BEENOS株式会社

2019年7月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

Eコマースを主力事業とするグローバル企業が
ハブ機能を持つオープンスペースを新設した

インターネット、テクノロジーを駆使することで、新たな市場を創造するプラットフォームを生み出し、日本と世界の懸け橋を目指すBEENOS株式会社。1999年の設立後、次々と事業を拡大。現在、主力事業では導入ECサイト2,000以上、年間200億円規模の日本製品を海外へ配送する仕組みを構築している。2018年11月、従業員の増加による「スペース不足」という課題解決と、グループ各社をまたいだ「コミュニケーションの促進」を図るために大規模なオフィスリニューアルを行った。今回はリニューアル計画全般についてのお話を伺った。

笠松 太洋 氏

BEENOS株式会社
社長室
ブランドマネージャー

笠松 太洋 氏

長江 綾子 氏

BEENOS株式会社
HR室


長江 綾子 氏

ラウンジ全景

ラウンジ全景

Contents

  1. コミュニケーションの活性化を目指し大規模リニューアルを決意
  2. 従業員の増加に伴い、北品川の緑に囲まれた開放感あるオフィスに移転
  3. 従業員のためのリニューアル。全社員からのアンケート結果を計画に反映
  4. 細部にまでこだわった空間づくり。コンセプトは「オープントーク」
  5. コミュニケーションツールを活用し従業員の成長をサポートしていく

コミュニケーションの活性化を目指し大規模リニューアルを決意

インターネットの黎明期であった1999年に設立されたBEENOS株式会社は、ネットの普及、発展に伴い業績を急成長させてきた。現在はEコマースを主力事業としながら幅広い事業展開を行う。また近年はアジア新興国などへの投資を行うインキュベーション事業にも力を入れている。

グループ会社は海外転送・代理購入事業を行う「tenso株式会社」、グローバルファッションモール事業を行う「FASBEE株式会社」、ブランド品の宅配買取・販売事業を行う「株式会社デファクトスタンダード」、酒類買取・小売業の「JOYLAB株式会社」など16社。

「Eコマース事業を20年やってきて、そのノウハウやデータを蓄積し、特にグローバル展開を強みとした会社ですが、そこだけにこだわっているわけではありません。実は現在も社内で新規事業の企画を複数同時進行しています」(笠松氏)

同社の特長の一つにはユニークな採用の取り組みがある。その一つとして国籍を問わないグローバル採用があげられる。現在従業員の約15%が外国籍の従業員で構成され、国籍の数は17ヵ国に及ぶ。社内公用語は今のところ日本語だが、30人以上いるバイリンガルのメンバーがハブとなって従業員同士をつなぐ役割を果たしているという。

「外国籍のメンバーとのコミュニケーションで一番大事なのは日本人スタッフが歩み寄ることだと思っています。彼らは不安な中で日本に来て働いています。ですから困っていることを片言でも手書きでもいいから聞いてあげる。そうすることで心を開き、仲間への大切な気持ちを増進させることが出来るのだと思います」(笠松氏)

その他採用の取り組みとして地方の雇用創出があげられる。東京本社以外に、鳥取と北九州に拠点を開設。それぞれ現地採用を実施し、地方の人材にも活躍の場を提供している。海外オフィスは台湾とロサンゼルスにも拡がる。そんな「つながる」姿勢は社名の由来と重なる。

「社名であるBEENOSの「BEE」は持続的な共存共栄の象徴であるミツバチ、「NOS」は巣。ミツバチのように世界中の起業家や企業、モノや情報をつなぎ可能性を拡げるという思いを込めています。当社代表の直井は『従業員とお客様の可能性を拡げる』という理念を掲げ、将来的には従業員が世界中、好きなところで働けるような状態を目指しています」(笠松氏)

従業員の増加に伴い、北品川の緑に囲まれた開放感あるオフィスに移転

旧オフィスがあったのは渋谷区恵比寿のオフィスビル。当時の従業員数は約100人。業務拡大に伴い従業員が増えていく中、手狭を理由に移転を行った。移転先に選んだのは、 品川・御殿山エリアのランドマークとなる地上21階建ての大規模オフィスビル。現在も入居しているオフィスビルだ。品川駅から少し距離はあるものの、その分見晴らしがよく開放感があるのが魅力だという。

