コンバースジャパン株式会社

2022年4月取材

この事例をダウンロード
バックナンバーを一括ダウンロード

※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

オフィス移転で行った「ビジネスオフィス」から
「クリエイティブオフィス」への変革

2020年、これまでシューズを主としたマーケティング、企画、製造、販売を担うコンバースフットウェア株式会社と、ライセンス事業を主とするコンバースジャパン株式会社が統合した新生コンバースジャパン株式会社。以来、今まで以上にライフスタイルブランドメーカーとしての事業展開を広げている。そんな同社は2021年12月に本社移転を実施。新オフィスでは、ビジネスシーンに合わせたさまざまな働き方に挑戦している。今回の取材では、移転プロジェクトを牽引した企画部のメンバーにお話を伺った。

高瀬 美穂 氏

コンバースジャパン株式会社
企画部 MD課
スペシャルプロダクト担当

クリエイティブディレクター

高瀬 美穂 氏

田中 周平 氏

コンバースジャパン株式会社
企画部 マーケティング課
課長


田中 周平 氏

Contents

  1. ライフスタイルブランドメーカーとして多様なモノづくりを行っていく
  2. 働く環境のアップデートを目的に若者文化発信の場への移転を検討していた
  3. 妥協することなく時間をかけて希望通りのオフィスビルと契約をした
  4. モチベーションを高めるために「来たくなるオフィス」を構築した
  5. オリジナルのフリーアドレスルールで部署内・外のコミュニケーションを高める

4階ラウンジ

4階ラウンジ

ライフスタイルブランドメーカーとして多様なモノづくりを行っていく

1908年、米国マサチューセッツ州に誕生したシューズブランドのコンバース。雨や雪の中でも作業ができる質の高いラバーシューズの製造で圧倒的な支持を得る。その後、バスケットシューズ「キャンバスオールスター」、バトミントンシューズ「ジャックパーセル」など、次々とヒット商品を生み出していく。

「当社はシューズメーカーとしてのブランドイメージが強いですが、近年はライフスタイルブランドを前面に出してサービスの提供を行っています。そして今後も多彩な顧客ニーズに合ったモノづくりを行っていきます」(田中氏)

働く環境のアップデートを目的に若者文化発信の場への移転を検討していた

旧オフィスは、「赤坂見附」駅徒歩1分に立地するオフィスビルに入居していた。

「国際色豊かなビジネス街でした。洗練された大人のイメージを持つエリアでしたが、逆に私どものようなカジュアルな服装をしたワーカーは少なくて。多くのスタッフが立地に対して違和感を持っていました」(高瀬氏)

「当社はカジュアルなファッションを扱っているメーカーです。そのため多くの若者が集まるエリアに出向き、若者同士の会話や行動のリサーチを欠かさず行っています。しかしリサーチのために時間をかけて出かけるのではなく、当たり前のように若者のカルチャーに触れられる場所こそ、本来のオフィス拠点であるべきと感じていました」(田中氏)

「そのような理由から『ビジネスオフィスからクリエイティブオフィスへ』をコンセプトに、中長期的にオフィス移転のタイミングを計ることにしたのです」(高瀬氏)

妥協することなく時間をかけて希望通りのオフィスビルと契約をした

最初にオフィス移転を意識したのは2018年のこと。新型コロナウイルス感染症の発生前だった。

「オフィスでの働き方について、疑問を持ち始めたのがきっかけです。社内プロジェクトとして企画部が先導して、オフィスコンセプトや候補エリアなどの素案づくりを行いました。そして他部署からの参加メンバーとともにオフィス移転の意義を探っていったのです」(高瀬氏)

「次代の働き方として『クリエイティブオフィスへの変貌』というコンセプトを掲げました。エリアの第一候補は原宿。その他、駅からのアクセス、面積、周辺環境、1棟貸し、内装の自由度などの、移転先に対する希望条件を固めていきました」(田中氏)

旧オフィスの使用面積は約390坪。1フロアに110名が在席した。固定席の机がただ並んでいるレイアウトで、気軽に打ち合わせをするスペースは十分ではなかったという。

「クリエイティブを生み出す環境としては物足りなさを感じていました」(田中氏)

2020年に入り、日本でも新型コロナウイルス感染症が発生し、当社も感染予防対策として在宅勤務を導入しました。それによってオフィス内の個人デスクスペースの未使用率が大幅に増え、フリーアドレス導入を検討するきっかけになりました」(高瀬氏)

それらを背景に移転計画が本格化していった。JR「原宿」駅を中心に物件情報を収集し、検討を重ねていく。最終的に30棟超を内見したが、どれも決め手不足だったという。

「移転先の範囲を少し広げてみたのですが、それでも条件に合う移転先は見つかりません。そんな中で、三幸エステートさんから希望に合ったオフィスビルの提案をいただきました。まだオフィス市場に出ていない新鮮な空室情報でした。ここなら当社のブランディングを表現できると。すぐに関係者全員で見学しました。全員が即決でしたね」(高瀬氏)

そして2021年3月。JR原宿駅徒歩3分、地下1階~地上4階建、1棟貸し、総面積約450坪、テラスも使用できる理想的なオフィスビルと正式に契約を締結した。

モチベーションを高めるために「来たくなるオフィス」を構築した

「旧オフィスは固定席を採用していました。自由に集まれる多目的なスペースもなかったことから、コミュニケーションの低下は大きな課題となっていました」(田中氏)

