株式会社ベネッセコーポレーション
株式会社ベネッセコーポレーション
株式会社ベネッセコーポレーション
2022年5月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
チームビルディングを強化するために
自社ビルの大規模リノベーションを実施した
株式会社ベネッセコーポレーションは、新しい働き方の実現を目的に「ワークスタイル変革プロジェクト」を発足。自社ビルの大規模リノベーションを行った。新オフィスでは各フロアにさまざまな快適性やチーム力を高める仕掛けを採り入れている。今回はプロジェクトメンバーの中心となって活動を推進した同社総務部の方々にお話をお聞きした。

株式会社ベネッセコーポレーション
総務部部長
渡辺 健 氏

株式会社ベネッセコーポレーション
総務部 総務課課長
小野 祐輝 氏

株式会社ベネッセコーポレーション
総務部 総務課
柏田 藤子 氏
Contents
- 1955年の創業以来、教育・生活の分野を中心に事業を拡大してきた
- ディスカッションを重ねて「10のワークスタイル」に落とし込む
- 多様なコミュニケーションの形に合わせたチームビルドスペース
- 次の課題を探りながらオフィスを運営していく

3階 ふらっとcafé
1955年の創業以来、教育・生活の分野を中心に事業を拡大してきた
1955年にベネッセグループの前身である株式会社福武書店が創業。以降、国内教育、グローバル教育、介護・保育、生活といったライフステージに沿った分野で事業を行ってきた。1990年にラテン語のBene(よく)とesse(生きる)を組み合わせた造語となる「Benesse(よく生きる)」を企業理念とすることを発表。1994年には、「お客様が暮らす環境で働く」ことを目的に多摩市に東京支社(現東京本部)となる自社ビルを竣工した。その翌年に企業理念に合わせて商号をベネッセコーポレーションに変更。その後、グループ会社の子会社化や関連会社の設立を実施しながら、ライフステージに沿った幅広いサービスを展開してきた。
そんな中、2019年12月に新型コロナウイルス感染症が発生。世界的なパンデミックとなる。幸いなことに、同社では数年前からパーパス経営を背景としたワークスタイル変革について議論を重ねていた。コロナ禍で在宅勤務が一気に拡大したこともあり、それらの議論が現実に向かって後押しされたという。
「自社ビルの竣工から約27年。島型対向式の固定席には、書類が山積みとなる環境になっていました。それでBCPの観点からもオフィス環境の改善が求められていたのです。さらに多摩東京本部周辺および都心部に複数のオフィスを借りていましたが、働き方改革によってオフィス面積の見直しができないか。それによる固定費の削減も議案となっていました」(渡辺氏)
そして2020年7月、ハイブリッド勤務とチームコミュニケーションの活性化を目的とした「ワークスタイル変革プロジェクト」が発足する。総勢82名が参画する大々的なプロジェクトとなった。事業部も、拠点も、年齢もさまざまなメンバー構成であったが、「ベネッセらしい働き方の追求」というベクトルは同じ。スピーディーにワークショップが進められていった。
ディスカッションを重ねて「10のワークスタイル」に落とし込む
2020年3月、新型コロナウイルスの感染者が急増していく。同社も4月から原則在宅勤務となった。そのため本来の強みであるチーム力が活かしきれない。そんな現状を、新たな働き方にどのように組み入れていくか。働き方の変化にいち早く対応するために、「チームビルド」がキーワードの一つとなった。
同年5月、先進的な働き方をしている企業のオフィス見学。自社にふさわしいワークスタイルの検討と並行して、プロジェクトのパートナー会社の選定を行う。そして8月から本格的なオフィスコンセプトの策定に入った。何度も重ねたワークショップで生まれたオフィスコンセプトは「チームでの共創を生み出し、お客様と社員の『よく生きる』を実現する」となった。
「パートナー会社にも参加いただいて『新しい働き方』についてディスカッションを重ねていきました」(渡辺氏)
「ワークショップは最初からWebでの会議が主体となりました。そんなITインフラの充実もプロジェクトをスムーズにした要因になっています」(小野氏)
「数多くの案を出し合い、そこから具体的な内容に絞り込んでいきました。最後は『10のワークスタイル』としてまとめました」(柏田氏)
「ベネッセ社員としてどういった働き方がしたいのか。『ハイブリッド型勤務』を意識しながら新オフィスで実現したいシーンをまとめていったのです」(渡辺氏)
10のワークスタイルは、4つの「実現したいこと」をベースに具体的な活動シーンを落とし込んだものになっている。
多様なコミュニケーションの形に合わせたチームビルドスペース
全21フロアで構成される東京本部ビルでは約2,000名が働くことになる。用意した席数はABW席を含めて1,200席超。そこには組織を横断したコミュニケーションを創出するためのいくつもの仕掛けが装備されている。
「組織の枠を超えて誰もが利用できる共用スペースを増設しました。多様なコミュニケーションの形に合わせてフレキシブルに選択できるチームビルドスペースです」(小野氏)
そして完成したフロアから順次、運用を開始していく。
「業務を止めることはできないため、執務フロアは年末年始に一気に工事を行いました。在宅勤務を実施していたためできたのかもしれません」(柏田氏)
2021年5月、全フロアのリニューアルが完了する。
「1階は『ココラボ』と名付けたコラボレーションエリアとなっています。Web会議用BOXスペースを増設し多様な働き方を実現しています」(小野氏)

