株式会社フジテックス
株式会社フジテックス
株式会社フジテックス
2024年9月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
「共創」を掲げ
オープンイノベーショを実現するオフィス移転を行う
「事業を通して、社会の一翼を担う。」というミッションを掲げ、次世代の総合商社として新事業を創造し続けている株式会社フジテックス。お客様により良い商品を提供するという企業理念のもと、「未来を切り拓く、100事業を創る」というビジョンの実現に向け、現在は11事業を展開している。2024年6月、社内外の「共創」によるオープンイノベーション実現を目的に移転を実施した。今回の取材では、新オフィスのコンセプトを中心にお話を伺った。
株式会社フジテックス
上級執行役員
伊東 裕揮 氏
株式会社フジテックス
オフィス移転プロジェクト
メンバー
堀江 曉 氏
株式会社フジテックス
人事総務部 課長代理
井本 麗 氏
Contents
- 顧客が抱える課題を解決することで「100事業構想」の実現を目指していく
- 部署・社内外を超えた「共創」をオフィス移転で促進する
- 新オフィス構想のためにプロジェクトチームを発足させた
- 「挑戦と成長」を意識し、「多様性」を象徴する「船」をコンセプトに
- コミュニケーションを促進する空間がシナジー効果を生み出している
エントランス
顧客が抱える課題を解決することで「100事業構想」の実現を目指していく
1978年8月、販促用ラミネートフィルムの販売を主業務とする株式会社フジテックスの前身企業が創業した。1986年4月にさらなる事業の拡大を見据えて富士テック株式会社(現株式会社フジテックス)を設立し、企業の販促活動のサポートを行ってきた。その後、多くの顧客が悩みを抱える環境課題に対応すべく、環境事業に参入した。以降も顧客の声に向き合う中で多くの商材を開拓し、事業展開を行ってきた。
2022年7月、国内最大級のベンチャーキャピタルである「ジャフコ グループ株式会社」と資本業務提携。さらなる成長を目指し挑戦を続けている。
「当社の中長期経営ビジョンは、2035年(50周年)までに『100事業構想』を実現し、1,000億円企業となること。この構想は、ジャフコグループとの提携前に掲げていました。今後も、世の中に必要とされる社会的な領域をしっかりと見極めて、当社にしかできないビジネスを進めていきます」(伊東氏)
部署・社内外を超えた「共創」をオフィス移転で促進する
「当社の強みは、社内の『情報』を共有して顧客にとってベストな提案をすることです。円滑な情報共有のために1フロアのオフィスにこだわってきました。ジャフコ グループと提携したことをきっかけにメンバーも増え、事業の成長速度も事業ができる速度も上がりました。一方で、移転直前には1フロア230坪の前オフィスに対して入居人数が100名近くに達し、情報量も増加する中で人員密度の課題が出始めていました」(堀江氏)
「加えて、当社のビジョンにも掲げている、社会課題に対応した新規事業を持続的に創出するためには、お取引先である20,000社を超えるクライアント企業様およびパートナー企業の皆様と『共創』によるオープンイノベーションが不可欠です。そうした共創を促す施設をつくるためにも、オフィス移転が最適でした」(伊東氏)
前本社が入居していたビルはJR山手線・東京メトロ「高田馬場」が最寄り駅だった。高田馬場は創業の地であり、長い期間にわたり営業拠点としていた。しかし、往訪を中心に営業を行う当社では、駅近のオフィス選定も重要なポイントであったという。
「慣れ親しんでいた高田馬場ではありましたが、移転先探しにおいては交通アクセスも考慮しながら、広範囲なエリアで検討しました。そして条件に合うビルを探すために何棟も見学しました」(堀江氏)
最終的に同社が選んだのは、JR中野駅徒歩1分の大規模オフィスビルだった。
