ChatWork株式会社

2017年11月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

移転プロジェクトのテーマは「ワクワク感」。
構築したオフィスが営業ツールとなった

コミュニケーションの変革を通じて新しい働き方の提案を行っているChatWork株式会社。自社開発のビジネスチャット「チャットワーク」は、世界223の国や地域で利用されている。そんな同社がより優れた「働く環境」を求めてオフィス移転を実施した。今回はその目的と新オフィスのコンセプト、いくつもの新機能についてお話を伺った。

プロジェクト担当
田口 光 氏

ChatWork株式会社
執行役員

田口 光 氏

新免 孝紀 氏

ChatWork株式会社
デザイン部
マネージャー

新免 孝紀 氏

森 美香 氏

株式会社
ティーズブレイン
執行役員
シニアコンサルタント

森 美香 氏

鈴本 純也 氏

株式会社
ティーズブレイン
CM&
エンジニアリング部

鈴本 純也 氏

佐藤 幸匡

三幸エステート
株式会社
新宿支店営業部

佐藤 幸匡

エントランス

5階コミュニケーションエリア

はやわかりメモ

  1. チャットワークを使って新しい効果的な働き方を提案する
  2. 旧オフィスの問題点は手狭さによるミーティングスペース不足
  3. 移転先の条件はアクセスの良さと物理的な広さ
  4. 専門家に、品質・コスト・スケジュールのトータルマネジメントを任せることでスムーズな移転計画が進められた
  5. タイトなスケジュールであったが面白いオフィスづくりに挑戦した
  6. オフィス機能の向上はもちろんのことオフィスが営業ツールとなった

チャットワークを使って新しい効率的な働き方を提案する

ChatWork株式会社は2004年に設立(創業は2000年)。以降、手探りの中で「仕事の効率化」というテーマに到達。2011年から主力事業をビジネスチャット「チャットワーク」の開発・運営に方向転換し、「働き方の改善」を思案するユーザーの期待に応え続けている。

「チャットワークは、業務の効率化を目的にしたツールです。業種や職種を問わず、働く人同士のコミュニケーションを好転させ、生産性を上げる。その結果、より自分の自由な時間が持てるようになる。そんな『Make Happiness』をお届けできるように、サービスを展開してきました。導入企業はすでに157,000社(2017年11月末日時点)を超えています」(田口 光氏)

具体的には、複数の人が参加できる「グループチャット」、コミュニケーションの中で生まれたタスクを作成・管理する「タスク管理」、画像ファイルを共有可能な「ファイル共有」、チャットワークを介して利用できる「ビデオ通話・音声通話」など、快適なワークスタイルを実現する機能を持つ。同様のサービスを扱う製品は他社にもあるが、同社の製品は一つのアカウントで簡単に外部との繋がりを持てることが大きな特長だ。

そんな同社が転機を迎えたのが5年前のこと。これまでは「小さな強い会社」を宣言し、堅実な経営スタイルを維持していたが、2012年からシリコンバレーに米国子会社を設立。代表自ら居住することで「日本発・世界スタンダード」が目標に変わる。外部から資金を調達して世界に向けてのチャレンジが始まった。

旧オフィスの問題点は手狭さによるミーティングスペース不足

「会社設立当時は設立メンバーが多く住んでいたという理由で田園都市線沿線にオフィスを構えていました。以降も、社員が増えるごとにオフィスを拡張してきましたが、すべて同線沿線でしたね。その後、移転を検討している取引先がそのまま居抜きで入居してくれる会社を募集していることを聞き、移りました。それが移転する前の台東区のオフィスです」(田口 氏)

「ビルの3階で面積は48坪。15名で使用するには十分な広さでした。しかし業務の急激な拡大とビジネス部門の強化を理由に、人材採用が頻繁に行われるようになります。ついにスペース不足になり2階フロアを増床しました」(新免 孝紀氏)

