みたいなのがやたら多かったり、情報の交換や共有の機会が非常に多い会社だと思いましたね。

佐々木彰一氏:もともと大部屋主義で、関係者が全員、一つの場所に集まって自由に話し合う伝統があるから、会議で遠慮なんかすることはありませんね。情報の共有が大切なことは、みんなの心に染み込んでいるのだと思います。このため、プロジェクトルームを設置するときにはメンバーのデスクだけでなく打合せ用のスペースも一緒につくるようにしますね。それにより、いつでもそこに人が集まって会議ができるようにしているのです。

松岡利昌氏:昼休みが終わったあとにみんなでデスクの周辺に集まっていますよね。プロジェクトルームにいる人も本来の部署に戻って、しかも立ったまま話をしている。

佐々木彰一氏:それは昼礼ですね。朝だと全員が集まれないので、午後の始業前に集合し、情報交換をします。仕事の進行状況だけでなく、「子どもが風邪気味だから今日は早く帰りたい」といったプライベートな話まですることで、幅広い情報共有ができます。

松岡利昌氏:そういうシーンを見ていると、この会社はオフィスでの業務上のコミュニケーションだけでなく、自然に情報共有ができる組織だと感じました。

佐藤 健氏:コミュニケーションの良さと並んでトヨタですごいと思ったのは、「走りながら決定する」といわれるスピード感ですね。たとえば変更事項などがあって連絡したとき、普通の企業ですと決定して返事が来るまで1週間なんていうのがざらですが、トヨタはだいたい次の日に電話が来る。今回、厳しいスケジュールの中でもさまざまな要求を形にできたのは、トヨタ側のスピードによる部分が大きいと思いますね。

水野博幸氏:決定のスピードが速いのは、現地現物というトヨタ用語があるように現場の判断が優先されるからだと思います。もちろん会社としての決裁のプロセスはあり、たとえば名古屋オフィスをつくるといった最終決定は役員レベルで行いますが、その後の実務面ではそれぞれの担当者に任されていますね。ですから、若い人であっても堂々と上の人に意見できるし、「現場ではこうです」と言えばほとんどの場合、了承されます。ただ判断をするための材料は必要ですから、社内外を含めたベンチマークは徹底的に行ないます。名古屋オフィスでも東京本社との比較などを細かく行って詳細を決めていきました。つまり現地に足を運んで得た情報と、ベンチマークの成果によって決定へのスピードが速くなるのです。

松岡利昌氏:よくわかりました。ここで名古屋オフィスの運用面の工夫について、先ほど話がありましたトヨタエンタプライズへのオフィスサービスのトータルアウトソーシングについて、もう少しお聞きしたいと思います。いわゆるオフィスコンシェルジュを置くのはトヨタグループにおいて初の試みでしたね。かなりご苦労はあったのですか?

荒川和紀氏:導入にあたっては、私も含めたプロジェクトメンバーで1年間、名古屋総務部に出向し、企業風土を知り、総務としての仕事を知るために実際の業務を社員として行いました。そこでオフィスサポートサービスとして必要な業務だけでなく、どんな要望があるか、どんなクレームがあるか、すべてピックアップしていったのです。そしてその情報を基に新ビルでの運用を決定していきました。"オフィスコンシェルジュ"としての役割を担うオフィスサポートサービスは、効率や管理面のメリットだけでなく、サービスの質を向上させビルのコンセプトでもある"オープン&ホスピタリティー"の実現に大きな役割を果たしています。たとえば名古屋オフィスには海外からのお客様も多いのですが、開催されるミーティングスタイルに合わせてランチの用意をしたり、お茶に合わせてお菓子の提供を行うことがあります。そういう工夫をすることでトヨタのイメージアップが実現できていると思いますね。もちろん社内からも評判はよく、今後もサービスの向上を目指していきたいですね。ユーザーの生の声を聞き、サービスに生かすという点で、松岡さんから指導を受けて導入したリクエスト・マネジメント・システムが役に立っています。

松岡利昌氏:補足しますと、リクエスト・マネジメント・システムとはサービスの内容ごとに運用の業務フローをつくっていくことができるシステムで、サービスの品質評価まで可能です。訪れてくるお客様へのおもてなしもオフィスサービスの一つですから、トヨタ流の「うれしさ」を実現できるというわけですね。このようなオペレーション上の工夫では、名古屋オフィスへの引っ越しが今回のプロジェクトの中でも最大のミッションの一つといわれたのですが、それについて教えていただけますか?

