株式会社オールアバウト
株式会社オールアバウト
株式会社オールアバウト
2021年7月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
リモートワークの良さを理解したうえで
オフィスでの働き方を進化させていく
約20年にわたってWEB上で大人のための総合情報を提供している株式会社オールアバウト。
住宅、マネー、健康、暮らし、旅行、グルメなど、時代に合わせてカテゴリを充実させてきた。
そんな同社は2021年6月にグループ会社を含めた大規模なオフィス移転を行った。新オフィスには、アフターコロナを見据えた数々の新機能が付加されたという。今回は移転プロジェクトを内部から支えた人事総務グループの竹之下葉月氏と外部パートナーとして参加したdada株式会社・野村大輔氏にプロジェクトの概要と新オフィスの特長をお聞きした。

株式会社オールアバウト
経営管理部人事総務グループ
マネジャー
竹之下 葉月 氏

dada株式会社
代表取締役
野村 大輔 氏
Contents
- 黎明期から専門性、信頼性の高いコンテンツを提供してきた
- 旧オフィスでリモートワークを実施。その良さを理解したうえでオフィス移転を行う
- グループ会社を含めてオフィス移転のプロジェクトチームを編成した
- 旧オフィスの課題を改善しながら進化するオフィスを目指した
- わずか4ヵ月でオフィスを構築。独自のユニット工法を採用した
- アフターコロナを見据えてオフィスコンセプトを考えた
- 将来的な働き方を想像してオフィス運営をしていく

