株式会社ブレインパッド

2022年11月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

新時代の働き方への適応と持続的な事業成長を目指し
社員間の共創をテーマとしたオフィスに集約移転

データを活用して企業の経営改善を支援している株式会社ブレインパッド。ここ数年は社会環境の変化に応じて、リモートワークを併用した働き方を確立していた。しかしその一方で、コミュニケーションの量と質の低下に課題を感じていたという。そこでさらなる事業成長と多様化する働き方に対応するために新オフィスの構築を優先課題に。そして2022年5月に本社移転を実施する。今回の取材では、移転計画の概要や背景、新オフィスのコンセプトなどをお聞きした。

新木 菜月 氏

株式会社ブレインパッド
執行役員 ESG推進
コーポレート本部
総務部長 兼 経営企画部 副部長

新木 菜月 氏

鴨志田 亜美 氏

株式会社ブレインパッド
コーポレート本部
総務部
総務グループマネジャー

鴨志田 亜美 氏

Contents

  1. データサイエンスに価値を見いだし創業。データ活用のプロとして総合的に事業展開
  2. リモートワークにより働き方が効率的になる一方で対面で得られるコミュニケーションの量・質が低下
  3. さまざまな社員の意見を聞くことで新オフィスへの参加意識を持たせた
  4. 分散していたフロアの統合で社員だけでなく、ステークホルダーとの共創も実現させる
  5. 今後、さらに多様化する働き方に対応。共創が生まれるオフィスを維持していく

窓際のソロカウンター席

窓際のソロカウンター席

データサイエンスに価値を見いだし創業。
データ活用のプロとして総合的に事業展開

2004年3月に創業した株式会社ブレインパッド。創業以来、一貫して「データサイエンス」の知見をもとに、企業が抱える経営課題の解決に必要なデータ活用のバリューチェーンを提供してきた。

同社の特長は、さまざまな業種に対するデータ活用支援実績が1,300社を超え、多様なプロフェッショナルが協働して「データ活用戦略立案」から「データ収集・分析」、「アルゴリズム開発」、「データ活用人材の育成」といったデータ活用の一連のフローをワンストップでサポートできることにある。

創業以来変わらずミッションは「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」。現在、データ活用の必要性はさらに高まりを見せ、同社が目指していたそのミッションは世界的なテーマとなりつつある。

「近年、データを経営資源の一つと捉えてビジネスに活用すべきであることは当たり前に語られるようになってきました。しかし実際は、IT人材の不足という日本全体の課題から、本質的にデータを活用して経営を変革できている企業は多くはありません。当社は、データ活用に必要なサービスメニューを取り揃えて企業のデータ活用を支援することで、日本企業が持続的な成長を実現し、競争に打ち勝っていくご支援をしたいと考えています」(新木氏)

リモートワークにより働き方が効率的になる一方で
対面で得られるコミュニケーションの量・質が低下

品川区西五反田で創業した同社は、その後、南北線「白金台」駅が最寄り駅となるオフィスビルに本社機能を移転させる。

20138月のことです。それから増員計画も順調に進み、館内増床を行うことでオフィス面積を拡張しました。さらに201910月には同沿線上にある目黒に分室オフィスを開設して『手狭さ』を補っていました。順調に増員が進むと早々にスペース不足となることが予測できていたため、中長期的なオフィス計画を進めようとしていました。その矢先、20204月の緊急事態宣言発令を契機に、せっかく開設した分室オフィスがほとんど活用されないまま、在宅勤務の比率が上昇しました。それ以降、新型コロナウイルスの感染拡大防止を前提としたハイブリッドワークが当たり前となり、スペース不足への不安は緩和されたものの、次第に社員間のコミュニケーションの量と質の低下が経営課題として表れるようになっていきました」(新木氏)

「当社はもともと在宅勤務制度を取り入れていたため、社員個々人において新しい働き方に対する準備はできていたと思います。しかし、オフィス設備は旧来型のものであり、ハイブリッドワークへの対応はできていませんでした。多くの社員が自宅で働くことが当たり前になっていくにつれ、出社した時にその価値を感じられるオフィスの必要性が唱えられるようになっていきました。そこで、ハイブリッドワークを前提とする新たな働き方でも事業成長を実現できるよう、オフィス移転を検討することになったのです」(鴨志田氏)

さまざまな社員の意見を聞くことで新オフィスへの参加意識を持たせた

それまでもオフィスに関する情報は定期的に収集していたという。

「三幸エステートさんからは、オフィス移転セミナーの案内やオフィスマーケットデータを定期的に提供していただいていました」(新木氏)

