サテライトオフィス事例

サテライトオフィス構築事例

2017.9.4

株式会社テラスカイ

2017年9月取材

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

地縁のある上越市の町屋に、クラウドの利点を最大限に発揮できる環境を構築。

2006年3月に設立、2007年2月より現社名に変更した株式会社テラスカイ。同社はクラウドによるプラットフォームを利用した法人向けSI事業と、自社開発のクラウドサービスを事業の二本柱として展開しており、2017年4月より新潟県上越市に「上越サテライトオフィス」を開所しました。総務省の「ふるさとテレワーク推進事業」に採択され、各方面から注目を集める同社初のサテライトオフィスについて、高井康洋氏にお話を伺いました。

 

株式会社テラスカイ
執行役員
経営企画本部 本部長

高井康洋氏  *「高井」様の「高」は、正確には「はしご高」です。

 

「場所を問わない働き方」を実現するクラウドコンピューティングの手法

現在、我が国で官民一体となって推進されている「働き方改革」において、「場所を問わない働き方」の実現は重要なテーマの一つとなっています。IT業界において「場所を問わない働き方」を実現する手法として急速に普及したのがクラウドコンピューティングであり、株式会社テラスカイは2006年3月の創業当初からこの時代の変革をリードしてきました。

「クラウドの最大の利点は『どこでも使える』ということですが、これはつまり『働く場所を限定しない』という意味でもあります。毎日オフィスに出勤しなくても、自宅でも、出先でも、場所を選ばずに仕事ができる。ユーザーにとってはもちろんですが、私たちサービスを提供する側にとっても、これは非常に大きなアドバンテージといえます」(高井 康洋 氏)

もちろん、「どこでも」とはいっても、現実には情報セキュリティの担保という制約があり、街中のカフェなどではできない作業もあります。しかし、逆にセキュリティさえ担保されれば、本社でなくても、東京でなくても、働く環境を社員の自由意志で選択することが可能になります。サテライトオフィスの開設は、社員にとって選択肢を拡げるという意義があるのです。

「一人ひとりの社員には、それぞれに志向の違いもあり、パフォーマンスを最大限に発揮できる環境もそれぞれ違います。『都心のオフィスで働きたい』という人もいれば、『地元に帰って働きたい』という人も当然いるわけです。そういう個々の事情も考慮した上で、当社では今回、上越サテライトオフィスの開設に踏み切ったわけです」(高井氏)

全国各地の候補地の中から同社が新潟県上越市を選択した理由は、代表取締役社長の佐藤秀哉氏をはじめ、社員に新潟県出身者が多く、いわば「地の利」があったことが大きいと言います。また、受け入れ先となる上越市の対応も素晴らしく、さまざまな条件がマッチしていたことも理由に挙げています。

サテライトオフィスでの打ち合わせ風景

上越サテライトオフィスを開設する3つの目的と、現在までの活用状況

現在、上越サテライトオフィスの常駐メンバーは5名。4名が自社クラウドサービスの開発エンジニアであり、残る1名が法人向けソリューション担当になります。5名のうち、過半数の3名が新潟に地縁のあるメンバーで、2名は東京本社からのUターン勤務、1名が現地採用。残り2名はスタートアップメンバーで、現在は近隣のアパート住まいですが、いずれ時期が来たら東京本社へ戻ることになっています。

「上越サテライトオフィスの開設目的はいくつかありますが、第一に職住近接の実現です。メンバーは実家やアパートから、自転車やマイカーで通勤していますが、通勤時間は10~15分程度。渋滞もなく、もちろん満員電車とも無縁で、ストレスフリーで快適な環境だと言っています。ワーク・ライフ・バランスという意味でも効果的だと思います」(高井氏)

また、自然が豊かで静かな周辺環境も魅力の一つで、リラックスして仕事に集中できれば、それは生産性の向上にもつながります。休日やアフターの楽しみ方にしても、大都市の繁華街で過ごすのが好きな人間ばかりではありません。たとえば、釣りなどのアウトドアや、スキーやスノーボードといったウィンタースポーツが趣味という人なら、地方の方が充実した時間を謳歌できる環境だといえるでしょう。

