株式会社社会情報サービス

2018年4月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

市場調査会社のパイオニアが構築した
本格的なインタビュールーム

株式会社社会情報サービスはマーケットリサーチの重要性に着目し、1982年に設立。以来35年以上にわたり、市場調査会社のパイオニアとして実績を積み重ねてきた。2017年1月に物理的な理由もあり移転計画を本格的にスタート。2018年1月から新オフィスで業務を行っている。今回の取材ではオフィスの特長やコンセプト、新機能についてお話を伺った。

牧田 孝 氏

株式会社社会情報サービス
代表取締役社長

牧田 孝 氏

染谷 安啓 氏

株式会社社会情報サービス
人事総務グループ
執行役員

染谷 安啓 氏

伊達 智子 氏

株式会社社会情報サービス
リサーチオペレーションMU
リアル・フィールドグループ
esマネジメントチーム
リーダー

伊達 智子 氏

オフィスエントランス

オフィスエントランス

Contents

  1. メインクライアントである製薬会社を支える市場調査会社
  2. 物理的理由が今回の移転計画を後押しした
  3. 一般公開される前の空室情報をどこよりも先に入手できた
  4. 第三者がプロジェクトを管理することで自由な意見を集めることができた
  5. 新オフィスの最大の特長はインタビュールームの構築
  6. 社員のモチベーションアップだけでなく新規営業のアプローチ先も広がった

メインクライアントである製薬会社を支える市場調査会社

マーケットリサーチの重要性に価値を見出し、1982年に設立された株式会社社会情報サービス。以来、35年以上にわたり市場調査会社のパイオニアとして多くのクライアントを支えてきた。次の時代を見据えて、グローバル・マーケットリサーチの推進、アドホックリサーチ(オーダーメイドで設計・実施される単発の調査)のクオリティ向上、シンジケートリサーチ(会員企業のみにデータを提供する調査)の確立、リサーチデータの処理や分析を行うソフトウエアの提供などを行っている。

「製薬会社を中心に多種多様な依頼に対応しています。メイン事業は病院で処方する医療用医薬品の市場調査です。処方方法や評価といった調査が多いため、対象者は実際に医薬品を処方する医師が多いですね。洗練されたインタビュアーがその時々のテーマに応じて聞き取りを行っています」(牧田 孝氏)

調査手段もその目的によって使い分ける。同社では多くのメニューを揃えているため依頼者にとって最適な調査手段を選択することが可能だ。

「対象企業は国内だけではありません。海外の市場調査会社とも連携し、現地の環境や背景を反映させた調査報告を提供しています。近年は外資系製薬会社からの依頼も増えていますね」(染谷 安啓氏)

調査受託後は、医師のキャリアや症例数など製薬会社からの条件に基づき、合致する医療関係者を同社が保持する大量のデータベースから検索。アプローチをしていく。対象となるのは全国の医療関係者。遠方からお呼びすることもあるという。

「製薬会社からの要望によってはインタビュー対象者の数も変わってきます。1回のインタビューに要する時間は90分前後ですね。日常業務の終了後に来ていただくので、早くても平日は通常18:00頃からスタート。プロジェクトごとのインタビューテーマに沿って、疾患内容や特長、将来的な見解を話していただきます。その後、インタビューから導き出した調査レポートを作成。依頼先に提出するまでが一連の業務となります」(伊達 智子氏)

物理的理由が今回の移転計画を後押しした

今回の移転理由はいくつもの理由が重なった結果だという。その中で一つの物理的理由が今回の移転計画を後押しした。

「入居していたオフィスビルが西新宿の再開発事業地区に含まれていまして。正式に2016年12月に再開発組合が設立され、2017年1月に説明会が開催されました。それまでもオフィスの手狭さやコミュニケーションの向上を課題に移転をゆるやかに検討してはいたのですが、『再開発』という決定的な理由が移転計画を後押ししたのです」(染谷氏)

「そのほかオフィスの課題としてコミュニケーションとコラボレーションの向上がありました。当社の市場調査業務は部署間の連携が必須です。しかし、旧オフィスではフロアが分かれていたために簡単な打合せであってもすぐにできませんでした。業務の効率化は経営課題の一つでしたから、今回の移転は課題解決のちょうどいいタイミングだったといえます」(牧田氏)

「三幸エステートさんの営業の方とは、普段から情報交換をさせていただいていました。そこですぐに相談をして。新宿を中心に20棟くらいの候補ビルリストをいただいたのです。そこから絞り込みの作業を行いました」(染谷氏)

旧オフィスは1フロア面積90坪のオフィスビル。そのうちの3フロアを使用していた。その他に隣のビルにインタビュールームとして1フロア面積55坪を2フロア。合計400坪弱を借りていた。手狭感の解消のために500坪程度の面積を求めていたという。

