株式会社 SEB Professional

2019年8月取材

この事例をダウンロード
バックナンバーを一括ダウンロード

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

ブランドごとのショールームを配して営業ツールとなる新オフィスを構築した

166年の歴史を持つ業務用コーヒーマシンの製造・開発・販売で業界トップクラスのシェアを誇ってきた「WMF」。2019年にフランス企業との経営統合によって株式会社 SEB Professionalと社名変更を行った。これを機に本社移転を実施。業務効率の向上を考えたオフィスを構築させている。今回の取材では、そのオフィスコンセプトや新機能についてお話を伺った。https://www.wmf-japan.co.jp/

舘 紀行 氏

株式会社 SEB Professional
代表取締役社長

舘 紀行 氏

前田 修一 氏

株式会社 SEB Professional
営業・マーケティング本部
第1営業部 シニアマネージャー
兼 ビジネスディベロップメント

前田 修一 氏

筒井 円 氏

株式会社 SEB Professional
営業・マーケティング本部
マーケティング マネージャー

筒井 円 氏


機能を備えたWMFショールーム

機能を備えたWMFショールーム


Contents
  1. 業務用コーヒーマシンの製造・開発・販売で業界トップクラスのシェアを誇る
  2. オフィス内で水を使用するために困難なオフィス探しとなった
  3. 各部署のメンバーによって移転プロジェクトチームを結成した
  4. 多目的なショールームによってオフィスを機能的に改善した
  5. 新オフィスのショールームは来客数にも大きな効果を生み出した

業務用コーヒーマシンの製造・開発・販売で業界トップクラスのシェアを誇る

1853年、ドイツ南西部のガイスリンゲンにて金属加工を行う会社「Metallwarenfabrik Straub & Schweizer」が創業。1880年に「Wurttembergische Metallwarenfabrik(WMF)」として会社が設立する。第二次世界大戦中には、当時の金額で1億円近くを投資して本社ビルを建設。効率的な経営を行うことでドイツ経済の発展を担ってきた。その本社ビルは歴史的建造物として今も現存しているという。

1920年~30年代頃にコーヒーマシンの製造・開発を開始。当初のコーヒーマシンは今のようなボタン式ではなく1つずつバルブを操作して蒸気や圧力をかけてつくる大型の機械だった。1945年にはアメリカをはじめ各国への販売を再スタートさせる。日本での販売開始は約40年前のことで、当時は業務用コーヒーマシンを取り扱う競合他社がほとんどない時代であった。

1994年になり現在も取り扱われているコーヒーマシンの原型となるビストロを発売。レストランチェーンなどへの導入を開始した。ちょうど大型ファミリーレストランなどで24時間対応のサービスが出現した時期である。2005年にはビストロの小型マシンとなるプレストを発売。大型レストランだけではなく、スペースの限られた小規模店舗にもコーヒーマシンが導入され始める。業務効率の向上が注目されて業績は一気に拡大。トップクラスのシェアを確立する。そして2005年からはスイス製コーヒーマシン「Schaerer」の取り扱いを開始した。

その後リーマンショックなどを経験したのち、2012年より、身近な生活の一部となっていたコンビニエンスストアでのコーヒー販売がブームとなる。リーズナブルな価格帯のコーヒーが普及することでコーヒーマシンの需要も増加。現在はより豊富なメニューを取り揃えて提供している。

「やはり機能性、操作性、小型化がコーヒーマシン普及の大きな要因だと思っています。コーヒーだけを楽しむ方は通常のドリップのコーヒーで十分味わえるのですが、ラテとして味わっていただく場合は、エスプレッソのように濃縮されているコーヒーとスチームミルクを使用することで本来の味を楽しんでいただけるのです。そういった背景を考慮しながら日々良質な味を作り出すマシンを開発しています」(舘氏)

