- 世の中の困りごとを解決するのがビジネスの本質と考えて事業がスタートした
- オフィスに求めるものが「スペースの確保」から「働きやすさ」に
- 長年慣れ親しんできた新宿を中心にいくつかの条件に合致する移転先を探した
- 新オフィスのテーマは「進化」。より働きやすい環境を目指した
- オフィスだけではなく社員の考え方や働き方も「進化」させていく
2019年6月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
2009年に「美容・ヘルスケア業界」に特化した求人サイトの企画・運営を目的に設立された株式会社リジョブ。前回の移転は2015年4月のこと。新たに策定した企業ビジョンを内装デザインに落とし込んだ画期的なオフィスとなった。社内外で高い評価を得ていたが、業績が順調に伸張し、それに伴う人員増とともに執務スペースが手狭に。契約の終了期間が迫っていることもあり、本社移転を決意する。今回の取材はその移転プロジェクトの全容についてお聞きした。
株式会社リジョブ
取締役
長南 岳彦 氏
株式会社リジョブ
経営管理グループ
チームマネージャー
山田 健介 氏
SAKURA CAFE
もともと美容・ヘルスケア業界のクーポンサイトの運営がリジョブの前身となる。
「多くの方に気軽にリラクゼーション体験をしてもらいたいと思ったのが始まりです。当時はまだクーポンサイトの存在自体が少なく、いわば黎明期でした」(長南岳彦氏)
その営業活動の中でお客様は「集客」よりもむしろ「人材の確保」に問題を抱えていることを知る。今まで美容業界に特化した求人サービスは無いに等しかった。業界全体の悩みを解決したかったこともあり、「求人」にフォーカスした事業に舵を切ることを決断したという。
2009年、株式会社リジョブが誕生する。セラピスト専門の求人サイトというニッチな部分から始めて、徐々にエステやネイル業界へ事業の幅を広げていった。その後、美容師をはじめ柔道整復師や鍼灸師といった国家資格を要する求人まで扱うようになっていった。そして4年前に、介護業界の求人サイト「リジョブ介護」や途上国の貧困層の方々の自立支援プログラム「咲くらプロジェクト」といった新規事業を立ち上げている。
同社が取り組む事業には「世の中の困りごとの解決をしたい」という想いが根底にある。
「現在、各種ハラスメント対策や労働環境の改善など労務周りの課題を解決するサービスの提供を計画しています。それによって目指すのは人材の定着。その部分が当社のお客様にとって、また働く人々にとって一番大事なことと考えて企画を進行中です」(長南氏)
創業時は西新宿に立地する雑居ビルの一室からスタート。広さ約20坪、メンバーは僅か5名でのスタートだった。その後5年間で4度のオフィス移転を行う。
「移転理由は狭さの解消につきますね。業務拡大に応じて人員の採用を行いますが、その連続で想定よりも早く執務スペースが限界に達してしまう。そこで現状より広い面積のオフィスビルに移転する。それの繰り返しでした。ですから当時は単純に全員が入れるスペースの確保だけを考えていました。社員同士のコミュニケーションや働きやすさを考えるようになったのはここ数年で、一つ前のオフィスからです」(長南氏)
2014年10月、リジョブはM&Aにより、東証一部上場でライフイベント全般に関わるWebサービスの企画運営を行う株式会社じげんにグループ入りをする。それにより新たな事業領域が拡大されることもあり、企業ビジョンを見直したという。
「新ビジョンは『日本が誇る技術とサービスを世界中に広め、心の豊かさあふれる社会を創る』としました。日本人が長い歳月をかけて築き上げてきた技術力やサービス力を最大限活用する。同時にそれらの力を日本国内および発展途上国などの社会課題の解決のために使っていきたいと考えたのです」(長南氏)
このM&Aをきっかけに、新たに策定された企業ビジョンを体現したオフィスが出来上がった。社内外からの評価も高い画期的なオフィスだった。
*前回のオフィス移転事例はここからご覧になれます。
https://www.sanko-e.co.jp/case/rejob
旧オフィスの移転理由はオフィスが狭くなったこと。同時に打ち合わせスペースが足りないという課題も生じていた。