ココラボ
2階が受付・エントランスとなる。特長的なオブジェが中央に。このフロアでも簡易的な打ち合わせができるスペースが用意されている。3階は社員食堂を廃止し多目的なカフェスペースに改修。
「誰でも気軽に立ち寄れるように『ふらっとcafé』とネーミングしました。ドリンクや軽食の提供、各執務フロアへのカート販売、会議室へのデリバリーなどを行っています。もちろんカフェだけではなく、ABWの一つとして幅広い使い方が可能です」(渡辺氏)
「南側と北側のテイストを変え、打ち合わせの内容や気分に合わせて選んで使えるようにしました。緑を多く配置した空間に約130席を用意しました。社外の方との打ち合わせにも使用しています」(柏田氏)

エントランス

ふらっとcafé 入口
5階は会議室専用フロアとなる。
「中~大型の会議室を7室用意しています。全国の拠点やグループ会社との打ち合わせも多いため、全ての会議室にはプロジェクタと大画面モニタを設置しました。また、『アイデアを書く文化』という当社の特長を活かすため、壁の四方にはホワイトボードを設置しています」(小野氏)
13階はチームビルディングを目的としたスペース「ミラコモ」のフロアとなる。
「ミライのコモンズ。新たな価値を創出・共有するスペースになることを目指して名付けました」(渡辺氏)

ミラコモ
「リニューアル前は、大人数を収容する2フロア吹き抜けの大ホールでした。全体会議やイベントなどに使用していましたが、現在はチーム力の強化に重点を置いたフロアになっています。チームの人数に応じて容易にレイアウト変更ができる家具、スピーディーな議論を促進するハイテーブル、ハイチェア、立場や役割に捉われないアイデアを生み出すためのスタジアム形式の個室空間など、多様な機能を備えています」(柏田氏)
「吹き抜けでつながる14階には全17個のWeb会議ブースを用意しています。予約制にしていますが稼働率はかなり高いですね」(小野氏)
そして地域密着企業を目指す同社ならではの機能が21階のプラネタリウムだ。
「プラネタリウムは『ベネッセスタードーム』として竣工当時から近隣の一般市民や幼稚園や小学校に開放してきました。今回、アフターコロナを見据えてキッズスペースを新設。さらなる地域の方々との交流を目指します」(柏田氏)
「キッズスペースは、星座をモチーフにしたパズルや写真を並べて、親子で楽しめる空間になっています」(小野氏)

キッズスペース
その他、特長的な執務スペースフロアで構成する。基本は統一したデザインでまとめた全席フリーアドレスのフロアだ。フロア内の各機能は以下の通りとなる。
① YAGURA
フロアの中央に配置されたチームビルドスペース
自由に家具を組み合わせて6~8人用のデスクにして使用することも可能
② ペアワーク席
1on1やOJTなどの用途を考えて横並びの設計とした
③ ファミレスブース
3~4人での集中作業に適したブース
④ ギャザ
簡易的な打ち合わせスペース
⑤ ハイテーブル
視点を変え、さらに会話促進を目的としたテーブル
立った人と座った人との目線があうように高さを工夫している
⑥ Web会議ブース
ニーズの高いWeb会議に対応した専用スペース
「『在るものを活かし、無いものを創る』。変わることのない当社の理念を背景に、時代にマッチしたオフィスが出来上がったと思います」(渡辺氏)

執務室
新オフィスの効果
- 執務フロア コミュニケーションスペース ⇒ 2.5倍
- 共用フロア コミュニケーションスペース ⇒ 1.9倍
- 賃借オフィス面積 ⇒ 39.5%縮小
- 執務フロア 活動スペース種類 ⇒ 2.5倍
- Web会議専用スペース ⇒ 97ヵ所増設
- オフィス内 収納量 ⇒ 33%削減
次の課題を探りながらオフィスを運営していく
オフィスのリニューアル後、約1年半が経過した。出社率は原則50%以下をキープしていきたいと語る。
「働き方は大きく変わりましたが、今までワイガヤで一つのモノを作り上げてきた風土は大切にしていきたいと思っています。とはいえ出社率も維持できるようにしていきたい。いかに出社率50%を超えずにコミュニケーションを活性化していけるかが次の課題になると考えています」(渡辺氏)
今後もテレワークと出社を組み合わせた「ハイブリッド型勤務」を推進していく。ちなみにリニューアル後は全従業員を対象に「オフィスに関する満足度調査」を実施した。新オフィスに対する満足度は約80%。固定席型からフリーアドレス型に一気に移行する中で従業員の不満も懸念していたが、非常に高い数値が出ている。
「どうしても効率性を求めてしまいがちですが、顔を合わせることで初めてアイデアが生まれることもあります。シーンに合わせて選んで使えるスペースや、コミュニケーションの活性化を目的とした部分を多く採り入れた点も、新オフィスの満足度の高さにつながっているのではないでしょうか。当社にとって価値を創造するための場であるオフィスは今後も必要だと認識しています」(柏田氏)
「今回のプロジェクトはチームビルディングの向上を念頭に置いてスタートしました。今回、思い切って新しい働き方に舵を切ったわけですが、そこで課題を見つけながら次のステップに進めればいいと思っています」(小野氏)
「今回のプロジェクトで、それぞれの従業員が働き方やオフィスに対して強い思いを持っていることをあらためて感じています。その思いを理解しながら今後のオフィス運営に活かしていきたいですね」(渡辺氏)

株式会社ベネッセコーポレーションは、ベネッセグループにおいて教育・生活を中心に事業展開を行っている。環境活動への取り組みにも積極的で「未来のこどもたちへあふれる自然を残したい」をテーマに掲げ、商品やサービスを通じて環境負荷削減活動や環境教育へ貢献している。