サテライトオフィス事例

サテライトオフィス構築事例

2017.7.28

Planetway Corporation

2017年6月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

好きなところで仕事ができる“Location independent lifestyle”を目指す

日本の東京・丸の内で起業し、その1ヵ月後にはアメリカのカリフォルニア州サンノゼに本社を設立して日本の株を売却。さらに、北欧のエストニアに開発用オフィスを2つ構え、九州・福岡のサテライトオフィスで新規事業のプロトタイプ創造に取り組んでいるPlanetway Corporation。この独自のオフィス展開は、「グローバルスタートアップのための意図的な戦略」だと語る同社代表の平尾憲映氏にお話を伺いました。

 

シモダ テツヤ氏

Planetway Corporation
代表取締役CEO
Founder

平尾憲映氏

 

エストニアの電子政府構想を民間向けにカスタマイズした情報連携基盤

Planetwayの事業内容は、大きく分けて2つあります。1つは、グローバルの通信サービス事業。手持ちの携帯電話の番号が、世界約200ヵ国で使用でき、最大85%のコストダウンが可能な「グローバルSIM TAKT(タクト)」のサービスを提供しています。そしてもう1つが、2017年5月1日に福岡市の「FUKUOKA growth next」内に入居したサテライトオフィスを中心に進められている、民間の情報連携基盤の構築プロジェクトです。

「情報連携基盤とは、エストニア共和国の電子政府(※1)のインフラを民間向けにカスタマイズしたものです。エストニアは“北欧のシリコンバレー”とも呼ばれるコンピュータ教育の盛んな国で、15年かけて構築した電子政府は国民の90%が利用していると言われています。電子政府は、個人のIDに銀行・通信・エネルギー・保険などすべての情報が連携されるため、IDカード1枚持っていればお財布も現金も何もいらない――という環境ですが、私たちはこれを目指して民間企業間のデータ連携に取り組んでいるのです」(平尾憲映氏)

まず、保険会社と福岡周辺エリアの病院の連携を図るところからスタートします。例えば、保険の請求など、現在は保険加入者が手書きでA4用紙2枚前後に記入して申請し、保険会社は手作業で照合・確認しています。これをスマホ上で申請し、一回の操作で保険金の支払いが行なわれるようにできれば、双方ともに手間も時間もコストも大幅に削減できます。そのための実証実験を福岡で行なっているのです。

「手始めは医療保険の分野からですが、このシステムを構築すれば世の中の“紙”のアナログプロセスすべてに応用できます。いずれは社会インフラ全般において、個人情報に紐づく非常に秘匿性の高い情報を、サイバーセキュリティの観点からセキュアに他の業種とやりとりできる情報連携基盤を提供していきます」(平尾氏)

FUKUOKA growth next 内のサテライトオフィス

日・米・エストニアのトライアングルでグローバルスタートアップを実現

同社は現在、アメリカのカリフォルニア州サンノゼに本社を置き、東京・丸の内に日本支社、福岡にサテライトオフィス、そしてエストニアの首都タリン(Tallinn)と地方都市ヴィリャンディ(Viljandi)にそれぞれ開発オフィスを構えています。創業者である平尾代表は「会社をグローバルに育てなければならない」との強い思いから、この体制を構築してきました。

「例えば、日本である程度規模が大きくなってから海外に本社機能を移転するというやり方もあるでしょう。ただし、その場合はそれまでにできあがった企業文化や社風がグローバル展開の足かせになってしまいます。私の過去の経験から言っても間違いなく、組織が大きくなればなるほどそれは顕著に表れているようです。ですから、最初から世界を目指すという戦略のもとに、日本で創業した1ヵ月後にはサンノゼに本社を設立したのです」(平尾氏)

サンノゼ本社は現状ではバーチャルオフィス(※2)ですが、福岡での実証実験の進捗を見ながらいずれ平尾代表自身が乗り込む予定。現地には、留学のため会社を離れた元創業メンバーが顧問弁護士(兼 社外協力者)という形で滞在しています。丸の内の日本支社には4名、福岡のサテライトオフィスには常駐で2名、そしてエストニアにはエンジニアが2名という体制です(2017年6月現在/平尾代表およびインターンシップを含む人数)。

「今後も日本-アメリカ-エストニアのトライアングル体制を基本として、2017年度には全世界で最低でも18名を採用する計画です」(平尾氏)