エントランスとキッチンカウンター
黎明期から専門性、信頼性の高いコンテンツを提供してきた
総合情報サイトの運営でパイオニア的存在となっている株式会社オールアバウト。今年でサイト開設20周年を迎えた。
「当社のサイトの特長は、全ての記事が『ガイド』と呼ばれる専門家による投稿となっていることです。黎明期から執筆者の顔写真と名前を公開することで信頼性の高い記事提供を目指してきました」(竹之下氏)
現在、約900人のガイドが約1300のテーマで記事を作成。ガイドから提供された記事は、同社内の編集部員の校閲・校正といった二重チェック後に公開される。そうした専門性・信頼性・網羅性が評判となり、月間約2,000万人が閲覧する情報サイトになっている。
旧オフィスでリモートワークを実施。その良さを理解したうえでオフィス移転を行う
旧オフィスはJR恵比寿駅東口から徒歩圏内の大規模オフィスビルに入居。全グループを合わせた約300名が1フロア420坪を使用していた。
「コロナ禍でリモートワークが注目されていますが、当社では2018年2月からすでに働き方の選択肢として導入していました。そのため政府から緊急事態宣言が発令され、グループ全体で新型コロナウイルスの感染予防対策が必要となった際にもスムーズに働き方をシフトすることができました」(竹之下氏)
昨年、入居ビルの契約更新の時期となったこともあり、新しいビジネススタイル・ワークスタイルを推進すべく、全グループを対象にしたオフィス移転計画がスタートした。
「移転先の条件は恵比寿駅を中心としたエリアで現状の人数が1フロアに収まる面積。なかなか条件にマッチしたビルが見つからなくて。目黒や青山といったエリアまで広げて探していました。それでも創業の地である恵比寿へのこだわりはあきらめきれていなかったですね」(竹之下氏)
恵比寿以外の立地も含めて検討に入るといった段階で、恵比寿西口に1フロア300坪の空室情報を入手する。加えてその近辺で天井高4.5mの映像配信スタジオに適した物件も確保できそうだという。求めていた1フロアという条件には満たなかったが、結果的にトータル375坪。旧オフィスに比べると多少の面積削減となったが、全グループを対象にしたリモートワークの促進とフリーアドレス化で十分に対応できる公算があった。
早急に入居条件の確認を行って2021年2月に正式に契約。そこから新オフィスの機能やレイアウトについての打ち合わせが開始する。
グループ会社を含めてオフィス移転のプロジェクトチームを編成した
「新オフィスのデザインを確定する前に、まずは旧オフィスでの課題、新オフィスへの要望などを洗い出すことにしました。グループ会社とはいえ、考え方や働き方は大きく異なります。会社ごとに話を聞いて一つにまとめるには時間が足りません。そこで各社から代表メンバーを選出し、総勢10名程度のプロジェクトメンバーを編成しました。もちろんメンバーには情報システム部も加わり、技術的な検証も行います。そうした会議を定期的に行い、より良いオフィスのあり方や働き方についてまとめていったのです」(竹之下氏)
旧オフィスの課題を改善しながら進化するオフィスを目指した
プロジェクトチームでの会議が進む中で、新たに2つの機能を追加することになった。
「一つはコネクトルームと名付けたWeb会議用の小ブースです。旧オフィスでも簡易的なブースは設けていましたが、半個室だったため音漏れが課題となっていました。仮にコロナが収束したとしてもWeb会議自体は増える傾向にあると考えています。それならばしっかりとした構造のブースを数多くつくろうという意見でした。新オフィスではブースの広さを調整しながら12室を設置しています」(竹之下氏)
もう一つが1on1ミーティング用のブースとなる。
「当社では上長とメンバー間で行う1on1ミーティングを推奨しています。しかし旧オフィスでは専用の部屋を設けていなかったため、4人部屋や6人部屋を1on1に充てており、スペース効率の悪さが課題になっていました。そこで今回のオフィス移転を機に1on1専用のブースを6室つくったのです」(竹之下氏)
加えて新オフィスでは、ワークスペースとコミュニケーションスペースの面積比率を逆転させたことも大きな特長となる。
「旧オフィスでは7対3の割合でワークスペースを広く使っていましたが、新オフィスでは7割をパブリックスペースに充てています。これはどこででも働ける環境を整備したことで可能になりました」(竹之下氏)
その結果、会社や部署の壁を超えた交流が増えつつあるという。
「集中して誰にも邪魔されずに業務に没頭したい、誰かに相談しながら業務を進めたいなど、当社の業務スタイルはさまざまです。ですから全社一律で働き方ルールをつくるのではなく、チームや個々の業務に任せた自由度の高い働き方を心がけています」(竹之下氏)
わずか4ヵ月でオフィスを構築。独自のユニット工法を採用した
これらの新機能を含めてわずか4ヵ月で内装デザインを完成させることができた。さらに今回はSDGsにも配慮。依頼したデザイン会社が持つ独自のユニット工法を採用したことで時間の短縮だけでなく、廃棄物の削減ができたという。内装デザインを担当したのはdada株式会社の代表取締役である野村大輔氏だ。野村氏は今までもオールアバウト社の多くのオフィスづくりをサポートしてきた。
「本オフィスで当社の持つ独自ユニット工法『GZ Frame Wall』を導入しました。これはLGS壁を工場でユニット化しておくことがポイントです。そのため現場での作業はアタッチするだけとなり、工期の短縮につながります。施工者は現場での加工を必要としないので、一般的に仕切り壁として採用されることの多いLGS(軽量鉄鋼)の現場組工法と比べ、約2倍の生産性を高めることができるのです」(野村氏)

ユニット化されたGZウォール
「さらに現場でのゴミの発生とそれに関わるコストが約20%も削減できました。また、大量に発生していた粉塵も無くなりますので、作業員の健康にも配慮した作業環境を提供することが可能です」(野村氏)

