英和株式会社
英和株式会社
英和株式会社
2024年9月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
オフィス移転のワンストップサービスを活用して
初めての移転プロジェクトを成功させた
ハイテクノロジーを支える多様な商品を取り扱う英和株式会社。創業以来、技術系の専門商社としてユーザーとメーカーを繋ぐインターフェースの役割に徹してきた。今回の取材では、同社の東京本社で実施したオフィス移転の背景やオフィスコンセプト、新たなオフィス機能などを紹介する。なお、本案件は三幸エステートが提供する「オフィス総合コンサルティングサービス」を活用した事例となる。
英和株式会社
取締役 執行役員
営業本部長
加藤 信義 氏
英和株式会社
経理部 東京営業経理グループ
マネージャー
阿部 卓司 氏
英和株式会社
経理部 東京営業経理グループ
中嶋 和華子 氏
三幸エステート株式会社
ワークプレイスコンサルティング部
稲川 あい
三幸エステート株式会社
神田支店第二室
豊田 詠子
三幸エステート株式会社
プロジェクトマネジメント部
板羽 尚大
Contents
- 入居していたビルの建て替え計画がオフィスを見直すきっかけとなった
- 基本的な営業スタイルがフリーアドレスの導入につながった
- 絞り込んだ候補ビルでテストレイアウト。オフィス構成要素の収納や余裕を検証した
- 第一印象が最も良かったビルに入居。オフィス構築のフェーズに進んでいく
- 今までにない機能を追加して都会的なオフィスを目指した
- オフィス移転プロジェクトを経験してあらためてオフィスの必要性を認識した
REFRESH SPACE
入居していたビルの建て替え計画がオフィスを見直すきっかけとなった
1947年の創業以来、「ものづくりを支える技術総合商社」として多くの価値の創造に努めてきた英和株式会社。現在の取扱商品数は10,000種類以上。計測機器、制御機器、油圧空圧機器、理化学・医療機器、船舶用品など、多岐にわたる工業材料や産業機械の販売を中心に堅実な企業経営を行ってきた。同社は大阪本社、東京本社を含めて全国37ヵ所に拠点を配置し、スピーディかつ高水準のサービスを展開している。
「2022年に入り、東京本社が入居していたビルの建て替え計画が発表され、オフィス移転を前向きに考える必要が出てきました。それによって以前から課題となっていたスペース効率の悪さを改善する絶好のタイミングになると思いました」(加藤氏)
「今回の移転プロジェクトは東京本社が主体となって推進することになりました。これまで、オフィスに関する業務は大阪本社総務部が担当していたため、東京本社では移転に関する経験もノウハウも持ち合わせていません。一体、何から始めればいいのか。それすらもわかっていませんでした」(阿部氏)
そこで大阪本社の総務担当者から三幸エステート 営業部の豊田詠子を紹介される。豊田は定期的に総務担当者と情報交換を行っていた。
「三幸エステートさんとの最初の打ち合わせ時に、『オフィス総合コンサルティングサービス』を提案いただきました。詳細をお聞きすると、適正面積の算出やテストレイアウト、移転先探し、スケジュール管理、オフィスづくりといったオフィス移転に関する業務を総合的にサポートする内容でした」(阿部氏)
「基本方針の策定から引っ越し完了までを一本化することで、お客様の業務負担が大幅に軽減できるサービスです。自信をもってお勧めしました」(豊田)
「提案されたサービスの活用で多くのメリットが生まれると考え、社内承認の手続きを進めることにしたのです」(阿部氏)
基本的な営業スタイルがフリーアドレスの導入につながった
旧東京本社のオフィス面積は270坪。約60名のスタッフが使用していた。
「当社の基本的な営業スタイルはお取引先への訪問のため、日や時間帯によって約2~5割の座席が空席になります。そのためフリーアドレスを導入することで効率的なスペース活用ができると考えたのです」(加藤氏)
そうした状況を踏まえて、移転先の面積は200坪~250坪に設定した。
「その他の移転先の条件として、『1フロア』『ビル性能』『予算』『築年数』『交通アクセス』が提示されました。立地は、慣れ親しんでいた五反田エリアが第一希望でしたが、そこだけに限定したくはないという要望もありました」(豊田)