今までは開発メンバーが中心だったため、働く場所はどこでも良かった。しかしセールス部隊が増えてくるに伴い、交通アクセスにも配慮する必要がでてきたという。

「増員分の席もスペースの増床で何とか調整できていたため、そのまま運用していました。しかし60名を超えたときには、さすがにどうにかしなければと。それが2017年3月のことです」(田口氏)

移転先の条件はアクセスの良さと物理的な広さ

「以前から個人的にお付き合いのあった三幸エステートの柴田常務に連絡をとりました。そしてスケジュールや要望をお話しした後、すぐに物件担当の佐藤さんから当社の要望に合った物件情報を提案していただいたのです」(田口氏)

「迅速に30棟もの物件比較表と詳細な資料をいただきました。分かりやすい資料でしたので、比較的容易に検討できました」(田口氏)

「最初に時間をかけてしっかりと要望をお聞きできたので、資料提出までさほど時間がかからなかったのだと思います」(佐藤幸匡)

「それから許容範囲内の物件をピックアップし、実際に見学しました」(田口氏)

「ビルの持つ雰囲気だったり、部屋の形であったり、立地であったり、総合的に検討しました。最後はどれだけワクワクできるか、がポイントでしたね」(田口氏)

「ここでしたら広さや立地の課題も解決できますし、東京タワーの目の前でワクワク感を感じてもらえるのではと。加えて部屋の形状も気に入ってもらえたようですね」(佐藤)

旧オフィスは、窓から東京スカイツリーを目にすることができた。新オフィスは東京タワーの目の前。そういったストーリーも大事にしたという。そうして2017年4月に移転先ビルが確定した。

専門家に、品質・コスト・スケジュールのトータルマネジメントを任せることでスムーズな移転計画が進められた

「当社の理念は『Make Happiness』。新しい働き方をChatWorkが実現すると提言しています。提言している以上は自分たちの働き方もアップデートしなくてはならない。そんな誇れるオフィスにするために、どのように具現化していくかを決めていきました」(新免氏)

そのため、今回の移転プロジェクトには社内からもかなり多くの社員が参加をしたという。

「内装デザインチーム、運営チーム、対外告知チームによるプロジェクトを編成しました。内装デザインチームはコンセプトワークから家具の買い付けまで。運営チームは、朝礼のやり方や戸締りのルール、セキュリティルールなど。今までのオフィスに関する社内運営ルールはほぼ変更しました。そして対外告知チームは、移転に関するイベントの企画や移転告知のタイミングなどを担当。まさに社員一丸となるプロジェクトになりました」(田口氏)

しかし今回のような大掛かりかつスケジュールがタイトな移転プロジェクトの場合、社内だけで完結させるには限界がある。そのためスムーズな進行をするために専門会社の力が必要だとの結論となる。そこでPM会社のコンペを実施するために、5月上旬には新オフィスの要件を固めたという。

「とにかくスピードが速かったですね。5月中旬にプロジェクトマネジメント会社のコンペが開催され、弊社に決定いただいたのが5月末でした。10月には移転で、決して十分に時間のゆとりがあったわけではありませんでしたが、それまでに働き方をアップデートするオフィスを計画し、工事コストの最適化を図るために工事会社の入札を実施し、ビル指定工事会社に対しては査定交渉を行う...といったこともご要望としてはありました」(森 美香氏)

「オフィスデザインに関しては懇意にされている内装デザイン会社に依頼したいとのことで、今回は移転プロジェクト全体の品質・コスト・スケジュールの最適化を図るプロジェクトマネジメントを担当しました」(鈴本 純也氏)

「つまりチャットワークさん、内装デザイン会社さん、当社とのコラボとなります。タイトなスケジュールの中で、色々な方の意見を聞きながら進行していく。プロジェクトの難易度としましてはかなり高かったですね。新免さんはじめとしたデザインチームの皆様、デザイン会社および弊社とでやり取りをしながら固めていった想いを、いかに妥協せずに、スケジュール通りに、かつ余分なコストを掛けることなく進行できるかに努めました」(森氏)

