サンシャイン60

2019年6月取材

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記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

池袋を代表するランドマークは「面白い」を加えたビジネス環境を提供する

日本を代表する超高層ビル「サンシャイン60」。竣工自体は1978年であるが、常にテナント企業に目を向け、その要望に応えるためにリニューアル工事を重ねている。今回の取材では開発の背景を含めて今後の同社の取り組みについてお話を伺った。

斉田 政之氏

株式会社サンシャインシティ
オフィス事業部 次長

斉田 政之氏

サンシャイン60とその周辺

サンシャイン60とその周辺


副都心計画の中で誕生した「教育・文化」を包含した複合施設

8路線が乗り入れる巨大ターミナル池袋駅。1日の平均利用者数は約260万人(2017年調べ)。元々池袋は、都心に集中する業務を分散させるために「都心3大副都心計画」の一つとして策定されたという経緯を持つ。その池袋駅東口徒歩8分圏内に「サンシャインシティ」が立地する。敷地内は「サンシャイン60」「プリンスホテル」「ワールドインポートマートビル」「文化会館ビル」「専門店街アルパ」の5つのエリアで構成されている。

「施設を計画する際に『教育・文化』というキーワードが含まれていました。水族館やプラネタリウム、博物館、劇場といった文化施設やショッピングセンター、さらにはホテルやマンションまで擁する施設群は日本初の大規模複合開発といわれています」

当時は、池袋駅周辺にこそ百貨店が集積していたがそれだけでは街の発展にはつながらない。エリア全体での賑わいの創出が大命題であった。「地域社会に貢献する賑わいの施設をつくる」といった強い思いが開発プロジェクトをスタートさせる後押しとなったという。

「計画にあたり『エリアのシンボルになりえる建物』がコンセプトに打ち出され、最終的に中核を成す超高層オフィスビル『サンシャイン60』が誕生したのです。竣工当時、239.7mの高さは東洋一の建物高でした。中でも展望台は多くの集客を呼び込み、池袋エリアの発展に大きな影響を与えたと思っています。ちなみに『サンシャイン60』と『サンシャインシティ』の名称は一般公募で選ばれました」

今も変わらない「地域貢献」という事業コンセプト

施設計画時の開発コンセプトは①東京における都心機能を分担し池袋副都心を形成する、②周辺住民ならびに後背地住民に対して都市的サービスを提供し、その生活の充実・向上を図る、③池袋の構造変化を誘発するために強力な新しい核を形成する。

「もともとは青少年施設の建設が開発の原点でした。その考えは今でも強く残っており、毎年豊島区内の多くの幼稚園や小学校が文化行事として展望台・水族館見学を続けています」

また、常に新しいことにチャレンジする精神も開業40周年を迎えた今も変わっていない。「施設機能の維持」や「経年劣化の改修」のほか、文化・商業施設の「積極的なリニューアル」で来街者の満足度を高めている。その効果は顕著に表れ、昨年も年間3,000万人超のお客様が訪れた。

都内で最も安全性の高い立地に建てられた超高層ビル

同ビルが立地する豊島区東池袋3丁目は、地震による危険度が最も低い「ランク1」とされている。その安全性の高いエリアに地震の揺れや風圧力などのシミュレーション解析を行ったうえで設計。さらに地下24mの地盤(東京礫層)に直接基礎を構築して、より高い安全性を確かなものにしている。

「同ビルの中では設備・設計部分が最も注目すべき点になります。1978年の竣工ですが、新耐震性能と同等以上の耐震性を有しています。2016年8月には長周期地震動対策工事を完了させました。新たに開発されたダンパを含む3種のダンパを組み合わせる日本初の工法で制震工事を行い、地震発生時の揺れを大幅に低減させます。入居テナントの皆様には安心・安全を提供できていると自負しています」

そのほか、①ビル内の主幹線にトラブルがあった場合は予備幹線に切り替えて対応が可能、②東西2系統の採用により無停電対応が可能、③万が一の停電時は非常用発電機の使用で各防災設備への電源供給を行えること、で安心の電気設備を備える。

完成イメージパース Mitsubishi Jisho Sekkei Inc.
完成イメージパース Mitsubishi Jisho Sekkei Inc.

また、超高圧変電所からの建物内直接受電により、有事の停電リスクを大きく低減している。これらの強力なバックアップ設備でBCP対応を万全にする。

「サンシャイン60は、日本における超高層建築物の先駆けとして当時の最先端建築技術を結集して建設されました。ですから建物指針に準拠しながら日本一の高さに相応しい十分な安全性を確保したと聞いています」


働く場の提供だけではなくプラスアルファをサポートしていく

同ビルを含めた「サンシャインシティ」の特長はさまざまな機能が集積した複合施設だということ。「働く」ことのサポートとして、「買う」「食べる」「見る」「遊ぶ」を提供する。

サンシャインシティの主なビジネスサポート

1. サンシャイン60
地下1階:郵便局
1階:エントランス
4階:テナント専用ラウンジ、コンビニエンスストア、ATMコーナー
6階:テナント専用食堂
7~8階:クリニックフロア、池袋公証役場
9~57階:オフィスフロア
58~59階:レストランフロア
60階:展望台

