2024年の先進オフィス事例を振り返る

2024年1月~12月掲載

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

2024年掲載の先進オフィス事例から

2024年は新型コロナが収束に向かったことで、オフィス面積の拡張や分散フロアの統合を実施した企業が少なくなかった。本コーナーで取り上げた企業も、その大半が「手狭感の解消」や「コミュニケーションの活性化」などを目的にオフィスづくりを行っている。ここでは掲載記事を振り返り、各社のオフィス戦略や新オフィスのコンセプトをまとめている。

はやわかりメモ
  1. 「働き方の改善」を目的に拡張移転を行った移転事例
  2. 設備の老朽化や建て替え、契約更新といった物理的な理由で移転を行った事例
  3. 複数フロアやグループ会社の統合を理由に移転を行った事例


「働き方の改善」を目的に拡張移転を行った移転事例

新規事業開発やイノベーション創出の共創・支援を行う株式会社Relic。採用計画の順調さとコロナの収束によって出社率は上昇傾向に。会議室が足りないという状況も相まって、増床を検討する必要があった。そんな中、入居ビル内の別フロアに希望面積が確保できることがわかり拡張移転を実施した。新オフィスのコンセプトは「壮大な実験場」。人と人との距離に配慮したオフィスを構築した。新機能のリラックススペースは、図書棚、ソファ、植栽、コーヒーカウンターなどで構成された特長的なエリアとなっている。

株式会社Relic

グリーンラウンジ/図書棚とソファ

「普段からのコミュニケーションが重要だと考えています。それには相手の顔色や精神状態を知ることができる対面がベストです。それが健康経営にもつながると確信しています」
(移転時期:2023年12月)*2024年2月取材

レベル5の完全自動運転の実現を目指して設立されたチューリング株式会社。公・民・学が連携して研究を進める街「柏の葉スマートシティ」での創業以来、長らく同地に根差してきたがさらなる成長を掲げて都心の大規模ビルへと拡張移転を行った。目的の中には、「幅広い知識を持ったエンジニアの採用」も含まれている。新オフィスのコンセプトは「美しすぎない」。うわべだけの美しさは排除して、力強さをバランス良く表現した。新オフィスで最も重視したのはコミュニケーションの活性化。さまざまな交流の場を新設している。

チューリング株式会社

コミュニケーションエリア

「当社にとってのオフィスは、『開発を最も加速させる場所。そのための快適な環境』。そこから生まれる横の連携を開発活動の加速に生かしてほしいと考えています」
(移転時期:2024年1月)*2024年3月に取材

株式会社ストラテジーテック・コンサルティング

窓際カウンター席

戦略とテクノロジーを融合させた提案で顧客の事業拡大をサポートしている株式会社ストラテジーテック・コンサルティング。手狭さの解消、人材採用の拡大を目的に拡張移転を行った。新オフィスで目指したのはデザイン性と利便性の両立。オフィスコンセプトは、来客者が中心となるエントランス側は「高級感」、執務室側は「働きやすさ」。執務室は、オープンミーティングエリアやソロスペース、半個室スペース、カウンター席、Webブースなどで構成。移転後は「働きやすくなった」と評価も高く、出社人数が増えている。

「出社する意義を持つオフィスをつくり、そのうえで従業員はあくまでも自らの意志でリモートか出社かを決める。そんな選択できる働く環境がベストだと思っています」
(移転時期:2024年4月)*2024年5月に取材

東京システムハウス株式会社

コワーキングエリア全景

独立系のシステムハウスとして、最新技術をベースに付加価値の高い製品やサービスを提供している東京システムハウス株式会社。部署を超えたコミュニケーションを目的としたオフィスを構築していたが、業務拡大による増員で「手狭感の解消」「働く環境の向上」が新たな課題に。大幅な拡張移転を行った。新オフィスのコンセプトは「アイデアを育む」。開放的なコワーキングエリアを中心に、集中スペースやWebミーティング用ブース、ファミレス席など、目的に応じて働く場を選択できる機能的なオフィスになっている。

「ワイガヤでボードに付箋を貼りながら議論をする。昔ながらのやり方ですが時間効率だけでは測れないものは存在します。オフィスでの会話もその一つだと思っています」
(移転時期:2024年3月)*2024年6月に取材

