- チャンスを活かしたオフィス改革
日本オラクルは2000年に東証一部に上場。株主価値の最大化のため、上場により得た資金の一部を自社ビルの取得に充当し、分散していたオフィスの集約・統合による管理コストの削減を目指す。事業拡大やM&Aに伴うオフィス拡大で執務スペースが足りなくなるなど、今後の事業拡大やM&Aに備えるとともに、コミュニケーション&コラボレーションのより一層の活性化のため、この機会にオフィス環境の改善を図ることに。 - オラクルの日本における拠点として
自社ビルの建設を決意したのは、日本に根付いた企業であることを強くアピールするため。ブランディング戦略の要となる本社だけに、立地、デザインなどには徹底的にこだわった。 - 経営ビジョンとオフィスデザインは一致する
日本オラクルは第二の創業ともいえる新しい経営ビジョンを発表しているが、その内容に合わせて新オフィスが設計された。社内だけでなく社外とのコミュニケーションを活発にするスペースとデザイン、従業員が場所にとらわれずに働けるWork@Everywhereを実現するオフィスへ。 - オフィスづくりはペーパーレス化から
Work@Everywhereを可能にする自社製のITインフラを利用し、移転前からペーパーレス化を徹底することで働く場所を自由にできるほか、デスク周りには余計なものがいらなくなる。その分、会議や打ち合わせスペース、リフレッシュコーナーなどの設置が可能に。 - 画期的な2人用会議室
資料づくりや集中した情報交換など、ビジネスにおいて「2人会議」の需要はかなりある。そのための部屋を用意することでオフィスの多様な利用を促す。
オフィスの集約によって人が集まるから
ブランディング効果のあるビルが必要だ。
日本オラクルといえば、以前に千代田区紀尾井町ニューオータニガーデンコートにあった旧本社を紹介させていただいており(1999年6月号)、オフィスの先進企業としては早くから注目されていた。たくさんの熱帯魚が泳ぐ大型水槽、インコやカナリアがさえずる鳥かご、パーティション代わりに置かれた何鉢もの観葉植物、そして社内を巡回する社員の大型犬は、どれも旧来のオフィスの常識を打ち破るものだった。その後、水槽や観葉植物などは日本企業でも活用するケースが増えていることを考えれば、日本オラクルの目指す方向はオフィスの未来と一致していたようだ。
「確かに旧本社のオフィスはマスコミにも大きく取り上げられたりして注目され、話題になりました。しかし私たち自身は、あれで全て完成とは考えていなかったのです」
こう語るのは、日本オラクルのリアルエステート&ファシリティ部門を長く担当してきた瀬谷一也氏だ。
「前のオフィスを構築したときには、接客用のスペースを中心にデザインワークを進めたため、執務スペースの環境は決して満足できるものではありませんでした。その後、事業の拡張やM&Aなどによってオフィスが拡大・分散していくと、デスクの確保すら大変で、オフィスをきれいに整備することもできなくなってしまった。それだけに、どこかの段階で、大規模なオフィス改革をしなければいけないと考えていたのです」(瀬谷氏)
そのきっかけになったのが、2000年の東証一部上場だった。
「上場によって出資者からお預かりした資金で、いかに株主価値を最大化しようかと考えたとき、分散しているオフィスの集約・統合がテーマにあがったのです。それによって管理コストを下げることができれば、その分を配当に回せるわけで、上場益の使途としては理にかなっている。合わせて従業員やお客様に喜んでもらえるオフィスをつくれば、まさに一石二鳥だと思ったのです」(瀬谷氏)
そして多くの検討を重ねた結果、自社ビルの建設に踏み切ることになる。
「外資系企業は一般的に『業績が悪化したらすぐに日本のマーケットから撤退するのではないか』と思われがちなのです。もちろん私たちは日本に腰を据えてビジネスを展開していくつもりでしたから、その姿勢を明確に示すためにも自社ビルを持つことは大きな意味があったのです」(瀬谷氏)
ところが、プロジェクトは簡単には進行しなかった。約2,500名の従業員を全て収容できるビルを建てるような土地が、なかなか見つからなかったのだ。
「新本社には、従業員用のオフィスだけでなく、トレーニングセンターやセミナールームなど、全て併設するつもりでしたから、それなりのスペースが必要です。しかも日本オラクルにとって顔となるビルだけに、エリアや場所の選択は慎重にならざるをえません。そういう条件で探していくと、希望に合った敷地はなかなかなかったのです」(瀬谷氏)
自社ビルということもあって、ブランディングに役立つ一等地でなければならない。そんな条件を満たす土地を見つけるまでに、結局、5年近くを費やしてしまう。
「そんなとき、間組本社の跡地に三井不動産と共同でビルをつくらないかと いう話が来たのです。日本を代表する大通りに面し、住所も北青山、しかも 地下鉄駅の真上で改札口もビル内に新設されると聞き、これ以上ない条件に驚きましたね。最終的に両者の話し合いにより、オフィスフロアは、全館、 私たちが使用するという条件で合意しました」(瀬谷氏)