マネックスグループ株式会社 / マネックス証券株式会社

マネックスグループ株式会社 / マネックス証券株式会社

2017年10月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

「金融サービスの未来」を提言するマネックスが
新本社移転で取り組んだオフィス改革

「未来の金融を創ろう」という松本 大氏の強い想いのもと、1999年4月に起業したマネックス。同社は2017年、都内で展開する2拠点を、2月に本社、5月にもう1拠点のオフィスの2段階で統合した。今回は、この移転の経緯や新本社の概要についてお聞きした。

プロジェクト担当

森山 智光 氏

マネックスグループ
人事部マネジャー
マネックス証券
人事部長

森山 智光 氏

武田 恵理子 氏

マネックスグループ
人事部マネジャー
マネックス証券
人事部マネジャー

武田 恵理子 氏

特長的なエントランス

特長的なエントランス

はやわかりメモ

  1. 「未来の金融を創る」という創業の精神を維持しつつ成長を続ける
  2. 会議スペースは慢性的に不足し、コミュニケーションが取りづらい状況だった
  3. シンプルで機能的なオフィスデザインと、コミュニケーションの活性化
  4. 移転コミュニケーション委員会を立ち上げ、机上書類約70%削減でクリアデスクを達成
  5. ストレスチェックの数値や、人と人との交流で実感する新本社の満足度

「未来の金融を創る」という
創業の精神を維持しつつ成長を続ける

マネックス(MONEX)とは、MONEYの「Y」をアルファベット順に一つ前に進めた「X」へ変えたもので、一歩先をいく「未来の金融」を表わす意味を持つ。オンライン証券黎明期の1999年に同社を創業した松本 大(まつもと・おおき)氏は、当時、米ゴールドマン・サックス証券の一員として機関投資家向けサービスを担当していた。インターネットの普及や手数料自由化などの規制緩和が進む中、「インターネットを通じた金融商品取引のサービスを個人投資家向けに提供したい」という想いを胸に、マネックスを立ち上げた。創業の時期について、松本代表は「あと半年間ゴールドマン・サックスに在籍していたら、誰かが同じことを始めていたかもしれない。だから今、やらなければならなかった」と語っているという。

「当時の証券業界では、機関投資家向けには優れたサービスが数多くありました。インターネットという新しい仕組みを利用すれば、個人のお客様にも同様のサービスが提供できるではないかと考え、私たちマネックスはオンライン証券の初期に創業した一社であり、実際にインターネット上で利用できる多くのサービスを提供してきました」(森山 智光氏)

同社は創業以来、一貫して個人向けサービスに特化し、国内外のさまざまな証券業者と合併・再編をくり返しながら規模を拡大してきた。たった4人の創業メンバーでスタートした同社は、今や全世界に900人規模の社員を抱えるグローバル企業に成長したが、現在もなお、当時と変わらないベンチャー精神を持ち続けているという。

「新規採用のほか、企業合併などで異なる企業文化で育ってきた社員の入社も増えてきています。ですが、『マネックス』という社名に込められた『一歩先の未来の金融』という理念については、新しい社員たちも代表の松本から常々聞かされており、すべてのメンバーが共有していますね」(森山氏)

急成長による規模拡大と組織改編に伴い、同社はたびたび本社オフィスの移転を行っており、2012年7月には、本社を当時の千代田区丸の内から同じ千代田区の麹町へ移転している。この丸の内本社時代より前に、中央区日本橋箱崎町にコールセンター機能を持つオフィスをすでに開設しており、麹町本社時代も継続して都内2拠点体制を維持してきた。だが、その後も人員の増員と事業規模の拡大は続き、日本橋箱崎町のオフィスでは増床を重ねてきた。しかし、ついにそれも限界に達したという。

「オフィスが本社麹町と箱崎に分断されている状況に対し、統合してほしいとの社員の声が以前よりありました。ただ、それぞれのビルとの賃貸契約期間の関係などもあって、すぐにという訳にはいきませんでした。それでも2015年からご紹介いただいたいくつもの候補物件を見て回りました。移転先のエリアについては特段のこだわりはなく、『できれば、丸の内や麹町同様、馴染み深い千代田区内がいい。または東京証券取引所や数々の証券会社がある日本橋エリア』、あるいはもっと漠然と『両拠点それぞれ社員の通勤の利便性を考えて、23区内で山手線内側のどこかであれば』といったイメージでした」(武田 恵理子 氏)

会議スペースは慢性的に不足し
コミュニケーションが取りづらい状況だった

旧麹町本社は約380坪のワンフロアを使用。このスペースに社員と協力会社の方を含めて約150人が在籍していた。執務エリアと大小7つの会議室・応接室だけで一杯となっていたという。来訪者向けの会議・応接スペースはかろうじて確保していたものの、社員同士が使用する会議用のスペースは慢性的に不足している状態だった。

