vol.5 もうイライラしない!苦手なあの人とうまくやっていく方法

vol.5 ~もうイライラしない!苦手なあの人とうまくやっていく方法~

嫌ったり嫌われたりすることなく、周囲の人と良い関係を築いていきたい。そうした思いは誰しも同じことでしょう。ただ、会社のようにたくさんの人が集まる場では、どうしても「あの人とはどうも打ち解けられない」「キツく当たられている気がする」などと、苦手意識を持ってしまう人がいるのは半ば仕方のないことです。嫌いな人を好きになるとまではいかなくても、うまく付き合っていくにはどうしたらいいのでしょうか。

心理学的に、嫌いという気持ちを紐解きながらオフィスでの関係を良くするコツをご紹介します。

<今月の4コマ>
※このまんがはフィクションです。実際の人物や団体とは関係ありません。

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会えば会うほど嫌いになるあの人、どう接する?

「あの人、嫌いだな」という思いを抱くのは、人として普通のことです。ただ、心理学の研究によれば、こちらが相手を嫌っていると相手からも嫌われるということがわかっています。これは「嫌悪の返報性」と呼ばれる心理的メカニズム。嫌いだ、嫌だ、苦手だといった感情は、たとえ言葉に出さなくても態度や視線、口ぶりなどで伝わってしまうものです。そうなると、相手も「なんかイヤな感じだな」と嫌いな感情を返してきて、結果として嫌い合うループが始まってしまいます。

また、自分に自信が持てない場合に多いのが「あの人、私のこと嫌いかも......」と思ってしまうパターン。「嫌われた」と思い込むと、自分の中でも苦手意識や嫌悪の気持ちが生まれます。そうなると「嫌悪の返報性」による負のループが始まってしまうので、たとえ相手が本当に嫌っていたわけでなくとも嫌い嫌われる関係が生まれやすいのです。

嫌いになるのはある程度は仕方のないこと。でも、「嫌われているかも」と思い込んでムダに敵を増やすのはもったいない話です。口調や態度だけで判断せず、理性的にいろいろな人と付き合っていくようにすると、ギスギスした関係にはなりにくいはずです。

「役割行動」に徹するのも効果的

嫌いな人がいる場合、ギスギスした関係に持ち込まないために一番シンプルな方法が「接点を持たないこと」。距離を置いて会わないようにする、オフィスで座る位置を変えて視界に入らないようにするといった対応が最も効果的です。嫌わないことが無理なら、適度に距離を置いて付き合うようにすればOKというわけですね。ただし、嫌いな人が上司や部下だったらそうもいきません。

近い立場の人が嫌いな場合は「役割行動」に徹すると良いでしょう。役割行動とは、組織において自分が期待されている役割に応じた振る舞いをすることです。たとえばあなたが上司なら「上司としてこう振る舞うべき」、部下なら「部下としてこう振る舞うべき」といった暗黙の了解があるでしょう。自分がそれに徹するのはもちろん、相手の役割に任せるべきことは任せてしまいます。そして、嫌いな相手の役割に口を出したり、マウンティングしたりしないようにするのです。「お互いに成果を上げられればそれでOK」と割り切ることで、腹が立つことも少なくなるでしょう。

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「リフレーミング」で嫌悪感を和らげる

誰かを嫌いになると、その人を見る視線のベースにいつも「イヤ」という感情が入るようになります。こうなると、人はついついその人の嫌いなところにばかり目が向くようになり、結果としてどんどん嫌悪感を強めていくことになります。人を好きになると「あばたもえくぼ」というようになんでも良くとらえてしまいがちですが、それと真逆のことが起こるわけです。

これを解決するには「リフレーミング」が有効です。リフレーミングとは「フレームを掛け替える」、つまり視点を変えること。たとえばルーズでだらしない上司がいるとしましょう。お願いしたことを忘れる、書類をなくすといったことが起こるたびにイライラし「ホントにもうだらしない、最低」と思っていてはストレスが溜まるばかり。これを「自分がしっかりしなければと思えるから成長できる」といったように、良い方向に視点を変えていきます。こうすることで上司への嫌悪感も軽減され、印象を変えていくことができるでしょう。

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嫌いな人がいても、相手を変えることはできません。それであれば、心理学を上手に使って自分を変えていったほうが、よっぽど建設的でストレスがたまらない方法といえます。同じオフィスで働く人同士、少しでも関係性を良くして仕事の成果を上げていけると良いですね。

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監修:赤木麻里

フリーライター。学習院大学文学部日本語日本文学科、東京福祉大学心理学部卒。
書籍やウェブサイトを中心に幅広く執筆を行う中で、特に思想、哲学、心理学の分野で多数の執筆協力、コンテンツ提供を行っている。

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