株式会社クラウドワークス

2015年2月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

新しい働き方を提供する企業が構築した新しい働き方を体現するオフィス

日本最大級のクラウドソーシングサービスを運営している株式会社クラウドワークス。企業と個人がインターネットを通じ、仕事の受発注を容易に行うシステムを確立させた。2011年11月の会社設立から、およそ3年後の2014年12月に東証マザーズ市場に上場。積極的な採用活動を行うなかで、面積拡張を目的とした移転を2014年10月に実施し、数々の新機能をオフィスに追加した。今回は同社ならではの「オフィスコンセプト」を中心にお話を伺った。

プロジェクト担当

佐々木 翔平氏

株式会社クラウドワークス
取締役 CFO

佐々木 翔平氏

原 由子氏

株式会社クラウドワークス
コーポレートDiv. 広報担当

原 由子氏

クラウドワークスのCをかたどったCカウンター

クラウドワークスのCをかたどったCカウンター

はやわかりメモ

  1. クラウドソーシングサービスが今後の働き方を変えると確信する
  2. シェアオフィスからスタート。その2年後、本格的に移転を検討する
  3. 新オフィスのコンセプトは新しい働き方を体現できるオフィス
  4. エントランスが企業の顔。交流を促すための機能を設けた
  5. 移転してモチベーションを上げた。今後はユーザビリティを高めるために

クラウドソーシングサービスが今後の働き方を変えると確信する

インターネットを通じて仕事の受発注ができるサービスを運営するクラウドワークスは2011年11月11日11時11分11秒に設立。ナンバー「1」を目指すことにこだわった。

「正社員比率がまもなく50%を切ると言われ、正社員以外の"新しい働き方のインフラ"が求められているなかで、海外の動向を見るとクラウドソーシングサービスが急成長していることがわかりました。時間や場所に縛られず働くことのできるクラウドソーシングの仕組みは、遅かれ早かれ日本でも必要になるものと確信し、会社を立ち上げました」(佐々木翔平氏

会社という枠の中で正社員として働く。これが従来の一般的な働き方と言える。

「しかし近年はインターネットの普及を要因に個人の発信力が高まりフリーランスとして働く方も増えています」(原 由子氏

「こうした働き方の多様化に合わせた新しい枠組みの提供を目指し、『クラウドワークス』を開始しました。インターネットを通じてお仕事ができるサービスはこれまでにも存在していましたが、"働き方"という点に立脚したサービスとして、『クラウドワークス』は現在の時代背景、社会背景にも上手くマッチしたのだと思います」(佐々木氏

同社のサービスは次々と口コミで広がっていく。

「例えば自社で商品カタログを制作する場合、今までは何社ものデザイン会社を探し、内容について説明して、予算を調整し依頼するという手順が必要でした。それがクラウドワークスにお仕事を登録しておけば、多くのデザイナーから応募してもらえる。企業側は予算やスキル等の条件に応じて、応募者の中から実際に契約したい人を選ぶだけ。一方、応募者側も自分のスキルにあった気になる仕事を探して応募するだけ。簡単なステップで受発注ができる。それが当社のクラウドソーシングサービスの特長です」(佐々木氏

「クラウドソーシングは、デザイナー・エンジニア等の仕事を受注する側にもメリットの多いシステム。サービス上で仕事を行った際には企業からの仕事の評価がプラットフォーム上に蓄積されていきます。過去の仕事ぶりやクオリティが数値化され表示されるので、ここで実績を貯めていくと引き合いにも繋がるんです」(原氏

サービスリリース後わずか3年で行政や大企業を約7万社が活用。同サービスのパイオニア的存在になりつつある。

シェアオフィスからスタート。その2年後、本格的に移転を検討する

クラウドワークスは新宿のシェアオフィスの、部屋の片隅の3席からスタート。サービスをリリースした2012年にはベンチャーキャピタルからの出資もあり、南青山のシェアオフィスに移り、さらに1年後の2013年、社員数増加に伴い渋谷のオフィスビルに移転を決める。

