本町サンケイビル

2019年10月取材

この記事をダウンロード

記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

大阪を代表するビジネス街にハイグレードなオフィスビルが誕生する

大阪の大動脈である「御堂筋」から至近の立地で「本町サンケイビル」の新築工事が進行している。本開発は、事業主である株式会社サンケイビルが東京の主要エリアで積極的に展開しているハイグレードのミッドサイズオフィスビル「S-GATE」の思想を継承した開発となっている。今回はプロジェクトの背景や特長的な機能について、メンバーにお話を伺った。

稲村 政志 氏

株式会社サンケイビル
関西営業部
部長

稲村 政志 氏

金杉 憲治 氏

株式会社サンケイビル
関西営業部
課長

金杉 憲治 氏

垣井 生也 氏

株式会社サンケイビル
関西営業部
マネージャー

垣井 生也 氏

米田 圭井子 氏

株式会社サンケイビル
関西営業部
チーフ

米田 圭井子 氏

宮内 貴大 氏

株式会社サンケイビル
関西営業部

宮内 貴大 氏

外観全景

外観全景


エリアの空室不足を受けてオフィスビルの開発を決断する

株式会社サンケイビルがオフィス開発用地として土地を取得したのは2018年6月のこと。開発地は大阪メトロ御堂筋線・中央線・四つ橋線の3路線が交差する「本町」駅から徒歩1分と利便性の優れた立地となる。その上、大阪市のほぼ中央を東西に走る主要道「本町通」に面し、大阪の中心部を南北に横断する街路「御堂筋」からも至近で、竣工後は抜群の視認性を有することとなる。

「2018年9月に土地の売買契約を締結しました。土地取得後、設計を進めながら2019年11月から本体工事に着手。設計・施工は株式会社竹中工務店大阪本店。竣工は2021年8月末を予定しています」(稲村氏)

「取得当時は大阪ミナミを中心にインバウンド需要に牽引されホテルの開発ラッシュが全盛でした。本町エリア周辺も同様でしたが、一方で大阪市内にオフィスビルの供給が少なく、空室率も過去最低に迫る状況で。当該地でのオフィスビルの開発に至ったのです」(金杉氏)

ビジネスニーズに適したハイスペックな中規模オフィスビルの供給が不足していた

「本町エリアは大阪を代表する歴史あるオフィス街です。本町通や御堂筋沿いにオフィスを構えることを目標としている方も多いと聞きます。地下鉄が南北と東西に乗り入れるこの地は、実は梅田よりも交通利便性は高いかもしれません」(稲村氏)

しかしエリアポテンシャルが高い割に、これまでビジネスニーズに適した中規模クラスのオフィスビルが不足していた。

「そこで、当社が東京の主要エリアにおいて展開しているハイスペックのミッドサイズオフィスビル『S-GATE』シリーズの思想を継承しながら関西エリアにおける代表的なビルの位置づけとして開発を進めていきました」(稲村氏)

1階ピロティと屋上庭園でにぎわいと癒しの空間を提供する

同社では過去に事業展開してきたオフィスビルにおいて、オフィスワーカーの憩いの場となるようなスペースを敷地内に積極的に設けてきた。同ビルも同様に街のにぎわいに貢献する空間を創出させる。

「本町通と面する1階部分は大きなピロティを採り入れます。『風のピロティ』と名付けて開放的な明るいデザインを構築する予定です」(金杉氏)

「1階エントランスは天井高約11mの開放的なデザインとし、一部に店舗を配置する予定です」(宮内貴大氏)

「そして屋上の北側に入居者専用の『屋上庭園』をつくる計画です。庭園の新設にあたり直接テナントフロアからアクセスできるようにエレベーターの設計変更をしました。具体的なフェンスの高さやデザインについてはこれから調整していきます」(垣井生也氏)

外観
外観

多様なハイスペックを採用した本町エリアの新たなランドマーク

「本町エリアは大阪市で公開しているハザードマップで見る限りでは特に川の氾濫や浸水といった被害は予測されていません。しかし安全性こそ確保されていますが、万全を期して1階のビル開口部に防潮板を設置する予定です。そして浸水被害を防止するために2階に電気室と機械室を設け、屋上に非常用発電機を置きます。非常用発電機を実装することで、災害時でも共用部へ最大48時間の電力供給を可能にします」(垣井氏)