「旧白金台本社には10年弱入居していましたので、いつの間にか東京の西側エリアを生活圏とする社員が増えていました。その生活圏から大きく外れることがないよう、南北線沿線を中心に移転先候補となる物件探しを開始しました」(鴨志田氏)

20211月頃に、現在入居しているビルの空室情報を入手しました。『白金台3フロア、目黒1フロアに分散していたオフィスを集約できる広さ』『柱が少ないため自由度のあるレイアウトが可能』『白金台や目黒と同沿線』『駅直結のためアクセスが良好』。多くの希望条件にマッチしていたこともあり、すぐに役員へ報告しました」(新木氏)

すぐに検討を進めるよう指示があり、契約締結に向けてスピーディに動き出した。

「旧オフィスの契約期間満了までには少し余裕がありましたが、実現可能な工期と社員の負担を考えて2022年のゴールデンウィークを引っ越し期間と設定しました」(鴨志田氏)

その後、内装デザイン会社を選定するために数社コンペを行う。そして選定した内装デザイン会社と同社側のメンバーでプロジェクトチームを結成した。社内のリソースには限りがあったため、プロジェクト全体のマネジメントも外部企業に依頼した。そのおかげで、社内メンバーはオフィスの事例研究や情報収集、社員の声の取りまとめ、設計・デザイン・素材など、細部なところにまで集中できたという。

「新オフィスを構築する上で、一人でも多くの社員の意見を聞いていこうと思いました。しかし全員にヒアリングするには時間が足りません。そこで各部門からメンバーを募り、部門別・職種別に意見を取りまとめるワークショップを開催しました。ワークショップでは、『オフィス出社と在宅勤務の比率』『あるべきハイブリッドワークの形』『理想的なオフィス』といった具体的なテーマを用意しました」(新木氏)

「コロナ感染が比較的落ち着いた時期を見計らって、対面でワークショップを実施しました。その結果、私たちだけでは想像できなかった意見がたくさん生まれ、新オフィスの設計に取り入れたいと思えるアイデアを得ることができましたし、参加した社員からは『対面で集まって意見を交わすことの価値を改めて感じた』という嬉しい声をもらえました」(鴨志田氏)

執務室のイス選び、コーヒーマシンの選定など新たな福利厚生サービスの導入に関する賛否なども、実際に社員に使用感を体感してもらい、投票式アンケートを実施しながら決定していった。

「そうすることで『オフィスづくりに参加した』という意識を共有してもらいたかったのです。手間と時間をかけることにはなりましたが、投票するために久しぶりに出社してくれる社員もいて、ワークショップも含め、価値あるプロセスになりました」(新木氏)

分散していたフロアの統合で社員だけでなく、
ステークホルダーとの共創も実現させる

そうして「六本木一丁目」駅に直結した大規模オフィスビルへの移転が確定する。1フロア面積は約520坪。同ビルの11階と12階に入居することで、これまでの2拠点・4フロアに分散していた不自由さを大きく改善する。

11階は総合受付(エントランス)フロアとなる。フロア内には60人を収容できるセミナールーム、来客用会議室、社内用会議室など、全52部屋の個室が並び、「個室だらけ」のゾーニングとした。来訪者が最初に訪れる総合受付(エントランス)を進んだ先の窓から「谷町junction」が見えることからインスピレーションを受け、フロアコンセプトは、「BrainPad Junction」とした。社内外の人が交差し合って新しい価値を生み出す空間にしたいとの思いが込められている。

エントランス

エントランス

会議室廊下

会議室廊下

「ただでさえ個室数が多いので、来客用会議室のネーミングは、空が見える窓側を『sora(空)』、内側を『naka(中)』、『sora』、『naka』から離れた所にある会議室を『hanare(離れ)』とすることで、わかりやすさ・覚えやすさを重視しました」(新木氏)

「来客用会議室は、デザインコンセプトと各部屋の色調にもこだわりました。最初の部屋となる『sora1』からアルファベット順に鉱石の名前(例:sora1Amethystsora2Bloodstone)を当てはめ、全24部屋すべてにそれぞれの鉱石をイメージした色調の什器を選定しました」(新木氏)

「オンラインでの採用面接などで活用できるように、2名が横並びで会議ができる会議室も用意しました」(鴨志田氏)
オンライン用会議室

オンライン用会議室

旧オフィスでは社員から、「会議室の数が足りない」「会議室の壁が薄く会話が漏れてしまう」という要望が多く寄せられていた。そこで、来客用・社内用ともに個室を多く配し、来客用会議室はダブルガラスを採用することで音漏れを改善した。