「渋谷のオフィスビルは40坪程の敷地面積でした。移った当時はエンジニアとマーケティングのメンバーを追加して10名程度。そこも人員拡張によってすぐに手狭になったことから、すぐ近くのオフィスビルを追加で借り、合計で90坪の広さに。しかしオフィスが二棟にわかれたことによるコミュニケーションコストの増加や、さらなる人員増加により、すぐに次の移転を計画することとなりました」(佐々木氏

こうして佐々木氏を中心に急遽移転計画がスタート。同社の移転の条件は、①渋谷駅近くであること、②予算的に旧オフィスとの坪単価に大きな乖離がないこと、③今後の採用のバッファを考え200坪前後の広さを持つビルであることの3点に絞られた。

「計画を始めたのは2014年1月のことです。100棟以上の候補地の中から絞り込み、実際に内見したのは10棟もありませんでした。もともと渋谷は物件が少ないと聞いていましたので難しいと思っていましたが、運良く移転条件に合致し、満足のいくオフィスに決定できたと思います」(佐々木氏

そうして同年6月に契約。それから3社にコンペを行い内装デザインに取り掛かっていく。

新オフィスのコンセプトは新しい働き方を体現できるオフィス

旧オフィスでは打ち合わせスペースが少なかったという課題があった。

「間仕切りのある会議室が1室しかなく、その他はデスク横のオープンなミーティングスペースとエレベーター横の待合スペースのみ。仕事をする環境は決して良好とはいえませんでした」(原氏

「当社は『新しい働き方』を提案していく企業。この移転をきっかけに新しい働き方を体現できるようなオフィスにしたかったですね」(佐々木氏

「いくつかの機能については社員からの要望も採用しています。役員から新入社員まで意義のある意見交換ができました」(原氏

アイデアや機能をまとめて実際に工事に取り掛かったのは10月に入ってからだという。

「つくりたいイメージや断片的なアイデアを伝えて、それをデザインに落とし、社内で確認していきました。出来上がったものは思い通りになっていますね」(佐々木氏

「スケジュール通りには進んでいたのですが、最後は突貫工事になってしまいましたね。入居開始時には一部工事が残っていた状態でした。そんな状態でも社員に初めてお披露目をしたときは、皆口々に歓喜の言葉を発していました」(原氏

オフィスの要所には同社の行動指針が表示されている。設立当時のものからブラッシュアップを続け、その指針は今でもぶれることが無い。

以下がその指針となる「CW8」だ。

  1. ユーザーの笑顔を追求しよう
  2. チーム「クラウドワークス」を全員で実践しよう
  3. 一流の仕事をしよう
  4. 理念実現の為に目標を達成しよう
  5. 常に当事者意識を持って行動しよう
  6. すぐ決めて、すぐ動く
  7. ストレッチゴール、高い目標意識を持とう
  8. 日々変化に挑戦し、進化しつづけよう

エントランスが企業の顔。交流を促すための機能を設けた

新オフィスで強調したい場所の一つはエントランスとそれに繋がるセミナースペースだという。

「当社の中に足を踏み入れて直ぐの位置に明るい雰囲気のエントランスとクラウドワークスのCをかたどったCカウンターが配されています。ここはプチ図書館・展示スペースとなっており、当社のことが掲載された雑誌や書籍、過去に手がけた成果物などが置かれ自由に手に取ることができます。またカフェコーナーも併設されており、コーヒーを飲みながら社員同士が一緒に語り合える場となっています」(原氏

エントランス

エントランス

その横にはセミナースペース。

最大で50名が座れるスペースとなっており、スクリーンも完備。社外の方を招いてのセミナー開催や社内懇親会に使われる。
移転後は社員数が急激に増えたこともあり、積極的に社内懇親会が行われるようになった。

「社内懇親会は毎月1回開催しています。これまでは社外の飲食店を予約していたのですが、移転をきっかけに社内で開催されることに。"飲みニケーション"が不得手な社員も社内で懇親会が開催されることで、業務の合間に顔を出しやすくなったようです」原氏

