日本事務器株式会社

2018年6月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

ITトータルソリューション&サービスの大手が
全国拠点を対象に構築した多様性オフィス

1924(大正13)年創業。いつの時代もお客様の一番近くでお客様の「事業を支える」最適なソリューションを提供している日本事務器株式会社。お客様のICT化をお手伝いするソリューションプロバイダーとして、50年以上にわたり地域に密着した体制で、全国各地域のさまざまな業種・業態のお客様に多彩なソリューションを提供してきた。今回は全国24ヵ所の拠点を対象に実施したオフィスリニューアル計画を紹介する。

田中 啓一 氏

日本事務器株式会社
代表取締役社長
兼 CEO


田中 啓一 氏

黒崎 秀二 氏

日本事務器株式会社
執行役員
経営企画部長

黒崎 秀二 氏

熊倉 博幸 氏

日本事務器株式会社
総務部長

熊倉 博幸 氏

浅野 利也 氏

日本事務器株式会社
経営企画部
IT企画グループ

コンサルタント
浅野 利也 氏

北本 卓史 氏

株式会社
くろがね工作所

ファシリティ環境
事業本部

東第2グループ
チーム6 課長

北本 卓史 氏

大島 弥生 氏

日本スチールケース
株式会社

Dealer Business
Manager


大島 弥生 氏

11階 ピッチ・コワーキングエリア

11階 ピッチ・コワーキングエリア

Contents

  1. いつの時代もお客様の一番近くで最適なソリューションを提供
  2. 働き方改革に必要な3要素はW×I×C。トップダウンで働き方改革を決断した
  3. クラウドを使ってどこの拠点からでも自席同様の働き方を可能にした
  4. 本社オフィスの各フロアにはそれぞれテーマを持たせた
  5. ポイントはITとの融合。社内情報システムの構築に取り組んだ
  6. 働き方改革をきっかけに企業風土も変えていく

いつの時代もお客様の一番近くで最適なソリューションを提供

日本事務器株式会社は1924(大正13)年に日本事務器商会として創業。創業当時は計算機やタイプライター、タイムレコーダーといった事務機器の販売が主業務だった。同社がITへと業務をシフトさせたのは、1961年にNECと提携し、国産初のコンピューターを取り扱うようになってからのこと。時代とともに、取り扱う商品・サービスは変貌してきたが、いつの時代もお客様の一番近くでお客様の「事業を支える」最適なソリューションを提供している。

「近年は、お客様と共に『お客様のベネフィット』を提供することをゴールに見据え、コンサルティングからシステム設計・構築、導入後の普及・定着、『効果が出るまで』を当社のミッションとし、製品やサービスの提供に留まらず、その製品やサービスを使うことによりお客様が得られるベネフィットを実現。その後の変化への対応も含めたサービスの創出に注力しています」(田中 啓一氏)

全国13,000件を超える豊富な実績により蓄積された業種・業務ノウハウをベースにお客様の要望に応じたフレキシブルなサービス提供が同社の魅力だ。現在、営業拠点は国内外含め41ヵ所の地域にまで拡大している。

「長期にわたって事業を続けてこられたのは、こうしたお客様目線での姿勢と、時代の変化やお客様のニーズにあわせ、取り扱う製品・サービスを変えてきたからだと思っています。地域密着力と業種・業務対応力といった強みを活かしながら、これからも事業を継続していくための方法の一つとして働き方改革を検討していました」(田中氏)

働き方改革に必要な3要素は W×I×C。トップダウンで働き方改革を決断した

働き方改革に必要な要素として、「WorkPlace(働く場所の改革)」「IT Solutions(デジタルワークスタイルに変わる改革)「Change Management(使う人の考え方や行動を変えるための手法)」の3点を挙げ、それぞれの要素を掛け合わせた(W×I×C)新しい働き方にチャレンジしている。

一つ目の「W」では、会社が最も自分がやりたい事を高い生産性で行える場所となるような職場作りを、二つ目の「I」では、自分だけではなく、相手のことも尊重しながら生産性を向上させることができるITツールの企画を、最後の「C」では、新しい環境やITにより働く人の習慣を変えることが目標だ。

そしてこれらを実現するために、長年にわたるパートナーであるくろがね工作所とスチールケースを加えたプロジェクトを発足した。

「どのようなオフィスが業務効率を向上させるのか。それまで漠然としたイメージしかありませんでした。インスピレーションが湧いたのはスチールケースさんと一緒にIDEOというデザイン・コンサルティング会社のオフィス見学に行った時です。その空間には新しい働き方のヒントがたくさん詰まっていました」(田中氏)

「最終的に我々はフリーアドレスの採用を決めました。それはワーカーが、現在取り掛かっている業務の目的を自ら考えて働く場所を選ぶというものです。そのヒントを得たのがスチールケースさんの提唱する『Work Modes』でした」(黒崎 秀二氏)

