バズー株式会社

2013年11月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

社内コミュニケーションを活性化させる仕組みは
フリーアドレスと徹底した社内ルール。

アプリの企画から開発、運営までを行っているバズー株式会社。所有していた自社ビルを売却し、港区芝に移転を行ったのは2013年2月のことだ。現在のオフィスの姿を紹介するとともに、オフィスに対するこだわりについてお聞きした。

プロジェクト担当

森下洋次郎氏

バズー株式会社
森下洋次郎氏

代表取締役

三井田 静氏

バズー株式会社
三井田 静氏

海外事業部
秘書・広報

バズー

はやわかりメモ

  1. インドネシアNo.1のオフショア開発企業を目指して
  2. 日本と海外拠点での競争を促進。それが本来のグローバルカンパニー
  3. オフィスは働く"場"というより一つのメディアとして捉える
  4. ポイントは、バーチャルとフリーアドレス、そしてペーパーレス
  5. コミュニケーションを活発にさせる仕組みが企業理念であるバズールール
  6. 感動ある仕事をするために考えられたのが独自のプロセスであるバズーメソッド

インドネシアNo.1のオフショア開発企業を目指して

 2006年に港区浜松町で設立した時の社員数は6名。ウェブ開発事業を主に行なっていた。今では、アプリの企画から開発、運用を中心に事業を拡大。設立後わずか5年後の2011年にはインドネシアにジャカルタ支社を設立し、話題のJKT48のプロモーションを手掛けるなど、急速なグローバル展開を行なっている。

「大学を卒業後、外資系の経営コンサルタント会社に従事していたのですが、ふと立ち止まった時に未来予想図を思い浮かべられない自分に気づきまして。その後、IT系コンサルタントなどを経験したのち、バズーを立ち上げました。29歳の時です」(森下洋次郎氏

「設立後、何回かの移転を行なっています。このビルに来る前は、同じ港区内の芝大門駅が最寄り駅となる5階建の自社ビルを所有していました。その当時、事業計画を形にするというプロジェクト制度の一環で実施した企画の一つが、テーブルマナー講座やメイク講座などの女性向けのスクール事業。もう一つが、犬を対象にしたアパレル事業。犬用の洋服販売ですね。フロアごとに教室や店舗を構えて事業を行っていました」森下氏

もともとネットビジネスを行なうにあたって、リアルなビジネスの世界も知っておく必要があると思っていたという。「今振り返ると貴重な体験だったと思っています。そこで経験できた経営の原理原則は自分たちの財産として保有できています。そしてある程度の経験を積んだ後、本格的にアプリ開発事業に特化することにしたのです」( 森下氏

それらの事業は順調に推移していたが、タイミングよく事業自体の引受先やビルの売却先が見つかったこともあり、アプリケーション事業を主軸にした事業展開に転換させた。

日本と海外拠点での競争を促進それが本来のグローバルカンパニー

その当時、海外進出に関しても検討を始めることとなった。

「ちょうど4年前になります。中国に視察に行く機会がありまして。中国人の生命力に圧倒されました。それからアジアの各国に可能性を感じて、中国とインドネシア、タイの3ヵ所に拠点をつくったのです。日本から社員を派遣しながらいろんなことにチャレンジしましたね。もちろん、たくさん失敗もしたのですが。最終的には、ビジネスパートナーとして当社の考え方にマッチしたインドネシアと協力体制をつくることにしたのです。現在も引き続き、インドネシアで事業を展開しています」(森下氏

単に仕事の内容だけではなく、自分の思いが形になる。自分の意見をきっちりと聞いてもらえる。そんな社風が人材を招き入れることにつながっているようだ。現地の理工系の大学かの口コミもあり、リクルーティングも成功しているという。

「現在、日本法人の社員が15名に対して、インドネシア法人では50名が働いています。実は、私は正式に入社する前の学生時代からインターンとして関わっているのですが、マネジメントを学ぶために半年間もインドネシアに駐在させていただきました。私の同期の中にも、事業部を立ち上げているものもおり、意思決定のスピードが早い会社だと思います」(井田 静氏

「日本で営業や企画を行い、インドネシアではひたすら効率化して開発を行なう。そのために開発工程をパターン化しています。実際に海外で事業展開をして気づいたのはインドネシア人のポテンシャルの高さです。アプリケーションの開発に必要な言語は英語や日本語ではありません。共通のプログラミング言語です。力の差はコーディングの内容を見たときに明確に表れます。同一のスキルなら同一の賃金体系にするのが正しい経済原理ですから、日本人のエンジニアも危機感を持つことになる。するとそこに社内間のグローバル競争が起きるわけです。競争が激しくなると、今度はインドネシア人の社員が日本での勤務を希望してくる。意欲的な交流が生まれます。本当の意味で行いたかったグローバルカンパニーづくりが徐々にできつつあります。そんな流れをさらに活性化させるため、インドネシア法人にもう少し増員をしたいと思っています。会社全体で100名体制を目指しています」(森下氏