養生シートの少ない施工現場
両社では長い時間をかけてお互いが理解しあえる関係性を築いてきた。そのため初歩的な説明が不要な点も時間短縮に結びついていると語る。
「弊社の基本コンセプトを深くご理解いただいた上で、オフィス建築のトレンドや新技術を採り入れて提案いただいています。今回も、柱の多さを感じさせない斜め導線など、物件を活かすアドバイスを多くいただきました」(竹之下氏)
アフターコロナを見据えてオフィスコンセプトを考えた
新オフィスのコンセプトは「進化するオフィス」「価値が長く続き、色褪せない」とした。
「当社は創業当時から『長く続くのが良い会社』と言い続けてきました。オフィスにもそのテーマを採り入れ、成熟したオールアバウトを打ち出すことにしたのです」(竹之下氏)
「コンセプトの一つである『色褪せない』には『機能的な価値』と『ビジュアルの価値』があると思っています。ただ今回のオフィスでは、不透明な時代の中で長続きさせることを意識させる必要がありました。ですから過去のどのオフィスをデザインするよりも難しさがありましたね」(野村氏)
新オフィスでは使用する部材も環境配慮の視点で精査していったという。
「最も代表されるものはタイルカーペットです。これは環境ゴミから作られたリサイクル素材の商品です。床との貼り付けも通常の接着剤ではなく環境に優しい製品を使用しています」(野村氏)
「オフィス全体のテーマはグリーンフルとしました。家具も天然の木材を使っています。コンセプトの『色褪せない』というのは耐久性も意味し、永続的に使えることも想定しています。部材を単体で見た場合、初期コストは若干割高になりますが、廃棄料の削減や工期短縮などで生じた削減分を考えて全体のコストを調整しています」(竹之下氏)
その他、執務室の什器、オープンスペースの机などは旧オフィスから持ち込んだ。家具・什器の転用率を高くし、資源の再活用という部分にもこだわったという。
それでは実際にオフィスを見学していこう。
エントランスを入ってすぐに幅5mのコの字型のキッチンカウンターを配している。IHや業務用冷蔵庫も配した本格的なキッチンである。旧オフィス時代のキッチンに比べると約3倍の大きさだという。
「かなりの場所を取っていますが、実務的にもカジュアルな打ち合わせや食事パーティなどに活用しています。サンプリングビジネスを行っているグループ会社では、試食会や広告撮影に活用しています。さまざまなコミュニケーションを創出させるための最良のツールとなっていますね」(竹之下氏)

キッチンカウンター
「周辺の壁は左官屋さんに依頼して独創的なデザインにしてもらいました」(野村氏)
キッチンカウンターの向かいには大会議室スペース。全部で4つの会議室が配置されている。
「各会議室の壁は可動式となっています。壁を移動させることで、一つの大会議室としての使用も可能です。今後は会社説明会や全社ミーティングなどでも使用する予定です」(竹之下氏)

会議室
各会議室の名称は、「月」や「森」といった自然を表す言葉を使用した。
「会議室にプレートを付けているのですが、ひらがなとしてもローマ字としても見えるようなオリジナルの書体にして多様性を意識しています」(野村氏)
ワークスペースに足を踏み入れる。スペース内の一番の特長は斜めに伸びた通路だ。
「ワークスペース内を最短距離で歩くのではなく、各ゾーンと繋がる動線にするため、斜めに通路を設けることで社員同士の偶発的な出会いを演出できると考えたのです」(野村氏)
「グループ会社や部署ごとにある程度のゾーニングを行い、その中で自由に移動しながら働く仕組みです。部屋の奥、採光の良好な場所にはリラックスルームを用意しました。そして集中スペースであるフォーカスブースは通路に沿って配置しました」(竹之下氏)

執務室通路
リラックスルーム

執務室
その他、オフィス機能としては本社から徒歩1分圏内に設けたオフィス兼映像配信スタジオが新設された。このスタジオは外部にも貸し出しができるほどの施設となっている。
「天井の高さを活かした中2階の構造とし、大スタジオ、ミニスタジオ、本格的なPAルーム、講師控室、執務スペース、ミーティングルームをバランスよく構成できました」(野村氏)

映像配信スタジオ

PAルーム
将来的な働き方を想像してオフィス運営をしていく
新型コロナウイルスが収束したとしても、働き方については改善を重ねていきたいと語る。
「今は当社にも子育て世代が多くなりました。いずれ家族の介護問題も表面化してくるでしょう。社員の仕事・働き方への価値観は大きく変わってきています。当社としては優秀な社員に長く働いてもらいたいと考えていますので、自律的に柔軟に働くことのできる選択肢を整備していきたいと思っています」(竹之下氏)
出社率に関しては、「社員に自ら最適解を出してほしい」と考えているため、あえて社内ルールとして定めることはしない。リモートワークでの働き方、オフィスでの働き方。今後も互いの良さを生かしていきたいという。
「リモートワークだけでは偶発的な出会いが起こりにくく、メンバー間の交流の難しさがあります。ですから他者と関わりあって斬新なアイデアを創出する、化学反応の場としてオフィスは必要だと思っています」

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