株式会社GSIクレオス

2023年4月取材

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※ 記事は過去の取材時のものであり、現在とは内容が異なる場合があります。

コロナ禍での新たな働き方をきっかけに
約30年ぶりの本社移転を実施した

繊維と工業製品の両分野を軸に多様な事業展開をしている株式会社GSIクレオス。コロナ禍で導入した在宅勤務が働く環境を見直すきっかけとなったという。その結果、約30年ぶりの本社移転が実施された。今回の取材では、移転プロジェクトの背景や新オフィスの概要を中心にお話を伺った。

楠田 久裕 氏

株式会社GSIクレオス
人事総務部 部長

楠田 久裕 氏

大熊 周平 氏

株式会社GSIクレオス
人事総務部 総務課課長

大熊 周平 氏

飯田 直樹 氏

株式会社GSIクレオス
人事総務部 部長補佐兼
株式会社オフィス・メイト
取締役 エステート部部長

飯田 直樹 氏

Contents

  1. 1931年に米国へ生糸の輸出を行う商社として設立。事業創造型商社として進化し続けている
  2. 数年前からオフィス移転は経営上の大きな課題の一つとなっていた
  3. BCP、業務効率、スペース効率の改善にはオフィス移転がベストな解決策だった
  4. 全て自社内だけでプロジェクトを遂行することは困難と判断した
  5. 中期経営計画とリンクさせてオフィスコンセプトは「Connecting」とした
  6. 多様な働き方に合わせてさまざまな働く環境を整備した
  7. 目指したのは「繋がり」の場の構築。それこそがオフィスの役割と考えている

管理部門と営業部門の接合点「Big Table」

管理部門と営業部門の接合点「Big Table」

1931年に米国へ生糸の輸出を行う商社として設立。
事業創造型商社として進化し続けている

株式会社GSIクレオスは、林大作氏が1931年に設立。米国へ生糸の輸出を行う商社として事業を開始した。その後、1955年には米国・ニューヨークに現地法人を設立。婦人用靴下編機の世界的メーカーとの代理店契約締結を機に工業製品分野に進出した。以降、繊維と工業製品の両事業でグローバル展開を行っている。

2001年、創業70周年を機にグンゼ産業株式会社から現在の社名に改称した。社名は「Global Sophisticated Intelligence(グローバルで洗練された知性)」と「創造(Create)」「新しい方向(Reorient)」「曙の女神(Eos)」の単語の組み合わせでつくられている。

「新しい商材やビジネスを創造し、近未来の夢といわれていたものを現実に変えていく。そんな意味が社名に込められています。次代を創るビジネス・プロデューサーとして、世界中から商材を調達、ときには自社製品を生み出すことで、明るい未来の創造に貢献していきます」(楠田氏)

数年前からオフィス移転は経営上の大きな課題の一つとなっていた

「当社は約30年にわたり、千代田区九段下に立地するオフィスビルに本社を構えていました。1974年竣工の旧耐震ビルで、1フロア面積は約200坪。移転前は3フロアを使用していました」(楠田氏)

2011年に東日本大震災が発生したときは、従業員の安全性の確保を理由にオフィス移転が議論になったという。それ以降も移転は経営上の大きな課題の一つとなっていた。

「オフィスマーケットや賃料データ、多くのオフィス関連情報を持つ三幸エステートさんには、定期的に相談をしていました」(飯田氏)

BCP、業務効率、スペース効率の改善には
オフィス移転がベストな解決策だった

2020年、同社でも感染予防対策として在宅勤務を導入した。それをきっかけにオフィス移転プロジェクトが立ち上がった。

「従業員の安全性の確保のほかにも、フロアの分散による業務効率の悪さや従業員同士のコミュニケーション不足といった課題の解決も求められていました。さらに執務室内には柱がたくさんあり、多くのデッドスペースが生じていました。それらの多くの課題に取り組むにはオフィス移転がベストな解決策だったのです」(楠田氏)

全て自社内だけでプロジェクトを遂行することは困難と判断した

オフィス移転を進めるにあたり、三幸エステートと打ち合わせを重ねていった。

「三幸エステートさんからは、物件選定の前段となるワークプレイススタディ(各種働き方調査、必要面積の策定、シナリオ策定)といったコンサルティング業務から、物件選定後の「基本設計支援」「内装工事管理」「コスト管理」「原状回復見積」といったプロジェクトマネジメント業務までをトータルで行うサービスの提案がありました。私どもにとって、これだけの大規模な移転プロジェクトというのは初めての経験です。全て自社内で行うのは難しいと判断をしてトータルサービスをお願いしました」(飯田氏)

新本社の面積を大幅に縮小したのは、経営会議を重ねる中で現行面積の30%削減を目標にしたことが理由となる。

「そして削減目標として生まれた面積が400500坪でした。移転先の立地は都心3区。まずは面積と立地を優先条件にして物件の提案をお願いしました」(楠田氏)

そうして数十棟のビルが移転先候補として提案される。それらの候補ビルを対象に、テストレイアウトの検証が何度も行われた。

「移転先を確定するまでに二転三転しました。エリアを絞り込んだり、逆に広げたり。この先、数十年にわたって働く場所と考えると、時間をかけてでも満足のいくオフィス探しをする必要がありました」(飯田氏)

移転によって大幅な面積縮小が求められる。依頼した会議室利用度調査、収納量調査などの結果から、現状把握を行った。そして三幸エステートからは、フリーアドレスを採用し、多くのABW機能を付加させたレイアウトの提案を受けた。

