旭化成株式会社

2022年5月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

デジタル共創ラボ「CoCo-CAFE」のオープンで
社内外の連携を強化。DX推進をさらに加速させる

旭化成株式会社はDXのさらなる加速を目指し、マーケティング、R&D、生産技術各部門のデジタル人材を集結。社内外の交流を促進させるためにデジタル共創ラボ「CoCo-CAFE」をオープンさせた。今回の取材では新オフィスの概要やコンセプトについてお話を伺った。

松本 勧 氏

旭化成株式会社
デジタル共創本部
DX経営推進センター
DX企画管理部
企画総務グループ グループ長
松本 勧 氏

清水 里美 氏

旭化成株式会社
研究・開発本部
技術政策室 DX事業開発部
研究員

清水 里美 氏

山縣 曜 氏

旭化成株式会社
デジタル共創本部
DX経営推進センター
DX企画管理部
企画総務グループ 課長
山縣 曜 氏

Contents

  1. 総合化学メーカーの旭化成が取り組むDX基盤の強化と推進
  2. 中長期のDX推進の取り組みの中でデジタル共創ラボがオープンした
  3. CoCo-CAFEのコンセプトは「CAFE」。イノベーションに必要なコミュニケーションと集中により、メンバーがクリエイティブに、機敏に、しなやかに、進化し続けることができる場所との思いを込めた
  4. DXを推し進めて新しい価値を社会に提供していく

Multi-purpose room(全景)

Multi-purpose room(全景)

総合化学メーカーの旭化成が取り組むDX基盤の強化と推進

総合化学メーカーの旭化成株式会社は1922年に創業。合成化学や化学繊維事業からスタートした。以降、時代ごとのニーズに対応しながら、大きな成長を果たしてきた。

現在の事業の中心は、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域。「マテリアル」はユニークな繊維素材や環境にやさしい高機能素材、"サランラップ"などの消費財、バッテリーセパレータなどの電子部品などを扱う。「住宅」は戸建住宅"へーベルハウスTM"と軽量気泡コンクリート"へーベルTM"を中心に、独創性に富んだ製品とサービスを展開する。「ヘルスケア」は医薬品、各種医療機器システム、クリティカルケア分野で高度な医療ニーズに応えている。

同社は、2022525日に創業100周年を迎えた。4月に発表した新中期経営計画ではキーワードとして「Be a Trailblazer」を掲げている。そして「開拓者/先駆者」としてグループ全体で社会課題を解決していくと宣言をした。

中長期のDX推進の取り組みの中でデジタル共創ラボがオープンした

旭化成グループは「DX推進ロードマップ」を策定し、新しいビジネスの創出に向けて積極的に挑戦している。ロードマップの概要は以下の通りだ。

デジタル導入期(2018年~):機能別DXの基礎固め

デジタル展開期(2020年~):全社DXを加速

デジタル創造期(2022年~)DXによる経営革新を実現

デジタルノーマル期(2024年~):全従業員デジタル人財化


より高い価値の創出のためには、社内外のナレッジの共有が欠かせない。そこで異なる分野のプロフェッショナル同士が集まれるオフィスが必要だと考えた。同社の新拠点開設にあたり、立地選びで優先したのは交通アクセスだったという。

「物件探しは2019年6月ごろから三幸エステートさんに依頼しました。全国拠点とのアクセスを考えて、羽田空港や新幹線駅と容易に接続可能な立地を希望していました。そのため品川エリアを中心に何棟ものオフィスビルを見学しました」(松本氏)

そして9月にJR山手線「田町」駅近くの大規模オフィスビルに入居を決める。

「物件の提案だけではなく、実際のテナント企業様のオフィス見学を企画していただきました。それも見学だけではなく、『完全フリーアドレスの場合、マネジメントはどのようにするのか』といった質問タイムも設けていただいて。実際のオフィス担当者の生の声でしたので、とても参考になりました」(松本氏)

入居先は決まったものの、デジタルのプロフェッショナル同士がコミュニケーションを取りやすい環境を構築しなければならない。そこで社内でオフィスプロジェクトチームを発足させた。

「物件探しと並行してオフィスづくりの検討も始めました。そこにはオフィスコンサルティングの会社もミーティングに参加していただき、アンケートやヒアリングを重ねながらオフィスへの要望や課題を明確にしていったのです」(松本氏)

「当時、DX推進に関わる部署は日比谷(東京)、厚木(神奈川県)、富士(静岡)に拠点が分かれていました。関係する部署間のコミュニケーションがとりにくいことは、改善すべき重要な課題の一つになっていました」(清水氏)

CoCo-CAFEのコンセプトは「CAFE」。イノベーションに必要なコミュニケーションと集中により、メンバーがクリエイティブに、機敏に、しなやかに、進化し続けることができる場所との思いを込めた

社内から募ったプロジェクトメンバーは、自らが手を挙げて参加した者、指名されて参加した者とさまざまだった。男女、年齢問わずに幅広いメンバー構成になったという。

「今回、新オフィスに入居する予定の各部署からメンバーが参加したので、『自分たちで自分たちのオフィスをつくる』という意識が高まったように思えます」(清水氏)

「従業員に納得してもらえるオフィスづくりをするためには、多種多様な意見を出し合うことが必要だと思ったのです。そして新しい働き方を議題としたワークショップを何度も行いました」(松本氏)