提供できるメニューの幅が広がったことで、多様な外食産業においてもマシンの導入が拡大していく。今では「寿司店」といった和食の店舗での需要も増えているという。

オフィス内で水を使用するために困難なオフィス探しとなった

移転前は港区西新橋に立地するオフィスビルに入居していたが、老朽化に伴う設備の劣化もありオフィス移転は以前から考えていたという。検討しているタイミングで2016年12月にティファールなどの調理器具ブランドを有する「Groupe SEB」というフランスの会社との経営統合を行う。そんなことも移転計画を後押しした。

「企業ブランディングも一新されることになり、オフィスやショールームも新たなデザインイメージにする必要がありました。ちょうど全てを新たにリセットしなければならなかったのです」(舘氏)

加えて経営課題の解決というミッションもあった。その一つがセキュリティ面からの課題だったという。

「旧オフィスは狭かったため、来客者との打ち合わせ用の会議室が執務室内にありました。そのため打ち合わせのたびにお客様が執務室内に入室することになります。室内にはリリース前の情報が置かれていることもありセキュリティ面で万全ではありませんでした。我々にとって絶対に改善しなければならない命題だったのです」(舘氏)

もう一つはビジネスの拡大を考えてのことだった。

「旧オフィスでは取り扱いブランドの一つ『WMF』のショールームしか配していませんでした。しかし今後はもう一つのブランドである『Schaerer』にも同じように力を入れなければなりません。そのため専用のショールームを用意する必要がありました」(筒井氏)

ブランドごとのショールームをつくるために、旧オフィスよりも広い面積が必要だった。そこでかねてからお付き合いのあった三幸エステートに移転先探しを依頼する。2018年10月のことだった。

「新オフィスではショールームの新設が大きな移転目的となります。しかし一般的なオフィスビルでは上下水道の追加工事が難しいらしく、ビル側の承認を取るのが困難でした。そこでエリアを広げながら丹念に物件を探していただいたのです」(舘氏)

そうした中で、面積、賃料、交通アクセス、水回りのなどの条件にマッチした物件に出会った。中央区築地に立地する2002年竣工の耐震性を要するオフィスビル。同社にとって申し分のない移転先だった。

各部署のメンバーによって移転プロジェクトチームを結成した

ビルオーナー側と入居条件を調整後、賃貸借契約が締結された。2019年2月下旬から内装デザインを開始するスケジュールを立てる。そしてオフィス移転業務全般のマネジメント(内装デザインの設計・工事・引っ越しまでの支援、コストやスケジュール管理)も三幸エステートのPMチームが担当することになった。

「タイトなスケジュールでしたのでプロジェクト全体の管理をしていただくことで、当社の業務軽減につなげようと考えたのです。内装デザイン会社は数社コンペを行ったのですが、提案内容が一番当社の考えにマッチしていた会社を選ぶことができました」(舘氏)

「コーポレートデザインのマニュアルがちょうど完成した時期で、それに合わせてデザイン案をつくっていただいて。その内容を確認しながら進めていきました」(筒井氏)

社内からもプロジェクトチームを結成する。部署によって要望が全く違うため各部署から立場の違うメンバーを一人ずつ選定し、フラットな意見交換を行った。その際、代表の舘氏はプロジェクトチームからあえて距離を置くようにしたという。

「関わってしまうと細かい部分まで自分の色になってしまいそうで。社員のためのオフィスですから社員自らが考えて欲しいという気持ちが強かったのです」(舘氏)

移転にあたっては、社員の要望をより明確にするためアンケートを実施。それらを集約・分析をしてオフィスデザインに反映させていく。決定事項はなるべく会議内で決めていった。そうしてタスクを一つずつ消化させ、スムーズな進行を心がけたという。

「とりあえず要望を出せるだけ出して、重要度やコストを考えながら精査していく。ですから今回は見送ったアイデアもかなりあります。当初、造作を予定していた部分を既製品の家具で代用しているところもあります」(筒井氏)