2022年4月に新オフィスの契約を締結したが、その後も数多くのシミュレーションをお願いする。特に、通勤費調査は最寄り駅を変えながら何度も依頼したという。

「旧オフィスは複数の路線が使え、どの駅からも徒歩10分程度の距離に位置していました。そのため、会社が従業員の居所を勘案し、最寄り駅がどの駅になるのかを決めていました。その結果、一定の妥当性のもと、コストを抑えた路線経路となっていました。新オフィスは駅から徒歩2分。アクセス面で大幅に向上できるものの、比較的高コストの都営地下鉄線の駅になります。従業員の利便性とコストの両面を考慮し、かつ妥当性のある運用ルールを決めるためには、どの程度のコスト上昇になるのかを事前に判明させる必要がありました。そこで通勤費シミュレーションの資料を作成していただいたのです。明確なコスト情報をもとにした資料でしたので、運用ルールを決めるにあたり非常に有益な資料となりました」(大熊氏)

中期経営計画とリンクさせてオフィスコンセプトは「Connecting」とした

物件選定が終わり、プロジェクトマネジメントのフェーズに入る。同社からは10名のコアメンバーが移転プロジェクトに参加した。主なメンバーは、経営企画部門、総務部門、システム部門、営業戦略部門。そこに三幸エステートのプロジェクト担当と内装デザイン会社の担当が加わり定例会を実施していった。

「三幸エステートさんには、定例会の中で方向性を導く役割を担ってもらいました。その他、全体の予算管理、スケジュール管理をしていただいたので、自分たちは課せられた課題に専念することができました」(大熊氏)

そうして新オフィスのオフィスコンセプトとレイアウトコンセプトが決まる。オフィスコンセプトは「Connecting」とした。

「当社は中期経営計画で、当社グループをさらに進化・成長させて、新たなステージへCONNECTする『GSI CONNECT 2024』を掲げています。新オフィスでは、社内の個々のメンバー、各部門、ビジネスパートナーとの繋がりを通じて新たなイノベーションを起こしたいと思っています」(楠田氏)

レイアウトコンセプトは「Open communication with fun」。フリーアドレスの採用や利便性の良い会議室、リフレッシュスペースの確保などで、従業員は楽しみながら柔軟なワークスタイルや活発なコミュニケーションを実現する。そんな働き方を願って考えられた。ちなみに当初は「Open communication」だけであったが、最後に同社の吉永社長によって「with fun」が付け加えられたという。

多様な働き方に合わせてさまざまな働く環境を整備した

それでは新オフィスを見ていこう。エントランスの左側には会議室を集中させている。

「旧オフィスでは大人数で使用できる会議室が3室ありましたが、必ずしもその広さが必要な会議室ばかりではなかったため、スペースの無駄が生じていました。新オフィスの会議室9室。稼働率や適正人数を考えた設計となっています」(大熊氏)

エントランス

エントランス

会議室

会議室

執務室への入室は高度なセキュリティを求めた。

「大阪支店では指紋認証システムを導入しています。セキュリティ的には問題ないのですが、今後の感染症対策を考えると直接触れるシステムは変更しようと。結果的に、当社では初めてとなる顔認証システムを導入しました」(大熊氏)

「かなり精度が高い認証システムですね。何よりもICカードなどの発行管理業務が不要になったことで、業務の大幅な改善ができました」(楠田氏)

「入室管理だけではなく、体温検知も行えるため従業員の健康管理もしっかりとできるようになりました」(飯田氏)

執務室は開放的な空間で、窓際がコラボレーションエリア、内側が執務エリアとなっている。

「コラボレーションエリアには、『テーブル席』『ソファー席』『カフェカウンター』『人が集まりやすいAgora Space』など、用途に応じたさまざまな席を備えました。もちろんどこで仕事をしても自由としています」(大熊氏)

ファミレス席

ファミレス席

ソファー席

ソファー席

カフェカウンター

カフェカウンター

Agora Space(Agoraはギリシャ語で「広場」の意)

Agora Space(Agoraはギリシャ語で「広場」の意)

可動式デスクエリア

可動式デスクエリア

「執務エリアは入口手前が管理部門のグループアドレスエリア、奥が営業部門のフリーアドレスエリアとなる。そしてその接合点には『Big Table』を配し、部署を超えたコラボレーションを促進しています」(楠田氏)

その他、勉強会の会場としても使用可能な「可動式デスクエリア」。今後の働き方を考えた「リモートワーク用ブース」を配置。今後の多様な働き方に対応する。

リモートワークスペース

リモートワークスペース

目指したのは「繋がり」の場の構築。それこそがオフィスの役割と考えている

移転後3ヵ月が経過したことで、新オフィスで働く従業員を対象に「オフィスアンケート」を実施した。

「移転前にもアンケートを行ったのですが、回答率はともに高かった。それだけ従業員の関心も高かったのでしょう。移転後のアンケートによって、新オフィスに導入した機能の一つひとつに対する意見を収集できましたので、今後はそれらの内容を検証し、より良いオフィスにしていきたいと思います」(大熊氏)

「人と人との交わり、それは生活するうえでとても重要です。きっと社内も同じことだと思っています。誰かに会える場所。そんな『繋がり』がオフィスの役割だと感じています」(楠田氏)

「在宅勤務とオフィスへの出社をバランス良く、働き方にメリハリをつけることができるオフィスになったと思います。働く環境を整備することで利便性を高める。それが従業員のストレス軽減に繋がれば、今回の移転プロジェクトは成功だったのではと思っています」(飯田氏)


株式会社GSIクレオス
次代の生活品質を高める事業の創造者として人々の幸せを実現する株式会社GSIクレオス。今後もグループ企業間の連携をより一層深めながら、SDGsの達成に資する「環境」「生活・健康」「エネルギー」分野の事業を深耕・拡大し、企業価値の向上を図っていく。

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