株式会社コロプラ

2022年6月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

コロナ禍での本社オフィス移転の目的は
徹底的に「感染症対策」を講じ、出社したくなるオフィスにすること

スマートフォンを中心にモバイルゲームを提供している株式会社コロプラ。恵比寿にオフィスを構えて約13年。同社のブランドイメージが浸透してきたところではあったが、それよりもコロナ禍での「感染症対策」を優先課題にして大規模な本社移転を行った。今回はプロジェクトを推進したお二人に新オフィスの詳細についてお聞きした。

森 林太郎 氏

株式会社コロプラ
コーポレート本部
経営管理部 部長


森 林太郎 氏

菅 雅人 氏

株式会社コロプラ
コーポレート本部
経営管理部 総務グループ
マネージャー

菅 雅人 氏

Contents

  1. 恵比寿でのブランドイメージをリセット。新天地へのオフィス移転で課題を解決した
  2. さまざまな社員層のグループを構成し定期的にワークショップを重ねた
  3. 「感染症対策」を徹底的に行った。その結果、使用素材にもこだわった
  4. 99点を100点にするためにリアルなコミュニケーションが必要と考える

コロパーク全景

コロパーク全景

恵比寿でのブランドイメージをリセット。
新天地へのオフィス移転で課題を解決した

2008年、馬場功淳氏(現、代表取締役会長兼チーフクリエーター)が運営していた個人サイト「コロニーな生活」の法人化を目的に株式会社コロプラが設立された。社名の由来は設立当時のサイト名「コロニーな生活☆PLUS」の愛称。初心を忘れることのないように名付けられたという。

移転前は、渋谷区恵比寿を代表するランドマークに入居していた。

「『コロプラ=恵比寿』というブランドイメージが出来つつあったこともあり、入居ビルのオーナーと当初は契約更新に関する協議を行っていました」(森氏)

コロナ前はビルの9階、10階、11階、13階、そして14階の一部、約3,500坪に入居していた。その後、新型コロナウイルスが発生。感染が急激に拡大していく。そのとき同社は従業員の健康を第一に考えた。

「安心して働ける環境を提供するためにすぐに在宅勤務制度を採り入れました」(菅氏)

「在宅勤務を行うことで出社率を3割に抑えました。そしてコロナが収束したとしても、この働き方は元に戻ることはないと考えました。その結果、効率的なスペース計画を実現し、2.5フロア、約2,100坪に賃貸面積を縮小しました」(森氏)

その後も、「感染症対策」を進めていく。そのうえで換気設備の増強は必須だった。しかし、入居しながらの増強工事は難しい。そうなると別の場所への移転を検討する必要がある。大規模な工事になることは明白で、当初は新築ビルへの入居工事で対応することを考えていたという。

しかし感染症対策が目的である以上、できるだけ早く移転する方が望ましい。そこで感染症対策の工事が可能な既存ビルも並行して探すことになった。

「しばらくすると全く想定していなかったビルの空室情報をいただきました。立地は六本木です。ビル1棟を1社で使用していた入居企業の退去によって大量の空室が生まれたのです。提案されたのは2フロア、約2,200坪。面積的にも申し分ありません。ビル側との打合せの中で条件面の話も速やかに進み、202012月に契約を締結しました」(菅氏)

入居先が決まり、オフィス構築のフェーズに入る。

「当社は、オフィス移転の経験が少ない会社です。感染症対策といっても何から始めていいのか、全くわかりません。そこで今回のプロジェクト全体をPM会社にマネジメントしてもらうのがベストという結論になりました」(森氏)

そして2ヵ月後、数社コンペを実施したのちPM会社が決定した。普通のフェーズならば、次は設計・デザイン会社の選定となる。しかし今回の工程では、PM会社からのアドバイスを尊重したと語る。

「まずやるべきことは当社の『感染症対策』をまとめること。そのうえで、その要件を満たす設計・デザイン会社を選ぶべきだと。『感染症対策』に関しても科学的根拠に基づいて検証したいと思っていましたので、厚生労働省やCDC(アメリカ疾病予防管理センター)などのエビデンスを確認しながら、感染症対策の正確なデータを大量に保持している専門会社との協業体制を組むことにしました。そして2ヵ月以上にわたって『空気・接触・飛沫の感染ルート』『意味のある感染予防対策』などの課題をクリアにしたのです」(森氏)

さまざまな社員層のグループを構成し定期的にワークショップを重ねた

2021年4月、PM会社の立会いのもとで設計会社を確定させた。

「それから総務グループが主体となってプロジェクトチームを組成しました。職種や入社年次、新卒、中堅社員と、バランスを考えながらいくつものグループに分類。定期的にワークショップを重ねていきました」(菅氏)

「上がってきた意見や要望をどのようにオフィス全体に表現していくか。設計会社を含めて細かい部分を詰めていきました」(森氏)

202110月、ようやく工事がスタートする。入居予定日まで残り4ヵ月。非常にタイトなスケジュールだった。

オフィスづくりにあたって、最重要としたのは『感染症対策』と『コミュニケーションの活性化』。改善すべき課題をオフィスコンセプトとした。

「感染症対策」を徹底的に行った。その結果、使用素材にもこだわった

「特に『横文字のカッコいいスローガン』をつくるといったことは一切していません。あくまでも『感染症対策』を軸に考えました。考えていく中で、バリアフリーやSDGsといった新たな課題が出てきました。それらを解決していくと、また違った課題が出てくる。その繰り返しでしたね」(森氏)

