フジフーズ株式会社

2022年5月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

ライブキッチンを備えたオフィスを
都心で構築して業務効率を大幅にアップさせた

フジフーズ株式会社の歴史は1963年有限会社富士食品の創業に始まる。以降、加工食品の製造開発事業を中心に1974年からセブン-イレブン・ジャパン(旧株式会社ヨークセブン)との取引を開始。全国に食品工場を増設しながら事業を拡大してきた。202112月、東京・日本橋に本社機能を移転した。移転の目的や背景、新オフィスの特長についてお話を伺った。

松尾 英次郎 氏

Fホールディングス株式会社
執行役員
人事システム本部副本部長
兼 人事部長

松尾 英次郎 氏

Contents

  1. 年間550種類の商品を開発、セブン-イレブン・ジャパンを黎明期から支えてきた
  2. コロナをチャンスと捉え、東京への移転計画を本格的に考えるようにした
  3. アクセスの良さとビル側の柔軟な対応が新オフィスを確定する決め手となった
  4. フリーアドレスやライブキッチンなど、同社にとって初の試みに挑戦
  5. オフィスは従業員の働きやすさを追求する企業の姿勢が表れる場所

多目的エリア

多目的エリア

年間550種類の商品を開発、セブン-イレブンを黎明期から支えてきた

1963年、千葉県の幕張町に惣菜店「有限会社富士食品」として創業。1974年には株式会社セブン-イレブン・ジャパンとの取引を開始した。当時はコンビニエンスストアの黎明期で、セブン-イレブンもまだ全国12店舗という規模だった。

1978年、千葉県船橋市の食品コンビナート内に本社兼第1工場を設立。その後、全国に食品工場を増設。2017年、業務の拡大を理由に船橋市の工場から千葉市のオフィスビルに本社機能を移す。そして船橋第1工場と八千代工場を吸収した千葉工場を設立した。創業から続く同社を支えてきた強みは「常識にとらわれない発想」と「革新性」。新たな発想力で「おいしさ」を生み出してきた。現在、年間に開発する商品数は約550種類。お弁当、おにぎり、総菜、サンドイッチなど、豊富な商品を提供している。

コロナをチャンスと捉え、東京への移転計画を本格的に考えるようにした

同社の東京進出。実は以前から検討はしていたものの、時期や社内コンセンサスが取れず、2度の計画が頓挫し今回の計画は3度目の挑戦だった。

「会社の将来的な発展を考えると優秀な人材の確保は必須です。そのためには応募者を広く集める必要がありました。本社が千葉市の場合、どうしても応募者の範囲が狭まってしまう傾向があったのです」

そんな中、新型コロナの感染予防対策で在宅勤務を採り入れる企業が増えてきた。オフィスの一部を解約する企業もあり、都心のオフィスビルに空室が出始めるようになっていた。

「しかし情報量は東京が圧倒的です。日本のビジネスの中心ということは変わりません。空室率の上昇によって賃料も下降傾向にある。それならば逆にコロナをチャンスと捉えて、東京への本社移転を本格的に考えたのです」

アクセスの良さとビル側の柔軟な対応が新オフィスを確定する決め手となった

同社の移転先は、旧本社(現幕張新都心オフィス)とセブン-イレブン・ジャパン本社周辺との行き来を考えて、日本橋周辺で探すことになった。移転先探しは、長年にわたって情報提供を行ってきた三幸エステートが担当する。

「当社からの質問に対するレスポンスがものすごく速かったですね。日本橋周辺の候補ビルデータや将来的な賃料予測など、各種資料を見ながらの提案もしていただきました」

そうして20215月、日本橋の大規模オフィスビルと正式に契約を締結する。

「今までのオフィスでは本社に来ていただくのに最寄り駅まで40分以上かかっておりましたが、日本橋でしたら大幅に移動時間が削減できます。今後は取引先の方も容易に来ていただける機会が増え、各事案に対する意思決定までのスピードを上げて行けると期待しています」

本ビルを選んだ理由はもう一つ。それはビル側の柔軟な対応だった。

「試作品の調理などを行うテストキッチンを設置できる物件はそれほど多くありませんでした。試作品の調理過程で発生する臭いや排気を考える必要がありました。今回、特別な配慮をしていただいたのもここを選んだ大きな理由の一つになります」

そうして新オフィスとして「日本橋」駅徒歩3分に立地する大規模オフィスビルの2フロア、約460坪を確保する。新オフィスにはグループ会社も含め、総務・人事、商品開発・生産技術・品質保証等の機能を中心に、幕張新都心オフィスから約110人が異動となり、200人超が勤務できるサイズを確保した。