「生産性の向上というのは、なかなか効果測定の難しいテーマですが、これが上越サテライトオフィスの第二の目的だと考えております」(高井氏)

「第三に、地方におけるエンジニア採用の強化が挙げられます。近年、東京などの大都市圏では、エンジニアは売り手市場となり、どこの企業でも採用には苦戦しています。ところが、地方ではプログラミングの勉強をしても『地元にスキルを活かせる就職先がない』『東京に行くしかない』という状況になっています」(高井氏)

こうした中での現地採用は、同社にとっては優秀なエンジニアを確保でき、上越市にとっては雇用創出とそれによる地域経済の活性化というメリットがあります。さらに、採用されるエンジニアにとっては地元で働くことができ、“三方善し”の理想的な図式を構築しています。

「上越サテライトオフィスには、全部で8名分の席を用意してあります。今後は現地採用も含めて、順次増員していく計画です」(高井氏)

執務スペース

ミーティングルーム

上越ならではの古い町屋を改装し、最新のIT設備を融合したオフィス

上越サテライトオフィスは、えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン高田駅から徒歩7~8分の距離にある商店街の古い町屋をリノベーションした物件です。北陸新幹線の開通で、東京・日本橋の本社からはドア・ツー・ドアで最短2時間半以内でのアクセスが可能になりました。新潟県特有の「雁木造り」という雪除けの庇が大きく張り出した明治期の建物で、通りを挟んだ斜め向かいには「町家交流館高田小町」と名づけられた、やはり古い町屋を改装した上越市の施設があります。

「上越市にサテライトオフィスを開設することが決まり、20ヵ所ほどの候補物件を内見して検討を重ねました。中には元銀行であった重厚なビルなどもありましたが、わざわざ上越につくるのですから『ここでなければならない』という理由があったほうがいいと考えました。そこで、雁木造りの町屋を選んだのです」(高井氏)

この物件は、もともと住居兼呉服店として建てられ、空き家になってからは倉庫として使われていました。これを最先端のIT企業の使うサテライトオフィスにしようというのですから、リノベーションにはさまざまな苦労がつきまといました。

「せっかく情緒ある魅力的な建物ですから、壁や天井など残せる部分はできるだけ残しつつ、必要な機能をすべて備えた使い勝手の良い施設にすることに十分配慮しました。テラスカイのオフィスとして本社と同等のセキュリティ基準を満たすように、室内を一般区画・業務区画・アクセス制限区画の3つの区画にゾーニングし、SECOMのセキュリティシステムなども組み込みました。夏にはISO27001の認証も取得しています」(高井氏)

木製の引き戸にセキュリティカードシステムを取りつけ、狭い廊下に監視カメラを設置するなど、古い建物と最新のIT設備を融合し、ここで毎日働く社員にとって快適な環境となるようにいろいろな工夫を凝らしたそうです。

「1階の一般区画には、掘りごたつに畳のミーティングスペース。隣接するキッチンでは、社員が昼食を自炊しています。2階の業務区画に上がると、壁際に背中合わせにデスクを配置した執務スペース。さらに渡り廊下を通って、TV会議設備のあるミーティングルームがあります」(高井氏)

日常の業務は、東京本社の担当部門と同一の開発案件を分担して、Webカメラやチャットを通じてリアルタイムでやりとりしつつ進めています。相互のコミュニケーションに不自由はなく、「距離感は感じない」ということです。

「本社のメンバーが現地で1日合宿のブレインストーミングを実施したり、東京で開催するイベントに上越のメンバーが参加したりと、リアルでの交流も心がけています。開設当初の4月・5月には外部からの取材や視察が多くて少々騒がしかったとも聞きますが、最近はだいぶ落ち着き、集中して仕事が捗るようになりました。これから現地の本格的な冬を体験することになり、防寒施設を含めてさまざまな面で改善の必要が出てくるかもしれません。今後も都度、課題と解決をくり返しながら理想のオフィス環境をつくりあげていきたいと考えております」(高井氏)

社員たちの昼寝スペースと成り下がったマルチスペース

執務スペース