プロジェクトは、「オフィスデザイン」「ICT・設備」「働き方」「引越」「運用設計」「実験室検討」「クラウド化推進」と7つの分科会で形成した。

「自分たちのオフィスを思い通りにつくる。そんな機会はめったにありません。そこで思い切ったアイデアを出し合いました。新オフィスでは新しいことをどんどん試して、合わなかったらまた変えていこう、という考え方で進めました」(清水氏)

そうして「デジタル共創ラボ CoCo-CAFE」を開設し、そのコンセプトは「CAFE」とすることが決まった。

「単なる先進的な空間づくりをしたわけではありません。従業員同士が気軽に集まれる開かれた情報発信基地の構築を目指しました」(清水氏)

DXのさらなる加速に向けて、『デジタル共創ラボ CoCo-CAFE』のオープンは当初からの計画に準じたものでした。このラボにはグループ内のデジタル分野の中の、マーケティング、研究開発、生産技術の3部門のプロフェッショナルが集結しています。技術者同士が意識しあって良質なコミュニケーションが生まれる環境をつくりたかったのです。ここはコミュニケーションハブという位置付けとなります」(松本氏)

ちなみに「CoCo-CAFE」という名称には、Communication Concentration Creative, Agile, Flexible, and Evolving と、同ラボはこうありたい、という期待が込められている。

それではデジタル共創ラボ「CoCo-CAFE」の特長的な部分を紹介していこう。「CoCo-CAFE」は、「エントランス」と「執務室」の大きな2つのエリアに分けられている。エントランスエリアは、お客様とのつながりの場となる。4室の会議室、「Multi-purpose room(多目的エリア)」、ウエイティングスペースなどで構成されている。受付にあるベンチシートには、同社の高級スエード調人工皮革<ラムース>が用いられ、インナーブランディングの意味合いも持たせている。

会議室

会議室

受付

受付

「会議室には『Harbor(港)』『Lighthouse(灯台)』『Anchor(いかり)』『Pier(桟橋)』といった、情報と人が行き交う港を連想させる名前を付けています」(清水氏)

「『Multi-purpose room』には移動しやすい家具を採用しました。机や椅子を片付けたり、並べたりすることで目的に応じたミーティングを行うことができます。今後はこの場所を使ったワークショップや発表会などを企画していきます。その様子をWebで発信することでシナジーを生み出すことも可能だと思っています」(松本氏)

Multi-purpose room

Multi-purpose room

会話を促進するためのカウンターには「CoCo-Bar」の小さな看板も置いている。

「新型コロナが落ち着いたらアルコールも提供し、親睦を図る場にしたいと思っています。それによって従業員同士の交流が深まればいいですし、いずれは懇親会も予定しています。 運営全般のルールは当初『運用設計分科会』で策定し、開所後は企画総務グループが中心となって改善を重ねています」(山縣氏)

執務室エリアは、「Agile(実証実験)」「Communication(交流)」「Concentration(集中)」「Living(リフレッシュ)」の4つの大きなゾーンで形成する。エントランスがコーポレートカラーのブルーの色調であるのに対し、執務室にはオレンジ色を効果的に用いるなど、同社の固定観念にとらわれない自由な発想を大事にしたという。

ゾーンごとに、ファミレス風のミーティング席やホワイトボードを置いた打ち合わせエリア、休憩ができるソファエリア、一人用の集中ブース、高さを変更できる昇降デスクといった家具・什器を採用している。

ソファエリア

ソファエリア

執務室エリア 昇降デスク

執務室エリア 昇降デスク

「従業員の要望でホワイトボードも備えました。オンライン型と手書き型の両方を併用して。シンプルな手書き型のホワイトボードも使用率は高いですね」(松本氏)

「エリア内はどこで働いても自由です。自分が取り掛かっている業務に合わせて働く場所を選べるようにしました。基本的には完全フリーアドレスです。人が集まりコミュニケーションが活性化するオフィスづくりを目指しました。ソファエリアをつくったのは、長い時間を過ごす中では集中とリラックスの行き来ができる場が必要、との考えからです」(清水氏)

ホワイトボードを置いた打ち合わせエリア

ホワイトボードを置いた打ち合わせエリア

DXを推し進めて新しい価値を社会に提供していく

CoCo-CAFEの構築で働き方の見直しを行うことができました。コロナ禍もあり在宅勤務に合わせて会社のルールも変更されました。面白いことにDXを推進する従業員の大半が、対面でのコミュニケーションの重要性を理解しています。その実際の効果をここで実証できればいいと思います」(山縣氏)

「ここで実証実験を重ねることで、リモートでも対面と同じようにコミュニケーションが深まる方法が見つけられるかもしれません。今後もDXを推し進めることで生まれた新しい価値を社会に提供していきたいと考えています。今後もチャレンジし続けていきます」(松本氏)

2022525日、九州地場企業、自治体、研究機関等とアイデア・技術・ビジネスを創造する「デジタル共創ラボ CoCo- CAFE NOBEOKA」が宮崎県延岡市にオープンした。これは「CoCo-CAFE」の姉妹オフィスとなるもので、旭化成ネットワークス株式会社が運営する。そうして同社は連携を深めながら新たな価値創造のためにDX推進を加速させていく。


旭化成株式会社
旭化成株式会社は、「人びとがよりよい生活を実現できるよう、最も良い生活資材を、豊富に低価格で提供すること」を目指して創業した。創業から100年後の今、創業以来変わらぬ人類貢献への想いを胸に、次の時代へ大胆に応えていくために、これからも昨日まで世界になかったものを創造し続けていく。