フロンティア株式会社
フロンティア株式会社
フロンティア株式会社
2022年1月取材
※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。
コロナ禍で積極的なオフィス戦略を推進。
事業成長を見据えた拡張移転を実施した
ビジネスマッチングサービスを主業務として著しく成長を遂げているフロンティア株式会社。業務拡張に比例してスタッフを拡充していく。使用面積は限られているため、いつしかオフィスは最低限の機能を維持するだけのスペースになっていた。
経営課題であった「働く環境の改善」に着手するタイミングを計っていた中で、新型コロナウイルスが発生。テレワークの需要拡大は、同社の新たな顧客ニーズの獲得に直結する。それを契機として本社オフィスの移転を決断したという。今回の取材では、旧オフィスの課題や課題解決のために構築した新オフィスのコンセプト、概要についてお話を伺った。
フロンティア株式会社
取締役
社長室 室長
雨宮 慎吾 氏
フロンティア株式会社
執行役員
広報・マーケティング部 部長
高瀬 雅代 氏
Contents
- 新しいビジネスマッチングのカタチを追求、堅実に業績を伸ばしてきた
- オフィスの手狭解消を含めて「働く環境の見直し」が経営上のミッションとなっていた
- オフィス移転にあたり移転目的や条件などの要件を明確にする
- 多様な機能を付加しながらカルチャーが伝わるデザインとした
- オフィスとは全員で「共感」するための共有空間
オフィスエントランス
新しいビジネスマッチングのカタチを追求、堅実に業績を伸ばしてきた
フロンティア株式会社の創業は2009年11月。同社の高橋政裕代表は、営業の仕組みを変えたいという想いから起業。企業側の声を聞くうちに、さらに踏み込んだサービスを思い描くようになったという。
「それが企業と企業をつなぐ新たなビジネスマッチングサービスのスタートになります。現在、『合う会社と、会う。』をキャッチフレーズにさらなる事業拡大を目指しています」(雨宮氏)
過去10年間のマッチング件数は5万件を超えるなど堅実に業績を伸ばしてきた。競合会社のほとんどはWeb上で依頼業務が完結するスタイルであるが、同社はそれら競合とは一線を画した姿勢を貫いている。
「当社は、マッチングサービスの開始からずっと、企業様とのヒアリングを重要と考えて継続してきました。表面上は効率が悪いように見えるかもしれませんが、それによって『潜在化していた課題』に気づくことができます。だからこそ精度の高いマッチングができるのです」(高瀬氏)
その案件ごとに3.5万社のネットワークの中から最適解を持つ企業を紹介する。
「予算やスケジュール、価値観だけでなく、言語化されていない課題なども予測して提案を行っています。考え方のベースは特定のサービスや製品を売るのではなく、お客様のニーズに本当に合致した会社だけを紹介するということ。そのためにヒアリングは最も重要な手段だと思っています。ですから今後ITインフラが進歩したとしても、『聞く』姿勢は続けていきたいですね」(雨宮氏)
オフィスの手狭解消を含めて「働く環境の見直し」が
経営上のミッションとなっていた
同社は、豊島区池袋で創業。30坪の面積からのスタートであった。着々とサービスが浸透し、サービス利用企業も増えていく。サービス拡充のために1フロア面積50坪の6階建てのオフィスビルに移転。そして増員の都度、賃貸フロアを増床していく。最終的には3フロア150坪を110名で使用していた。
「対面でのサポートに重きを置いているため、人員の拡充は必要不可欠です。しかし単に増やすだけでは働く環境の劣化につながってしまいます。『働きやすさ』を保持しながら、いかにオフィス戦略を立案し、推進するか。数年前から『働く環境の改善』をテーマにした議論も行っていました」(雨宮氏)
「旧オフィスの来客用応接室は各フロアに1室。簡易的なミーティングを行う場所も少なく、分散フロアを理由に部署を超えたコミュニケーションの低下が懸念されていました。オフィスの改善は今後の事業や採用計画の面からも、経営上のミッションの一つとなっていたのです」(高瀬氏)
商談スペースが足りないという課題に対しては、「フリーアドレスの導入」、リモート会議専用の場所が欲しいという要望に対しては、「リノベーションによる小部屋の新設」を行う。しかしそれらは一時的な処置に過ぎなかった。
経営上のミッションの一つであった「働く環境の改善」に着手するタイミングを計っていた中で、新型コロナウイルスが発生する。それにより多くの企業でテレワークが推進され、リモート業務へのインフラ整備やマーケティング施策のデジタル化によるWebサイトの構築や改修といった需要が顕在化。それは同社にとって追い風となり、新たな顧客ニーズの獲得につながった。それが契機となり、本社オフィスの移転を決断したという。
「入居していたビルでの増床も選択肢の一つでしたが、立地の見直しを含めた『オフィス移転』が最善であるという結論に至りました。それが今後の採用計画やブランディング戦略にもつながると考えたのです」(雨宮氏)
オフィス移転にあたり移転目的や条件などの要件を明確にする
移転先を探すにあたり、移転目的と課題を明確にする作業から始めた。会議室不足、スペースの手狭さ、お客様とのアクセス面、ブランドイメージの向上、採用効率の改善、コミュニケーションの活性化、セキュリティ面の脆弱さ。数々の課題が浮かび上がった。
「創業以来、池袋は慣れ親しんできた地でしたが、これからの事業の展開や現状の課題の解消を考えたとき、既存の立地に縛られずゼロから考え直す必要がありました」(雨宮氏)