その後、三幸エステートが所有している東京23区約47,000棟のビル情報から、同社の希望条件で絞り込んだ約360棟の物件資料が提出された。
「『上野~新橋編』と『浜松町~大森・五反田・目黒編』に見やすく分類した物件資料に加えて、比較表やフローチャートなども作成いただきました。豊田さんからの提案や回答は早くて正確。おかげで社内での打ち合わせはスムーズでした」(阿部氏)
絞り込んだ候補ビルでテストレイアウト。
オフィス構成要素の収納や余裕を検証した
続いて実際のオフィス図面を用いて、家具什器やオフィスの構成要素が収納できるかの検証「テストレイアウト」に進む。三幸エステート ワークプレイスコンサルティング部の稲川あいが担当した。
「フリーアドレスを採用した座席数でテストレイアウトをお願いしました。図面上ではありますが、ビルごとにどの程度の『余裕』があるかを確かめたかったのです」(加藤氏)
「品川、大崎、五反田エリアに立地する4棟のオフィスビルでテストレイアウトを行ないました。どのビルでも今後の採用計画を考えて100ワークポイント(デスク席以外でもワーカーが作業できる座席)前後を想定してレイアウトを組みました」(稲川)
「200坪未満だとかなり窮屈になり、逆に250坪以上だと余裕があるということが、テストレイアウトを見るだけで理解できました」(阿部氏)
紙媒体の保存も同社にとって悩ましい課題だったという。
「当社の業務を考えると、ペーパレスには不向きな会社です。それでも不要な書類は廃棄し、保存が求められる書類はデータ化をするルールを新たに策定しました」(阿部氏)
「今回の案件では、現状のキャビネット段数を把握した上で、当社の指標に基づいて標準的な段数をご提案することでキャビネットの設置可能台数や面積を算出しました」(稲川)
その後、検証を行いながら適正面積を定めていく。そして最終候補ビルの内見を行い、同社にとってベストな移転先を選んだ。
第一印象が最も良かったビルに入居。オフィス構築のフェーズに進んでいく
最終的にJR大崎駅徒歩3分に立地するランドマークと賃貸借契約を締結した。
「以前から気になっていた大規模オフィスビルでした。条件折衝などの場面では、豊田さんに上手にまとめていただきました」(加藤氏)
移転先が確定し、オフィス構築のフェーズに進む。プロジェクトメンバーとして同社からは5名のメンバーが選出された。そしてプロジェクト全体の管理は、三幸エステート プロジェクトマネジメント部の板羽尚大が担当した。
「まず、デザイン・設計会社を決めるための3社コンペを行ないました」(板羽)
コンペの結果、同社の他拠点の電話、通信回線、オフィス環境の整備をしてきた会社を中心に形成されたJV(共同企業体)へ依頼することになった。
「今までの業務に対する信頼と社内ネットワークの連携がスムーズに出来る安心感。それが大きな決め手になりました」(加藤氏)
今までにない機能を追加して都会的なオフィスを目指した
毎週定例会を行う中で、アイデアを形にし、旧オフィスには無かった機能が追加されていく。正式にフリーアドレスを採用したことで生まれたことも多いという。
「ほとんどの従業員が自主的に整理整頓を心掛けるようになりました。働く場所を綺麗に保ちたいという気持ち。これは仕事をする上で大事なことだと思います」(加藤氏)
「今まではグループごとにきっちりとした『島』を形成していました。そのため人が増えるたびにレイアウト変更を行う必要がありました。フリーアドレスにしたことで、変更に費やす作業時間や作業負担、コストなどが大幅に削減できます。それは間違いなくプラスの効果といえるでしょう」(阿部氏)
「旧オフィスでは、Webミーティングを行うために6人用の会議室を一人で使用している人もいました。その反省からWebミーティング用にブース2室を設けました。それに加えて半個室の集中用スペース3席を新設。ソロワークでの業務に対応できるようにしました。それらは現在、最も人気が高いエリアとなっています」(中嶋氏)
「オープンミーティング席も執務室内のいたるところに設けました。旧オフィスでは、簡単なミーティングを行うにも場所探しに苦労していましたが、そのストレスがなくなりました」(阿部氏)
オープンミーティング席
新オフィスは、機能を追加するだけではなく色合いやデザインも今までと大きく変化させている。
