vol.1 やる気は起こせる!部下のやる気を引き出す&自分のやる気を起こすコツ

vol.1 ~やる気は起こせる!部下のやる気を引き出す&自分のやる気を起こすコツ~

提出期限の迫った企画書、溜め込んだ経費精算書類、頼まれていた見積書。やるべきことは山ほどあっても、イマイチやる気が出ないときもあるものです。

そんなときは、やる気が「出るもの」ではなく「出せるもの」と思ってみるといいかもしれません。今回は、心理学で自分や周囲のやる気を出すテクニックをご紹介します。

<今月の4コマ>
※このまんがはフィクションです。実際の人物や団体とは関係ありません。

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「自分へのご褒美」はすぐ飽きる

やる気を出したいとき、一般的によく使われているのが「自分へのご褒美」作戦。あのプレゼンが終わったら焼肉、この資料作成が終わったらスイーツ、金曜の会社帰りにはマッサージ......なんてご褒美を設定してがんばろう! と思う人は多いことでしょう。
自分へのご褒美作戦は確かに効果もあるのですが、実はここで出るやる気というのは一時的なもの。いずれ"慣れ"が生じて「これをやりきったらご褒美!......と思うけどなんかやる気出ないんだよね」という状態になりがちです。

ご褒美でやる気が出るうちはそれで良いとして、長期的に「減らないやる気」を出すにはどうしたら良いのでしょうか。そのためには、やる気や意欲を意味する心理学用語「動機づけ」というものが、2種類い分けられることを押さえておくとスッキリ整理できます。

まず、自分へのご褒美作戦で得られるやる気は「外発的動機づけ」。自分の外から与えられる報酬で得られるやる気です。もうひとつのやる気「内発的動機づけ」は自発的な思いから呼び起こされるもの。たとえば「お客さんが満足する顔を見たいから頑張ろう」「仕事を通して、世の中をもっと良くしていこう」と思い、それがやる気につながるというものです。

自分が目の前の仕事において何を達成できるのか、どんなところにやりがいを感じるのか、好きなところはどこか......など、今一度「頑張りたくなる理由」を考えてみましょう。これを手帳などにメモしておくのも良いアイデア。やる気が途切れそうになったときに読むと、自分をコントロールしやすくなるかもしれません。

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脳を操ってやる気を起こすコツ

「そんな長期的戦略じゃなくて、今すぐやる気が欲しい......!」という方には「作業興奮」という脳の仕組みを利用するのが手っ取り早い方法です。これは、やる気がイマイチなときに机の周りを片付けたり、コピーを取ったりといった簡単な作業をしていると脳内でドーパミンが放出され、いつの間にか「やるか」という気分になってくるというもの。ここで本来やるべきだった業務に取りかかれば、サクサクと仕事が進むことになります。ただじっとデスクに向かって「やる気......やる気......」と唱えているよりよっぽど早いのですね。

1日の仕事を終えるとき、明日の自分のやる気を仕込んでおくというのも良い方法でしょう。たとえば、明日やるべき仕事をわざと「やりかけ」にしておきます。脳はやりきった課題よりも中断した課題に対して強い記憶を残すので、翌日も「ここからだな!」と取り掛かりやすくなるというもの。これは「ツァイガルニク効果」と呼ばれます。よく「明日できる仕事は明日に回す」なんて言いますが、ちょっぴり頑張って半分だけやってみてはいかがでしょうか。

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部下のやる気を引き出すには?

管理職であれば、自分はもちろんメンバーのやる気を引き出すのも大事な仕事。前述した「内発的動機づけ」を上手く高めるための方法をご紹介しましょう。自分から仕事をしたい、課題を達成したいと望む内発的動機づけは人それぞれ異なるようですが、この理論を提唱したアメリカの心理学者・デシは3つの欲求を満たすことがポイントと述べています。

①自律性の欲求

自律性とは他人に命令されるのではなく、自分で考え、行動を決めること。「このプロジェクトは私がやります!」などとメンバーが主体的に仕事ができる環境を作るといいでしょう。

②有能さへの欲求

誰だって「自分はデキる!」と感じると嬉しいもの。メンバーが仕事を通して能力を発揮し、目標を達成したいと思えるようにするといいでしょう。そのためにも「君のおかげでプロジェクトは大成功だ!」などと、その人の努力を適切に褒めると効果的です。

③関係性の欲求

部や課など、自分が属する場所の一員として結びついているという安心感を得て、愛されたり尊敬されたりしたいと思う欲求です。「みんなで頑張ろう」と声をかけたり、メンバーの誰かが失敗したら適切にサポートしたりと、つながりを意識すると良いでしょう。

いずれもカンフル剤のように劇的に効果を出すものではありません。普段からポイントを押さえつつ、やる気の出る環境を作っていくことが大切です。そのために、まずは上司が「やる気の出る環境作り」へのやる気を出さねばならないわけですが......それは、メンバーの成長や業績アップがきっと「内発的動機づけ」となるに違いありません。

「やる気は起こせる」と考えておくと、神が降りてくる瞬間を待ったり、根性論でどうにかしたりしなくて済むので、無駄な時間も体力も使わずに済むはず。心理学を上手に活用して、自在にやる気を出しましょう!

監修:赤木麻里

フリーライター。学習院大学文学部日本語日本文学科、東京福祉大学心理学部卒。
書籍やウェブサイトを中心に幅広く執筆を行う中で、特に思想、哲学、心理学の分野で多数の執筆協力、コンテンツ提供を行っている。

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