オフィススペース

オフィススペース

2. サンシャインシティプリンスホテル
7~37階:客室
6階:早朝到着深夜出発便待合室、ムスリム祈祷室
19階:ミーティングルーム
21階:ストレッチルーム
29階:会議室
3. ワールドインポートマートビル
地下1階~1階: ALTA(専門店街)
2階:ナンジャタウン(屋内型テーマパーク)
3階:MAZARIA(VRエンターテインメント施設)
4階:展示ホール
5階:パスポートセンター、コンファレンスルーム
6~9階:オフィスフロア
屋上:サンシャイン水族館、プラネタリウム満天
4. 文化会館ビル
1階:バスターミナル
2~4階:展示ホール
4階:サンシャイン劇場
5階:コナミスポーツクラブ
7階:古代オリエント博物館、貸会議室
5. 専門店街 アルパ
地下1階:噴水広場
地下1~3階:ショッピングセンター

「サンシャインシティのキャッチコピーは『なんか面白いこと、ある』です。開業20周年の時に発表したもので、ここに来ればきっと面白いことが見つかる。そんな場所を目指そうと名付けられました。オフィスビルも同様です。ただ働く場の提供だけではなく、多様なプラスアルファの部分も含めてサポートしていきたいですね」

サンシャイン60に入居しているテナントはコンファレンスルームや貸会議室を割引価格で使用できる。噴水広場も各社のプロモーションでの利用が可能だ。自社サイトなどで使用する社員集合写真の撮影を行っている会社も多いという。

「さらにテナントの皆様には「サンシャイン市民証」というカードを発行しております。本カードを提示することで施設内のショップ、レストラン、アミューズメント施設などで各種サービスを受けられます。この部分はテナントの皆様からの評価が高いですね。複合施設ならではの利点を生かしたサービスとなっているといえます」

今でこそさまざまな種類のサービスを提供しているが、竣工当時はここまで充実していなかったという。少しずつ、時間をかけて、テナントからの生の声を聞きながら確立させてきた。

「テナントの皆様を対象にしたイベントも定期的に行っています。生ビールの飲み比べ会、ワインセミナー、コーヒーセミナーなど、テナント企業の皆様同士での交流も生まれています」

サンシャイン60の中での就業者は約12,000人。多様な人々が集い、交わることが出来るように工夫している。

さまざまな顔を持つ池袋の今後の方向性

2014年、豊島区は*日本創生会議という民間の会議体から消滅可能性都市として東京23区内で唯一選定された。

「具体的には20~39歳を対象にした女性の数が2010年から2040年にかけて著しく低くなるという予測データが出たのです。人口自体は増加傾向なのですが、転出入が活発で定住率が低いらしくて。交通の便もよく、職住遊が身近にある生活環境でありながらファミリー向けの住宅の供給が少ない。公園や緑も少ない。そんなことが少子化に影響していると豊島区政は判断したようです」

その汚名をパワーに変えてからの対応は早かった。豊島区は「女性に優しい街づくり」を掲げ、戦略的な街づくりに取り組むようになる。そして元々アニメやサブカルチャーの文化を持つこのエリアの特性をさらに伸ばそうと考える。そういったメッセージが明確に同社にも届いたという。

「我々としては、以前から複合施設の特長の1つである展示ホールを使って多くのアニメ・キャラクターイベントに取り組んできました。さらに池袋の発展のために今まで蓄積してきたものを出していければと思っています。そして商業、ビジネス、アニメ、サブカルチャーなどがバランスよく集積していることで、決められた色がついていない池袋の魅力をもう一段階上げていきたいと考えています」

*日本創生会議
10年後の世界・アジアを見据えた日本全体のグランドデザインを策定することを目的に、各種提言活動を行っている。運営母体は、旧経済産業省所管である公益財団法人日本生産性本部。

今後も地域一体となって池袋を盛り上げていく

「地域への貢献の気持ちは、サンシャインシティ開業時から全く変わっていません。2019年3月にサンシャインシティに隣接している土地・建物を三菱地所と共同で取得しました。現在、最大有効活用していくための議論を重ねています」

池袋は、ここ数年で大規模オフィスビルの大量供給が予定されている。商業やサブカルチャーのイメージが強かったエリアにビジネスという色合いが加わる。同時に公園の整備事業も行われ、ますます色々な顔を持つ捉えどころのない街になると語る。

テナントと一体で働く環境をつくっていく。同社では、テナントからの要望を把握するために毎年アンケート調査を実施している。その年によって総務担当者宛、一般ワーカー宛と調査対象を入れ替え、サービス面、設備面の改善を遂行する。その結果、オフィススペース内のリニューアル、各階のトイレの改修工事(多目的トイレの設置、個室の増室工事含)、テナント専用ラウンジの改修、エレベーター内の空調工事などを実際に取り組んできた。

女子トイレ
テナント様専用ラウンジ(4F)

「今までは、いわゆる業務集積エリアが企業の皆様に評価されてきました。しかし池袋は都心のビジネスエリアとは違う性質を持っていることを理解していただきたいですね。今後、『働き方改革』が進行する中で、ますますサンシャインシティの魅力が注目されるのではないでしょうか。これからもただ働きにいくだけではなくて、そこに癒しや楽しみや驚きや発見が加わったビジネス環境を提供していきたいと思っています。良好な働く環境は、ビルの設備やオフィスの形状、周辺環境なども関わってきます。どれだけテナント企業の皆様が頑張っても叶えられない部分もあります。ですから我々ビルオーナーの立場で貢献できることを見つけ出して、お客様と共に『働く環境』をつくりあげていきたいと思います」

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