コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社

コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社

2015年5月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

移転を機に「働き方の変革」を自社実践。「魅せるオフィス」へと進化させ営業ツールとする

コニカミノルタグループが中核事業と位置付けるオフィス・ソリューションを提供するコニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社。今回の移転には、自らが「働き方改革」を実践することで、同社のビジョンである「Work Style Design Company」の具現化をはかるという狙いがあった。一体、どのようなアプローチでプロジェクトを進めていったのか? 移転に関わったメンバーに具体的内容や効果についてお話を伺った。

プロジェクト担当

宮本 晃氏

ソリューション
エンジニア部
オフィスソリューション
グループリーダー

宮本 晃氏

土志田 宏人氏

ソリューション事業本部
システムインテグレー
ション
統括部ソリューション
エンジニアリング部 部長

土志田 宏人氏

藍 隆幸氏

ソリューション事業本部
事業統括部 担当部長兼
ソリューションマーケ
ティング部 部長
兼マーケティング企画
グループリーダー

藍 隆幸氏

野田 好男氏

ソリューション事業本部
マーケティングサービス部
担当部長兼
システム推進グループ
リーダー

野田 好男氏

Workstyle Innovation Labo と呼ばれるショールーム

Workstyle Innovation Labo と呼ばれるショールーム

はやわかりメモ

  1. 元々、職場環境の変革を目的とした活動を全国で展開していた
  2. 「働き方変革」の一環としてオフィス移転を具現化させる
  3. 移転先を決定後、施策アイディアをグルーピングし、分科会を組成する
  4. 社員からの意見や要望を理想のシーンとしてイラストで表現する
  5. 明らかにワーカーの働き方そのものが大きく変わった
  6. 移転がもたらした具体的かつ定量的な効果
  7. 永遠に進化を続けるスパイラルアップフェーズ

元々、職場環境の変革を目的とした活動を全国で展開していた

コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社は、ビジネスシーンに欠かすことのできないデジタル複合機やプリンタ、FAXなどのオフィス関連製品を扱う国内販売会社の最大手である。近年は、機器販売という範疇に収まることなく、オフィスデザイン、ICT、ドキュメントマネジメントといったオフィス・ソリューション事業に注力。「Work Style Design Company」というビジョンのもと、情報機器や関連ソリューションを提供。快適なオフィス環境の実現をサポートしている。

「元々当社は、以前から風土変革を目的とした小集団活動『維新の会』を全国で展開していました。職場内で改善すべき問題をピックアップし、自らの手で解決し風土そのものを変えていく取り組みを実施。その成果を全国大会で発表・共有しながら水平展開をしてきたのです」(宮本 晃氏

ところが抜本的な改革を行うには「維新の会」に許された予算の都合上、難しい局面もあった。例えば、オフィスレイアウトに起因する諸問題。環境自体を変えるには経営戦略の面からのアプローチが必要であった。目の前の課題になかなか手を付けられないもどかしさがあったという。それでは旧本社ビルでのオフィス環境を振り返ってみよう。

「働き方変革」の一環としてオフィス移転を具現化させる

旧本社ビルはビジネス街の一等地である日本橋に立地していた。ワンフロア面積200坪×11フロア。そのため部門ごとにフロアが分かれており、部門間を超えたコミュニケーションが取りにくかった。

「ワーカーの行動範囲が狭まる傾向にあり、同じ会社にいながら他部門の業務が全く見えていない状況に。コミュニケーションロスが問題視されていました」(藍 隆幸氏

さらに同じようなコミュニティスペースが存在するという問題もあった。例えば、自動販売機を設置したオープンスペースや会議室、複合機ゾーンなど、同じ空間が11フロア全てに存在。スペース効率が非常に悪かったという。

「それらの『課題』を解決し、『働き方』そのものを変革していこうという機運が高まっていました」(土志田 宏人氏

当時の経営課題を下記にまとめてみた。

経営課題

  • コミュニケーションロスの削減 ? 的確な意思疎通のできる環境づくり
  • コスト削減 ? 時間・労力・設備・空間などの見直し
  • 働き方の改革(生産性向上) ? 効率性の高いオフィスづくり

そうして「働き方の変革」の一つの手段として、オフィス移転の話が具体化。正式なプロジェクトの発足に先立ち、まずは移転先探しからスタートした。
東京駅近くのオフィスビルに入居しているコニカミノルタ本社との連携、全国の支店支社との行き来を考慮し、新幹線や羽田空港を含めた交通アクセスが利便であること。それに加えて、分割フロアの統合を考えて、いわゆる「メガプレート」のオフィスを探し求めた。2014年1月のことである。

