- 業務拡張によりオフィスは「手狭」に
前回の移転からわずか3年足らずで約300名を増員。社内からの「手狭」に対する不満を解消するために移転計画プロジェクトが発足される。 - オフィス立地の良さについて検討
大手町や丸の内にこだわる必要はないことを認識。その分、交通路線が多ければ営業上支障はない。 - 働き方の改善から生まれたフリーアドレス
経営陣から働き方の改善についての課題が。課題をクリアにするために初めて採用したフロアをまたがった全社全席のフリーアドレス。 - コミュニケーションを活性化させる機能は必要
執務室は全て同じレイアウト。その中で全て異なる機能を設置させることでコミュニケーションを高める仕組み。 - 社員の満足度を維持しながらの運営
「きれい」を維持するために社内ルールを一から作成。今後も社員の声を組み取って満足度の高いオフィスを提供していく。
業務拡張による大幅な人員の採用で
オフィスは次第に「手狭」に。
インターネット広告を中心としたトータルなインターネットマーケティングの分野で急激な成長を遂げている株式会社オプト。その成長は業務拡張による急激な人員の採用計画を見れば明らかだ。「2009年4月に前のビルに移転した当時は、700名程度が入居していました。それから、わずか3年足らずで入居人数はオプトだけで600名、グループ会社を入れると900名くらいになったのです。職種問わずに全体的に社員を増やしています」
そうした予想以上の増員によってオフィスの「手狭」が発生していく。「当然、前回の移転時にも人員増加分を想定して予備スペースを用意していましたが、席が増えるごとにバッファとして考えていたスペースが次第に圧縮されていきます。最終的にはオフィス全体が窮屈になり、このままでは業務効率の低下につながると。そんなこともあり、まずは『手狭』問題の解消に取り組まなければならなかったのです」
多くの社員からも不満の声を多く感じるようになったため、2011年に移転計画プロジェクトを発足させる。メンバーは、総務部を中心に経営陣、そして各部署からの有志メンバーで構成された。「各部署からのメンバーには、社員アンケートやヒアリングを通して現場の意見を吸い上げてもらい、その意見を総務で取りまとめていったのです。単純に『狭い』といった不満から、周囲の環境や働き方の提案まで多岐にわたって意見が集まりました」
「オフィス立地の良さ」について再検討。
交通路線の多さがベストだと再認識。
移転計画を進めるにあたって、第一の目的は「手狭」の解消。ある程度予備スペースを計画した上で必要面積を算出した後は、その「広さ」を持つビルをどこのエリアで探すかであった。「今まで当社は、多くの企業と往来するのに便利な場所、具体的には乗り入れ路線の多い大手町や丸の内に本社オフィスを構えてきました」
今回の移転先は市ヶ谷。それは立地の良さについて議論を重ねて再検討した結果であるという。
「当社の営業スタイルの基本は、定期的にお客様や外部スタッフに直接お会いして報告させていただくことです。そんな営業面を考えたときに立地の良さってなんだろうと。改めて交通路線の利便性が営業上の最重要ポイントと再認識したのです」
実際に、市ヶ谷駅はJR線、東京メトロ有楽町線、南北線、都営地下鉄新宿線の4線が利用可能。市ヶ谷駅から新宿駅まで6分、東京駅まで12分と、利便性には全く問題がない。
手狭さと同時にあった経営陣からの課題。
そこで生まれたフリーアドレスの採用。
今回の移転の最大の理由が「手狭さ」の解消であることは間違いのないところではある。しかし、実はその他にも解決すべき大きな課題が経営陣からあがっていたという。「今回の移転を機に、働き方の改善をすることが課題の一つでした。具体的には、業務のスピードアップ、コラボレーションの促進、モチベーションのアップを叶えること。それらの課題をクリアにするための施策としてフリーアドレスについて検討したのです」
全席のフリーアドレスは会社的に初めての試みとなる。実施前に説明会を行った際には社員の大多数から反対の声があがったという。「社員からの疑問はもっともなことだと思います。常に机の上に書類や資料が必要な部署もあるでしょうし、ワンフロアならともかく多層フロアでフリーアドレスを行うとなると誰がどこにいるかがわかりにくくなり業務に支障が出る可能性がありますから」
そうして、社内ルールの見直しをすることになる。大幅なペーパレスの推奨。基本的に書類は手元に置かず、必要な書類は紙で保存するのではなく、PDF化をしてデータ保存とする。その結果、紙の出力枚数は対昨年比4カ月平均で約15%の削減、それに伴いチャージコストも約19%削減できたという。誰がどこに着席しているかは、グーグルのチャット機能を応用することで対処できた。個人ごとにその日はどこのフロアで作業しているかをプロフィール欄に記載する仕組みとなっている。
「当社の場合、営業とコンサルタントが協業しながらクライアントごとにチームを組むスタイルが定着しています。そのやり方を考えたときに固定席よりむしろ自由に移動できる仕組みをつくったほうがいいのではと考えたのです。今回の実施を経て、将来的には在宅勤務も可能かもしれません」
さらにフリーアドレスを促進するために今回導入したものがある。それがシンクライアントだ。端末には必要最小限の機能だけを持たせ、ほとんどの処理はサーバーで行う。端末自身に記憶装置を持たないため、どの端末からでも自分のパソコン環境同様に使うことができるシステムだ。「シンクライアントの導入に踏み切ったからこそ、フリーアドレスやペーパレス化が上手く運用できているのだと思います。今では会議でもシンクライアントを活用してペーパレスの会議を当たり前のように行っています」