東京ワールドゲート

2018年11月取材

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記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

新たな価値を生むグローバル&クリエイティブエリアを目指す
「神谷町」のシンボルタワー

港区・虎ノ門を拠点とする大手デベロッパーの森トラストは、国際都市東京を代表するにふさわしい新たなランドマークの開発を進めている。街区内のシンボルタワーとなる大規模複合ビルの竣工は2020年3月の予定だ。今回の取材では同プロジェクトの概要について関係者の皆様からお話を伺った。

増永 義彦 氏

森トラスト株式会社
不動産開発本部 管掌
取締役

増永 義彦 氏

小野 誠 氏

森トラスト株式会社
社長室戦略本部
事業企画戦略室
部長代理

小野 誠 氏

皆吉 亮平 氏

森トラスト株式会社
営業本部
東京ワールドゲート
グループ
課長

皆吉 亮平 氏

神谷町・虎ノ門を拠点とする森トラストが手がける大規模再開発

外観見上げパース

外観見上げパース


虎ノ門の地名は、江戸城南端(現在の虎ノ門交差点付近)にかつて存在した「虎ノ門」という城門の名称に由来する。戦前の1938年に東京高速鉄道(現・東京メトロ)の地下鉄駅が開業する際には駅名として使用されるなど、地域住民にとっては馴染みのある地名であった。ちなみに住所表示上の町名として採用されたのは1977年と割と近年のことである。

虎ノ門に隣接する千代田区・霞が関は、明治時代から現代に至るまで内閣府や国会議事堂をはじめ、官公庁施設が集積する日本の中枢である。そこからほど近い虎ノ門界隈には、各国の大使館や外国人居留地が設けられ、非常に国際色豊かなエリアとして発展してきた。

一方、開発事業主である森トラスト株式会社は、1999年9月にデベロッパーとして開発した「虎ノ門二丁目タワー」へ本社移転を行う。そのタイミングで現社名に変更。以来、約20年にわたって神谷町・虎ノ門エリアを拠点としてきた。本プロジェクトはそんな森トラストのホームグラウンドで進行している。

計画地は、東京メトロ日比谷線「神谷町」駅直結の好立地。農林漁業団体職員共済組合の保有施設『虎ノ門パストラル』を中心とした一体の再開発となる。同社が「虎ノ門パストラル」の敷地を取得したのは2008年1月のこと。翌2009年9月末に施設が閉館すると建物は解体・整地される。その後、広場、貸菜園、飲食店などからなる期間限定の暫定的な施設の利用を経て、2016年10月に本工事が着工した。

着工前の計画名称は「(仮称)虎ノ門四丁目プロジェクト」。2015年3月4日に内閣府の定める国家戦略特別区域の特定事業として「国家戦略都市計画建築物等整備事業」の第一号認定、および「国家戦略民間都市再生事業」の認定を受けている。その後、2016年10月の着工時に「世界と東京、世界と日本をつなげるゲート」機能を担うという意味を込めて「東京ワールドゲート」という街区名称に変更された。

本プロジェクトが認定を受けている国家戦略特区とは、世界と戦える国際都市の形成を図るために必要な施設(国際級ホテル、都心居住のための住宅、オフィスビル、コンベンション施設等)の立地を促進し、世界から資本・人材を呼び込む国際的ビジネス環境を整備することを目的とした区域である。都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法および都市再生特別措置法の特例が設けられ、東京の国際競争力強化に向けた都市機能の導入により、神谷町・虎ノ門エリアの発展をさらに加速させる街づくりを行う。

「神谷町・虎ノ門というエリアの特性を考えたとき、『霞が関に近い官庁街』『ビジネス街』であることや『大使館や外資系企業など外国人の多い土地』というイメージがあります。その他、『オフィスビルや公共施設の他、ホテル、住宅等の多様な用途が共存する街』でもあり、『神社仏閣も多く、都心にありながら緑豊かな環境』という一面も備えています。その多様性が日本を代表するビジネス街の一つである『丸の内・大手町』と違う部分ですね。今回の再開発計画を取り組むにあたり、これらの多くの魅力を最大限活かした開発にしなければならないと考えました」(増永義彦氏)

エリアの特性を活かした開発の軸を定め国際都市としての地位を高める

同社では多くの外国人が集積するエリアの特性を取り入れて、以下3つの開発の軸を定めた。そして3つの軸を集約。コンセプトを「Globalize JAPAN , Localize the WORLD」とし、ハード・ソフトの両面から「国際都市としての地位の向上」を目指すという。

