JPタワー名古屋

2013年11月取材

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記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

「全てのオフィスワーカーのFIRSTであるために」を開発コンセプトにした中部圏最大級のオフィスビル

現在、名古屋・名駅エリアで3棟の大規模再開発が進行している。そのうちの1棟が日本郵便と名工建設が事業主の「JPタワー名古屋」だ。この開発は、古くからこの地に立地する「旧名古屋中央郵便局」の建替えとなる。竣工予定は2015年秋。完成後は、約3,683坪の敷地に高層棟と低層棟の2棟が建てられる。その具体的な開発コンセプトや目的、特長について、事業主の1社である日本郵便の担当者にお話を伺った。

青木正克氏

日本郵便株式会社
不動産部 テナント営業室係長

青木正克氏

名古屋駅前で開発中の『JPタワー名古屋』

名古屋駅前で開発中の『JPタワー名古屋』。完成後は中部圏最大級の高層ビルとなる

今まで以上に地域貢献をするために建替えを計画
オフィスに特化した中部圏最大級の高層ビルが竣工

2012年、名古屋駅前に立地していた「名古屋中央郵便局名古屋駅前分室(以下、中央郵便局分室)」の建替えが正式に発表された。発表自体は最近だが、中央郵便局分室の建替えについてはずいぶん前から議論されていたという。

「中央郵便局分室は1956年に竣工した局舎で、その立地の良さから郵便業務のほかに貯金や保険窓口、ATMなど、多くの方に利用されていました。今回の建替えの理由は、もちろん建物自体の老朽化というのはありますが、それよりも今まで以上に地域貢献できるサービスを考えたときに高度利用できるビルが必要と考えたからです。かねてからの郵便、貯金、保険の主要3事業を、より満足度の高いサービスとして皆さまに提供したい。総合生活支援企業としてユニバーサルサービスを安定的に提供するためには、それを支える第4の事業の柱が必要だと考えました。複合的な判断の中で導き出されたのが不動産事業だったのです」

もちろん、建替えを行なっても今まで通りの郵便局としての機能は継続される。

「JPタワー名古屋の1階に郵便局・ゆうちょ銀行を備える予定です。現在は鉄道輸送からトラック輸送に変わり、集配や配達に関する機能が駅の近くである必要性が少なくなりました。そのため、お客さまと直接やり取りをさせていただく窓口業務が中心になります」

今回の開発は約3,683坪の敷地面積に低層棟と高層棟の2棟で構成される。低層棟の1階は市からの要望事項でもあったバスターミナルをJR東海と共同で再整備。その上階には大型立体駐車場を配置。約700台の駐車が可能で、そのうち約320台をビル用とし、直接オフィスエントランスにアクセスできる動線を確保した。高層棟は、低層部の4層については商業フロア、その上層は全てオフィスフロアとなる。

次世代オフィスを考えたきめ細やかな環境対策とBCP対応でオフィスワーカーに配慮

「環境への配慮を考えたときに、以下の特長が生み出されました。一つは、バーチカルガーデン。これは、低層棟の壁面に緑化を試みるものです。高層棟はビジネスに特化したビルなのでシャープなイメージでいいのですが、その分、低層棟は温かさが感じられるものにしようと。目にも環境にも優しいものに仕上げるつもりです。これだけの規模の壁面が緑化されるビルはそう多くないでしょう。そして名駅通り沿いのアベニューガーデンとオフィス棟北側のステップガーデンに植栽を施し、緑豊かな空間の創生を実現させます」

バーチカルガーデン

壁一面に温かさが感じられるように緑化を試みたバーチカルガーデン


そのほか、次世代の環境対策といわれる多くの機能を採用している。自然換気システム、Low-Eペアガラス、風力発電、太陽光発電、気化冷却システム、雨水貯留槽の設置など、さまざまな視点から環境対策を行なうことで、CO2排出量約3割削減を可能にする。その結果、建築物総合環境性能評価システム「CASBEE名古屋2010」においてSランクを取得予定だ。
また、想定される自然災害に備えて、オフィスワーカーの安全とBCPについても万全の備えを確保している。


JR名古屋駅からは貫通通路で直結

JR名古屋駅からは貫通通路で直結。地下鉄や地下街からの動線も確保する


「名駅の周辺は海抜が比較的低いため、浸水時の対策は講じてお かなければなりません。特に最近増えている集中豪雨の対策として、受変電設備や非常用発電機などの重要設備機器を地下ではなくビルの上層階に設けます。それに加えてビルの出入り口に電動の止水板を設置することにしました。高さ約60cmのもので、これにより被害を最小限に食い止めることができます。この地域のオフィスビルで電動止水板を設置しているビルは、まだそれほど多くないと思われます」

