キャシュモグループ
キャシュモグループ
キャシュモグループ
2023年9月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
企業ブランディングと採用の強化を目的に移転を行った
中小企業を対象に、経理・税務・財務・労務といったバックオフィス業務のアウトソーシングサービスを提供しているキャシュモグループ。2023年7月に、働く環境の課題解消を目的にオフィスの拡張移転を行った。今回の取材では、移転の背景や新オフィスのコンセプトを中心にお話を伺った。

キャシュモグループ
グループ代表
梶井 伸一 氏

キャシュモグループ
コーポレート本部
堤 洸平 氏
Contents
- 新時代の働き方の提案としてバックオフィス業務をサポートしてきた
- 企業ブランディングと採用の強化を目的に移転を決意した
- 新オフィスは営業ツールの一つとして機能している
- 富士山を望める眺望は、商談前の会話の広がりというプラスの要因を生む
- オフィスを構築する際は若手メンバーをリーダーに抜擢して進めた
- 新オフィスのコンセプトは「スピード感」と「健康」とした
- オフィス移転によって、予想以上にコミュニケーションが向上した

オフィス全景
新時代の働き方の提案としてバックオフィス業務をサポートしてきた
キャシュモグループは、株式会社キャシュモ、税理士法人キャシュモ、社会保険労務士法人キャシュモの3社で構成。現在は、従業員数20人程度の企業をメインターゲットにして、経理・税務・財務・労務といったバックオフィス業務のアウトソーシングサービスを展開してきた。
「従業員数が20人前後の企業では、経理や総務の専門スタッフを1人しか雇用することはできません。それらのほとんどの企業では、1人のスタッフが多くのバックオフィス部門を担当していると思われます。その場合、万が一、急な退職者が出た場合など、引継ぎ業務でさえスムーズにいかないといったリスクを抱えているのが現状なのです」(梶井氏)
税理士である梶井氏は、中小企業が業務拡大のチャンスを逃してきた多くのケースを目の当たりにしてきた。そこから、企業の間接部門の包括的なアウトソーシングサービスの意義を感じたという。一般的な数字ではあるが、経理や総務スタッフは1人あたり、40万円ほどのコストがかかるといわれている。さらに、税理士や社労士などに支払う金額を加えれば、毎月60万円ほどが必要となる。キャシュモグループのサービスは、これらの業務をワンストップで、かつ半分の値段で提供するものだ。
また、キャシュモグループが業務拡大をしてきた背景には、バックオフィスに求められる資質が変化していることも関係する。
「経理業務を例にとると、今までは簿記資格を持っていることが最優先でした。しかし昨今はクラウドサービスの進展とともに法改正も進んでおり、デジタルへの対応力も必須になりつつあります。両方を兼ね備えた人材は、企業規模を問わず高いニーズを有するため、中小企業での採用はますます困難になってきています。そこで、優秀な人材を雇用するのではなく、バックオフィス業務のプロに完全ワンストップでお任せする。そうすることでお客様は、本業に100%集中できる環境を実現できると考えました」(梶井氏)
そのコンセプトが、多くの中小企業に受け入れられ、業務が拡大していく。それに伴って人材の採用も随時行ってきた。
「当グループのオフィスは港区(青山)と世田谷区(用賀)に構えていました。用賀オフィスは振り込みや記帳業務などの実務部隊。20人ほどのスタッフが働いています。一方、青山オフィスは、来客対応や本社機能としての役割を持ちます。青山オフィスは入居してから12年ほどが経過していました」(梶井氏)
企業ブランディングと採用の強化を目的に移転を決意した
今回の移転計画を実施する前に、働きやすさの改善を行ったことがあるという。リニューアル工事は2020年3月に完成したが、運悪くコロナ禍に差し掛かったタイミングだった。
「旧オフィスの面積は約70坪でしたが、そのうちの30坪を会議室として使用していました。次第にコロナ禍も落ち着きを見せます。来客者が増えたのはいいのですが、それにより、会議室は再び不足していきました。そして、このままでは会議室だけでなく、執務室自体にも手狭感が出てしまうことが明白でした」(梶井氏)
それ以外にも、企業ブランディングを高めたい。それによって新卒・中途を問わず採用計画を強化したい。そんな強い思いが、オフィス移転を決断させたという。
新オフィスは営業ツールの一つとして機能している
実際に新オフィスを訪れる来客者からは驚きや感動の声が多く上がっている。「自分たちも移転したくなった」と声をかけてくる経営者も多いという。
「中小企業の代表者は、『オフィスは最低限の機能があれば問題ない』と考える方も多いと聞きます。しかし、オフィスは立派になればなるほど、自社のイメージアップにもつながります。プラスの要因が多いことに今更ながら気が付きました」(堤氏)
「まさに、新オフィスは営業ツールの一つのように機能していると感じています。このオフィスを通じて、中小企業の皆様に『働きやすい空間』を持つことの重要さを示していければと思っています」(梶井氏)
そうして移転後は、来客者も大幅に増えているという。これは自分たちのオフィスを見てもらいたいという従業員のモチベーションが高まっている効果と考えている。
富士山を望める眺望は、商談前の会話の広がりというプラスの要因を生む
それでは、オフィス移転までの経緯を説明しておこう。
移転先のオフィス探しには、以前からお付き合いのあった三幸エステートに依頼をした。移転先の条件は「費用」「広さ」「立地」。優良ビルであっても空室を抱えているケースが多い時期だったため、価格交渉のチャンスが生まれるという計算もあった。
「『広さ』に関しては中期計画をもとに想定従業員数を算出しました。その結果、2026年には従業員数が200人ほどになる計算でした」(梶井氏)
コロナが収束しても、出社とリモートワークを併用したハイブリッドワークとすることは決定していた。
「たとえ50%出社のルールにしたとしても毎日100名はオフィスに出社する計算になります。そうなると150坪前後の面積は必然でした」(梶井氏)
次に「立地」の検討に入る。当初はもともとオフィスを構えていた青山周辺を希望していたが、同エリアではなかなか理想的な大規模物件がない。そこで六本木や虎ノ門、赤坂といったエリアまで範囲を広げた。
「三幸エステートさんからは数多くの情報をいただきました。その中で10棟ほどに絞り込み、比較検討をしていったのです。最終的に選んだのは、赤坂に立地するオフィスビルでした。面積は約200坪。旧オフィスに比べると約3倍の広さになりました」(梶井氏)
最終的に決め手になったのは、意外にも「眺望」だったと語る。六本木や虎ノ門は、ビルが林立しており、高速道路が走っているため開けた眺望が望めない。今回選んだビルは、赤坂エリアの中でも高台に立地していることもあり、晴れているときは富士山を望むことができるという。
「創業時から『日本一を目指そう』というのが社内の合言葉でした。富士山が見えることで、気分も高まりますし、商談前に会話が広がるといったプラスの効果にも期待しました」(梶井氏)
オフィスを構築する際は若手メンバーをリーダーに抜擢して進めた
移転先が確定したことで、オフィス構築のフェーズに入る。
「グループ内には4つの部門があります。今回は、『働き方を考える』ことを経験させたくて、財務コンサルティング部門の若手従業員をリーダーに抜擢しました。そのリーダーを中心に、コーポレート部門と情報セキュリティ部門が協力し合って進行したのです」(梶井氏)
2022年11月に、デザイン会社へのコンペを企画し、翌年1月に3社コンペを完了させる。2月末に今回のオフィスデザインのパートナー会社を決定。3月から工事を着手する。そこから、わずか4ヵ月で完成させる。かなりタイトなスケジュールだった。
「もちろん我々は、オフィスづくりに関しては全くの素人ですから、皆様のサポートなしではできませんでした。テーブル1つを決めるだけでも、何度も打ち合わせを繰り返したものです」(堤氏)
新オフィスのコンセプトは「スピード感」と「健康」とした
「我々のミッションは、中小企業の経営課題を解決することです。そのためにはスピード感が重要だと、常々言い続けています。新オフィスでは、そんな当社のスピード感を象徴できる空間づくりを目指しました」(梶井氏)
旧オフィスには3室しかなかった会議室を7室に増室。室数を大幅に増やしたことで、予約を取りやすくした。会議室の名称には、「フレディ」「マリリン」など、誰もが知っているようなスターの名前を付けた。