1. イノベーションを支えるビジネス・交流環境の整備
 ① 世界の最先端が生まれる都市・TOKYOのワークスタイルを実現するビジネス空間
 ② 仕事の合間のリフレッシュや憩いの場を創出する、緑あふれるアメニティ

2. グローバルプレーヤーやイノベーターを呼び込む、一流の滞在機能の構築
 ① グローバルプレーヤーの感性を満たすラグジュアリーな滞在機能
 ② 滞在生活をより快適に総合サポートするライフサポート機能

3. ジャパンブランドを世界に発信する拠点の創出
 ① 日本全国の魅力を集約し、世界に発信する「ジャパンブランドポータル」

「憩いの場の一つである300年の歴史を持つ『葺城(ふきしろ)稲荷神社』は、もともと敷地東側の通路に面した擁壁(土壌の横圧に抵抗して斜面の崩壊を防ぐために設けられる構造物)の上に建てられていましたが、本プロジェクトを機に、安全性の確保を考えて街区内に遷座することになりました」(増永氏)

エリアの地域性を考えてきめ細かな快適環境をつくる

「東京ワールドゲート」は地上38階、地下3階建。31階から36階の6フロアには「東京エディション虎ノ門」が入居する。エディションとは、「マリオット・インターナショナル」の最高級グレードに位置づけられるラグジュアリーライフスタイルホテルブランドで、森トラストは同ホテルを日本で初めて誘致することに成功した。

「東京エディション虎ノ門」の客室数はSuite Roomを含めて約200室。短・中長期滞在ニーズに応えられるようにサービスアパートメント仕様の客室も提供する。加えて「レストラン」「バー」「フィットネス」「プール」「スパ」なども併設する。これらの付帯施設はホテルの宿泊客だけでなく、オフィスワーカーや地域住民が利用することも想定しているという。

「同ホテルはソーシャライジングをコンセプトとしています。神谷町・虎ノ門エリアのさらなる発展と活性化を目指して、ホテルの宿泊客と地域住民、さらにはオフィスワーカーの皆様など、普段あまり接点のない方々の交流を促すということも、今回の再開発事業の狙いの一つです。そのために弊社が丸の内で運営する外国人向けの観光案内所と連携したイベントなども企画中です」(小野氏)

さらに、外国人比率が高い神谷町・虎ノ門の地域性を考え、2階には健康をトータルにサポートする多言語対応可能な医療施設を整備し、さらに生活コンシェルジュを配して諸手続きの支援、生活情報や観光情報を多言語で提供するなど、外国人の生活を快適にサポートする機能を充実させる。

「高低差のある街区内をスムーズかつ、ストレスなく移動できるように、エレベーターなどの動線計画にも配慮しています。そして外国の方々にもどんどん利用していただくことで、将来的にこの場所を『ジャパンブランド』の発信基地とすることも視野に入れております」(増永氏)

低層店舗完成予想パース

低層店舗完成予想パース


オフィス空間の創造をサポートする「クリエイティブフロア」を展開

オフィスフロアは、3階から30階までの計28フロアとなる。1フロアの基準階面積は約1,160坪。無柱の広大なフロアプレートは、複数フロアまたは複数棟に分かれている分散型オフィスからの集約ニーズに対応可能だ。他にも、最高水準のオフィススペックが用意された。全室にLED照明を採用し、ゆとりと開放感を生む天井高2,900mm、OAフロア150mm、基準階床荷重500㎏/㎡(ヘビーデューティーゾーン1,000㎏/㎡)。各階72ゾーン、約50㎡ごとに温度調整を可能にするインテリア空調、ペリメーターには各階58台の個別空調ユニットと自然換気口を装備する。

地下1階から地上2階まではフラッパーゲートを設置。安心のセキュリティを提供する。BCP対応も万全でハイブリッド制振架構を採用し、一般の超高層建築物に求められる耐震性能の1.5倍の性能を誇る。また、長期停電に備えて最大で平常時の約8割をカバーする大容量の発電設備を有するという。

「国際色豊か」というのが神谷町・虎ノ門エリアの特性ではあるが、リーシングの戦略方針としては、必ずしも外資系企業を重点的にアプローチしていくつもりはない。

「資本の内容や企業規模よりも、国際的にビジネスを展開しているかどうかを重視したいと思います」(皆吉亮平氏)

オフィスフロアの約半分にあたる3階から16階までの計14フロアを「クリエイティブフロア」として展開するのも特長的だ。オフィス事業のビジョンである「Creative First」に基づき、「高いフレキシビリティとコストセーブを両立する独自の内装仕様」、「フロア全体で創造性を高める専用の共用部デザイン」、「オープンイノベーションを想定した柔軟かつ最適なセキュリティ」を用意。