「非常時の電力供給に関してもしっかりと対応いたします。2回線受電方式を採用していますので、1回線に不具合が生じても、もう一方の回線からの受電を可能にします。加えて、非常用発電機も設置。テナントの皆さまの事業継続を支援します。長時間キュービクル式ガスタービン発電機を2台装備し、停電時は共用部だけでなく専用部にも48時間にわたって10VA/㎡の電力を供給。非常時における初動対応等に必要な電力を確保いたします」

ビルの構造は制振構造を採用。揺れを軽減する粘性ダンパーや鋼材ダンパーなどの制振装置を各層に配置する。

「地震だけでなく強風の影響も考慮しています。JPタワー名古屋は、高さのある建物の割に横に長い形状であることから、揺れを軽減させるために3種類のダンパーを用意しました」

また、オフィスワーカーだけではなく、非常時には高層棟1階のアトリウムを開放し帰宅困難者の方の受け入れを実現できるように検討を重ねている。

「私どもは140年以上にわたって、この地域の皆さまと一緒に歩んできたわけです。民営化されたからと言っても、お客さま第一主義の気持ちは変わることがありません。ですから、これからも地域の皆さまが安心できるような環境を整備していきたいと思っています」

ワーカーのためにというオフィスビルのコンセプトは
お客さま第一主義を掲げた郵便局ならではの視点が凝縮

JPタワー名古屋の特長はオフィスに特化したビルだということ。「オフィスワーカーのために」を基本コンセプトに多彩な機能を盛り込んでいる。

「ビルの13階は入居テナントの皆さまが自由に使用できる共用フロアとし、食堂やカフェ、ラウンジ、貸会議室といったオフィスワーカーの皆さまをサポートする機能をビル側で用意しています。利用時間や座席数などは今後の決定になりますが、企業活動をサポートする充実した利便性の高いエリアになるでしょう」

建物形状を決める際も、オフィスワーカーの使いやすさを追求したという。

「テナントの皆さまに働きやすい空間を提供することを一番に考え設計を進めました。レイアウトしやすい整形の無柱空間を追求した結果、このような形状になりました。そのため、デッドゾーンがなくなり、真に必要な面積だけを借りることができます。スペース効率が向上し、テナントの皆さまにとって使いやすい空間になるでしょう。好立地な名駅に移転することで仮に賃料単価が上昇したとしても、借室面積は圧縮できますから、結果としてトータル賃料を抑えながらの移転が可能になるのではないでしょうか。前述の13階サポートフロアを上手に活用することで、福利厚生機能の充実化に加え、執務室内の会議スペースの圧縮も可能になりますので、さらに総額賃料を抑制できるはず。3階にはカンファレンスルームをご用意いたしましたので、大人数の会議にも万全です。これらビル内の機能を上手く活用することで、オフィスの最適化を図りつつ効率化も実現できる。経済面、BCP、環境対策と、まさにオフィスワーカーのためのビルと言えるのです」

13階の共用フロア

入居テナントが自由に使用できる13階の共用フロア。ワーカーサポート機能をビル側で用意する

「ワンフロア面積は約700坪。もちろん、分散拠点を集約してワンフロアを使う事や複数フロアを求められるテナントさまもいらっしゃるでしょう。しかし、企業ごとに必要規模は違ってくるでしょうから、たとえば、支店や営業所として小規模で使う場合もあります。多種多様な企業ニーズに対応できるように、最小貸付面積を約39坪としました」

「また、コア部分を西側に配したことで西日対策にも寄与しています。名古屋の夏は暑いですからね。そして何といってもオフィスから名古屋城を望める最高の眺望を提供できるのは希少だと思います」

そのほか、各フロアには2ヵ所のリフレッシュコーナーを実装。喫煙スペースへの転用も想定し、企業ごとに異なるさまざまな要望に応える用意ができている。
ワーカーへの充実したサポート機能を予め用意している点は、お客さま第一主義を掲げて事業を運営してきた日本郵便ならではの発想なのかもしれない。入居後の居心地の良さも考えて、品質の良いオフィスを用意する。今後もそういった不動産開発を続けていきたいという。

「実は名駅1-1-1という住所表示を提供できそうなのです。入居テナントの皆さまにとって、ステータスが高いビルに入居することで企業イメージが向上し、結果として業績が上がる。そんな貢献ができると嬉しいですね」