中学受験をメインとした家庭教師サービス「代々木進学会」を設立後、「教育」に特化した事業を展開している株式会社イスト。業務拡大における人材採用によってオフィスが手狭に。その改善を理由にオフィス移転を行った。今後の増員計画や会議室の増設などを想定し、希望通りの面積に拡張した。教育機関を意識して心掛けたコンセプトは「派手にしない」こと。エントランスは木を組み合わせた落ち着いた雰囲気とし、シンプルかつ居心地の良い研修スタジオやWebブース、休憩室、仮眠室などを新設した。

株式会社イスト

休憩室

「自然に顔を合わせることで想像していなかったドラマが生まれると考えています。背伸びすることなくベストな働く環境をつくる。今回はそんなオフィスが構築できました」
(移転時期:2024年5月)*2024年6月に取材

ISO(国際規格)や各国の規格に対応し、幅広い分野で企業や組織に対して評価や審査を行っているテュフズードジャパン株式会社。旧オフィスはフロアが分かれており、部署を超えた交流がしにくく、不満を抱えていた。その解消に1フロアへ統合移転を行った。新オフィスのコンセプトは「縁側」。明確な境界のない、緩くつながる開放的な空間づくりを目指した。多様な機能を付加した新オフィスの中でも、最も特徴的なエリアがカフェテリアだ。異なる部署のメンバーが集まり、さまざまなことにチャレンジできる空間になっている。

テュフズードジャパン株式会社

カフェテリア

「リモートワークという働き方は今後も推進していきますが、それよりもオフィスで顔を合わせて雑談をすることで新しいアイデアが生まれることの方が重要だと思っています」
(移転時期:2024年7月)*2024年8月に取材

設備の老朽化や建て替え、契約更新といった物理的な理由で移転を行った事例

国際航業株式会社

カフェテリア

航空写真測量をベースに専門性の高いインフラサービスを提供している国際航業株式会社。同社の関西事業所は尼崎市内に自社ビルを保有していたが、設備面の老朽化や施設運営、新たな働き方への推進を目的にオフィス移転を行った。新オフィスのコンセプトは「組織と部門相関を重視したレイアウト、社内コミュニケーションを活発にする」。エントランス・展示スペース、応接室、カフェテリアといったコミュニケーション要素の高い機能を8階に集中させ、執務室は12~13階に。執務室内にも多様な会議室を設置している。

「世代や意見が異なる者同士でもコミュニケーションが取れる場所を一つは必ず用意するべきだと思っています。そして今後も時代に合わせたオフィス運営をしていきます」
(移転時期:2023年11月)*2024年2月に取材

森永製菓株式会社

ANGEL VILLAGE(多目的スペース)

誰もが知る人気のお菓子やアイス、食品を生み出してきた森永製菓株式会社。入居ビルの老朽化による建て替えを理由に大規模な拡張移転を行った。テレワークという新しい働き方が広がる中で、あえて出社の意義があるオフィスの構築を目指したという。新オフィスのコンセプトは「MORINAGAのカクハン(攪拌・拡販・拡範)」。部署の垣根を超え、個と組織の力をミックスして「創造・発信」をしていくという思いを込めている。そのため各フロアには多種多様なコミュニケーションを促す仕掛けが満載だ。

「運用や改善は、部署を超えて自主的に集まり、楽しみながら意見を出してもらう。それに対して総務部が協力していく。そういう関係性を保つことが健全な姿だと思っています」
(移転時期:2024年3月)*2024年4月に取材

テレビCM用絵コンテのフロントランナーとして業界をリードしてきた株式会社アクアスター。旧オフィスビルの建て替えを理由にオフィス移転を実施した。新オフィスのコンセプトは「CANVAS(キャンバス)」。ここから自分たちのカラーに染めていくという思いを込めているという。色鮮やかなエントランス、開放的なカフェスペース、偶発的な出会いを目的としたバーカウンター、アイデアを創出させるためのオープンスペースなど、多種多様な空間づくりが特長的なオフィスとなっている。

株式会社アクアスター

カフェスペース

「多くの従業員が楽しそうに仕事をしています。そんな姿を見られるのはオフィスという共通の場があるからこそ。それだけでも今回のオフィス移転は意味のあるものでした」
(移転時期:2024年5月)*2024年6月に取材