「当社は40年も前から、環境と関連の深い事業を行ってきました。当時は稀有な存在だったと思います。しかし現在においては、環境に配慮・貢献することは当たり前に求められる要素です。一方、中野というエリアは長らくサブカルチャーの聖地とされてきました。あくまで『サブ』カルチャーですから、一昔前であれば一部の特定のコミュニティの文化という側面が強かったと思います。しかし今では漫画もアニメも、日本における輸出産業の一つの柱にまでなりました。そうした『ニッチな分野から、世間に広く意識されるまでに発展した』という部分が妙にシンクロしていると感じたのです。さらに言えば、現在、中野では大規模な再開発が進行しています。再開発というものは、『再生』とともに新たなプレイヤーを『受け入れていく』必要があります。当社もさまざまなことを『受け入れる』活動を推進しており、その部分でも親和性を感じました」(伊東氏)
新オフィスは1フロア530坪。この広さなら円滑なコミュニケーションが創出され、従業員のモチベーションも高められると考えた。さらに、最上階という階数にもこだわった。地上20階からの景観は企業ブランディングにもシナジーを生み出すと確信したからだ。
「確かにランニングコストは増えましたが、その分、たくさんのプラスの要因を生み出します。それらを将来への投資と考えると、十分に採算に合うと思ったのです」(伊東氏)
新オフィス構想のためにプロジェクトチームを発足させた
新オフィス構築のためにプロジェクトチームを発足した。部署や年齢、役職の枠を超えた精鋭メンバー9名が選出された。
「参加メンバーは皆、『オフィス構築』についての知識は何も持ち合わせていませんでした。それでも『働きやすいオフィス』『おもてなしの場』といった目指すべきベクトルは一致していたように思います」(井本氏)
本プロジェクトで、驚くべき点はそのタイトなスケジュールにある。2024年1月にプロジェクトメンバーを決定し、2月に内装デザイン会社を選定。同年6月に移転を完了させた。内装デザイン会社とは、ほぼ同時進行で企画と設計を進めたという。
「挑戦と成長」を意識し、「多様性」を象徴する「船」をコンセプトに
新オフィスは、単なる綺麗なだけのオフィスにはしたくなかったと語る。
「オフィス移転を、新たな可能性を加速させるトリガーにする。そのために社内外に自分たちの思いを伝える必要があると考えました。私は、一貫してB2Bビジネスの営業戦略とマーケティングに携わってきました。その経験をもとにプロジェクトチームの一員として参加し、オフィスコンセプトの作成をサポートしました」(伊東氏)
プロジェクトチーム全員で、同社が目指すべき姿を思い描いてみた。その中で「挑戦」「成長」といったキーワードが現れたという。一方で取引先が同社に求めるものは「多様な価値観」と想像した。その両面を象徴させるものとして「船」がコンセプトになった。
「ゲストエリアは『クルーズ船』、執務エリアは『冒険船』のイメージです。ただし、それぞれが単独ではなく、二隻の船が背中合わせに存在するようなデザインを依頼しました」(伊東氏)
それではオフィス内の各エリアを紹介していこう。
エレベーターホールから足を踏み入れると広々としたエントランスが現れる。
「開放感を重視しました。正面奥に広がる窓からは都心だけでなく、埼玉や多摩エリアといった広域な景観も一望できます。ここでの何気ない会話が、商談のフックになることもあるようです」(堀江氏)
エントランス奥
「採用向けのイベントや就業体験プログラムを行っている中で、『とても魅力的な環境です』『ここで働いてみたいです』といった感想は少なくありません。オフィスの魅力というのは、会社の魅力に直結するものだと気づかされました」(井本氏)
エントランス正面から見て左側に来客用会議室が配置される。それぞれ「Marine Chart」「Compass」「Light House」「Horizon」「Sailing」と名付けられた。前オフィスではクローズの会議室数は社内外合わせて3室だけだったが、新オフィスでは社内用5室、社外用5室に増やした。大型案件などの商談では「Sailing」を使用することが多いという。