「スチールケースはアメリカの家具メーカーで、製品開発やグローバルでのオフィスリサーチを行っています。ワーカーの行動を主体にしたスペース提案をしている中で、ワーカーのWellbeing(ウェルビーイング)を支える『5 Work Modes』というコンセプトに共感いただきました。人々は一日の中でさまざまな作業モード - Focus(集中)、Collaboration(共同)、Lean(学習)、Socialize(交流)- を移行しています。また作業の間に、自分の考えをまとめる時間やリラックスする時間- Rejuvenate(回復)- も必要です。これらのスペースは1つのデスクやセッティングではサポートできません。それぞれのワークモードを最適にサポートする『5 Work Modes』のコンセプトを提案したのです」(大島 弥生氏)

「5Work Modes」をヒントに、複数人で話しながら行う仕事、一人で集中する仕事、遠隔地とのテレコミュニケーションなど、目的に合った働き方ができるよう、広い机、ゆったり座れる椅子、大きな画面、壁一面がホワイトボードの環境など、多様性に富んだ場所となるよう工夫している。

クラウドを使ってどこの拠点からでも自席同様の働き方を可能にした

働き方改革プロジェクトは2015年8月からスタートした。各フェーズの中でも企画・コンセプトの立案に一番時間を要したという。

「そして2016年4月から順次リニューアル工事を始めていきました。本社オフィスの完成は2017年5月のことです」(黒崎氏)

本社は1フロア215坪のオフィスビルの6フロアを使用していた。今回のプロジェクトを推進するにあたり、14階全フロアと11階を部分増床。移動しながら週末を利用して工事を行った。オフィスに居ながらの工事のため1ヵ所につき3ヵ月くらいの時間を費やしたという。

「プロジェクトの当初からの方針は、本社だけでなく地方拠点の働き方も変えるというもの。共通のWi-Fi環境、クラウドによる情報管理、ゾーニング、ファニチャーの企画を統一することで、出張時でも自席と同様の働き方が可能になりました」(黒崎氏)

「全国の拠点で同コンセプトのオフィスを構築していく。規模は拠点ごとにまちまちのため、家具1に対して複数のワーカーが使えるような家具の選定を行いました。タイミングによってはいくつもの拠点の工事を同時並行で進める場合もあり、スケジュール管理が大変でした。ただ、日本事務器様の社員間で情報共有がなされていましたので、スムーズな進行ができました」(北本 卓史氏)

そうして2018年6月、全国24ヵ所のオフィスリニューアルが完了した。

本社オフィスの各フロアにはそれぞれテーマを持たせた

本社はフロアごとに、そこで働いている事業部のミッションを表現したテーマを設定。そのイメージに合わせた色調にするなど特色を持たせた。

9階は開発チームのフロアとなる。新規事業の計画や調査、研究を行うためテーマは『Future(未来)』。ロボットやロケットのイメージを醸し出すようなデザインを採り入れている。

11階のテーマは「Marche(市場)」。社内外の人とのコラボレーションを目的としたフロアとなる。

「受付を抜けるとピッチ・コワーキングエリアと呼ばれる社外の方との交流を促進するエリアがあります。ガラスで仕切られた向こう側がカフェテリア。55席の椅子を用意し、社員同士のコラボレーションを推進しています。窓際にはハイカウンター席も用意しており、ここで資料作成をするワーカーの方が増えているそうです」(北本氏)

16階は首都圏支社。営業拠点ということもあって、活動的なイメージを持たせた。テーマは「Vitamin(ビタミン)」。入口近くにはカンファレンスルームを配した。

「ショールーム的な役割も持たせ、実際にお客様に働き方を見ていただくことができます。このフロアには地方拠点で展開している『5Work modes』が揃っています。ちなみに個人ワークとなるFocusは50席、Rejuvenateは6席、チームワークとなるCollaborateは42席、Socializeは23席を用意しています」(熊倉博幸氏)

9階フロア内のラボ

9階フロア内のラボ

11階 ピッチ・コワーキングエリア

11階 ピッチ・コワーキングエリア

16階 カンファレンスルーム

16階 カンファレンスルーム

さまざまなコラボレーションが必要であると考え、色々な用途を持つ機能を備えた。

「アドホックミーティングというエリアでは無線LANによる大型モニタを設置しています。モニタに投影した課題を全員で見ながら打ち合わせを行う場面が増えてきました」(熊倉氏)

同社ではちょっとしたミーティングを「ちょいミーティング」と呼んでいるという。「ちょいミーティング」を行うためにファミレス風の打合せエリアも採用した。その他、遠隔地とのWeb会議を可能にする個室や簡単な打ち合わせに有効なスタンディングデスクなど。椅子の高さは調整可能で、椅子に座ったままの社員と立っている状態の社員の目線が同じになる工夫も採り入れた。「ちょいミーティング」など、複数の人がディスカッションする場合は、ビジュアルに情報を共有しながらやるほうが、理解度、共有度が高いという。立ち話でさえ視覚的な情報共有ができるように各所にデジタルサイネージやディスプレイを配置、かつ、手持ちのiPhoneでさえも簡単にクラウドにある資料などをワイヤレスで表示できる工夫がされている。