「当時、休憩スペースをつくる余裕もありませんでした。また、会議室は慢性的に予約が一杯で取りにくく、参加メンバーを招集して実際に会議をスタートさせるまでにかなりの時間的なロスが生じていました。旧箱崎オフィスなどとの他拠点間では主にテレビ電話会議をしていたのですが、やはり直接、顔を見ながらでないと細かいニュアンスの理解と部分ではコミュニケーションはとりづらかったですね」(森山氏)

「当時、証券の基幹システムの移行という大きなプロジェクトが進行中だったため、営業部門のあった本社とシステム開発部門のいた箱崎オフィス間がかなり密にミーティングを行っていました。ところが会議室がなかなか確保できないということで、私などもしょっちゅう社内の関係者から『何とかしてくれよ』とお小言をちょうだいしたものです(笑)」(武田氏)

旧箱崎オフィスではプロジェクトが進むごとに増床していく。しかも、プロジェクトに比例して協力会社のメンバーも増えていく。最終的には約975坪を使用していたが、執務スペース不足の状態が続いていたという。

「経営陣からは『もっと直接コミュニケーションが取りたい』という要望がありました。物理的に距離が離れていると、少しの確認だけでもその都度電話で問い合わせをし、場合によっては会議室を確保して集まらなければなりません。目の前にいればその場で済む用件なのに、余計な手間や時間がかかっていたのです」(森山氏)

それに加えて、社員数が増えていくのに伴い同じグループ会社内の社員であっても一度も顔を合わせたことがない、電話でしか話したことがないという仲間もどんどん増えてきたのも課題となっていた。

プレスルーム(ART IN THE OFFICE)

プレスルーム(ART IN THE OFFICE)

執務室全景

執務室全景

シンプルで機能的なオフィスデザインと
コミュニケーションの活性化

移転プロジェクトは、担当役員と人事部の4人のメンバーが中心となって進められた。4人はファシリティ担当とインフラ担当であり、オフィス構築の部分で手腕を発揮した。候補物件をいくつも内見していたが、どうしてもコスト高な新築ビルに目がいきがちとなり、移転先探しは難航したという。そんなとき、松本代表がかつてゴールドマン・サックス時代に勤務していたビルに空室が出るという情報を掴み、オーナーサイドとの交渉の結果、2016年1月に正式に契約することになったという。

「築年数のあるビルでしたので入居前にリニューアル工事を実施せねばならず、スケジュール的にはかなり厳しかったのですが、オーナー側にお願いして移転スケジュールを綿密に組み立てていただきました。その結果、まず2017年2月に本社居住部署が先行して入居し、5月のGWの時期に箱崎オフィス居住部署が移転することになったのです」(武田氏)

新本社では、25階のワンフロアと26階の半分、計約1,440坪を賃借することになった。これは、旧麹町本社と旧箱崎オフィスの合計とほぼ等しい面積である。ただし、重複していた機能を統合したため、かなり集約でき余裕のある空間構成となった。この余裕を活かして新たに休憩スペースなども設置。さらにオープンミーティングスペースも随所に配置することが可能となった。

「オフィス契約後、ただちに移転を担当するPM会社のコンペを行いました。3社の候補の中から、自社で設計のスキルを持ち、当社の求めるものに近い提案をしてくれた会社と2016年3月に正式に契約。まずは、経営者側の考えを確認したいということでトップインタビューをセッティングしました。インタビューでは、『シンプルで、機能的で、社内のコミュニケーションを飛躍的に改善し、何よりも楽しくて気分のいい空間になるようなオフィスにしたい』という松本の要望に設計デザイナーの方が見事にイメージ通りのレイアウトに仕上げていただきました」(武田氏)

PM会社の担当者は、松本代表の言葉からイメージした内装やレイアウト設計が形になるたびに逐一確認し、同社の意図通りであることを確認しながら順次決定していった。さらに、プロの視点からさまざまな提案を盛り込み、オフィスの完成度を高めていく。2016年8月末に最終デザイン案が決定したが、それは期待通りのものであったという。

「執務室はユニバーサルデザインで、誰にでも使いやすい機能的でシンプルなオフィスになったと思います。また、コミュニケーションの活性化を図るため、旧本社時代からパーティションで区切らない空間づくりを行っておりましたが、新本社でも同様にいたしました。さらにPM会社からの提案により社員が自然に集まれるマグネットスペースを導入いたしました」(武田氏)

来客用会議室

来客用会議室

マグネットスペース

マグネットスペース

見通しのよい空間は、松本代表が「担当者が自席にいるかどうかすぐわかるように」との考えから、丸の内本社時代から受け継がれている。

「デスク配置は完全固定席。自席での細かいオペレーションが必要な部署も多く、高性能な設備も要求されることもありデスクトップPCを支給しています。ただ、組織変更による席替えの機会が多いため、移転を機に固定電話は撤廃してスマートフォンに変更しました。席替えの際には、社員はPCと袖机だけを持って移動します」(武田氏)