「旧オフィスでは、会議室の予約が取りにくいことを理由に『仮予約』が頻繁に行われていました。予約が入っていても、実際に使用しないケースもありました。会議室不足という状況がさらなる会議室不足を生んでいたのです。そこで、『来客用会議室では原則は社内会議を行わない。ただし、当日に開いている時間帯ならば使用しても良い』といったルールを設定しました」(新木氏)

全体的に応接エリアはシックな雰囲気でまとめているが、2部屋だけ全く違うデザインの雰囲気の特別応接室を用意している。まるでリビングをイメージした「Platinum(プラチナ)」と、もっとも眺望がよい場所で2面が大きな窓で囲われている「Xonotlite(ゾノトライト)」だ。

特別応接室のデザインは当社の取締役がデザイン監修し、リビングのような設えとしたPlatinumには、お客様との会食をしながらの商談も行えるように、ワインセラーを用意しています」(鴨志田氏)

12階は完全フリーアドレスの執務スペースを中心としたエリアとなる。視界を遮る高さの什器やパーテーションは必要最低限の設置とすることで、開放感や一体感のある空間づくりを行っている。また、リラックス効果や空気環境の改善を目的としてフロアのいたるところに植栽を配置し、社員の生産性向上に繋げている。

特別応接室

特別応接室

執務室全景

執務室全景

そして、業務内容や気分によって働く場を選べるABWを採用した。

「仕事のちょっとした相談・会話が生まれやすい空間にしたかったので、それぞれの席の配置にもこだわっています。着席時に周囲の視線は気にならないが、意識的に視線を向けた際に、会話が生まれるような設計にしました」(新木氏)

「窓際には眺望の良い空間で集中作業ができるソロカウンター席、会議室に入るまでもないようなちょっとしたミーティングに適したファミレスブース席、オンラインミーティングを想定したフォンブースなど、多様な機能を揃えており、ソロワークだけでなく、チームでの出社にも対応しています」(鴨志田氏)
ファミレスブース席

ファミレスブース席

同フロアの最も眺望が良いエリアには、ブレーンストーミングを積極的に行うためのエリア「Base Camp(ベースキャンプ)」を設けた。

「複数人でのチームでアイデアを出し合うためのエリアです。気分を変えて発想ができるように什器選定にもこだわりました。壁一面をホワイトボードにして思いついたことをその場で書き込めるようにしており、社内の勉強会などでも積極的に使われています」(新木氏)

そして新オフィスの最大のスポットがフロア中央部に設けられたコラボレーションエリアとなる。新たな働き方である『共創』を促進するためのエリアで、ここだけ一段高く床を上げて、執務エリアとの差別化をしている。

「『Ignition Circle(イグニションサークル)』と名付けました。この場所から今までになかったコミュニケーションやアイデアが生み出される着火点となることを期待したネーミングです。テーブルは組み合わせを自由に変えて1人でも複数人でも使うことができるほか、カフェカウンターなど、80席を用意しています」(新木氏)

ベースキャンプ

ベースキャンプ

イグニションサークル全景

イグニションサークル全景

「これらに加え、出社時に集中して作業を行うことができる環境が必要という声を聞き、『会話』『電話』『オンラインミーティング』を禁止したエリアも新設しました。その席数は52席。デュアルモニタやファーストクラスのようなリクライニング式のブース席を備えており、作業に没頭できる場所として『Dive!』と名付けました」(鴨志田氏)

今後、さらに多様化する働き方に対応。
共創が生まれるオフィスを維持していく

移転プロジェクトは大きな混乱を生じさせることなく無事に完了できた。

「今後は定期的に社員アンケートを実施するなどして、オフィスに対する要望を吸い上げながら、今後の改善に役立てていきたいと思っています」(鴨志田氏)

「オフィスは構築して終わりではありません。これからも新たな施策を講じていく必要があると思っています。せっかく『共創』を促進するオフィスを構築したのですから、出社したときは黙々と一人で勤務時間を過ごすのではなく、誰かと対面のコミュニケーションをとってほしいです。今後も、さらに働きやすい空間づくりを行っていきます」(新木氏)


株式会社ブレインパッド
データ活用により企業のビジネス創造や経営変革を支援している株式会社ブレインパッド。今後はデータ活用の用途に脱炭素や省エネルギーといった持続可能性の向上という視点も加え、その動きを加速させて次代に繋げる提案を続けていく。