「スチールケースではWellbeingの観点で家具を設計しています。また素材のチョイスの幅も広げ、ワーカーの感情のWellbeingをサポートしています。その考えが生かされた家具は身体的だけでなく、精神的、社会的にも良好な状態を保ちます」(大島氏)

「それらは最終的にEngagement(社員同士の絆)を向上させ、良好なビジネスライフの実現を可能にするといわれています」(北本氏)

その他、Intelligent Work Areaとして知的なイメージを持たせた「Owl(フクロウ)」、Calming Management Floorとして落ち着いたホスピタリティをイメージさせた「Ocean(大海洋)」をテーマにしたフロアを用意している。

ポイントはITとの融合。社内情報システムの構築に取り組んだ

「もちろん家具やデザインだけ変更しても成功するはずがありません。ポイントはITとの融合です。どこででも働けるような社内情報の構築がカギを握っています。9年前から段階的にiPhoneを配備してきました。3年前に全従業員への配備が完了し、今では、業務に必須のアイテムとなり、それが結果的に良い方向に向かいました」(黒崎氏)

これまでは固定席で、しかも資料の大半が大量の紙だったため、一旦会社に戻ってこないと仕事ができない。そこで運用や管理が容易なデバイスが必要だった。次期デバイスはセットアップや運用管理、情報漏洩リスクのことも含めて検討された。

「高い生産性を確保するために、情報共有やコミュニケーション、コラボレーションのあり方など、一つひとつの課題について検討を進めました。その結果、iPhoneに加え、共有デバイスとしてChromebookを採用しました。Chromebookは数秒で起動し、すぐにデータにアクセスできます。万が一Chromebookを紛失してもデータはクラウドで一元管理されているため安全です。セキュリティ対策も万全なので安心・安全なデバイスです」(浅野 利也氏)

「新入社員への配付もIDとパスワードで簡単にセットアップが完了します。動作環境やアプリケーションのインストールの手間がなくなりました。また、破損した場合も復旧にかける作業の必要がありません。利便性の高さを感じますね」(浅野氏)

また「G Suite」というグループウエアとの組み合わせでスケジュール管理も行う。その他、コミュニケーションの取り方も大きく変貌した。

「確認や課題解決のために電話一本で片付くことはよくあることかもしれません。聞く側からすると短時間で解決するのですから生産性は上がります。しかし聞かれる側は集中力が途切れ、生産性がダウンしているかもしれません。そこで気軽で、スピーディに使用できるビジネスチャットを社内で導入しました」(黒崎氏)

ビジネスチャットの採用で仕事の取り組み方が大きく変わった。

「『業務報告』から『情報共有』になりました。それまでは会社に戻ってから報告書の作成を行っていました。わずかではありますがタイムラグがあるため情報の鮮度が落ちることもあります。しかしビジネスチャットを使って随時書き込んでいけば、リアルタイムで情報共有が実現できるのですから報告書の提出は不要となります」(浅野氏)

「会社の中はもちろんのこと、移動中、訪問先、コワーキング、在宅など、いつでもどこにいても安心して安全に業務ができるIT環境を構築できました」(黒崎氏)

働き方改革をきっかけに企業風土も変えていく

「働き方改革のコンセプトであるW×I×Cのうち『Workplace』と『IT Solutions』は社内に浸透しつつあります。しかし『Change management』に関してはまだまだですね。少しずつ、会社の風土自体を変える覚悟で進めていきたいと思っています」(田中氏)

「当面の目標は、さまざまなツールを活用して今まで以上にコミュニケーションを増やすことです。視点の違う情報を交換しあうことで、今までにない発想や成果を生み出します」(熊倉氏)

「フレームワークを我々がつくって、それに合わせてオフィス機能を改善していく。その作業の繰り返しです。iPhoneとChromebookだけあれば場所がどこであっても今までと同じ環境で仕事ができる。それこそが我々の考えていた働き方の実現なのです」(黒崎氏)

同社が掲げているテーマは「Change to change」。変わるために変わる。常に変われる体質でいることを目指している。

「それは、テクノロジーがものすごいスピードで進歩しており、我々を取り巻くビジネス環境も変わり続けていく。そのスピードに対応し、新しい環境の中で必要とされる企業となるためにも 早く(Early)、速く(Fast) 、着手、行動する「あたりまえ」が必要ということです。新たなことをやるということは、その効果が期待できる反面、想定していなかった問題も出てくる可能性があります。それらを、いち早く我々が体現し、その対処方法も編み出した上で、お客様に提案、訴求する、というのが、我々が率先して新しいことに取り組んでいる理由の一つでもあります。行動を起こしながら新たな改善点を見出していきたいですね」(田中氏)

16階 アドホックミーティングエリア

16階 アドホックミーティングエリア

16階 ファミレス風エリア

16階 ファミレス風エリア

16階 スタンディングスペース

16階 スタンディングスペース

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