移転先を決定後、施策アイディアをグルーピングし、分科会を組成する

いくつもの候補ビルを見て回った。その中で条件を満足させ、なおかつ現在、大規模な再開発が進んでいる浜松町エリアに注目した。そして当地が「都心サウスエリア」のランドマークとして今後、広く認知されるであろうと予測。候補ビルは築年数も経っていたが、リニューアルによる耐震補強を実施しており安全性も問題はない。コスト面の評価もあり、入居先を決定した。決定したビルはJR浜松町駅から徒歩5分の距離にあり、ワンフロア面積は816坪。移転前の11フロアから移転後は3フロアに集約できる。

「旧オフィスの使用面積が2,214坪だったのに対して、新オフィスは1,828坪。集約によるスペースの効率化により、面積の大幅な削減にも成功しています」(宮本氏

移転先が決まり、施策を具体化させるフェーズが2014年4月から開始した。そのため営業、業務統括、総務人事などといった全ての部門からメンバーを集結させ、施策アイディアを具体的に推進させるための分科会を組成する。

移転プロジェクト名は新住所である芝浦1-1-1にかけ、「111(トリプルワン)プロジェクト」と命名された。

「そこには『お客さま満足度No.1』『従業員満足度No.1』『みんながNo.1』など社員の思いも込められています」藍氏

組成した分科会では、オフィスデザインの検討に入る。

「まず全国の社員から現状のオフィスに関する意見を収集。その総数は実に405件。それらの意見や要望を一つひとつ精査し354件に。最終的には25項目に分類しました。それを7つの戦略課題と紐づけていったのです。経営層に提出する前に、意見を発案した方々にインタビューを実施した。その思いをプロジェクトメンバーがしっかり受けとったうえで、オフィスの将来像をイメージ付けしていったのです」宮本氏

7つの戦略課題

社員からの意見や要望を理想のシーンとしてイラストで表現する

「当社の中期計画を実行していくにあたり、我々自身が生産性を高める働き方をしなくては、今後、お客様に対して様々なソリューションを提案できないのではないか。自らが実践し経験をしていかなくてはビジネスとして成立しないだろうという意識がありました。そういった経験を実体験する場の必要性を感じていたのです」(土志田氏

オフィス用品販売事業からオフィス・ソリューション事業へと舵を切ったコニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社は、「働き方変革」を実践するというミッションを自らに課した。オフィスコンセプトは「Link UP!」に。

「もっと顧客と繋がりたい、コニカミノルタグループ全体と繋がりたい。『モノ売り』以上に、『コト売り』と呼ばれるソリューション解決のために必要な複合的提案をしっかり繋げていくという思い、そして社員同士のコミュニケーションを繋げ、それをどんどん良くしていく。そんな決意をコンセプトに込めました」(宮本氏

新しいオフィスのレイアウトイメージを共有するために、その理想の働き方を言葉だけではなくイラストで表現していったという。そこには「大勢のお客様の前でセミナーを開催している自分」「ファミレス席〈写真①〉でさっと打ち合わせをして課題を解決している場面」、「落ち着けるスペースで一人集中〈写真②〉している姿」などといった具体的なシーンが描かれていた。

「これらのイラストをベースに、オフィスのこの場所でこれを実現しようとあてはめていきながらゾーニングを決定していきました。そしてプロジェクトメンバーが主体となって、コンサルタント会社とともに具体的なレイアウト配置を進めていったのです」宮本氏

①ファミレス席

①ファミレス席

②一人集中席

②一人集中席

明らかにワーカーの働き方そのものが大きく変わった

計画通り2014年8月にオープンした新オフィスは、全体が見渡せるオープンなレイアウトとなった。

随所に配置されたコミュニケーションスペース〈写真③〉によって、部署を超えた自由な意見交換が可能に。またクラウドストレージ、社内SNS、WEBミーティングなどを導入。それらの施策にトライすることで、ライブオフィスやフリーアドレスも実現し、明らかにワーカーの働き方そのものが大きく変わった。

使用する3フロアの内、2フロアは執務エリアとなる。今回初めてフリーアドレスを導入。そしてお客様と接する時間を増やすために直行直帰を推奨している。

③ コミュニケーションスペース
③ コミュニケーションスペース

フリーアドレス〈写真④〉で自分の席がなくなり、紙の資料の管理方法も大きく変わります。しかしその全てを全社員が完全に理解しているわけではありません。そこで、多くの社員はしっかりと対応できる人を参考にしながら、少しずつ慣らしていきました。その結果、わずか3ヵ月ほどでスムーズに運用されるようになったのです。やはり、誰かから与えられるのではなく、自分たちでやるという意識が強かったのだと思います」土志田氏