「インタビュールームも同じビル内にあるのが理想でしたね」(伊達氏)

「何といっても社員の不満はオフィスの狭さにありました。業務拡大に向け人員の採用を行っていたのですが、机を置くスペースもぎりぎりで。もう限界でしたね」(染谷氏)

「新宿中心にビル探しを行ったのは、やはり社員の通勤環境を大きく変えたくないという思いからです。また、ビッグデータを保持しているため、どんなビルでもいいというわけではありません。ある程度のセキュリティが確保できるビルというのも条件に加えていました」(牧田氏)

一般公開される前の空室情報をどこよりも先に入手できた

今回の移転プロジェクトは専門家の力をフルに活用した事例となった。

「三幸エステートさんからいただいた情報を絞り込んでいき、何棟もの候補ビルを見学しました。ちょうどいい広さがあるということで品川駅周辺の物件も内見しましたが、通勤アクセスを考えると決め手に欠けましたね。当初は、現在のビルも空室情報が出ていたわけではありません。まだテナント企業が入居している状況でした。その企業の退去情報をいち早く入手し提供いただいたのです。広さも総面積530坪、執務室フロアとインタビュールームのフロアとは上下階のため、セキュリティを保ちながらゾーニングができます。1フロア内に全部署を終結でき、さらにミーティングエリアも確保できる。まさにいくつもの経営課題が解消できる理想的な物件でした」(染谷氏)

「内見時には素人にもわかりやすく設備的なポイントを丁寧に説明いただきました。また、ビルオーナーさんとスムーズな条件交渉を行っていただき、当社に有利な内容で進めることができました」(牧田氏)

「周辺環境にも満足しています。飲食店も多く、社内外の方との交流も図りやすくなりました。それでいて割と静かな環境というのも気に入っています」(伊達氏)

2017年5月に社内で決議、6月に正式な契約締結を行った。今回はオフィスビルの仲介だけでなく、オフィス構築に関する全体のプロジェクト管理も三幸エステートが担当した。

「本社移転となると総務部が中心になります。しかし当時、移転業務に集中できる人員は私一人だけ。そこで三幸エステートさんにプロジェクト全体の管理もお願いしたのです。その契約自体は4月には交わしていました。ですから物件を探す際にも、出来上がるオフィスのイメージを考えながらご提案いただくことができたのです」(染谷氏)

第三者がプロジェクトを管理することで自由な意見を集めることができた

そしてオフィス構築へと続く。同社側のプロジェクトメンバーは各部署から選抜された9名。毎週月曜日に定例会を開催することを決める。定例会は内装工事が進む直前まで議論が重ねられたという。

同社が取り組んでいる10年計画に従って移転コンセプトを確定させた。オープンな環境にすることでナレッジやスキルを情報共有し、常に成長をしていく。そんなコンセプトを新オフィスに盛り込んでいくというものだ。その移転コンセプトを以下に紹介する。

1. 融合
必要最小限にした部門間の壁や区分け、コミュニケーションエリアの設置など、日常的に人と人、
組織と組織の「和の熟成」と「交流促進」が実現できるオフィスを構築する。

2. 共有
この環境による闊達なコミュニケーションの実現で、ナレッジやノウハウ、新たな気づきなど、
さまざまな情報・意識の共有を図る。

3. 展開
これらを基に、新たなビジネス、仕事の改善、サービスの向上などを具体的に実行する。

4. 成長
結果として、スタッフ個々人、各々の組織そして社会情報サービスの成長を図っていく。

この移転コンセプトをプロジェクトメンバーで共有したうえで、ヒアリングが進められる。

「たくさんの不満や要望を聞き出すことができました。やはりミーティングルーム不足を訴える社員が多かったですね。三幸エステートさんに取りまとめをお願いしたことが、自由な意見が出た要因だと思っています」(染谷氏)

「どうしても私たちはオフィスに関しては素人ですから、思い付きのアイデアも多かったと思います。それを咀嚼しながらデザイン会社に伝えてもらいました」(伊達氏)

「色々な視点からの幅広い意見を求めていたので私は前面に出てはいけないと思っていました。おかげで社員の意見や要望に関して客観的に物事を見ることができました」(牧田氏)

窓際フリースペース

窓際フリースペース

6人用会議室「ピタゴラス」

6人用会議室「ピタゴラス」

大会議室

大会議室

新オフィスの最大の特長はインタビュールームの構築

オフィスづくりのヒントを得るために、先進企業のオフィス見学も行った。最終的には同社の業務にはフリーアドレスは相応しくないという結論に。部署ごとに100席を配置。誰がどこにいるかが見渡せるオープンな環境への改善が図られた。