「個室の会議スペースは2室のみ。始業時から社内外の予約で埋まっていました。打ち合わせや面接などは芝生のオープンスペース内で行われており、ほぼ100%の稼働率です。最初は余裕を持って使っていたのですが、後半はどこにいても窮屈に感じるようになっていました。今後の採用計画も控えており、このキャパシティでは無理だと。そこで移転プロジェクトが始動したわけです。しかし私自身、移転に関する業務は初めての経験でした。何から手を付けていいのかわかりません。そんな中でのスタートでした」(山田健介氏)
旧オフィスビルとは定期借家契約を結んでいたので退去時期は決まっていた。そのため2018年7月までに移転先を絞り込み、9月中に新オフィスと契約といったスケジュールを組む。そうして2018年3月、本格的な移転プロジェクトの第一歩を踏み出した。
「結局、移転先を探すだけで半年くらいを要してしまいました。当初は創業以来、慣れ親しんできた新宿エリアでの移転が希望でしたが希望面積、諸条件など、合致するビルが無かったのです。そこで新オフィスの候補エリアをJR山手線沿線全体に広げました。それでも提案されるビルはどれも決め手に欠ける感じでしたね」(山田氏)
「そんな時、タイミング良く今のビルに空室が出たのです。池袋の象徴となるシンボルタワーですが、我々のようなベンチャー企業に是非入居いただきたいと言っていただいて。条件の合意までとんとん拍子に進んでいきました」(長南氏)
「そうして1フロア約700坪のオフィス空間を確保しました。旧オフィスと比べると面積は倍近くに。当面は採用計画にも安心して取り組めます」(山田氏)
旧オフィス退去までのタイムリミットがあるため、内装デザインの打ち合わせはかなり前から進めていたという。
「旧オフィスのデザインを担当いただいた株式会社アンドロップさんにプロジェクトチームに入っていただき、サポートをお願いしました。同時に現場から意見を集め、コアスペースの使い方や席の配置といった細かい要望を聞くこともできました。そのほか面接専用の部屋の必要性など、現場との意見のすり合わせはかなりの回数を重ねましたね」(山田氏)
「新オフィス全体のコンセプトは"REJOB PARK"。企画コンセプトは両社で一緒に考えながらつくり上げていきました。そこで以前のオフィスをベースに更に進化したオフィスをつくろうと。当社をよく理解いただいていることもあり、そこまでの流れはとてもスムーズでしたね」(長南氏)
しかし実際の設計・工事と進めていく中で改めて見えてきたことも多かった。
「コストを考えるとどうしてもそのまま採用できなかったアイデアもありますが、工夫を凝らしました。例えば執務エリア内のミーティングスペースは社員の働きやすさを考えると絶対に必要な機能だと思ったので、何度かデザインをやり直していただきながら新設しました」(山田氏)
それでは具体的にオフィス内のポイントを紹介していこう。新オフィスは1フロアといっても北側エリアと南側エリアに分かれている。そこで北側は来客者対応とミーティングスペース中心のエリア、南側を執務スペース中心のエリアとした。
「エントランスには、リジョブを象徴する大きな桜の木とベンチを置いてお客様をお迎えします。また、社内スタッフも含めた総合的なコミュニティエリアとしてのコンセプトを持たせています」(山田氏)
エントランスの壁にはヨーロッパの白壁をイメージさせる、ホワイト煉瓦を使用。目地もリジョブカラーにこだわり、サンプル確認を2度行い最終決定するという念の入れようだった。そこから奥に進む通路の両サイドには個室のミーティングルーム。旧オフィスでは2室だったが、新オフィスでは4室に増やした。通路を進むと一面にリラックスとコミュニケーションをコンセプトにした「桜の咲く公園」が広がる。
エントランス
通路両サイドのミーティングルーム
桜の咲く公園
「旧オフィスから当社のシンボルとしていた『桜の咲く公園』は機能も広さもレベルアップしました。日本が誇る技術とサービスを世界へ届けるべく、グローバルスタンダードなPARKをイメージして、スケール感と開放感を意識したデザインに。公園内には4本の桜の木を散りばめ、壁側にステージを用意し最大100人規模のイベントができるようにしました。最近では、これからの介護をテーマにしたワークショップが頻繁に行われています」(長南氏)
