株式会社リジョブ

2015年9月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

新たな企業ビジョンを表現したオフィス。それが社内外へのメッセージにつながる

「美容・ヘルスケア業界」に特化した求人サイトの企画・運営で2009年に設立された株式会社リジョブ。急激な人員増加にともない2015年4月にオフィス移転を実施した。新オフィスでは新たに策定した企業ビジョンを体現させるデザインを採用したという。今回の取材では、そのデザインのテーマとなった企業ビジョンとともに、特長的な新機能についてお聞きした。

プロジェクト担当

窪田 みどり氏

株式会社リジョブ
経営推進グループ
コーポレート推進室
グループマネージャー

窪田 みどり氏

池田 美希氏

株式会社リジョブ
経営推進グループ
コーポレート推進室

池田 美希氏

株式会社リジョブ

はやわかりメモ

  1. 世界中に日本の技術とサービスを広めるために事業領域を拡大
  2. 旧オフィスでの課題を解決することが経営課題の改善につながる
  3. 企業ビジョンを体現したデザインが社内外へのメッセージを送る
  4. 自主性に任せたオフィス運営はルール以上の効果をもたらす

世界中に日本の技術とサービスを広めるために事業領域を拡大

2009年に「美容・ヘルスケア業界」に特化した求人サイトの企画・運営で著しい成長を遂げている株式会社リジョブ。2014年10月に、転職や引越し、結婚といったライフイベントの支援で東証マザーズ市場に上場する株式会社じげんと合併。新たな事業領域の拡大に挑んでいる。

「10月の合併後、12月に新しい企業ビジョンを策定しました。新ビジョンは『日本が誇る技術とサービスを世界中に広め、国境を越えて関わる人を増やす』。日本人が長い歳月をかけて築いてきた技術力やサービス力を世界中に広め、それによって発展途上国などの社会問題も同時に取り組んでいきたいと考えています」(窪田みどり氏)

「これらの情報を発信するのは、この分野で業界トップクラスとなった当社の使命だと考えています。そして技術力やサービス力に加えて、日本特有のおもてなしや常に努力する姿勢なども世界中に伝えていきたいですね」(窪田氏)

そうして新規事業が追加された。それが「リジョブ介護」であり、途上国を支援する「咲くらプロジェクト」である。
「リジョブ介護」は介護業界に特化した求人サイトの運営を行う事業だ。昨今の社会問題の一つである介護業界での労働者不足。そのため上昇傾向にある採用単価を下げる工夫をしながら求職者をサポートするのが新規事業発足の目的だ。

「咲くらプロジェクト」は、日本が誇る美容の技術力やサービス力を発展途上国の厳しい家庭環境で生まれた子供たちに教えるプロジェクト。それによって少しでも貧困層の子供たちの雇用の手助けができればと考える。その第一弾としてフィリピン市内のNGO法人の協力のもと、現地にセラピストの技術を学ぶ養成講座を開講させた。同社ではこのプロジェクトのためにCSV(クリエイティングシェアードバリュー)推進室という新たな部署を設立させている。それは経済活動を通じての社会貢献を目的とするものだ。これら2つの新事業は準備期間を経て2015年4月から正式にスタートした。

また、リジョブでは、ビジョン実現に少しでも近づくためにリジョブカルチャーという組織論を展開している。考え方の基本は掛け算(×)による相乗効果。それによりコミュニケーションが倍増する組織づくりを見据える。それでは下記5つで構成されるリジョブカルチャーを紹介しよう。

1.スピード × 仕組み化

他社が1年かけて取り組むことを、1ヶ月でやり遂げるスピード感を持つ。
物事を仕組み化することで、更なるスピードアップを実現し前進させる。

2.常に挑戦 × 常に改善

新たな機会を絶好の成長タイミングと捉え、常に挑戦する。
昨日より0.1%でも今日が良くなるよう、常に改善を試みる。

3.縦横斜 × 結束力

縦横斜め全方位での結束力を高めることで、チームだからこそ生み出せる最高の結果を出す。

4.価値向上 × 利他離己

これまでの実績を上回り、お客様や相手の期待を上回る価値を追求する。
自分の利ではなく、相手の利になることは何かを先に考える。

5.称賛 × 感謝

称賛と感謝があふれる『やりがいある』組織であり続ける。

今回の新ビジョンの策定にともない、コーポレートシンボルの変更も行った。それは桜の花びらとキョクアジサシという鳥との組み合わせをモチーフにした日本的なデザインとなっている。