「目指したのは『都会的なオフィス』です。少しでも今後の人材採用に優位に働くことを念頭に置いてオフィスづくりを進めました」(中嶋氏)
それでは新オフィスの特長的な部分を紹介していこう。
「エントランスは自動受付システムに変更することでスマートなイメージを加えました。そしてカラフルな色合いでなくても華やかさが伝わるように演出しました」(阿部氏)
「ここのエリアにはミーティングルーム3室、会議室1室、応接室1室を配置しています」(板羽)
エントランス
ミーティングルーム
「明るい部屋、重厚な部屋など、全て色調を変化させています。商談の内容で使い分けている方もいますね」(中嶋氏)
「旧オフィスでは、可動式間仕切りによって40名超が座れる大会議室を備えていました。社内研修や説明会等で使用していましたが、その稼働率は決して高くはありません。そのため大人数の会議室はオフィス内に整備せず、イベントごとに外部の貸会議室を使用することにしました。これは面積削減に大きく寄与しています」(加藤氏)
執務室はセキュリティに守られた扉の中となる。室内に入るとその手前に「REFRESH SPACE」が確認できる。完全に扉で閉じるのではなく、気軽に入室しやすいデザインになっているのが特長的だ。
「ランチやちょっとした気分転換の場となるようにつくりました。18席を配置しており、当初の思惑通りに会話が生まれています」(中嶋氏)
室内には80席を用意し、全体的に明るい色調でまとめている。全ての席に大型モニターを設置しているが、外出や出張者も多いため、窮屈さは一切感じられない。
「経理などのバックオフィスもフリーアドレスを適用しました。実際、運用が不安でしたが、結果的に業務上関連の少ない部署との会話や交流が深まっています」(加藤氏)
執務室
「オフィス構築のフェーズでは、板羽さんのスケジュール管理力に助けられましたね。私たちも通常業務をしながらのプロジェクトでしたから、課題の提出に遅れそうなときもありました。板羽さんには自然な形でリマインドをしていただいて。その後の各社様とも打ち合わせも全体の予算やスケジュールを考えながら進行していただきました」(中嶋氏)
そうして東京本社は2024年7月から新オフィスで業務をスタートさせた。
オフィス移転プロジェクトを経験してあらためてオフィスの必要性を認識した
今回のオフィス移転は、今までのプロジェクトと違って東京本社サイドで完結を迎えた。
「通常、オフィス関連の業務は大阪本社総務部が担当しますが、オフィス運営に関しても、このまま東京本社で行うのが理想だと考えています。この移転を機に組織のあり方もベストな方向に変わっていければいいですね」(加藤氏)
初めてオフィス移転プロジェクトに参加したことで、オフィスへの考えはどのように変わったのか。
「当社の場合、テレワーク制度を取り入れておらず紙媒体の資料も多いため、オフィスへの出社が大前提になっています。しかしそれはマイナスなことではありません。オフィスという従業員共通の場所があることで団結力が高まり、円滑なコミュニケーションが行えるからです。新オフィスで皆さんが楽しそうに会話をしている姿を見て、オフィスは必要だとあらためて確信しています」(中嶋氏)
「従業員が自然に集まるための共通の場所はオフィスだけです。だけどオフィスでなければ仕事ができないと縛られ過ぎてもいけないのかな、と思っています。オフィスを含めて、どこででも働ける環境を整備していきたい。今はそんなことを考えています」(阿部氏)
「当社のように営業業務を主体としている場合、大多数の主戦場はオフィスの外側になります。しかし営業だけでは企業経営は成り立ちません。そのためにはバックオフィスの分野にも働きやすい環境を整えることが重要になります。『働きやすい環境=カッコいいオフィス』ではありません。企業価値やビジョンが伝わるオフィスを構築することで、企業ブランドが確立されます。それによってオフィスを訪れた方々へのPRにもつながる。そんなオフィスを目指したいですね」(加藤氏)
2024年6月で創立77年を迎えた英和株式会社。ユーザーのニーズに応じた商品・システム・ユニットを迅速にワンストップで提供することで商品価値を高めてきた。今後も多様な価値観を持つ従業員の創造性を重要と考え、持続的な成長を目指していくという。