製氷機や冷蔵庫、食器洗浄機をはじめとするフードサービス機器の開発・製造・販売を行うホシザキグループ。同社は、再開発エリア内で展開する自社ビルから遠くないエリアの大規模ビルに応急処置的な移転をしていた。今回、同ビルの契約満了にあたり、コスト削減が可能なオフィスビルに移転を行った。オフィスコンセプトは「継承」。大幅な機能の追加をせずとも、同社の企業姿勢を具現化したエントランス、そこから広がるショールーム、キッチンスタジオ、大会議室などを構築し、働きやすさを追求している。

ホシザキグループ

オフィスエントランス

「オフィスづくりに対して何が正解かがわからない中、私どもはコミュニケーションを深めてきました。オフィスの役割は『会話』ではないかと感じています」
(移転時期:2024年5月)*2024年6月に取材

英和株式会社

REFRESH SPACE

「ものづくりを支える技術総合商社」として多くの価値創造を行っている英和株式会社。入居していたビルの建て替えを理由にオフィス移転を実施した。スペース効率の悪さが課題になっていたこともあり、移転を働き方改善の絶好のタイミングと考えたという。目指したオフィスコンセプトは「都会的なオフィス」。フリーアドレスを導入することで、多くのプラスの効果を生み出した。さらにWeb会議用ブースや半個室の集中用ブースの採用、REFRESH SPACEの新設などによって、働きやすい環境が整った。

「企業価値やビジョンが伝わるオフィスを構築することで、オフィスを訪れた方々へのPRや採用活動にもつながる。そんなオフィスが構築できました」
(移転時期:2024年7月)*2024年9月に取材

複数フロアやグループ会社の統合を理由に移転を行った事例

新車・中古車輸出販売をグローバルに展開している株式会社エスビーティー。移転前の旧オフィスは、横浜駅徒歩8分の位置にあるオフィスビルの複数フロアを使用していた。コロナ禍での出社率低下も手伝って、部門を超えた従業員同士のコミュニケーション不足が課題となっていたという。移転後のオフィスコンセプトは「Think Communication, Create the Future」。リフレッシュエリアや共創空間、個室型ブース、フリースペースなど、コミュニケーションを意識した多様な空間がつくられた。

株式会社エスビーティー

リフレッシュエリア

「コミュニケーションを生み出す最善の場所が "オフィス" です。『コミュニケーションの待ち合わせ場所』として、その存在意義はこれからも変わらないと確信しています」
(移転時期:2023年12月)*2024年4月に取材

企業の課題解決につながるソリューションを提供する「みちびく」事業と住居やホテルなどを運営する「もてなす」事業で、「人と企業の幸せな未来創造」を目指す株式会社みらいホールディングス。グループ会社のオフィス統合を課題とし、名古屋駅前のランドマークに拡張移転を行った。新オフィスのコンセプトにはグループ共通のミッションである「VAPEAHAI(バリュー・ピース・ハッピー)」を盛り込み、共有スペースやシアタールーム、ミーティングエリア、個人ブースなど、今までになかった機能を配置している。

株式会社みらいホールディングス

共有スペース

「できるだけオフィスへの出社を心掛けています。色々な人に会えますし、多様な意見を聞けるのが魅力だからです。これはテレワークでは成立しないことだと感じています」
(移転時期:2024年3月)*2024年7月に取材

株式会社CloverWorks

30階 リフレッシュエリア

さまざまなジャンルのアニメーションを制作している株式会社CloverWorks。周辺は空室が少なく、応急処置的に分散対応をしてきたがようやくまとまった面積を確保。統合移転を実施した。新オフィスのコンセプトは「To the world」。アニメーション業界の未来、目指すべきものとして考えたという。新オフィスの特長は、多様なコミュニケーションの場を構築した点だ。会議室は大幅に増設し、リフレッシュエリアはフロアごとに設置。その他、完成前の映像を確認する「ラッシュルーム」やミニシアターのような「試写室」も完備した。

「どんなに優秀なクリエイターでも一人で考えるアイデアには限界があります。だからこそ新オフィスにはさまざまなワーカー同士が集まれる場を構築したのです」
(移転時期:2024年4月)*2024年7月に取材