「桜は日本の象徴として。世界中に私たちのサービスを花咲かせたいという想いからです。キョクアジサシという鳥は1年間で北極圏と南極圏を行き来するような世界一長い距離を飛ぶ渡り鳥と言われています。私たちが広げて行きたい技術力やサービス力をこの鳥ならば世界中のどこにでも届けてくれる。そんな期待を込めてコーポレートシンボルに使用しました」(池田美希氏)

「桜にはもう一つ意味があります。当社は設立から『求人』を事業の核に展開してきました。日本の場合、新しく仕事に就くイメージは4月です。いつでも春を感じてもらう。いつまでもフレッシュな気持ちを忘れないでいてほしい。そんな心情を想像させるものとして桜を採用しました」(窪田氏)

コーポレートシンボル

旧オフィスでの課題を解決することが経営課題の改善につながる

以前のオフィスは西新宿に立地するオフィスビルに入居していた。面積は130坪。移転直前時には120名が入居しており、窮屈な上にミーティングスペースも少なく、業務効率の悪さが課題となっていた。さらに今後の業務展開を考えると増員計画は必須事項となっており、スペースが足りないことは明白だった。加えて、合併により組織が生まれ変わったことを社内外に対して伝える必要性もあった。

それらの課題解決を目的に移転先を探すことになる。移転先探しの条件は広いフロア面積。そして新宿近辺の立地であった。

「当社の場合、アルバイトの方の就業率が比較的高い割合になっています。アルバイト先を探す時の検索条件として、もちろん仕事内容というのはあるもののその次には勤務場所というのが大きな理由になっていると言われています。業務に精通している現在のメンバーに残ってもらうためにもあまり大幅な立地変更はできなかったのです」(窪田氏)

そこで規模、立地の両面からオフィスを探すことになる。色々と絞り込んでいく中でJR大久保駅近くに見つけることができた。結果的に、親会社にも近い立地で、面積も300坪と2倍以上に拡張。しかもコストパフォーマンスも良い。少しフロア形状が特長的ではあるが、希望条件通りのオフィスビルへの移転となった。

「この広さならば120名の社員が入居してもゆとりを持ったオフィスになると思いました。業務的に関連性の強い部署同士を隣接させ、新規事業は経営陣の近くにするなど、色々な部署の配置に対するアイデアも膨らみましたね」(池田氏)

企業ビジョンを体現したデザインが社内外へのメッセージを送る

移転先の決定後、リジョブ側では経営陣が中心となってプロジェクトを進めていく。代表である鈴木氏の頭の中にある程度の構想があったこともあり、日程的にはタイトではあったが効率的な打ち合わせができたという。

「依頼したデザイン会社には特長的な形状を生かしたレイアウトにしたいと伝えました。旧オフィスからのお付き合いということもあり、そんな私どもの想いをうまく理解していただきました」(窪田氏)

旧オフィスでもコミュニケーションエリアこそ設けてはいたが、人数に対して狭かったこともあり使用目的が限られていたという。そこで今回はより進化させて社内だけではなく社外の方とのコミュニケーションも活性できるような仕組みを検討した。

そうして新オフィスの機能で一番の特長である「桜の咲く公園」が新設された。コンセプトは「リラックスとコミュニケーション」。「時間・目的」を問わずに誰もが使用できるコモンスペースとなる。

「机の上で規則正しく会議をするのではなく、芝生の上で輪になってミーティングを行うことが多くなりました。リラックスしながら柔らかい発想で色々なアイデアが生まれていますね。もちろんここでミーティングを行うのは社内に限ったことではありません。時には経営陣と取引先のアポイントや、商談など、今までと違ったコミュニケ―ションが創出できています」(池田氏)