そしてチームごとにいくつもの背中合わせのブロックが構成された。打ち合わせごとに各自が後ろを向くことでその場でミーティングが開始できる。

フロア内には所々にフリースペースを設けた。フロアの中心には広いオープンスペース。フォーマルな会議や接客以外に気軽に集まれるスペースだ。

「旧オフィスでは会議室は3室しかありませんでしたが、新オフィスでは大会議室を含めて7室に増えています。会議内容によって使い分けられるように、2名用、4名用、6名用、8名用と分けました」(染谷氏)

「せっかくきれいな会議室をつくったので、部屋の名前もガリレオ、パスカル、ピタゴラスといった学者の名前を付けています」(牧田氏)

「それぞれの部屋に大きく名前をデザインして表記しているのですが、やっと社員も馴染んできたようですよ」(伊達氏)

そして今回の移転における大きな特長は何といっても「インタビュールーム」の構築となる。移転前も3部屋設けていたが、いたって普通のインタビュースタジオだった。旧オフィスでの課題を踏まえて、新オフィスではきちんとコンセプトを考えてつくる必要があると提案があったという。

「コンセプトは『自然』としました。それぞれ『オーシャン(大海)』『フォレスト(森林)』『キャニオン(峡谷)』。どれもがリラックスできる雰囲気を醸し出しています。このルームでは、座談会形式でグループインタビューを行う場合もありますし、個別に行うこともあります。また調査対象の方へのインタビューのほかに、モニタニング、録音・録画、通訳などの設備が加わります。それを1ユニットとして3室用意しました」(伊達氏)

全体をアースカラーでまとめ、各部屋で色使いやデザインに変化を持たせている。旧ルームと違って広さ、機能は統一したという。

「以前は小タイプの部屋も用意していたのですが使用頻度が低かったのです。今回はすべて同じ広さでまとめました。こういったインタビュールームではモニター室からの見学を考えてマジックミラーを使うことがあるのですが、それでは見られている意識が強くなってしまいます。そこで部屋ごとのコンセプトにマッチした景色のシートを貼ることにしました。これによって見られている意識を和らげて、積極的に発言していただければと思っています」(伊達氏)

「ここの設計に関しては最後まで議論しましたね。どのように見えるかを検証するためにたくさんの模型を作成してもらいました。何しろ今回のプロジェクトの中で最重要課題の一つでしたから」(牧田氏)

このフロアは回廊のようにインタビュールームを組み合わせた。デザインコンペでの提案であったが、とても使い勝手がいいという。回廊の床は砂丘をイメージさせ、テーマである「自然」が浮かび上がってくるつくりになっている。

「その部屋のイメージを視覚的に理解しやすいようにイラストでアイコンを作成しました。また、各ミーティングルームには入室時に暗証番号を入力する設備を設け、セキュリティレベルを保ちつつもオペレーションの手間を軽減しています」(伊達氏)。

その他、インタビュー対象者の控室、部屋ごとに用意されたパントリー、待合スペースなどがデザイナーと打ち合わせを重ねながらつくられた。また控室の声や音漏れが気にならないように回廊には心地よい音楽を流している。

大会議室も新たに加えられた機能の一つだ。インタビュールーム横に30名以上が入れる部屋を用意した。

「役員会議などがここで行われます。今後は医薬品や医療をテーマにしたセミナーの企画も準備中です。クライアントの比率として外資系の医薬品会社も多いため、英会話も必須となりつつある。そこで毎週クラスごとに分けて英会話教室も行っています」(染谷氏)

インタビュールーム「オーシャン」

インタビュールーム「オーシャン」

オーシャン待合室

オーシャン待合室

インタビュールーム「フォレスト」

インタビュールーム「フォレスト」

フォレスト待合室

フォレスト待合室

インタビュールーム「キャニオン」

インタビュールーム「キャニオン」

キャニオン待合室

キャニオン待合室

モニタールーム

モニタールーム

インタビュールームの回廊

インタビュールームの回廊

社員のモチベーションアップだけでなく新規営業のアプローチ先も広がった

移転後はこの特長的なインタビュールームが営業ツールの一つになっているという。クライアントからの評価も高い。

「インタビュールームを話の種に、既存のお客様だけでなく新規促進先へのアプローチがしやすくなったという声を聞きます。見学するために足を運んできてもらう。それだけでも営業メリットが大きいのではないでしょうか」(伊達氏)

「コラボレーションエリア一つとっても、まだまだ当初考えていたような使い方になっていません。まずは使ってもらう。そこから今後の改善点が見えてくるのだと思います。そして社員からの要望にはなるべく応えていきたいと思っています」(染谷氏)

「以前は別フロアのため、最初のコンタクトはどうしてもメールや電話になっていました。今度は見渡して席にいれば直接行けばいい。つまりオフィスの改善は、働き方も変えることができるのだと実感しています」(牧田氏)

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