vol.13 どうすれば信頼される上司になれるのか?

vol.13 ~どうすれば信頼される上司になれるのか?~

的確な指示や判断を行い、メンバーの士気を高めて円滑に仕事を進めていくのが上司の仕事。ただ、世の中の飲み会が上司への不満でムンムンしているように、憎まれることも多い存在です。優しくすればナメられ、厳しくすればパワハラと呼ばれ、試行錯誤するという話も世の中には少なくありません。

では、信頼される上司ってどうやってなればいいのでしょう? 心理学の観点から考えてみましょう。

<今月の4コマ>
※このまんがはフィクションです。実際の人物や団体とは関係ありません。

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部下は上司を評価している!? 信頼蓄積理論とは

上司はリーダーシップを発揮できるかどうかが重要です。アメリカの社会心理学者、エリック・ホランダーは、リーダーシップとは生まれ持った資質ではなく、日常的な信頼の蓄積により決まるという「信頼蓄積理論」を提唱しました。リーダーが過去、どんな発言をしてどのような行動をしてきたのか。日々の言動によって、信頼の蓄積度は変わります。

いくらハイスペックな上司でも、蓄積されていなければ部下はイヤイヤ仕事をするだけ。効率やモチベーションはそれなりのものにしかならないでしょう。信頼の蓄積があって初めて、上司はリーダーシップを発揮できるのです。

そう考えると、仕事のうえでは上司が部下を評価しますが、関係性を見れば部下も常に上司を評価し、信頼できるかどうか判断しているということになります。仕事内容だけでなく何気ない行動や身だしなみで判断され、さらには複数のメンバーを相手に評価される。そしてそれが確実に自分の仕事に反映されるということですから、上司というのもなかなかシビアな立場であるとも言えそうです。

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信頼を形成するための10個の条件

リーダーシップを発揮するために重要なカギとなるのは、信頼。では、信頼はどうやったら作れるのでしょう。かっこいいセリフを言えたり、素晴らしい経歴を持っていたりすることが重要なのではない、ということはすでに述べた通りです。アメリカの心理学者であるバトラーは、研究や部下を対象とした面接を元にして、上司への信頼を形成する条件を10個にまとめています。

  • 必要な時にはいつでも会える
  • 仕事上の判断が的確である
  • 発言と行動が一致している
  • 口が堅く、安心して相談できる
  • 誰にでも分け隔てのない対応をする
  • 何事にも誠実に対処する
  • 自分が不利になっても部下をかばってくれる
  • 自分の考えを隠さず言ってくれる
  • 約束を守ってくれる
  • 部下の発言を真剣に聞いてくれる

ごく当たり前のことのように思えるかもしれませんが、たとえば「部下の発言を真剣に聞いてくれる」であれば「話しかけられたら耳を傾けよう」と考えるだけではなく、話しやすい雰囲気や場を作ったり、多忙でも時間をとったりする「聞く」以外の行動も必要です。また聞き方ひとつとっても、頭ごなしに「ダメダメ、そんなのは?」なんてやっていたら信頼どころではありません。適切に相づちを打って共感や理解を示すなど、コミュニケーション能力も必要です。

上司とて人間。気分に事情、忖度やらで難しいこともあるかもしれません。ただ、こうした明確な指標を持つと「良い上司になろう!」と精神論で頑張ろうとしたり、部下の顔色を伺ったりするよりはよほど、上司として采配を振るいやすいのではないでしょうか。

*   *   *

上司を信頼できるかどうかは、業務の効率化はもちろんのこと、心身の健康や勤続年数にも影響が大きい要素です。良い仕事をするためにも、上司の立場にある人はまず、信頼形成を意識してみると理想的でしょう。とはいえ、どちらかの努力だけで成り立つ話でもないことも事実。上司がいる人は、自分が部下として上司のやる気を削ぐような無気力対応・ネガティブ発言などをしていないか、ときどき振り返ってみてはいかがでしょうか。巡り巡って、仕事がやりやすくなるかもしれませんよ。

監修:赤木麻里

フリーライター。学習院大学文学部日本語日本文学科、東京福祉大学心理学部卒。
書籍やウェブサイトを中心に幅広く執筆を行う中で、特に思想、哲学、心理学の分野で多数の執筆協力、コンテンツ提供を行っている。

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