公園スペース奥には『SAKURA LOUNGE』が。定期的に社内コミュニケーションを図るためのイベント『さくらBar』を開催し、その収益金を『咲くらプロジェクト』の運営サポートに寄付しているという。ラウンジ内のカウンターも大きく進化させた。
「旧オフィスではバーカウンターでしたが、新オフィスでは屋台風に改善しました。この形状のほうがお互いのコミュニケーションが取りやすかったのです」(山田氏)
SAKURA LOUNGE
北側エリアと南側エリアを結ぶ空間には新たな仕掛けを設けた。
「単なる書庫や書類置き場ではなく、北側エリアと南側エリアを分断させないためのマグネットスペースをつくりたかったのです。目線を変えるためにソファを置いて社員がくつろげる『場』をつくりました。今では休憩をしたり、壁に取り付けたガラスボードに書きながら打ち合わせをしている姿も多く見られます」(山田氏)
そこを抜けると南側エリアとなる。まとめられた執務スペースは全て固定席でありながら、どこでも仕事ができる環境となっている。そして執務エリアの中央には『SAKURA GARDEN』と名付けられたミーティングスペースを新設した。
「資料を広げるのに最適な広さの机を用意したため2~4名での使用が多いですね。レストランのボックス席のようなスペースで、多くの観葉植物の鉢植えで飾られています」(長南氏)
最奥には『SAKURA CAFE』。入口部分に取り付けたフェンスが執務スペースとの緩やかな境界線となる。
「このスペースの用途は今までと同じ。仕事や休憩など、多目的に自由に使ってもらうためのスペースです」(長南氏)
壁沿いにはずらりと本が並び、中には社員手書きのPOPも。「壁際の書棚には、同社のBOOK GARDEN委員会が本を充実させている途中です。ちなみに当社には"自分達の会社を、自分達で働きやすくしよう"という考え方の元、12の委員会が設けられています。社員は全員どこかの委員会に属し、部署間の垣根を超えた活動を行っています」(山田氏)
ソファを置いたくつろぎの場
執務スペース
SAKURA GARDEN
ソロワーク用の集中スペース
「新オフィスの特長はコラボレーションエリアの拡張だけではありません。今まで集中したいときは喫茶店などで業務を行うこともあったようですが、今回はソロワーク用の集中スペースも大幅に増やしました。仕事のメリハリがつけられる・アイデアが生まれやすいと社内から好評です」(山田氏)
移転後、目に見える効果の一つとして自社採用における応募数のアップがあるという。
「移転後の効果を加味した目標数値を定めていたわけではなかったのですが、応募者の数が明らかに増えたと採用担当者から報告がありました。池袋という巨大ターミナルにオフィスを構えたこと、安心・信頼につながるシンボルタワーへ入居したこと、ビル内にはさまざまな生活支援機能があり働く人を強力にバックアップできることなどが要因だと思っています。元々は手狭感の解消を課題とした移転計画でしたが、このような点からも移転効果を実感することができました。今ではオフィス戦略と経営課題には密接な関係があることを実感しています」(長南氏)
今後も、より従業員の満足度を高めていきたいと語る。
「当社は総務人事部が中心になってオフィス運営をしています。その一環で全社員を対象にオフィス環境調査を継続して行っているのですが、次の調査ではどのような集計結果が出るかとても楽しみですね。今後はオフィスを現状維持するのではなく、新しい発想を持ち続けて、メンバーにとって、一層働きやすい環境になるよう、常に改善していきたいと思っています」(山田氏)
「我々にはこれからも『世の中の困りごとを解決する』ために、より大きな価値を創造していくというミッションがあります。そのためには、周囲の皆様への感謝の気持ちを忘れずに、個々の仕事への向き合い方や組織としてのスタンス、視座も高めていかなければなりません。そうすることが真の会社の成長や社会課題の解決に結びつき、巡り巡って働く環境も良くなっていくのだと思います。それが今回のオフィスコンセプトである『進化』にも繋がるのです」(長南氏)
SAKURA CAFE