商談などの利便性から、新宿、渋谷、恵比寿、目黒といった山手線主要駅に加え、採用ターゲットとなる世代を考えて表参道と、ある程度エリアを絞って移転先選びを行う。
「部署を横断したコミュニケーションを活性化させ、コミュニケーションコストを削減する動線を考えたとき、1フロアの構成が理想でした」(高瀬氏)
結論として6棟のビルを見学後、恵比寿を代表するランドマークへの入居を決定した。
「今後の増員計画を想定して、ビル内での増床が可能だったのも魅力でした」(雨宮氏)
多様な機能を付加しながらカルチャーが伝わるデザインとした
内装デザインに進むにあたり4社コンペを実施する。最も同社の意図が提案書に反映されていたデザイン会社に依頼をした。
「社員の要望や考えを理解するために全社アンケートも実施しました。もちろん全て採用できたわけではありませんが、多くの社員の意見を聞くことはできました。それは今後のオフィス運営で役立てられると思います」(雨宮氏)
それでは新本社オフィスを詳しく見ていこう。新オフィスの使用面積は260坪。129名で使用している。フリーアドレスを採用しているが将来的な採用計画に備え、146の席数を用意している。
エレベータを降り、オフィスエントランスに足を踏み入れる。そこには一面フリースペースが広がる。曲線をベースにして空間が区切られている。デザインコンセプトは、「カラードットをモチーフにした明るいハイクオリティ」。同社ロゴマークに使用されている7色のドットをイメージさせたもので、同社のカルチャーが一目で伝わるようになっている。
「お客様の目に触れる場所でもあるので、エントランスのデザインには最もこだわりました。清潔感を大事にしながら会社のメッセージである『企業や一人ひとりの想いをカタチにし、繋げたい』という理念を表現しています。ロゴマークにあるさまざまな点や色は人間の多様性を表現しています。予想以上に完成度の高いデザインになりました」(高瀬氏)
「エントランスは、フリースペースと来客用応接室で構成しています。フリースペースは、パートナー企業の皆様も使用できます。緑も多く採り入れ、仕事だけではなくリフレッシュも図れる空間となっています」(雨宮氏)
エントランス
来客用応接室は4室。空間をより開放的に見せるために、ガラス壁に瞬間調光フィルムを採用。デザイン性だけでなく利便性も兼ね備えた空間となった。デザインテーマは『四季』。議論に適した色、プレゼンに適した色、和やかな中で打ち合わせに適した色など、部屋ごとに色合いを変えている。
来客用応接室「Summer」
来客用応接室「Autumn」
エントランスは定期的な全体会議を行う場にもなる。
「以前は、会議の開催ごとに貸会議室を手配していました。新オフィスでは会議室の予約に関する手間やコストが大幅に削減できますので、業務効率も向上すると思います」(雨宮氏)
「新オフィスの存在そのものが営業ツールとして成立しています。一度オフィスを見に来ませんかといった新たなアプローチ方法も生まれているようです」(高瀬氏)
壁の奥が執務室となる。セキュリティカードをかざして入室する。執務室中央にフリーアドレスエリア、窓際に多目的スペースを配置した。景観を最大限に取り込むレイアウト、明快な動線計画を計算したデザインになっている。
執務室全景
「窓際の多目的スペースは使用率が高いですね。眺望の良さがアクセントになって、考え事やアイデアを創出する環境に適しています。旧オフィスは、商談や打ち合わせなどの実務スペースが中心でした。そこで新オフィスでは、クリエイティビティを伸ばすための多様な機能を新たに備えたのです」(雨宮氏)
窓際の多目的スペース
「リモート会議用のブースも5台設置しました。その他、スタンディングデスクやソファー席など、気分を変えて仕事ができる多様な機能を採り入れています。今回チャレンジした機能の一つに、柱に設置したガラス製のホワイトボードがあります。その場で思いついたことを書きながら打ち合わせをする。そんな部署を超えたコミュニケーションが、今まで以上に生み出されています」(高瀬氏)
オフィスとは全員で「共感」するための共有空間
移転後の社内アンケートでは、「モチベーションが上がった」「気分転換がしやすくなった」「効率的な働き方を意識するようになった」「アポイントを取りやすくなった」「他部署との交流が増えた」など、多くのプラス効果が寄せられた。その他、採用面でも格段に応募数が上がっているという。
今後のオフィス運営であるが、一旦経営部門で精査。その後、課題に対しての方向性が定まった段階で総務やシステムといった所管部署に連携していく予定である。
「当社は、創業当初から『会う』ことにこだわってきました。今後の働き方に関しても、『リアル』を軸にしながら、社員のニーズや事業の展開に合わせ、最適解を見つけていきたいと思っています」(高瀬氏)
「当社の成長フェーズを分析すると、まだまだ発展途中の段階となります。自社サービスをもっと認知させていく必要があります。そのためには個々の社員が経験を積んでいかなければなりません。人が集まることで、ノウハウが蓄積される。それがお客様の満足度を満たし、結果的に社会貢献につながっていくものと考えています。そのためには全員が「共有」し、「共感」できる場が必要です。それがオフィスだと思っています」(雨宮氏)
企業と企業をつなげる新ビジネスマッチングサービスで事業を拡大しているフロンティア株式会社。同社のビジョンは、企業への情報提供を通じて「企業間の情報格差をなくす」。そのビジョンを達成させるために、今後も変化し続ける人と社会のニーズに柔軟に対応し、高い提案力で企業が抱える悩みを解決していく。