「加えてビル側との地道な調整など、いわば裏方的なところも対応させていただきました」(鈴本氏)

「ティーズブレインさんには、スケジュール管理だけではなく、原状回復を考えながらの提案もしていただきました。また、ビルオーナーとの交渉を一手に引き受けていただいたのも頼もしかったですね」(田口氏)

「実際、もっと試したいことはあったのでしょうが、『やりたいこと』と『工期やコスト』とを天秤にかけながら提案させていただいたつもりです」(鈴本氏)

「長年、オフィスをつくっている会社として、工期の面とお客様がやりたいことのバランス、機能性を見極めた上で、お客様にとって何が最適かを意識しました。今回はそのバランス部分に満足していただけたのではと思います」(森氏)

「この短い納期でよくスケジュール通りにできたと逆にびっくりしています。やはりどんなに忙しくとも常に現場間との確認をしっかりと取り合ったのがよかったのでしょう」(新免氏)

「今回の移転は、専門家に依頼するメリットを感じる移転でした。三幸エステートさんとのやり取りも、こちらが不安になることは一切ありませんでした。こちらからの連絡に対する返信もとてもスピーディで。回答も的確でしたね。とても安心感のある対応でした」(田口氏)

「目標に向かって皆様の足並みが揃っていたのが結果に現れたのだと思います」(佐藤)

「チャットワークを活用したのも成功の要因かもしれません。撮影したものをチャット上で公開するだけで、現場との確認事項もスムーズにできました。普通のメールでは気がつかないこともありますので」(森氏)

タイトなスケジュールであったが面白いオフィスづくりに挑戦した

新オフィスは、同社のCEOである山本氏から「ただカッコイイというだけでは面白くない、働き方改革の見本となれるようなChatWorkらしいオフィスをつくろう!」との提案があったという。そこでまず、社員の考えや思いを確認することから始めた。

「かなり多くの社員から意見が出てきましたね。一番多かった要望が、会議室が少ない問題。その他、多目的なオープンスペースの新設も多くの要望を集めました。当社の場合、お弁当を持参する社員が多いのですが、場所がないため自席で食べるしかありませんでした。それらの課題解決として様々な機能を備えています」(新免氏)

新オフィスは5階と7階。分散はしているが、7階はお客様専門フロアと用途を限っているため、不都合はまったくないという。

7階のエレベータを降りると総合エントランスとなる。壁一面には電話やメモ帳など、ビジネスシーンで使われる要素がオブジェとして飾られている。

「これまでビジネスシーンで活躍してきた必需品に対して敬意を払って一つの作品にしました。使われている一つひとつがチャットワークを構成するプロダクトになっています」(新免氏)

「写真に撮ってみるとわかりやすいのですが、よく見ると『ChatWork』の文字が隠されています。デザイン会社と打合せをしていて企業文化を表現しつつアートっぽいものをつくりたいという話になって。ここに来られた方にお話しすると大抵の方が驚かれますね。驚きを大切にしているため、文字が隠れている仕組みのことはあえて告知していません」(新免氏)

その先がウェイティングルームになる。

「今までお客様が来られたときに待っていただく場所がなかったので新設しました。ここの角が記念撮影ポイントとして推奨している場所です。ちょうど東京タワーが写る場所になります」(新免氏)

「実は当初、4階と5階で検討していたのですが、7階にちょうど空きが出たと連絡いただきまして。社長にここからの眺めを見ていただきすぐに変更が決まりました」(田口氏)

左側が会議室。2室が用意されている。7階のデザインテーマは東京タワーのイメージと重なる三角形をモチーフにした。各室の椅子の脚も三角というこだわりだ。そして多拠点間での会議も考慮してテレビ会議用の設備も完備している。