桜の咲く公園

桜の咲く公園

開放感のあるこの空間は外部の方からの評判も上々だという。

「このエリアによって、社内のコミュニケーション効果を正確に図ることはできません。ただ一つ言えることは、外部の方とのコミュニケーションは確実に増えているということです。社外の方をお招きしてのパーティや新卒説明会、新規事業の報告会、勉強会などその使い方は広範囲にわたって増加しています。今までその度に外部施設を借りていたのですが、今はすべて自社内で完結できるようになりました」(窪田氏)

2015年4月に開始した「咲くらぼ制度」も「桜の咲く公園」の活用例の一つだ。この制度は変化スピードの早いIT業界において、技術スキルの向上や、より良いチームビルディングを行うきっかけ作りを目的につくられ、外部の方にも無料で会場を提供している。加えて、そこで行われた勉強会のレポートや同社で行っている取り組みなどを、ブログを開始しより多くの方に情報発信を行っている。

それでは新オフィスの機能を具体的に紹介していこう。

エントランス

エントランス
大きな社名ロゴと公園にあるようなベンチが置かれている。このエントランスからリジョブワールドがスタートする。

応接室

応接室(昼)

応接室(昼)

応接室(夜)

応接室(夜)

エントランス通路の左右に設けられた応接室。
向かって左の応接が昼の桜、右が夜の桜をイメージさせる遊び心のあるつくりとなっている。

桜の咲く公園

桜の咲く公園
公園のフェンスを利用した扉

公園のフェンスを利用した扉

通路を抜けると現れる芝生と4本の桜の木で公園をイメージ。
芝生の
上は土足厳禁というのが唯一の決めゴトになっている。夜はライトアップされビルの近くを走る電車の中からもその姿は確認できるという。徹底的なこだわりは執務室に入るセキュリティゾーンの扉にも現れており、実際の公園で使われているフェンスを利用している。

バーカウンター

バーカウンター
社員の発案で桜の木を設置予定であったカウンターをバーカウンターに変更した。ここで毎月社内コミュニケーションを図るためのイベント「さくらBar」を開催している。ここでの売上は、「咲くらプロジェクト」でのフィリピンのセラピスト養成講座に寄付しているという。ちなみに1回あたりの目標金額は15000円。この金額はフィリピンでの授業料(3ヵ月コース)の一人分の金額となる。

集中ゾーン


集中ゾーン

最初のブロック奥に設置された雑音のない静かな場所。デスクと椅子のみの閉ざされた部屋である。寝床も用意されておりそこでは仮眠を取ることも可能だ。

図書エリア


図書エリア

集中ゾーン外の通路に設けられた書籍や雑誌が置かれたエリア。蔵書はまだ少ないが、共有資料として随時増やしていく計画だ。

執務スペース


執務スペース

すべて固定席。ビルの形状が3ブロックに分かれているため、ブロックごとにエンジニア、経営管理、営業、というように座席を配置している。

社員用公園エリア


社員用公園エリア

社員限定の公園エリア。桜の木は用意されていないが、「リラックスとコミュニケーション」という目的は同じだ。

自主性に任せたオフィス運営はルール以上の効果をもたらす

これらの新機能については、移転当日までは完成していなかった。

「オフィスの中に桜の木があるという画期的な姿は、大部分の社員は移転日に初めて目にすることになります。その第一声は『広い』という感動から、桜の木に対する驚き、フェンスの先への好奇心など、今までにないワクワク感を共有することができました」(池田氏)

そうしてオフィス移転後、半年以上が経過した。今回の移転で得られたものは大きいと語る。一つは企業ビジョンである「桜」をメインビジュアルにしたことで、各種メディアやクライアント、そして応募者からも注目を集めるようになったこと。そしてもう一つが、ここで働く人全員の想いが一つになったことであるという。

「毎週月曜日に全員で清掃を行っています。業務時間外に清掃時間を設けることで自分たちで使うものは自分たちで綺麗にしようと。そんな単純な考えから継続しています。会社のものを大事にする。それによって自らの心を豊かにする。その共通の思いはルールにして縛るのではなく、あえてこのまま自主性に任せていきたいと思っています」(窪田氏)