そのためには内装デザインも思い通りにつくりたい。実は、移転先が決まる前に内装デザイン会社とのコンペは並行して行っていたという。

3社コンペを行い、移転先が決まる前にデザイン会社を選定していました。ライフスタイルブランドカンパニーとしてスタッフ全員のクリエイティビティ向上を目指すオフィスに変貌させることは確定していました」(高瀬氏)

最終的には同社の直営店舗の内装デザインを担当した実績を持つデザイン会社に依頼することになる。

「当社ブランドへの理解も高く、当社からのアイデアの具現化に慣れている会社がふさわしいと思っていました。また、店舗デザインだけでなく、オフィスデザインにも実績があることも魅力的でした」(高瀬氏)

それでは新オフィスをフロアごとに見ていこう。地下1階はショールーム。展示会など、バイヤーに商品を見せるためのフロアになっている。

地下1階ショールーム

地下1階ショールーム

「当社開催のイベントに適した商品を最終決定するための打ち合わせスペースとしても使用されます。そのため大型プロジェクタも備えています」(田中氏)

「机はシンプルなものですが、椅子はアメリカンなデザインの商品で統一しました。フロアの両サイドは倉庫とラボスペースとなっています」(高瀬氏)

地上1階は主に来客者専用のフロアとなる。入口すぐの位置に多様な商品を並べたプレスルームが来訪者を迎える。ここは媒体各社のスタイリストとの打ち合わせに使用される。

「宣伝広告やPR記事といった撮影のイメージに適した商品を選定するスペースです。これから販売する商品も飾られており、毎月入れ替えをしています」(田中氏)

1階プレスルーム

1階プレスルーム

プレスルームを左に曲がると、「HISTORY OF CONVERSE」の壁が現れる。

「コンバース100年の歴史を凝縮したヒストリーエリアを設けました。かなり貴重なコンバースシューズも陳列しています」(高瀬氏)

来客用の応接室や会議室スペースは5室。多様な用途に応じられるように、4人用、5人用、8人用とバリエーションを持たせた。ちなみに各部屋の名前はコンバースシューズのブランド名が付けられている。

「隣り合わせの8人用会議室の壁は可動式になっており、16人用の会議室に変更可能です」(田中氏)

1階HISTORY OF CONVERSE

1階HISTORY OF CONVERSE

1階応接室

1階応接室

2階は主に営業スタッフが使用するフロアとなる。出入口には個人用ロッカーと防災グッズを配置。フリーアドレスのため郵便物は個人ロッカーに届くようになっている。

日差しのいい場所には透明なガラスで仕切られたミーティングスペースが2室。それぞれホワイトボードとモニタを備え、密度の高いミーティングを演出する。

3階は主に企画スタッフのエリアとなる。デザイナーや開発スタッフも在席し、土足禁止の打ち合わせスペースも設置。新作商品のチェックやリラックスする場として使用している。テラスは開閉式のシェードを取り付けたことで、雨天でも自然に人が集まっているという。

2階フロアとの大きな違いは、企画構想やデザイン作業、リモートミーティングを行うスタッフのため、集中しやすいパーソナルスペースを備えた点です。ちょっとした打ち合わせにも利用できるように4人掛けのスペースをダイナースタイルとダイニングスタイルの2タイプ揃えています」(高瀬氏)

2階フロア

2階フロア

3階土足禁止エリア

3階土足禁止エリア

3階テラス

3階テラス

そして最上階となる4階がラウンジとなる。

「従業員同士のコミュニケーションを図るフロアです。最新の雑誌や書籍を集めたライブラリーエリアでもあります。通常のミーティング席の他、ソファスペース、パーソナルスペース、テラスで構成しています。多目的スペースの必要性は旧オフィスから強く感じていました。最近は、部署を超えたランチミーティングやトレンド誌の最新号を見ながらにぎやかに利用している姿も多く見られるようです」(高瀬氏)

「ラウンジでの働き方を観察していると、やはりリアルなコミュニケーションの必要性を実感しますね。リモートの普及によって可能な業務も増えましたが、よりクリエイティブなアイデアを生むには、顔を合わせて会話をすることが重要だと感じています。そのためには『来たくなるオフィス』をつくることがポイントになるのでしょうね」(田中氏)

4階ソファースペース

4階ソファースペース

オリジナルのフリーアドレスルールで
部署内・外のコミュニケーションを高める

「新オフィスでは、初めてフリーアドレスを採用しました。書類やカタログをデータ化し、アーカイブの整理ができ、スペース効率の向上に貢献しています。そしてデータ化の一番の利点は、必要な資料を検索機能ですぐに探し出せることです。そのため業務効率もあがっています」(高瀬氏)

フリーアドレスに関しては、他社では類を見ない個性的な取り組みを実施している。

2階フロアは営業スタッフ、3階フロアは企画スタッフのエリアとしていますが、あくまで便宜上に過ぎません。企画室が3階を利用するのは、平日の火曜日、水曜日、木曜日のみ。月曜日と金曜日は部署関係なく自由に使えるようにしています。つまり週3回は同じ部署内でコミュニケーションを高めて、週2回は他部署との交流を図る。そんな部署内・外で相互理解が深まる仕組みを考案しました。そうして段階を踏みながらフリーアドレスに慣れていければと思っています」(田中氏)


コンバースジャパン株式会社
コンバースジャパン株式会社とコンバースフットウェア株式会社は2020年4月1日に合併。新生コンバースジャパン株式会社としてスタートを切った。新会社では、コンバースブランド全般のブランディング及びコンバースシューズ、一部アパレルの企画・開発・製造を行い、トータルブランドとしての価値向上を目指していく。