「企業が求める『生産性やクリエイティビティを高め、優秀な人材の獲得に繋がるイノベーティブなオフィスづくり』を強力にサポートする、というコンセプトです。具体的には、『引き渡し時に天井の約4分の1をスケルトン仕上げとする』、『共用部にクリエイティブフロア専用のノマディックデザインを採用する』、『3階から9階へのエレベーターバンクに限りセキュリティフリーに設定、来訪者の動線をスムーズにする』などの工夫を施しています」(小野氏)

また約5,000㎡の緑地空間と共に、建築家の隈研吾氏がビルエントランスのデザインを担当。洗練された心地よい空間デザインになるという。

「一昔前のオフィスはどこの企業も似たようなレイアウトでした。しかし、近年はデザインにしても使い方にしても、非常に多様性に富んだ空間を求める企業が増えています。そこで、契約内容も含めて企業ニーズに合わせたフレキシブルな設定が求められると考えたのです」(皆吉氏)

オフィスロビー完成予想パース

オフィスロビー完成予想パース


基準階平面図

基準階平面図


クリエイティブフロアイメージ

クリエイティブフロアイメージ

多様な企業・ヒトが、さまざまな交流を通じて新たな価値を生み出す街へ

同社は2017年に新コーポレートスローガン「Create the Future」を策定し、「わくわくするような未来の創造」に向けての取り組みを行っている。その一環として、主要な事業拠点「神谷町」の新たな街づくり構想「神谷町God Valleyビジョン」を昨年9月に発表した。「世界が注目し、新たな価値が生まれるグローバル&クリエイティブなエリア」をビジョンに掲げ、その実現に向けて、4つの柱「SDGs」「オープンイノベーション」「スマートテクノロジー」「ウェルネス」を定めて5つのアクションプラン「街づくりの中でのSDGs(持続可能な開発目標)の促進」「クリエイティビティを高めるエリア空間の構築」「未来のテクノロジーや次世代サービスの導入」「多様なコミュニティの形成」「エリア連携イベントの開催」を展開していく。

「私たちが特にこだわっていきたいのは、『多様性』と『交流』の二つです。オフィステナントの皆様がテナント同士、または近隣に所在する企業各社の皆様と相互に交流し、エリア全体を盛り上げていければと考えています。そのための街づくりのビジョンとして『神谷町God Valley』構想を策定しました」(増永氏)

まさに神谷町・虎ノ門エリアの未来を象徴するビジョンであり、「東京ワールドゲート」はそのフラッグシップとなる。

「神谷町・虎ノ門エリアが昔から多様性を受け入れやすい街であったことは、過去のさまざまな事例が示す通りです。職住近接の暮らしやすい環境の中に、高機能でクリエイティビティあふれるオフィス環境を構築することで、大手企業と中小・ベンチャー企業、また海外企業といった多彩なプレイヤーが集まり、さまざまな交流を通じて新たなエリアの魅力を創造していくことが『神谷町God Valley』ビジョンのテーマになっています」(小野氏)

「東京ワールドゲート」は2020年3月の竣工予定だが、この「神谷町God Valley」ビジョンに基づき、未来に向けての街づくりはすでにスタートを切っている。近隣の同社所有ビルではコワーキングスペースやシェアオフィスが開設され、ベンチャー企業の誘致を積極的に行っている。またさらに「多様性」と「交流」を促進すべく、テナント企業をはじめ神谷町エリアに縁のあるさまざまなステークホルダーとゆるやかに連携しながら、新たな価値の創造やエリアの課題解決を目指す「神谷町God Valley協議会」を発足した。

同社の中長期ビジョンである「Advance2027」においては、新規投資事業およびイノベーション創出の戦略を積極的に推進する。スタートアップ企業の活動拠点「dock-Toranomon」をCreww株式会社と共同運営し、大企業とのコラボレーションを展開。未来を見据えた新規事業をさまざまな形で支援していく。

「来たる2020年には、五輪開催だけでなく、東京オフィス市場にオフィスビルの大量供給が予定されています。そうした中で、私たちと一緒にイノベーションを起こしていこうというコンセプトに多くの企業様が共感し、賛同いただいている状況です」(増永氏)

こうした多面的な取り組みを行いながら日本を代表する国際的拠点の開発が進められていく。

水辺テラスイメージ

水辺テラスイメージ


正面入口完成予想パース

正面入口完成予想パース

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