「旧オフィスは1フロア800坪強。しかしフロアの中央にエレベーターホールが位置していたため、実質は『400×2』のレイアウトになっていました。それもコミュニケーションの低下を生む原因の一つと考えていましたので、新オフィスでは1フロアの特性を活かしたオフィスづくりを目指しました」(森氏)

それでは新オフィスの特長的な部分を紹介していこう。新本社は、大規模オフィスビルの5階と6階を使用している。1フロア約1,100坪。旧オフィスよりも少し面積を拡張した。そして共通のデザインコンセプトとして「モノトーンのオフィス」を掲げた。

5階フロアは、従業員が気軽に集まるエリア「コロパーク」と福利厚生エリア、プロジェクトチーム、バックオフィスで構成されている。コロパーク内には、最新のゲーム機を置いて研究と気分転換を兼ねた「ゲームコーナー」、本格的なマッサージが受けられる「KumaSPA」、感染症対策を考えて皮付きバナナを置いた軽食コーナー「無限バナナ」、牛丼チェーン「松屋」の自動販売機、専門書から雑誌、コミックまで豊富な図書を揃えた「クマ図書館」など、多くの福利厚生を充実させている。

コロパーク

コロパーク

ゲームコーナー

ゲームコーナー

クマ図書館

クマ図書館

「執務室エリアは固定席です。チームでの働き方が中心のため、効率性を優先しました。一方で、オンライン会議や1on1用ブース、ファミレス風ミーティング席、ソファ席など、気分によって場所を選べる環境も備えています」(菅氏)

1on1用ブースはブース中央にガラスの仕切りを入れ、インターフォンを通して会話を行う。会話が外に漏れることもなく、マスクを外してのコミュニケーションが可能だ。

1on1用ブース

1on1用ブース

「執務室は遮るものがない設計にしています。在席状況が分かりやすいのでコミュニケーションがとりやすくなりました。また、『遮るものがない』ということは『換気の良さ』につながります。感染症対策としての効果も期待大です」(森氏)

「執務室エリア内には両フロア合わせて30席以上のスタンディングデスクを配置。いつでもミーティングができる環境を整えています」(菅氏)

感染症対策を考えて机に向かい合った相手との距離にもこだわった。

「個々の机の奥行きを伸ばしました。そしてなるべく廃棄物を増やさないように、机の天板だけを張り替えました。結果的に予定していた固定席数が減りましたが、やるからには徹底的に行おうと思ったのです」(森氏)

6階フロアは、オフィスエントランスと応接エリア、新規ゲームの開発チームで構成されている。エントランスは、同社の代表的なブラウザゲーム「コロニーな生活」をイメージできるデザインとした。

「シンプルなデザインに強弱をつけるため、当社のコーポレートキャラクターである『クマ』を置くことにしました」(菅氏)

応接室13室。あえて少人数の部屋は設けていない。各部屋の名称は、「広大な大地」「豊作の秋」「星降る夜空」といった「コロニーな生活」でのアイテム名が付けられている。

「各部屋にはそのネーミングにちなんだアートが飾られているのですが、すべて当社の若手デザイナーが描いたものです。旧オフィスでも飾っていましたが、新本社移転を機に全て書き直しました」(森氏)

オフィスエントランス

オフィスエントランス

応接エリア

応接エリア

そして「感染症対策」の大きな特長の一つが、「リノリウム」という素材の使用だ。

「リノリウムは、亜麻仁油などを原料とした天然素材です。学校や病院などに多く使われていて、抗ウイルス性、抗菌性、脱臭効果が科学的に証明されています。まさに当社の目的である『感染症対策』を実行するにはベストな素材でした。これだけの規模のリノリウムを使用している一般オフィスは当社が初めてといわれています」(森氏)

「感染症対策」は天井にも多額の予算を投じた。排気ダストの追加工事だ。見上げると一般のオフィスでは見られない数の排気ダクトが天井一面に配置されている。

「追加工事後の排気量は20%も増強しました。空気感染対策として行ったのですが、結果的に室内の二酸化炭素濃度の低下にも寄与しています」(菅氏)

排気ダクト

排気ダクト

99点を100点にするためにリアルなコミュニケーションが必要と考える

同社は徹底的に科学的根拠に基づいた「感染症対策」を行いつつ、コミュニケーションの低下という課題の取り組みにチャレンジした。新オフィスでの出社率は70%程度をイメージして設計しているという。

「感染症対策重視の働き方は変えるつもりはありません。仮にコロナが収束したとしても、風邪のウイルスやダストが取り払われるならばいいと考えています。結果として社員の健康が維持できればいいのです」(森氏)

「今回、『感染症対策』に徹底的にこだわったオフィスを構築しました。従業員が安心できる環境。それは我々の目が届くオフィスだからできたのだと思っています」(菅氏)

「当社は『モノづくり』の会社です。現場に人が集まって、アイデアを出し合って、一つの商品を生み出していく。それが原点になっています。どんなに優秀な技術者でも一人だけで100点満点の商品をつくるのはとても困難なことです。だから100点に近づけるために、色々な人の意見やアドバイスが必要になるのです。将来的にどれだけIT技術が発達したとしても当社からリアルなコミュニケーションがなくなることは考えられないですね」(森氏)

株式会社コロプラ
「エンターテインメントで日常をより楽しく、より素晴らしく」をミッションに、成長を続けてきた株式会社コロプラ。今後もエンターテインメントを主軸に、世界中の人々に希望と活力を提供していく。