会議室「フレディ」

会議室「マリリン」
「これはデザイナーさんからの提案です。部屋ごとに色調を変えて、『印象に残る』ことを意識しました。その他にも数多くのアイデアをいただきました。エントランスのデザインも英国風で、とてもインパクトのあるものに仕上がったと思います」(堤氏)

エントランス
同じような空間をたくさんつくるのではなく、多様な機能を用意したのも新オフィスの特長となる。
「立ちながら簡易な打ち合わせができるスタンディングテーブル、お茶を飲みながらゆっくり話せるようなソファエリア、ファミレス風のミーティング席、勉強会の開催を見込んだ大テーブルのスペース、Web会議などの用途に最適な小ブース、VIP用の応接室など、多様な働く場を用意しました。自分の業務に合わせて自由に選べるようにしています」(堤氏)

ソファエリア

大テーブルのスペース

Web会議用の小スペース

VIP用応接室
加えて、昨今は健康経営が企業に求められていることを受けて、オフィス内にフィットネスジムを新設した。

フィットネスジム
「オフィスには珍しい設備に見えるかもしれませんね。旧オフィスでは近くのパーソナルジムを使っていました。元社員でトレーナーに転身した者がいまして。社員数名が通っていました。しかし、移転によって通いにくくなってしまいます。従業員の『健康活動』は維持したかったので、思い切ってオフィス内に造作しました」(梶井氏)
朝と夕方、就業時間外であれば自由に使えるルールになっている。
「機材に関しては、実際のフィットネスジムに視察に行き、サイズ感や重量などを確かめてから購入しました」(堤氏)
オフィス移転によって、予想以上にコミュニケーションが向上した
新オフィスは、フリースペースを広く構えたことから、ごく自然な形で従業員間のコミュニケーションが生まれているという。
「いたるところで会話が生まれていますね。所属部署をまたいでランチをしている様子も目にするようになりました」(堤氏)
対外的なアピールや、社内のコミュニケーション強化につながるオフィス。コロナ禍では、「オフィス不要論」が一部で展開されることもあったが、やはりオフィスは必要だと強調する。
「オフィスは、従業員同士が共有できる唯一の場所です。他愛もない会話でも何らかの『気づき』につながることが多くあります」(堤氏)
「従業員にとって、働きたくなる場所、帰ってきたくなる場所は絶対に必要です。それで新オフィスには色々なバリエーションを設けました。それが従業員のストレス解消や安心感につながればいいと思っています」(梶井氏)

2004年の設立以降、ミッション「良い会社を増やし日本を元気に」、ビジョン「中小企業経営のあたりまえになる」、バリュー「Challenge」を掲げて、メンバー全員で価値観を共有するキャシュモグループ。今後も日本の未来のために躍進を続けていく。