一番の目的はお客様の笑顔を見ること。
そのために「VAN LIFE」という新しいライフスタイルを提供していく

2019年3月取材

2018年に創業したCarstay株式会社は、その地域の文化や魅力を体験しながら車中泊による旅を楽しみたいユーザーと、空いている駐車場や空き地を有効活用して収益を得たいと考えているホストをつなぐシェアリングサービスを展開している。最終的な目的は車旅・車中泊といった旅の手段の提案を超えた、新たなライフスタイルの提言だという。今回の取材では、それらのアイデアを生み出した背景や将来展望などについてお聞きした。

宮下晃樹氏

Carstay株式会社
CEO/代表取締役 宮下晃樹氏

大学卒業後、有限責任監査法人トーマツに入社。公認会計士として、IPO支援など複数のプロジェクトを担当する。2016年に同社を退社。日本の地域文化の魅力を海外へ発信する任意団体SAMURAI MEETUPSをNPO法人化する。2018年6月、同法人の代表を続けながら、Carstay株式会社を設立。代表取締役として現在に至る。

NPO法人代表として訪日外国人向けに日本の文化や伝統を発信してきた

大学卒業後、有限責任監査法人トーマツに入社。すでに公認会計士の資格を取得しており、企業経営に大きな興味があったという。入社後はIPO(株式公開)支援業務などを担当した。

「幅広い経験を積ませていただきました。そして多くの起業家のお話をお聞きする中で、自分が本当にやりたいことについて考えるようになったのです」

公認会計士の仕事を続けながら、任意団体SAMURAI MEETUPSを立ち上げる。その原点は自身がアメリカ留学の際に体験した地域交流であった。"訪日外国人に忘れられない体験をプレゼントする"をミッションに掲げ、仲間とともに平日夜や休日に観光ボランティアガイドを行いました。しかし、このまま兼業という中途半端なスタンスでいいのか、自問自答するようになっていた。そして社会人3年目の春に退社を決意し、SAMURAI MEETUPSのNPO法人化を決断する。そのとき宮下氏を後押ししたのが、「自分が生まれなかった世界と、自分が生まれた世界の差。それが自分の価値である」というフレーズだった。

「あるベンチャー経営者の言葉です。心が揺さぶられましたね。これからの自分を見つめ直すことができました」

それから、訪日外国人向けに情報発信や体験コンテンツを実施。同時に、地域での観光誘致や街づくりを目的とした活動を行ってきた。

辿り着きにくいエリアの魅力を伝えるために車旅・車中泊に特化したサービスで起業する

同法人で活動を続けている中で、空港やターミナル駅からの2次的なアクセス方法が一つの課題になっていた。交通の便の悪さや宿泊施設の不備によって本当に行きたい場所に行けないことが多いという事実。目的地に行くことさえできれば感動体験を味わうことができるのにと。

「一方で、国内には人口減少により遊休地となってしまった土地が増えています。その影響で観光資源として輝くべき土地が静かに消えていくこともありえるのです。そんなことになる前に一人でも多くの旅行者に笑顔を提供し、同時に地域活性化へのトリガーとなるようなサービスが必要だと感じていました」

そうして全国各地の駐車スポットを旅行者に貸し出すシェアリングサービスの実現に向けて動き出す。2018年5月中旬のことだった。急ピッチで書類を作成・提出。6月1日に会社登記を終えてCarstay株式会社が誕生した。

「創業後は各地域の駐車スポット調査や貸し手側への説明などに時間を要しました」

同時に少しでも利用者不安を取り除くために三井住友海上火災保険と「車中泊保険」の共同開発を進めていた。保険加入によって、設備の破損、地域住民とのトラブル、騒音問題などの補償が可能となる。保険の存在は利用者に安心感を与える大きなきっかけとなったという。ちなみに本サービスは難しい手続きなく利用規約の中で自動的に付帯されている。

「地方自治体の協力もあり、現在全国100弱の駐車スポットを登録しています。全国での登録数は2020年6月に1,000ヵ所にまで増やすのが目標です」

「車中泊」から「VAN LIFE」へ欧米流の自由な生き方を広めていく

「日本は世界でも有数の車中泊先進国といえます。車を停めて一夜を過ごしたとしても安全ですし、いたるところにコンビニがあるので必要なものを買い足すことができます。しかもどこのトイレも清潔に管理されています」

今後のオフィス展開についても同社ならではの独創的なアイデアを持つ。

「当社の業務は地方出張がとても多く、車中では長時間にわたって書類の整理やメールのやりとりをしています。もちろんベースとなるヘッドオフィスは必要だと思いますが、それ以外は個々の車内オフィスというのも考えられるかなと思っています」

2019年3月、茨城県つくば市が主催した「つくばVAN泊 2019」にて同社のCarstayサービスが紹介された。当イベントのテーマは、本当に必要なものだけを車に積み込んで生活をする「VAN LIFE」の提案。今後、宮下氏は車旅・車中泊といった旅の手段だけでなく、新たなライフスタイルのあり方も提言していきたいと語った。


※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。