「Sailingとは、帆(セイル)を利用して前に進むことです。ここは、『お客様と一緒にビジネスをスタートさせる場所』という意味合いがあります」(伊東氏)
「会議室の壁に飾られているボードは、当社が壁装飾用として販売している商材です。それ以外にもお客様の目につく場所には当社の商材を並べています。実際に手で触れて、その良さを体感していただける進化系のショールームといえるでしょう」(堀江氏)
Horizon
向かって右側には事業共創ラボ「Wave」が存在する。巨大なモニターを備えたこの施設は、事業創造コンペティションをはじめ、当社をハブにした異業種交流による新しいビジネスモデルの創出を推進する。波は常に動き形を変えていく。当社の20,000社を超える取引先とのコラボレーションにおいて、時代の潮流を捉え、常に新しいアイデアやビジネスモデルを探求し、進化し続けるという。
Wave
扉の奥が執務室だ。オフィス全体の約三分の二を使用する。コロナ禍でリモート出社を取り入れたが、業務効率を理由に100%出社に戻した。固定席を採用しているが、どこで働いてもいいというルールになっている。
「スタンディングデスク『Mast』、ミーティングエリア『Bridge』、気軽に会話を促進する『Splash Pad』、集中エリア『Yellow Cabin』『Green Cabin』『Blue Cabin』、Webブース『Wind Pod』『Seagull Pod』など、多様な働く場を備えています」(伊東氏)
執務室エリア
Splash Pad
Green Cabin
Wind Pod
「その中でも特長的なのは、多目的エリア『Harbor Cafe』です。港近くのカフェをイメージしています。ここの目的はあくまでも休憩。ONとOFFをはっきりと切り替えることを意識しました」(堀江氏)
Harbor Cafe
「当社の営業戦略に『クロスセルの推進』というのがあります。お客様に必要な商材を、部署を超えて提案していく営業手法です。その推進のためには、オフィス内の部署を超えて集えるエリアが必要だと思っていました。間違いなく打合せ数は増えています。それだけでも移転効果はあったと言えます」(井本氏)
「対面でのミーティングの方がスピーディーに物事を進めることができます。社内の意志決定のスピードは、お客様への対応スピードに繋がります。生産性も向上しているのではないでしょうか」(伊東氏)
コミュニケーションを促進する空間がシナジー効果を生み出している
新オフィスではプロジェクトチームの思惑通り、新規事業創出に向けた活発なコミュニケーションが生まれているという。
「新たなコミュニケーションによって創出される斬新なアイデアは、満足度を高め、個々のモチベーションアップにつながります。ですからコミュニケーションの大事さは全員で共有していきます。今後のオフィス運営は、『オフィスバリューアップチーム』に引き継ぎますが、より一層、働きやすいオフィスづくりを目指していってほしいですね」(井本氏)
「オフィスで業務をしていると、聞こえてくる周りの会話だけでたくさんの情報を得ることができます。関心のある言葉に『聞き耳』を立てていると、それに対してのレスポンスが発生します。それが『革新』を生み出すのです。それらを自然な形で可能にする最適な場所はオフィス以下に考えられません」(堀江氏)
オフィスの必要性は、今後の社内教育を考えても明白だと語る。
「当社がジャフコグループと提携してから約2年が経過しました。その間、急激な速さで事業成長し続けており、それに比例して採用活動も順調です。しかし重要なのは入社後の対応です。困っていることはないか、悩んでいることはないか。リモートでは、相手の表情や顔色になかなか気づかないもの。いつでも誰とでも関われるオフィスの存在は、当社にとって必要なビジネス要素だと考えています」(伊東氏)
顧客サポートを通じて、社会全体の発展に貢献してきた株式会社フジテックス。今後も、「100事業構想」の実現に向けて挑戦を続けていく。そして今後も、プロの商人集団として、前例にとらわれることなく半歩先の最適解を追い求めていくという。