佐々木彰一氏:ビルの竣工は2006年の9月ですが、その後、内装や設備の工事があり、年末年始に一気に引っ越しを行うことになりました。6日間で3000人分の荷物を運ぶというトヨタでは過去最大の移転プロジェクトだったのです。しかも旧名古屋ビルだけでなく、東京本社や名古屋駅前にあった別のオフィスから移ってくる人もいただけに、ルートは複数になってしまいました。その他、問題点としては、繁華街のビルなので大型トラックが使えないとか、荷物用エレベーターが少ないとか、いろいろあったのです。このような困難が予想されるミッションだけに、私たちはその3年前から着々と準備を進めてきました。まず、すべての社内書類の量を実測したところ、ダンボール箱で約5万箱分あることがわかりました。ただしその中には廃棄すべきものもたくさんあるはずですし、高いお金をかけてゴミを運ぶのももったいない話ですから、「半減!」と目標を掲げて徹底的に「捨てる」活動をしました。その結果40%の書類を削減できました。次に綿密なスケジュールを作成し、前年には実際にトラックを走らせて時間通りに輸送が可能かのチェックも行いました。工夫したところはたくさんありますね。たとえば搬入するフロアにアドレスを付けるのはどこでもやるでしょうが、さらにエリアごとに色分けし、そのマップをあらゆるところに掲示することで輸送のミスをなくすようにしました。またアドレスを書いたラベルをダンボール箱の側面に貼るのですが、その場所の間違いを防ぐために上面から見てもわかるように箱に矢印を印刷したのです。つまり、あっちこっち見なくてもすぐにラベル面だけを揃えられるわけで、この工夫は輸送会社からも「今後、採用したい」といわれました(笑)。とにかく、引っ越し一つとっても外部に任せずすべて自分たちで計画を立て、カイゼンを繰り返して詳細を詰めていきました。ダンボール箱をバラでトラックに積むのではなく、パレットに乗せて一気に出し入れできるようにしたのもその一つです。これらの努力の結果、行方不明や破損したダンボール箱はほとんどありませんでした。連日、予定していたよりも早く作業が終わり、ミッションとしては大成功に終わったのです。

水野博幸氏:移転のプロジェクトは、まさにトヨタらしさを形にしたものだったと思いますね。終わってみれば「うまくいったね」の一言で片づいてしまいますが、その前に延々と準備を行い、カイゼンを続けてきた過程は、かなり壮絶なものでした。実際には、引き渡しを受けた9月から引っ越しまでの3カ月間、家具を搬入した中で組み立てて設置したり、電源やネットワークの工事を進めたりと、ほとんど綱渡りのようなスケジュールで作業を進めてきたのですが、無事に終わったのは、やはり徹底した準備と計画立案、見直し、そして実行へのサイクルを確実に行ってきたからだと思います。トヨタというと何か特別な会社のように思われがちですが、私たちは常にあたりまえのことをやっているに過ぎません。ただそれを、前回より少しでも良くし、そして間違いなく実行していくという繰り返しによって向上させてきたのです。だから、次に新オフィスをつくるときにはもっと難しいことに挑戦し、大きな成果が得られるようにしたい。そういう姿勢がいちばん大切なのではないでしょうか。

入退室管理写真左から、株式会社日建設計 設計部門設計室主管 佐藤健氏、トヨタ自動車株式会社 名古屋総務部施設グループ主任 水野博幸氏、株式会社トヨタエンタプライズ ミッドランドスクエア事業部副所長 荒川和紀氏、株式会社松岡総合研究所代表・名古屋大学大学院環境学研究科施設計画推進室担当准教授 松岡利昌氏、トヨタ自動車株式会社 名古屋総務部総務人事室長 佐々木彰一氏、株式会社ネオブレイス 代表取締役 平野幸司氏

ファシリティフォーラム(松岡塾)

ファシリティフォーラムは、ファシリティ資産の構築と戦略的な運用(ファシリティマネジメント)を支援する目的で設立されました。土地・建物・オフィス・工場・倉庫・病院・学校などのファシリティ資産を上質な社会インフラとして活用・維持するためには実践的な手法が欠かせません。ファシリティ(施設)経営について、国内外の第一線で活躍する実務家の先進情報を共有化するとともに、業種や業界を超えて経営戦略に基づいたファシリティのあり方を研究しています。ファシリティフォーラムは会員制の研究会で、法人会員を主体とした組織で運営されております。詳細については、ファシリティフォーラムホームページをご参照の上、運営事務局にご連絡ください。

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