セミナースペース

セミナースペース

その奥に応接室が配備されている。

「旧オフィスの課題を踏まえて新オフィスでは応接室を3室用意しています。会議室の名前は『Tak』『Merci』『Kiitos』。幸福度が高い国々の『ありがとう』という言葉を部屋名に付けました」原氏

「当社のサービスには仕事受発注の際の、ちょっとした感謝の気持ちをユーザー間で表現できる『ありがとうボタン』という機能があります。これは当社の『UX改善会』(*注)から誕生したものですが、常に"ユーザーの笑顔を追求する"姿勢を忘れないためにも、ありがとうという言葉を会議室の名前に採用しました」佐々木氏

応接室

応接室

執務室は、管理部門、開発部門、営業・マーケティング部門の3部門に分かれている。最近2階に増床を行ったため、ゆとりあるレイアウトになっている。開発チームは3階の一部を使用。2列のロングテーブルに20名ほどが向かい合わせに座り黙々と作業を行う。執務室の隅にはなぜかアーケードゲームが置かれている。

「当社の社員にはゲームをきっかけにプログラミングに興味を持ったものが多いため、『初心を忘れず』という意味合いもあり、置いています」(佐々木氏

日本ではエンジニアに対する地位がさほど高くないという問題意識から、同社では「自由に」「集中して」「働きやすいように」とエンジニアに対して尊敬の意を表している。したがって代表電話はここでは鳴らないように設定し、部屋の奥には休憩用に「体にフィットするソファ」と「ハンモック」がひっそりと備えられている。

執務室

執務室

休憩用のソファとハンモック

休憩用のソファとハンモック

オフィスの窓際のエリアには各種ミーティングスペースが設置されている。一つは壁側に配置された4つのミーティングスペース。1シートに6人が座れる広さだ。社内ミーティングだけでなく、採用面接などでも使用されることが多いという。もう一つが集中作業用のスペースだ。

「1人で集中して仕事をしたいというニーズに応えて3室用意しました。コンセントレーションルームと名付けています」原氏

ミーティングスペース

ミーティングスペース

コンセントレーションルーム

コンセントレーションルーム

そして今回の新オフィス構築の中でも特に面白い発想でつくられたのがランニングマシーンエリアとなる。

「ランニングマシーンとエアロバイクを1台ずつ用意し、さらにここで仕事ができるようにデスクを設置しました。半分冗談の企画だったのですが、いざ導入してみると結構利用者はいますね。ここで何かをつくるというよりは、メールチェックや気分を変えてのアイデア出しに使われているようです。まさに新しい働き方を実践していますね」(佐々木氏

「ずっとデスクワークをしていると気分転換がしたくなるのか、稼働率が上がってきますね。2台あるのでここで汗を流しながら打合せをしている姿も見かけます」(原氏

ランニングマシーンエリア

ランニングマシーンエリア

(*注)UX改善会。UXはユーザーエクスペリエンスの略。同社ではUXを重要視しており、全ての社員が実際に運用しているシステムを動かし、サービスの利便性改善のためのプレゼンテーションを行っている。

移転してモチベーションを上げた。今後はユーザビリティを高めるために

移転をして約5ヵ月。予期せぬ効果もあったという。

「旧オフィスの周辺はどちらかというと居酒屋や定食屋が立ち並ぶエリアでしたが、新オフィスの周辺はアパレルショップが立ち並ぶエリアに。社員のモチベーションも上がったと感じます」原氏

「採用活動にも影響がでてきましたね。オフィスを通じてポジティブなイメージを持っていただけることはもちろん、会議室を多く設置したことで、応募者との面接も多く設定できるようになったと思います」(佐々木氏

その他、外部スタッフや取引先に対して「オフィスを見に来ませんか?」と気軽に言えるようになった点を強調する。

「第一段階としては社内外との交流の場を設けることができました。初めは顔と名前を覚えてもらうだけでもいいと思っています。そこから何かが生まれるわけですから。当社の事業内容の核となるのは『ユーザーのことを一番に考える』こと。そのユーザーというのは社外の方だけでなくオフィスを使う社員にもあてはまるのです」(佐々木氏