なんばSkyO(なんばスカイオ)

2017年10月取材

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記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

「伝統と先進」をコンセプトに誕生する大阪の新たなランドマーク

大阪・難波エリアで大規模な再開発が進行している。開発コンセプトは「伝統と先進」。この地の歴史と伝統を継承しながら新たな文化を創出させる計画だ。同プロジェクトのコンセプト、未来像について、事業主である南海電気鉄道株式会社の担当者にお話を伺った。

川畑 雅史 氏

南海電気鉄道株式会社
プロジェクト推進室
難波開発部 課長補佐

川畑 雅史 氏

大阪最大のターミナルの一つとして発展してきた「難波」

外観イメージCG

外観イメージCG


1885(明治18)年創業の南海電気鉄道株式会社は、純民間資本として現存する日本最古の私鉄である。開業当初は大阪と堺を結ぶ阪堺鉄道という名称であったが、後に、古来の街道名である「南海道」に由来して南海鉄道に名づけられ、事業が引き継がれた。

JR大阪駅を擁する梅田地区を「キタ」と呼称するのに対して、難波を中心とするエリアは「ミナミ」の呼称で親しまれ、ともに大阪最大のターミナルとして発展してきた。難波駅の初代駅舎は日本初の私鉄駅舎であり、その後、時代の変遷に従って何度も建替えが行われてきた。2階建ての3代目駅舎の頃から駅周辺は賑わうようになり、1932(昭和7)年7月に現在の4代目駅舎が竣工した。

球場跡地に建設されたなんばパークスと昔ながらの難波の街並み

南海鉄道(当時)を親会社として1938(昭和13)年に結成されたプロ野球チーム「南海軍」は本拠地となる球場を建設することになる。1950(昭和25)年に難波駅南口に面する駅前の一等地に大阪スタヂアムは完成。プロ野球人気の高まりを背景に、難波の街はより一層活気づくことになった。その後、1988(昭和63)年に球団はダイエーグループに譲渡。福岡へ移転するまではホーム球場であった。

「大阪スタヂアムの跡地は『難波再開発A-1地区』と称され、ここに大規模複合施設『なんばパークス』が建設されました」

なんばパークスは商業棟とオフィス棟で構成。商業棟には飲食や物販の店舗だけでなく、シネマコンプレックスや円形劇場(イベントスペース)、南海ホークスメモリアルギャラリー、屋上庭園(パークスガーデン)などさまざまな施設を備えている。

その他、難波駅周辺では、1980(昭和55)年になんばCITYが全館開業、1990(平成2)年には南海サウスタワーホテル大阪(現スイスホテル南海大阪)が開業、その後「南海ターミナルビル再生計画」に着手し、ターミナルビルである南海ビルの外壁改修工事や、難波駅1階上部の吹き抜け空間の新設工事、髙島屋大阪店新本館計画関連の改修工事なども進められている。

「1978(昭和53)年のロケット広場オープン以来、ミナミの待ち合わせスポットとしてシンボル的な意味合いを持っていたロケットのモニュメントも撤去されることになりました。そして2009(平成21)年、関西国際空港と直結する大阪の玄関口として『なんばガレリア』が新設されたのです。それによって、高さ約30m、広さ約1,200㎡の広大な室内吹き抜け空間が創出されました」

初代難波駅

初代難波駅


難波空撮

難波空撮 昭和55年頃撮影

「南海ターミナルビル再生計画」がスタートするまで

難波駅が併設された南海ビルは、メインテナントに髙島屋百貨店を迎え、戦前から難波の賑わいの中心地であった。髙島屋は開業当時、屋号を「南海タカシマヤ」とし、日本で初めて冷暖房を完備した百貨店である。

「南海ビルの外壁改修では、築80年近いビルの歴史を重視して、できるだけ外観のイメージを損なわないようにする方針が貫かれました。そして長年難波のシンボルとして親しまれてきた正面庇下にあしらわれたモザイク壁画なども竣工当時のままに復元したのです」

南海ビルはテラコッタタイル貼りのコリント様式の近代建築で、2011(平成23)年に国の登録有形文化財に登録されている。同ビルが国の登録有形文化財となった背景には、こうした細やかな配慮が関係しているものと思われる。

現在、この南海ビルに隣接した区画で再開発工事が進行している。それが2018(平成30)年9月竣工予定の「なんばスカイオ」だ。その名称は南海電気鉄道が2017(平成29)年に開催した「ネーミング総選挙」の結果を踏まえて決定された。

スカイは文字通りに「SKY(空)。関西国際空港に直結するインターナショナルゲートシティ・なんばのランドマークタワーとして世界を飛び回る国際的な交流拠点であることを表現している。「O」は、「Osaka(大阪)」と地球の丸を象徴。世界中の人々がこの大阪に集い、つながり、大きな輪が広がるといった願いをイメージしているという。

伝統を保存しつつ先進機能を付加しながら再生する

大阪スタヂアム跡に建てられたなんばパークス、ロケット広場跡に新設されたなんばガレリア、老朽化した南海会館ビルの建替えなど、この南海ターミナルビル再生計画ではいわゆるスクラップ&ビルドの側面が存在する。だが、同計画の本質は決してそれだけではない。むしろ、古いもの、歴史あるもの、伝統的なものをできる限り保存し、その上で先進の機能を持たせて、便利で安心・安全、快適な環境を生み出すというのが、同計画の最大の骨子となっている。