そして26階が常設のショールームと応接フロアとなる。それに加えて今回の移転で新設された「Link Cafe」〈写真⑤〉が設置された。

「ここでは、リラックスした雰囲気でお客様との会話が生まれていますね」野田好男氏

④フリーアドレス

④フリーアドレス

⑤Link Cafe

⑤Link Cafe

移転がもたらした具体的かつ定量的な効果

「働き方」そのものを変革したことで、社員のモチベーションのみならず、コスト改善といった具体的数値で捉え、目で見て実感できる効果もあがっている。ドキュメントボリュームをチェックして、削減していったことで、キャビネットの数が大幅に縮減。専有面積にして238.5㎡が削減できた。ざっと計算するだけで月額180万円のコストダウンが可能になったうえに、そのスペースが有効活用できるようになった。

「テレビ会議システムを導入し、出張費の削減を実現。移転後2ヵ月間で、約200万円もの交通経費を圧縮することに成功しました。費用だけではなく、無駄な移動時間もなくなったわけですから、人件費換算で100万円もの圧縮を可能に。当然、CO2の削減にも寄与しています」(藍氏

フロアの集約により出力機器がトータル49台から39台に。占有スペースと消費電力も大幅に圧縮。それだけでなくIC認証を活用して最寄りの複合機から出力できるシステムを導入した結果、無駄な紙の出力枚数も減り、全体で25%もの削減につながっている。

永遠に進化を続けるスパイラルアップフェーズ

環境が変わると働く人の意識が変わる。それは、想定以上のスピードで実現し、そして想定以上の効果をもたらしている。

「当初は『移転後にしっかり号令をかけていかなければならないのでは?』と覚悟をしていたのですが、環境が変わったことで社員の意識も変わり、誰もが自主的に新たな施策に取り組んでいるようにみえます。フリーアドレスや紙の資料の管理に関わるルールもしっかり運用されていると思います」(藍氏

様々な部署からの選出メンバーで構成されたプロジェクト。しかも管理職ではなく、現場で仕事をしている一般社員が中心となったことが大きいという。もちろん、現時点における課題もある。移転後は、社内に「サジェスチョンBOX」を設置し、総務部門が社員の意見を吸い上げている。中には具体的なクレームも寄せられ、注意を促すケースもあるという。移転後もプロジェクトは継続し、分科会を発足して問題解決に努めている。

「計画段階であげた25の目標シーンの全てを、移転と同時に実現したわけではありません。まずは難易度が低く、効果の高いと思われるものから取り組みました。それ以外は、移転後に徐々に実施していこうと考えています。この段階を『スパイラルアップフェーズ』と名付け、継続的に行っていくことと捉えています」(藍氏

今回の移転では、「働き方変革」と同時に、それを顧客に発信していく場としてのショールーム戦略も盛り込まれた。

「元々、日本橋と品川の2ヵ所に分かれていたショールームを今回の移転を機に集約し、効率よくお客様をご案内しようと考えました」(土志田氏

「さらに『働き方変革』を自社実践し、広く発信していこうと。複合機などを展示しているショールームのみならず、執務エリアもお客様に見ていただく『ライブオフィス』の導入を計画したのです。もちろん、これらは経営層から降りてきた指示ではなく、プロジェクトメンバーの中からあがってきたアイディアをまとめ、カタチにした結果です」(宮本氏

新たにライブオフィスやショールームを活用した新たな営業施策を導入。それらの施策には具体的な効果も現れているという。

「ライブオフィス導入に伴い、社内をご案内する『ツアー・アンバサダー』を育成。それを営業担当者がフォローするスキームをつくりました。また営業担当者にもトレーニングを実施し、これまでの複合機中心の説明ではなく、オフィスの課題解決を主眼とした提案力を身につけさせたうえで、ツアーを運営していきました。現時点ですでに400組、延べ1万5000人の来場者をお迎えし、自社実践した成功事例として、お客様にご提案しています」(野田氏

ショールームは「ビジョンをお客様に提示する場所」と定義。これまでは単なる「働く場所」でしかなかったオフィスが、お客様に対して「働き方」をイメージさせる空間へと変わった。

「お客様がいらっしゃれば、自ずと皆がオフィスを綺麗にしようと思うようになります。今回の移転はまさに『心の引っ越し』そのものといえます」(野田氏

このオフィスを武器にして、コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社が目指す理想「Work Style Design Company」への躍進が加速度を増していく。