外回りの多い業務スタイルではないため、フリーアドレス制の導入を検討はしたものの、当社のスタイルには合わないという結論に至った。そして、旧本社の最大の課題であった会議スペースについては、「発想を変える」という根本的な改革が図られた。

「それまで会議といえば、パーティションなどに区切られたクローズドスペースで行うものという固定概念が社内にありました。しかし、いままでになかったオープンなミーティングスペースが執務エリア近くに多くあれば、社内だけの打ち合わせで、パッと集まってパッと解散、時間効率もよく、場所の確保も容易で、かつ、予約フリーにしてしまえば、予約が一杯で取れないという不満もでないでしょう。また、オープンなのでミーティング中にそばを通った社員に声をかけて途中参加して意見をもらったりすることも可能で、新しいアイディアが生まれやすい環境づくりにもなるでしょう。そういった理由から新本社では、オープンミーティングスペースを増やすことにしました」(武田氏)

オープンミーティングスペース

オープンミーティングスペース

移転コミュニケーション委員会を立ち上げ
机上書類約70%削減でクリアデスクを達成

オフィスデザインの決定から移転の実施に向けて、同社の移転プロジェクトメンバーとPM会社との間では毎週定例会が開催された。さらに人事部の4名が事務局機能を受け持ち、社内の各部署から人選して「移転コミュニケーション委員会」が立ち上げられた。同委員会の目的は、オフィス移転に関するさまざまな情報を社内にアナウンスし、情報共有とともに社員の移転への意識を高めることであった。

「移転コミュニケーション委員会は、証券の基幹システム移行のプロジェクトと同時並行しつつも、社員一人ひとりが当事者意識を持って参加できるように全社を巻き込んだ取り組みを実践しました。たとえば、前回の丸の内から麹町への本社移転の際には、引っ越しの前日に慌てて荷造りしていましたが、今回は委員会メンバーから全社に向けて発信した移転コミュニケーションレターを通じ、荷造り等の準備が前もってスムーズに終えられました」(武田氏)

「また、今回の移転を機に、書類の削減、ペーパーレス化にも取り組みました。委員会メンバーには、特に書類の多い部署の部長クラスを意図的に人選して、部署内の書類削減に積極的に推進してもらえるようにしました。目標のファイルメーター(FM)を数字で示すだけでなく、『どのようなやり方をすれば書類を減らせるか?』という具体的な方法や、新本社の収納の実情も含めてアナウンスしたので、社員も取り組みやすかったと思います」(森山氏)

新本社に持ち込める荷物の量は「1人あたり段ボール2箱まで」だが、箱に収まり切れない書類等は文書保存規程に沿って各自が分別し、廃棄するか、外部倉庫に預けることになった。

こうした取り組みの結果、移転後の調査では移転前に比べて机の上に露出していた書類は約70%減を達成した。引っ越し当日の午後にはほぼ全社員が開梱作業を終えたという。

「前回の移転のときは、箱詰めしただけでなんとなく安心してしまい、そのまま移転先でも開梱もせず積まれている箱もありました。新本社ではクリアデスクを推奨しており、デスクの上にも横にも荷物を置かないよう指導にしていることも効果があったようです」(武田氏)

ストレスチェックの数値や
人と人との交流で実感する新本社の満足度

本取材の時点で、全社移転完了から約5ヵ月が経過していたが、この間、社内では移転効果についてどのように実感しているのだろうか。

「数値に表れている移転効果としては、定期的に実施している社員のメンタルヘルスチェックがあります。『職場環境ストレス』という項目で、移転前後を比較すると明らかに数値が低下していました。医師からは『これだけ数値が下がることは珍しい。他の要因に心当たりがなければ、移転の効果と考えて良いだろう』との回答でした」(森山氏)

「数値で測定できない効果として、社内のコミュニケーションは以前と比べて目に見えて改善されています。通りすがりに話しかけ対話が生まれるといったことは、物理的に場所が離れていたら考えられないことですから」(武田氏)

また、新本社のほぼ中央に設けられたコラボレーションエリアは、社内外のさまざまなイベントにも使用されている。プレゼンテーションなどで発表が終わると、参加者をそのまま懇親会に誘い、飲食や会話を楽しみながら交流が深まるという。

「やはり私どもは証券業ですから、旧本社ではセキュリティの関係上、オフィス内を不用意にお通しすることはできず、無機質な会議室内で完結するしかありませんでした。それが、新本社ではイベント後も気軽にお誘いできます。また、新卒受験者の方にオフィスで仕事をしているところを見学していただけるようになり、採用面での効果も期待しています」(森山氏)

コラボレーションエリア その1

コラボレーションエリア その1

コラボレーションエリア その2

コラボレーションエリア その2

コラボレーションエリア その3

コラボレーションエリア その3

アナグラブース

アナグラブース