総合エントランス

総合エントランス

窓際のフリースペース

5階コミュニケーションエリア

会議室1

会議室1

会議室2

会議室2

右側が、新オフィスの一番の特長となる30名弱が座れるシアタールームとなる。

「ここの一番の目的は、外部の方をお招きしてセミナーや商品説明会を行うことです。自分たちの提唱する働き方を発信するうえでとても効果がありますね。セミナーだけに限定せずに、使われていない時間帯は社員の交流や多目的に使用しています。ずっとこんな空間があればいいなと思っていました」(新免氏)

「映画部という同好会をつくっているのですが、先日は業務終了後にここで映画鑑賞会を開きました。チャットで本日映画鑑賞会があると告知して。今後も活発な活動を企画していきます。せっかくのシアターが社内にあるのですから。いままで出来なかった社員同士の交流を深めていきたいですね」(田口氏)

「ここで使われているミーティングテーブルは卓球台です。会議も出来れば卓球も出来る。遊び心も満載です」(新免氏)

そして5階が執務室となる。エレベータを挟んで右側が開発関連のチームの執務室、左側がコーポレートやセールス&マーケティングの執務室となる。そしてその真ん中に大きなカウンターが設けられた。

「社員同士のコミュニケーションが生まれることを期待して、センターに多目的な大カウンターを設けました。打合せもできれば、休憩をとることもできます。夜はここでお酒を飲むこともあります」(新免氏)

もちろんオープンだけではなく、クローズな打合せルームも3室用意されている。

「クローズと入っても全面ガラス張りですから、開放感のある部屋になっています」(新免氏)

その打合せルームの裏側が集中スペースとなる。

「最初から集中スペースとして用意したわけではありません。ここから見える緑が自然に目に入り、集中力を高める効果があるみたいで。今では集中スペースとして、かなりの社員に活用されています」(田口氏)

シアタールーム

シアタールーム

執務室

執務室

中央カウンター

中央カウンター

集中スペース

集中スペース

同社では、会社設立当初から働き方の変革を行っている。サイトで公開されている内容を以下に紹介する。今回のオフィス移転を機にこれらの取り組みがさらに進化している。

コミュニケーションを重視
チャットやビデオ通話を活用したストレスフリーを実現。

むだなくして効率を上げる
探すのに時間がかかる紙資料は排除。ペーパーレス化により、作業効率の上がる環境を実現。

集中できる環境
電話なし、ゆったりした椅子、集中できる環境がそろっています。

場所にとらわれない
業務の性質や状況に合わせてコワーキングや在宅業務など柔軟な働き方が可能。

リアルを重視
社員同士の交流を大切に考え、ランチや飲み会を支援。

情報の共有、勉強会の開催
会社の動向や有益な情報は全員で共有。また知識習得のため勉強会を開催。

オフィス機能の向上はもちろんのことオフィスが営業ツールとなった

オフィスを移転して2ヵ月が経過した。目に見えて社員同士のコミュニケーションは活発になっている。立地やオフィスの魅力によるブランディング効果も増えた。それらは今後のリクルーティング活動にも大きな影響があると予測する。その他にも色々な面で移転効果をもたらしているという。

「製品の無料体験といったセミナーを開催するにも、以前は外部会場を借りていましたが、今は自社内でできます。会場の空き状況の確認や予約といった準備にかかる時間やコストが削減できているのですから、それだけでも移転効果はありますよね」(田口氏)

「以前のオフィスと比べて分かりやすい場所に移転しましたので、お客様をお呼びしやすくなりました。オフィスとしての機能はもちろんのこと、営業ツールとしての機能も備わっていると思います」(新免氏)

「撮影スポットではかなりの方が撮影をしています。撮影データはSNSで拡散されているようですね。知らない間に当社の名前が広がっているわけですからものすごい広告効果になっているのではないでしょうか。今回、社員全員がオフィスに愛着を持ってもらうように自分たちでデスクや椅子を組み立てました。今後も社員に愛着のあるオフィスを提供し、常にアップデートしていければいいと思っています」(田口氏)