採用イベント時の集合写真

採用イベント時の集合写真

インドネシア集合写真

インドネシア集合写真

オフィスは働く"場"というより一つのメディアとして捉える

以前の5階建ての自社ビルを売却しての移転。現在のオフィスは、慶應大学三田キャンパスの正門前に位置する築浅の大型ビルだ。

「私も慶應大学三田キャンパスの卒業生でして、今いる社員の半数以上が慶應大学の出身です。今後のリクルーティング活動を戦略的に行おうと考えたときに、この立地は有利に働くと思っています。加えてせっかく移転したのだから、社員のモチベーションが上がるような仕掛けをオフィス内に構築しようと。そこで10社ほどに声をかけさせていただきデザインコンペを行なったのです。コンペを行なう際に、木目調とガラス張りにはこだわっていましたので、デザイン要素として盛り込むようにお願いしました」(森下氏

エレベーターを降りて、右側の廊下を少し進むと曲がり角が。そこを曲がると一面に開放感溢れるエントランスが広がる。上から見るとバズーの「無限大」を記したロゴマークが一面に浮かび上がるデザインとなっている。そして会議室の壁には、デザイン的に整理された沿革が表示。沿革の最後に書かれたネクストステージの文字が会議室の入り口となる。そして何といってもこだわりぬいただけあって、全体を木目調とガラス張りで構成されたデザインが特長的だ。

「まず、木目にすることで集中力が高まると考えました。たまに、議論が長引くことがあるのですが、集中して白熱した議論を交わすことができています。ガラス張りにしたのは会社の透明性を象徴させたかったこともあります。実際に財務状態も公開していますし、将来的には持株制度を導入して社員全員で経営を考えられるような体制をつくりたいですね。ですからオフィスは、単なる"働く場"ではなく、社内外に対して当社のメッセージを伝える一つのメディアとして位置付けています」(森下氏

エントランス

開放感溢れるエントランス

会議室壁

沿革が書かれた会議室壁

ポイントは、バーチャルとフリーアドレス、そしてペーパーレス

現在のオフィス面積は55坪。それを15人で使用している。一人あたりの面積は非常に広い。

「当社のオフィスのポイントは、バーチャルオフィス、フリーアドレス、ペーパーレスです。クラウドを導入していますので、仕事はどこで行っても構いません。自宅勤務の社員もいます。そもそも日本とインドネシア間でモニターを介して仕事をしているくらいですから。そのかわり、フリーアドレスなので個人の収納は基本的に無くて、物一つ置かせていません。書類は全てデータで管理。ときどきプリントが必要な場合がありますが、用途が終わったらシュレッダーで廃棄するルールです」森下氏

「基本的に個人に与えられるのは収納ボックス一つです。保管資料は収納ボックスに格納してから帰ることになっています。スマートフォンの充電器さえ置いていません。もちろん税法上必要な書類は管理していますが、基本ルールはペーパーレスです」三井田氏

「フリーアドレス導入のきっかけは、このオフィスに移ってからですね。せっかくきれいな設えにしたので、私物は置きたくないなと。実は公園をイメージしているんですよ。必要な時に空いている場所に座って、用が済んだら片づけて帰るみたいな。そんな公園のイメージをオフィスに取り入れられたらいいなと思いました」森下氏

バズー

「以前のオフィスはフロアが分かれていたこともあり、気軽に打合せをするという文化がありませんでした。今は何かあるたびにすぐに集まって相談をしています。格段にコミュニケーションの質、回数ともによくなっていると断言できますね」三井田氏

これからの日本とインドネシアとの頻繁な行き来を考えるとフリーアドレスにして正解だと語る。また、住居に関しても会社の近くにシェアハウスを用意しているという。案外面倒であるホテルの予約をすることなく、体一つで気軽に行き来できるように配慮している。

コミュニケーションを活発にさせる仕組みが企業理念であるバズールール

コミュニケーションを活性化させるための仕組みは何かあるのだろうか。仕組みの一つにバズールールの徹底がある。バズールールとは、一種の企業理念で全社員の決め事として遵守しているという。以下に一部を抜粋してみる。