竣工は2015年。建築中で当然実物はまだ出来上がっていない。そこで、日本郵便はオフィスビルでは珍しいモデルオフィスを用意した。

「物を見ないとイメージがわかないというお客さまも少なくありません。それで、プレゼンルームに加え、モデルオフィスを用意しました。プレゼンルームには、建物パースやエリア模型を用意。今後名駅エリアがどのように変わっていくかを感じることができます。一方、モデルオフィスはマンションのギャラリーみたいなもので、39坪の原寸大の部屋をつくっています。そこには什器を配置し、入居後のイメージを体感できるようにしました。これからも要望があれば、お客さまのためにできることは行なっていきたいと思っています」

ワンフロア約700坪の大空間

ワンフロア約700坪の大空間。約39坪の小規模ニーズにも対応可能だ

3棟の大規模ビルの竣工でマーケットが変わる。名古屋のポテンシャルが変わる

名駅エリアに3棟の大規模ビルが竣工する。それらの新築ビルによって名古屋には6万坪もの大量の新規供給が生まれることになる。

「2015年から2016年にかけて3棟の大規模ビルが竣工することには、大きな意義があると思っています。それによって名駅がさらに注目され、名駅の付加価値が上昇するでしょう。まずは名駅全体に注目していただき、それから個別のビルを見ていただく。それぞれが異なる魅力を持っているビルですから、あとはお客さまが経済条件や重視するポイントで選んでいただければと思います。結果として、企業集積が加速し、このエリアがより発展していけばいいですね」

3社は単なる競合会社ではない。相乗効果を生み出すために、手を取り合いながらお互い進化し、地域を活性化させていければと語る。

「今後、名駅エリアは、商業施設やホテルなどもより充実し利便性がいっそう高まるでしょう。そして進化を続けて次世代のビジネス拠点に相応しいロケーションになると思っています」

名古屋駅は、新幹線をはじめとした各路線が乗り入れる交通結節点として、かねてから利便性は評価されていた。さらに2027年のリニア中央新幹線開通で、その立地メリットは益々高まりをみせると思われる。

「リニア中央新幹線の停車駅となることで名古屋のポテンシャルが今以上に高まるでしょうね。東京-名古屋間が約40分ですから、本社機能を東京にこだわる必要がなくなるかもしれません。名古屋自体のマーケットの性格や性質も変わってくるかもしれませんし、立地に対するお客さまの判断基準に変化が現れるかもしれません。そういった時代の変化に対応していくためには、次世代のビジネス拠点に相応しい次世代のオフィスビルが必要なのです」

JPタワー名古屋は、駅からのアクセスでも快適さを発揮する。

「JR名古屋駅から2階のオフィスエントランスまでは貫通通路で直結。雨天時でも傘をさすことなく濡れずに入館できるルートを提供いたします。加えて、地下鉄や地下街からの動線も確保しています。駐車場も完備し、バスターミナルにも直結している。まさに全て揃っていますね」

オフィスエントランスへのアクセス優位性や、落ち着いた雰囲気のオフィス特化型ビルという性格、オフィスワーカーの快適と安心を第一に考え高品質・高機能を追求した点など、まさにお客さま第一主義を形にしたビルといえる。

「私どもは140年以上にわたって、皆さまの安心と信頼を礎に郵便・貯金・保険のサービスを提供してまいりました。まさに地域の皆さまと共に歩んできたわけです。この不動産事業においても、お客さま本位のサービスを提供していきたいという思いは変わりません。ですから、これからもお客さまであるテナント企業の皆さまと地域の皆さまの立場に立った不動産事業を展開していきたいと思っています」

JPタワー名古屋


【貸室概要】

事務所フロア 地上5階~39階

基準階面積 約2,300㎡(約700坪)

基準階天井高 2,800mm

基本モジュール 3,600mm×3,600mm

床荷重 500kg/㎡(ヘビーデューティーゾーン800kg/㎡)

*コア内貸室は1,000kg/㎡

OAフロア 100mm

天井方式 600角グリッド型システム天井

照明方式 LED照明

コンセント容量 60VA/㎡

※本記事の掲載内容は、今後変更となる場合があります。 また、掲載画像は、実際とは異なる場合があります。


JPタワー名古屋

企業の多様なニーズに真摯に耳を傾け、ビジネスを成功に導くための機能を結集。その立地、パフォーマンス、安全性はまさしく次世代のオフィスビルのあるべき姿

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