「近くに御殿山庭園もある自然豊かなその立地にはとても満足しています。また品川駅からのアクセスも10分に1本の割合でシャトルバスが運行されているため、通勤に不便さを感じたことはありません」(長江氏)

従業員のためのリニューアル全社員からのアンケート結果を計画に反映

現オフィスビルに入居して10年が経過。従業員の増加に伴うスペース不足の改善やグループをまたいだ取り組みも増えたため、コミュニケーションの促進を図ることを目的にオフィスの改善が求められた。今後のことを考えると移転するのも選択肢の一つであったが、賃貸借契約の満了までにはまだ期間がある。しかし従業員のモチベーションを考えるとこのままの状態ではいけない。最終的に出した結論が大規模リニューアルの実施だった。

同社の事業状況の変化も今回のリニューアル計画を後押しした。

「以前、国内向けのECサイト『ネットプライス』を運営していまして。当時は現在ラウンジのあるスペースが、各社のベンダーの方々と商談を重ねるための場所になっていました。その後、ネットプライスを売却したのですが、今まで使っていた商談スペースの使用頻度が一気に落ちてしまって。そこで思い切ってリニューアルをして従業員のことを第一に考えた空間をつくる検討に入ったのです」(笠松氏)

そうして2018年3月、リニューアルプロジェクトチームが 社内で立ち上がる。チームは笠松氏を中心に労務、総務のメンバーがサポートで入る。実はプロジェクトに一番関わったのが電話線やWiFi、AV機器などを専門に担当するIT室のメンバーだった。

プロジェクトを進めるにあたり、全社員にアンケートを配布した。オフィスの実際の使われ方、会議室の使用頻度、自席にどれだけいるかなど細部にわたる項目で、その結果はリニューアルの内容に反映させたという。

「例えば、着席率は90%超でしたので長時間座っても疲れにくい椅子を採用しました。また、キーパーソンを複数人選んでヒアリングを実施。そして必要な機能と不要なものとを明確にする作業を行いました」(長江氏)

2018年5月にはコンセプトを立案。提案されたデザイン内容を確認・精査したうえで 8月から工事を開始した。工事は主に週末と夜間に行われた。スムーズに進行するために従業員には順次情報公開をしていく。区画ごとの工事スケジュールを発表し、週末に荷物をまとめてもらう。月曜日に出社したらその区画が新しくなっている。ひたすらそんなフェーズを繰り返していった。そして予定通り10月末に新しいオフィスが完成する。

細部にまでこだわった空間づくり。コンセプトは「オープントーク」

現在のオフィスにはBEENOSを含めグループ7社が入居し、業務・国籍・世代も多様な従業員280名が働く。今までと大きく変わったところは従業員のための空間を増やしたことと、座れる席数を10%増やしたこと。全ての設計のコンセプトワードとなったのは社内で重要視している「オープントーク」だった。

「それはなるべくオープンにコミュニケーションをとるというBEENOSが大切にする文化のことです。僕らが嫌うのはコソコソ話や陰口。そこには何の生産性もありません。伝えるべきことはきちんと本人に直接話すのが本当のリスペクトだと考えています」(笠松氏)

会議の場所も、オープンに話せるミーティングスポットを増やし、個室は6室に減らした。人事情報や機密情報、社外との大事な商談、テレビ会議などは個室を使用し、それ以外はオープンエリアで行う。

「偶発的なコミュニケーションの創出を目指しました。例えば椅子を対面に配置することで、そこで作業をしている2人がいつのまにか会話をするような設計に組み立てています」(長江氏)

個室会議室

個室会議室

広々としたラウンジにはソファを入れ、見晴らしの良さを活かして窓際に席をつくった。ラウンジで特に目をひくのが大きな特注のカウンターだ。

「このカウンターのデザインにはこだわりました。不思議と自然に人が集まるんですよ。夜、ここで作業をしていると誰かがやって来て会話が始まる。気づいたらお酒を飲みながらフランクな会話が始まっている。社内イベントでも人気のスポットです」(笠松氏)