「地下1階に雨水貯水槽と汚水曹。3~4階が駐車場。5~21階がオフィスフロアとなります」(宮内氏)

「大阪は営業活動に自転車を使うケースが多いため、当初の設計よりもサイクルラックを大幅に増やしました」(米田氏)

同ビルの1フロア面積は約336坪の整形無柱空間。入居テナントがレイアウトしやすい設計とし、1フロア最大6分割を可能とする。さらに天井高2,800㎜、OAフロア100㎜と開放感のある空間を提供する。共用部では天井高約11mの開放感のあるエントランスロビーをはじめ、自走式駐車場によるスムーズな入出庫の実現、各フロアに設けた男女別ハンディキャップ用トイレも本物件の特長となる。

「オフィスフロアの総貸室面積は約5,700坪。満室で稼働した場合、約2,000人が当ビルに就業することになります。就業者の増加とともに、本町エリアに新たなにぎわいが誕生することが期待されます」(金杉氏)

エントランスへのアプローチ

エントランスへのアプローチ


地球環境に貢献する新時代のオフィスビルの開発に取り組んでいく

同ビルでは地球環境に貢献する多様な機能を設けている。

「導入する水冷式空調機は、ファンモーターによる排熱を低減させ、大幅なCO2の削減ができ、排気・排熱のないクリーンな空調環境の実現に寄与することが可能です」(稲村氏)

「その他、昼光センサーによる自動照明制御装置や電動ブラインドの採用、CASBEE(建築環境性能評価)Sランク取得など、環境に配慮します」(金杉氏)

「これらの環境提案はCO2削減の実現性に優れた令和元年のサスティナブル建築物等先導事業として評価され、国土交通省が行う『省CO2先導プロジェクト 2019』に採択されました」(垣井氏)

サステナブル建築とは、設計・施工・運用の各段階を通じて、建築のライフサイクルを通じて省エネや環境に配慮して建築物を構築すること。国土交通省は2001年からCASBEEを活用して建築物の環境性能を評価している。また、サステナブル建築物等先導事業を実施、補助金制度を設けて振興を図っている

「さらに2019年5月から一般財団法人建築環境・省エネルギー機構によって『CASBEE-ウェルネスオフィス』の先行評価認証が開始しました。これは建物を利用している方の健康や快適性の維持・増進を支援する建物の仕様や性能、取り組みを評価するものです。オフィスユーザーが健康経営などを意識してオフィスを構築するのではなく、ビルの供給側が認証を受けるために竣工時に行うものとなります。今までにない全く新しい環境認証ですが、ぜひ当ビルで取得したいと思っています』(垣井氏)

「これら地球環境に貢献するオフィスビルは、単純に考えてもテナント企業様の電気コスト削減に効果を発揮しますし、社会的責任の意味合いからも今後さらに取り組むべき課題になってくるでしょう」(米田氏)

周辺エリアと連携を取りながら大阪の魅力をアピールしていく

大阪市都市計画局では御堂筋の都市景観を継承しながら、新たなにぎわいの拡充を図る計画「御堂筋本町北・南地区地区計画」を策定した。同地区が培ってきた歴史あるビジネス街という強みを活かしながら、魅力的な多機能エリアを目指す計画だ。策定計画では御堂筋自体を拡幅。連続した街並みを維持するために壁面を揃え、低層部にはにぎわい機能を持たせる。歩行者道路も広々とした空間とするなど大幅な改修を予定している。ちなみに同ビルが立地するエリアは御堂筋本町北地区計画の隣接部分となる。

「将来的には、御堂筋沿いのビル所有者や入居テナントと連携を取りながら大阪の魅力を国内外にアピールしていきたいと思います」(金杉氏)

大阪における同社の開発は、北区のビジネス街である西梅田の大規模複合ビル「ブリーゼタワー」、南側のターミナルである難波に位置する「難波サンケイビル」に続くものとなる。立地的にはちょうど南北の中間点に位置するため、竣工後もバランスの良い運営ができると語る。

「せっかくの好立地にハイスペックビルを竣工するのですから、大阪らしい『人と人の交流』をテーマにした街づくりを進めていく予定です」(稲村氏)

この記事をダウンロード