「南海電鉄が掲げる開発のコンセプトは、『伝統と先進』。例えば、南海ビルの外壁改修後に設置されたLEDによる掲示板では、いち早く多言語表示を導入することで海外からの来客にも利用しやすいように配慮されています」

「難波駅3階北改札口のすぐ西側に『なんばスカイオ』のエントランスを設置します。また、隣接する髙島屋大阪店とも『なんばスカイオ』の5階で接続します。仕事帰りに気軽に買い物に立ち寄る人も多くなるのではないでしょうか。さらに、スイスホテル南海大阪のロビーのある6階で接続しておりますので、国内外から出張してきたビジネスマンにとっても高い利便性を提供します」

このように恵まれた立地環境に加えて、基準階フロア面積約560坪、延床面積約1万坪超の先進的なオフィス機能を備えた地上31階建ての大規模オフィスビルの供給は、きわめて高い付加価値をテナント企業に提供することになる。

テナントが魅力を感じる価値のある複合ビルが誕生する

「なんばスカイオ」のテナント誘致は、開港後20年余を経て利用客も増加中の関西国際空港と直結することや5鉄道、8路線が集まる、ターミナル駅という地の利から金融系など来店系の企業をはじめ、外資系を含むさまざまな業界・業態の企業が対象になる。

「『なんばスカイオ』は、東日本大震災後の設計ということもあり、耐震性およびBCP機能の面において現時点で考え得る最高水準のスペックが用意されている。2種類の制振装置を採用したハイブリッド制振構造に加え、非常時の電気供給も万全です。自前の非常用発電機を備え、災害時に外部からの電力供給がストップした場合にも専用部の照明及び空調機能は通常時の50%程度の電力を最大72時間維持することが可能です」

「これは、同規模のビルと比較しても高い電力供給能力といえます。さらに、災害時にしばしば指摘されるトイレの問題につきましても、上下水道のインフラ途絶後、最大10万回程度の継続利用ができます。万一、阪神・淡路大震災クラスの地震が起きたとしても事業継続は十分可能です。こうした点に魅力を感じた大手企業からの問合せも増えていますね」

そして、今回の誘致活動の中で最も特徴的といえるのが、9階のメディカルフロアである。ワーカーの健康を第一に考えたとき、オフィスビルの中にMRIやCTなどの医療機器を備えたクリニックがあれば、日常の診察や健康診断、先端医療による検査を一か所で受診できることは、ワーカーにとって利便性が高い。また、医療ツーリズムを受け入れることができる病院を持つことは、難波という街の価値を高めることにもつながる。こうした考えから、がん治療で高い評価を得ている南東北グループを誘致した。ビルのテナントはもちろん、地域住民や外来者でも気軽に利用することができる。

その他のビルスペックとしては、天井高3,000mm(基準階 一部フロアは2,900mm)のゆったりとした約560坪の整形空間、個別空調システム、グリッド式システム天井、LED照明、自然換気システムなど多くの快適機能を備えている。

基準階フロア

基準階フロア


フロアスペック

フロアスペック


フロア断面図

フロア断面図


北側の窓からは御堂筋を見下ろし、南側の窓からは11,000㎡を超える「パークスガーデン」を眼下に望める抜群のロケーションで、オフィス内のアメニティはきわめて高い。さらに6階までは飲食施設、金融関係など上層部で働くワーカーにとって利便性を高める機能を備えている。加えて7~8階のコンベンションホール、9階のメディカルフロアを挟んで、10階がスカイロビーとなっている。ここで低層・中層・高層用のエレベーターに乗り換え、13階から30階が一般オフィスとなる。

コンベンションホールは、7階に最大460人を収容でき、企業が主催するセミナーやシンポジウム、あるいはリクルート会場などにも利用できる貸ホールと8階に少人数から多人数まで対応可能な会議室となっています。

「南海会館(当時)にはかつて『なんば大劇場』と呼ばれる映画館があり、アミューズメントビルとしても注目を集めましたが、なんばスカイオコンベンションホールにはビジネスサポートを目的とした利用を想定しています」

7階コンベンションホール

7階コンベンションホール


10階スカイロビー

10階スカイロビー

大阪の新たなランドマークとして難波の価値向上を目指す

「南海ターミナルビルは大阪のシンボルストリートである御堂筋の南正面に立地しています。いわば大阪のゲートシティの一つといえると思っております。その中に新たにに誕生する『なんばスカイオ』は新たなランドマークとなると考えております」

難波駅周辺には、2003年に竣工したパークスタワーを除けば、これほどの大規模なオフィスビルは存在しなかった。そのため、交通至便な大都市のターミナル駅であるにもかかわらず、企業の多様なニーズに応えきれていなかったといえる。新たに誕生する「なんばスカイオ」によって、難波のイメージは「観光と商業の街」に「ビジネスの街」を加えて大きく変貌することになる。

難波は、南海電鉄を核とする南海グループが最重要拠点と位置づけているエリアである。その難波を、世界につなげる一層魅力ある都市へ発展させるのは南海グループにとって大きな使命である。

取材協力:南海電気鉄道株式会社
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