フリーアドレスやライブキッチンなど同社にとって初の試みにも挑戦

移転は同年の12月中旬を予定していた。
このタイミングで移転プロジェクトの分科会を結成し、内装デザイン会社を交えて、定期的な打ち合わせが繰り返される。そうして同社にとって今までにないオフィスを構築することができた。

それでは新オフィスを紹介していこう。オフィスビルの13階と14階が使用フロアとなる。13階は、総合受付と執務室、それに多目的エリアで構成している。総合受付は木目を基調とした「自然」を感じさせるデザインだ。執務室は、同社にとって初の試みとなるフリーアドレスを採用した。

総合受付

総合受付

執務エリア

執務エリア

「効率的で柔軟な働き方を目的として採り入れました。例えば、開発メンバーが企画を進める際に、近くにいる品質保証のメンバーに気軽に質問することができるのがいいですね」

移転直後は、フリーアドレスに慣れていない従業員のために定期的に席替えをするルールで運用したという。

「それが功を奏したのか、今ではフリーアドレスに抵抗がなくなったようです」

その他、ファミレス風ミーティング席や壁際のカウンター席、Web会議用のブース、スタンディングデスクなど、多様な設備を備えた。

ファミレス風ミーティング席

ファミレス風ミーティング席

ソロワーク席

ソロワーク席

集中ブース

集中ブース

「それ以外で特長的なのは、約70坪を占める大きな多目的エリアです。執務エリアとは大きくイメージを変えるために異なる色づかいにしました。ここは食事をしたり、休憩をしたり、基本的にはリフレッシュするためのエリアとなっています。エリアの一角にはフィットネスエリアとして使えるように床の素材を変え、壁一面に大きな鏡を設置しました」

多目的エリア

多目的エリア

14階が執務室とテストキッチン、ライブキッチンとなる。テストキッチンは企画から商品化までを担う商品開発の中枢となる。本設備は、海浜幕張オフィスのテストキッチンの役割の一部を引き継ぐものになる。

「新本社のテストキッチンでは、アイデアを形にした試作品づくりが行われます。その後、幕張新都心オフィスのテストキッチンで工場と同じような設備を使って試作を行い、ある程度の分量を作り商品の確認を行います。そして最終的に工場で量産するという流れです」

加えて新本社の同フロアにはテストキッチンとは別に、お客様の目の前で実際に調理工程を実演するためのライブキッチンも設置した。

「オープンキッチンにすることで、お客様は使用材料や調理方法などを目にすることができます。当社としては初めての試みで、同業のデイリーメーカーでここまでのライブキッチンを備えている会社は少ないはずです」

ライブキッチン

ライブキッチン

ライブキッチンを持つことで、取引先の訪問が増えているという。ここは徹底的に高級感にこだわり、各拠点とつながるようにライブカメラも設置した。

「開発部は首都圏だけではなく東海や東北などにもありますので、リアルタイムで確認できるシステムをつくりました。逆に工場の大きな機械でつくる映像を、本社のモニターに映して見学することも可能です」

そして本社移転のもう一つの目的は「採用」となる。

「以前でしたら本社の総務経理を募集しても2ヵ月かけてようやく20人ほどが集まる程度でした。しかし移転後は、募集後すぐに200人もの応募者が殺到しています。首都圏エリアからだけではなく、全国からの応募が増えているのも特徴です」

オフィスは従業員の働きやすさを追求する企業の姿勢が表れる場所

新本社オフィスでは多様なチャレンジを行った。それでも完成にはまだ程遠く、改善の余地がたくさんあると語る。

「オフィスの構築は未経験でしたので常に戸惑いがありました。完了したいま、ようやく分かり始めた部分もあります。たまに他社のオフィスや施設を見ることがありますが、いつのまにか『素材』や『機能』に目を向けてしまいますね」

すでに数年後のオフィス改善構想も頭に描いており、できる部分から着手していく予定だという。

「従業員の思いを確認するためにアンケートを定期的に実施していく予定です。その内容に配慮しながら、より働きやすいオフィスにしていきたいです。今回構築した新オフィスには、『リフレッシュ』や『健康』をキーワードにした機能を配置しています。それが従業員の心身の健康に生かされ、結果として人に優しい会社になることが当面の目標です」

フジフーズ株式会社
60年近くにわたって食品の開発・製造を行ってきたフジフーズ株式会社。高品質な食品の製造・開発をコア事業として業務を拡大してきた。今後も「イノベーションを含んだ技術開発」を持ち味に、総合複合食品企業を目指していく。