エストニアのスタッフは、エストニア人が2名で、いずれも非常に優秀なエンジニアです。エストニアは小学校の段階からプログラムの授業を行なうなど、世界で最もイノベーティブでICT技術の進んだ国といわれています。一方、日本は求められるサービスの質やCSは世界最高水準にあることから、プロトタイプをつくる実証実験は日本で行なうことになりました。

「福岡での実証実験が完成したら、国内で普及拡大を図るとともに、日本のPOC(概念実証)レベルでパスした品質のものを海外仕様に作り変えてグローバルに展開していきます。そのとき、米国のオフィスが本社としての機能を発揮するというイメージです」(平尾氏)

執務スペース

FUKUOKA growth next 内のサテライトオフィス

社員が住みたいと思う場所に同じレベルの仕事ができるインフラを用意

グローバルスタートアップ戦略など、平尾代表の意思決定はきわめて理詰めに行なわれています。では、日本でプロトタイプをつくるにしても、なぜ福岡だったのでしょうか?

「エストニアの電子政府が成功したのは、国家戦略として動いたからです。ただし、日本の場合、ダイレクトに国を動かそうと思ったら時間もコストもかかり過ぎますから、地方自治体と組んでテストケースをつくるのが早道だと思いました。いくつかの自治体とお話ししました。その中で、福岡市は、市長をはじめ市職員のマインドもグローバルスタートアップに理解が深く、おそらく日本で一番スタートアップ環境が整っていると感じました」(平尾氏)

平尾代表は2016年夏以降、月に2回から多くて4回は福岡へ足を運ぶようになり、人脈とネットワークづくりを進めていました。そうした中で、閉校になった市内の「大名小学校」をリニューアルした官民共働型スタートアップ支援施設「FUKUOKA growth next」の話を聞き、渡りに船とばかりにサテライトオフィスの開設を即決したそうです。

「海外でも、シリコンバレーをはじめ、ベルリン、バルセロナ、シンガポールなど、スタートアップが成功する土地には必ず、こうした良質の施設があります。福岡で意気投合した仲間や、現地の起業促進イベントで知り合った学生インターンをスタッフに迎え、福岡サテライトオフィスは始動しました」(平尾氏)

さらに、東京で採用予定の人材の中には、福岡出身のUターン希望者もいて、研修期間終了後には福岡へ赴任してもらうことも考えているそうです。

「これは私たちの理念の一つなのですが、会社とか仕事のために自分の住む場所を選ぶ時代ではなくなってきたと思います。自分が住みたいと思う場所に住めばいい。そこがどこであっても、会社のオフィスと同じレベルの仕事ができる社内インフラを用意してあげるべきでしょう」(平尾氏)

現在、国策として取り組まれている「働き方改革」について、平尾代表は次のように自らの見解を述べています。

「方向性は正しいと思いますし、国が策定すれば企業も動きやすいと思います。ただ、もし“国がやらなければ、自分からはやり方を変えなかっただろう”という企業があったら、本当の意味での改革というのは難しいかもしれませんね」(平尾氏)

「日本国内での働き方改革に取り組む企業は増えていますが、実際にグローバルに展開できる会社はなかなかありません。自分たちがその先行的な事例をつくりたいですね」(平尾氏)

「会社としての直近の夢は、“Location independent lifestyle”(自分の好きなところで仕事ができるライフスタイル)です。私はいずれサンノゼ本社へ移る予定ですが、その頃には社員たちも自分の好きな場所で仕事ができる環境になっていればと思います。新卒社員が『シンガポールに住みたいです』と言ってきたら、『いいね。じゃあ、とりあえずバーチャルオフィスをつくろう』というフットワークの軽さで。人の数だけ住みたい国もエリアもあると思うので、それに合わせて働く場所もどんどん増やしていくようなイメージです」(平尾氏)

※1)電子政府
“e-government”ともいう。行政手続きや企業間取引をオンライン化・ペーパーレス化することでコスト削減や業務効率化、サービスの質の向上、情報開示などを実現可能とする政府のあり方のこと。エストニアでは15歳以上の全国民にeID(Estnian ID)カードの所持が義務付けられており、このカード1枚で行政や民間企業のあらゆるサービスを受けられる。

※2)バーチャルオフィス
法人登記上の住所を設置した仮想オフィスのこと。Planetwayの場合、サンノゼ本社はバーチャルオフィスとしている。

社員たちの昼寝スペースと成り下がったマルチスペース

FUKUOKA growth next 内のサテライトオフィス