  • 朝のスタートは「握手」から
    朝、出社して顔を合わせたらまず握手から一日が始まる。
    そうすることで「今日も1日頑張ろう」と前向きな気持ちで仕事に取り組める。
  • 一日の終わりは「ハイタッチ」で
    仕事が終わり、帰るときには全員にハイタッチ。
    「今日も頑張ったね」とお互いをねぎらい、明日の仕事につなげる。
  • 「すみません」より「ありがとう」を
    ネガティブで落ち込む言葉より、前向きな言葉を発信。
    感謝と素直さを言葉に込めて、すみませんよりもありがとうを大切にする。
  • TTGとTTB
    社内用語のTTGとTTB。
    その意味は、「徹底的に議論」と「徹底的にブレイクスルー」。
    声をかければすぐに集まり、議論が始まる。

「社内のルールですから、TTGを行うよと言って振り向かないとルール違反になるわけです」(三井田氏

「バズールールは新卒採用を行うようになってから創りだしたものです。せっかく入社した人材がどうすれば短期間で成長できるのかを考えていまして。その一つの姿は、自分の思いが形になっていくことではないかと思ったんです。自分で思ったビジネスが形になるとか、ルールであるとか。当社はあまり否定しない文化ですから、発案通りに一旦やってみようと。仮に失敗したとしてもそれは会社の資産となると考えていますので。そのように自分のアイデアが形になり共感されることで自分自身のアイデンティティを感じられるわけです。それが若手社員の成長につながると信じています」(森下氏

「また、当社が考える理想的な上司の役割というのは『部下を応援してあげる』ことなのです。行動を起こすのは本人ではあるんですが、一緒に考えることや知恵を提供してあげるのが上司の仕事という考え方。相談されたときは全面的に協力する。そっと背中を押してあげられる環境。そのためにもコミュニケーションが取りやすい仕組みをつくってあげられるかが重要なのです」森下氏

バズー

そのほか、定期的な会議でも取り組んでいることがある。「それは会議時間を短縮化するための試みです。一般的な会議では、司会者が仕切ったりまとめたりするものですが、当社は『すごい会議』という方法を取り入れています。どういうことかといいますと、なるべく他人の意見に左右されずに発言できるように前もって意見を紙に書いてもらい、一人ずつ読み上げてもらう。文章にすることで自分の考えが整理できますし、余計なことを言わなくなる。短縮ルールというのは意外と面白いシステムになりました」(森下氏

感動ある仕事をするために考えられたのが独自のプロセスであるバズーメソッド


「感動を与えられる仕事がしたい」を達成するために、バズーメソッドが考えられた。仕事とはどうあるべきだろうという質問に対して、バズーの導き出した回答は「感動」。もちろん自分たちの感動だけではなく、お客様に感動してもらうための行動をプロセスとしてまとめたものだ。
バズーメゾット

「当社では、仕事の本質的なものとして、感動のある仕事をしなければならないと考えました。決められた商品を売る場合は、もしかしたら商品に魅力があれば営業力がなくても購入する人はいるかもしれません。しかし、我々の場合は信用を売っていかなければならない。魅力がある人間かどうかが重要なわけです。とすれば、どれだけお客様が喜ぶことをするかとか、知らなかったことを教えてあげられるか、それが感動につながるのではと。それを当社ではムービングと呼んでいます。一般的なマーケティング用語であるPDCAサイクルを我々が咀嚼した定義なんですけど、これにFを付け加えています。PDCAを継続しながら素晴らしき仲間たちがいるからこそ、感動を与えられる仕事ができる。切磋琢磨、お互いを高めあえるようにつくりました」(森下氏

そうすることで冷静な議論が行えるというメリットがあるという。

「例えば、どんなに実力があってもチームワーク能力が欠けていた人と議論をしていたとします。その場合、感情的な議論になりがちですが、メソッドの基本定義に基づいて『お客様のためになっているか』だけを考えれば冷静な判断ができるわけです。最終的には役職関係なく、全員で正しいことを判断して決めていきます。今後、海外スタッフとのやり取りも増えてくるでしょう。その時もメソッドがあれば、温度差がなくなり判断が容易になると思っています」(森下氏

最近では、社内ベンチャー制度の一環で、既存事業に一切関わらず新規事業に専念する「生み出す事業部」というチームが発足したという。「やりたい仕事」をビジネスにする。それこそが最大の競争優位に立てるというバズーの企業理念に基づくものだ。

「きっとこれからもバズーメソッドを何度も振り返りながら、議論を重ねていくのでしょう。そして『生きる力を身につけた』人材を育成しながら、アジアNO.1企業という目標に向かってチャレンジし続けたいと思います」(森下氏