リラックスできる空間づくりをデザインコンセプトとしているため、音楽や香りなど見えない部分にもこだわった。

「もちろん職場ですから緊張感は必要だと思いますが、メリハリも重要だと考えました。常に気を張っている状態ではクリエイティブなものは生まれません。そこで五感でも感じるオフィスをつくろうと。例えば集中力が上がる香りについて社内で実験や検証をしてみたり」(笠松氏)

ラウンジはグループ会社の「JOYLAB株式会社」が取り扱うお酒の試飲会をしたり、商談スペースとして使ったり、業務関連での使用のほか、短い時間で自分の好きなものを表現するライトニングトークというエンジニアに人気のイベントや、福利厚生の一つとしてキックボクサーによるキックボクササイズレッスンを行ったりもする。アフター6には、ボードゲームが好きな従業員が集まってゲームをしたり、ポーカーの世界大会に出場経験のある社員がポーカーをレクチャーすることも。ラウンジが業務・国籍・世代を超えたハブ機能を持ち、社員交流にも役立っている。

窓際カウンター席

窓際カウンター席

ラウンジオープン席

ラウンジオープン席

特注のカウンター

特注のカウンター

椅子もテーブルも全てキャスター付きのため、イベントの内容や人数に合わせて容易に移動できる点も新オフィスの特長の一つだ。執務室のデスクは、今までは一人一個のデスクであったが、新オフィスでは一つの長い板を採用した。そのため固定席ではあるが人の増減での対応が容易になった。その他、従業員のシフト時間を考えながら一つの机を数人で共有する工夫をしている。

執務室

執務室

執務室内オープンエリア

執務室内オープンエリア

コミュニケーションツールを活用し従業員の成長をサポートしていく

今後のオフィス運営について、個人からの要望で従業員全体に対してポジティブに影響しそうなものがあれば積極的に反映していくという。今回のリニューアルと同時期に「wevox」という組織改善を目的としたエンゲージメントを図るツールを導入。月に1度、上司との関係、仕事の満足度、職場環境などのアンケートを従業員にとっている。以前にとある会議室が暑すぎるという回答があり、調査した結果、お客様をお通しできる環境ではないことが判明。そこでビル側に相談し、空調の整備を図ったこともあった。また、ゴミ箱にデザイン性を意識して英語で「可燃」「不燃」と表記していたが、従業員からは分かりにくいと声が上がり、現在は実用性を重視し漢字で表記している。

さらに、グループ各社バラバラに導入していたコミュニケーションツールを統一した。

「グループ内であれば会社を超えて連携できるため『Slack』というツールを採用しました。書き込んだ内容は誰でも検索でき、効率的に質問と回答が蓄積されていきます」(長江氏)

また、昨今話題になることの多い「働き方改革」については、その言葉だけに迎合せず、自分たちのあるべき姿を見据えていくと語る。

「残業を一律禁止するみたいなことはやりたくないですね。働く自由を奪いたくない。調子が出てきたのでもう少し遅くまで働きたいっていう方には働ける環境を用意して。用事がある方には早く帰れる仕組みをつくってあげて。自主性を生かす働き方を考えています」(笠松氏)

今後、重要視していくキーワードは「成長」だという。従業員が可能性を拡げ、成長するための制度を考えていく。小さな子どもがいる家庭や親の介護など、従業員各々のライフステージに合わせて会社としてサポートしていく。

従業員の健康面のケアにも力を入れている。福利厚生一つとして、野菜や果物が持つ水分を絞り出してつくるコールドプレスジュース「サンシャインジュース」の費用を一部会社が負担し、従業員が安価で購入することができる。

「製造過程で添加物や余計な水分を加えないため、効果的に栄養素を摂取できます。男女ともに人気で、『これ新製品だよ』とか『それは苦手な味だった』といった会話も生まれています」(長江氏)

採用面においても、応募者が最初にドアを開けた瞬間の驚きは毎回楽しみだという。

「旧オフィスでは選考プロセスで一度会議室に入室してしまうと、一切社内の雰囲気を見ることが出来なかったのですが、新オフィスでは開かれたラウンジにお通しし、従業員がすぐ隣で働いている姿が見えるんです。少しでもBEENOSのカルチャーを感じてもらいたい。その効果は早くも出ていると思います」(笠松氏)