そうして4月末に新オフィスが完成。予定通り連休中に引っ越しを済ませて、休み明けの2019年5月10日から正式に営業を開始した。

多目的なショールームによってオフィスを機能的に改善した

新オフィスのコンセプトは「明るくて、コミュニケーションが促進されるような今どきのオフィス」と決まった。
それではコンセプトを具現化した新オフィスを見ていこう。

広々としたエントランス正面には新社名である「SEB PROFESSIONAL」のロゴ。モニターを設置して企業ブランドの世界観を打ち出している。待合のソファーはシックな雰囲気を醸し出す。エントランスのデザインも10パターンほどの中から、プロジェクトメンバーの話し合いで決められたという。

広々としたエントランス

広々としたエントランス

エントランスから緩やかなスロープを上がった最初の部屋がスイス製のコーヒーメーカー「Schaerer」のショールームとなる。木目調の内装で構成されており、社内会議の場となることもある。もちろん誰も使用していなければ社内ミーティングや社外応接室として使われることも。その奥の部屋がドイツ製のコーヒーメーカー「WMF」のショールームだ。白を基調とした明るいデザインで「Schaerer」よりも広い面積を確保している。二面が窓となっており、その眺望の良さが営業トークとなることも多いという。

「旧オフィスよりもシンクが大きくなり洗い物が楽になりました。加えてマシンの下には収納スペースを設けているので整理整頓も容易に。常に清潔感があるので、急にお客様が来られても慌てずに対応できています」(筒井氏)

その他、旧オフィスからの反省からエントランスの横に8席ほどのクローズドの応接室を新設した。


ショールームからの眺望

ショールームからの眺望

エントランス横の応接室

エントランス横の応接室

「旧オフィスでは急なお客様の来社に対応できないことも多く、近くの喫茶店で打ち合わせをすることも。お客様にご迷惑をお掛けすることもありました。そこで新オフィスでは社外のお客様向けに使用できる部屋をプラスしたのです」(前田氏)

執務スペース内は、リフレッシュスペースとワークスペースに分け、その仕切りに棚を利用したことで空間に開放感と明るさを与えた。オープンなリフレッシュスペース内にはテーブル席やブレイクスペースを拡充。ちょっとした打ち合わせでの利用も可能にし、業務効率を格段に向上させた。執務エリア、社内会議室、社外会議室、ショールームと業務内容によって働く場を使い分ける。さらに動線もお客様と交わらないように設計。それによって情報セキュリティの課題も大幅に改善ができた。

執務スペース

執務スペース

役員室

役員室

執務室内、同社の中枢であるエンジニアリングルームも改良した。以前なかった間仕切りを設置したことで作業場と研修ルームを分断する環境を創出した。

「導入前のマシンの検証作業なども機密に保てるようになりました。エンジニアリングルームは実際の機械をメンテナンスする大事な場所ですので、整備作業の向上を第一に考えていました。電源位置の高さなど、細かい部分を改善しながらベストな環境をつくれたと思っています」(筒井氏)

「営業目線からも色々な意見が出たのですが、三幸エステートさんはそれらの意見を集約するだけではなくプラスアルファを加えて再提案をしてくれました。もちろんコスト面を考えながらのアドバイスや什器選定もサポートしてもらっています」(前田氏)

エンジニアリングルーム

エンジニアリングルーム

新オフィスのショールームは来客数にも大きな効果を生み出した

今回の移転プロジェクトは来客数に大きな影響を与えているという。

「お客様に強いインパクトを与えていると思います。またショールームを増設したことで予約の調整が楽になりました。以前は時間調整が出来ずにお断りしていたケースもありましたので。新オフィスになって間違いなく営業機会は増えていますね」(前田氏)

「訪問された方からは商品がわかりやすく配置されているとお褒めの言葉をいただいています。新ショールームは営業がお客様を積極的にお呼びするためのツールとなりつつありますね」(舘氏)

今後のオフィス運営は社員からの要望に積極的に対応していく予定だ。同社にとってのオフィスづくりは始まったばかり。これからも社員のコミュニケーションが促進される今どきのオフィスをつくり続けていく。

この事例をダウンロード